――カップリング曲の「辛苦or酔夢」は、事務所の後輩である声優の水野 朔さんをフィーチャリングで迎えた楽曲になります。
矢野 元々楽曲が先行してあったのですが、それがすごくお洒落なサウンドだったので、細かいニュアンスを表現するのが得意な朔ちゃんに似合いそうだなと思ってお願いしました。
――水野さんとは『SELECTION PROJECT』(以下、『セレプロ』)や『BATON=RELAY』といった作品でもご一緒されていますが、これまでの親交についても聞いてみたいです。
矢野 朔ちゃんとコンテンツで一緒になったのは『BATON=RELAY』が最初で、その時はグループ分け的に別々だったのでそこまでたくさん話す機会はなかったんですけど、その後の『セレプロ』では同じグループ(9-tie)として活動していましたし、役柄的にもメインを務めている2人だったのもあって仲良くなりました。特に朔ちゃんはゲームが大好きなので、誘ってもらって遊んだりしています。
――矢野さんも「矢野妃菜喜のGAME the HINALAND」というゲーム系のレギュラー番組を持っていますし、授業中にゲームをやるくらいですものね。
矢野 アハハ(笑)。最近はスマホゲームばかりやっていますけど、私も結構ゲーム好きですね。朔ちゃんとは複数人でできるホラーゲームや「Minecraft」で遊んだりしてしています。朔ちゃんはFPSが好きなので「やりましょうよ」って誘われるんですけど、私はあまりわからないので「エイムが合わない?知らないよ!」って言いながらやったりしていました(笑)。
――楽曲のお話に戻しまして、矢野さんとは初顔合わせの卯乃さんが提供した「辛苦or酔夢」は、お洒落な曲調ですけど、歌詞はちょっと変わった内容ですよね。よく聴くと序盤はなぜかお寿司の話をしていて。
矢野 そうなんです!私は最近お寿司が好きなんですけど、朔ちゃんもお魚がすごく好きなので「そういう共通点を歌詞に入れ込むのがいいんじゃないか」という話になってお願いしました。最初は「曲調はお洒落だけど歌詞はなんか変だな?」みたいな楽曲になると思っていたんですよ。そうしたらあらゆるダブルミーニングが含まれた歌詞にしてくださって、一聴するとお洒落なことを歌っている感じになっていたのですごく感動しました。(1番Aメロの)“淡い→濃い、の様”は耳で聴くとLOVEの方の“恋”について歌っているのかと思いきや、お寿司の食べ方のことを歌っていて(笑)。
――自分も最初は歌詞を見ずに聴いたので恋の話だと思ったのですが、その後に“ガリ”や“サーモン”という言葉が出てきたのであれ?と思いました(笑)。
矢野 でも、全体的には「お寿司のうんちくとかはどうでもいいよね」みたいな楽曲になっているんですよね。私としては「あまり考えすぎなくてもいいよね」「流れに身を任せてもいいんじゃない?」ということを歌った楽曲と解釈していて。全然考えないのもアレですけど、考えすぎると疲れてしまうじゃないですか。だから歌詞にある“あれもこれもどうにでもなれ!”じゃないですけど、力を抜いて海をふわふわ浮かんでいるような時間も必要じゃない?っていう。
――タイトルの「辛苦or酔夢」も“Sink or Swim”(英語で「いちかばちか」という意味)とかかっていると同時に、“Think(=考える)”と“Swim(=泳ぐ)”いう意味のダブルミーニングでもあるんですね。矢野さんはどっちのタイプですか?
矢野 時間があると考え過ぎることもありますけど、割と「考えても仕方ないし、もういいや、寝よう」ってなるタイプですね(笑)。とりあえずやってみてから考えよう!っていう。なので個人的にも共感できました。
――水野さんとのデュエット曲になったわけですが、レコーディングはどちらが先でしたか?
矢野 私が先に録らせていただきました。元々朔ちゃんに合うだろうなと思って声をかけたので、朔ちゃんの歌声は何となくイメージできたんですけど、私はこういう楽曲を歌ったことがなかったので「あれ?どう歌えばいいんだろう?」となってしまって(苦笑)。妖艶ではないですけど大人っぽい雰囲気で歌うようにディレクションをいただいて、「ライブだとマイクが拾うかな?」というくらい力を抜いた繊細な歌い方に挑戦したので、かなり苦戦しました。ウィスパー気味だけど、ウィスパーにしすぎてもかわいく聴こえてしまうので、そのバランス感を細かく調整しながら録っていただいて。今までの私にはあまりなかった歌になったと思います。
――シックな雰囲気がありつつ浮遊感も感じられて、楽曲にもばっちり合っていると思います。その後に水野さんの歌が入った音源を聴いた時の印象はいかがでしたか?
矢野 『セレプロ』でも2人で歌うキャラソン(Suzu☆Rena「B.B.」)があったので、2人の声が合わさるとどうなるかは何となく想像できていたのですが、実際に聴いたら声の混ざり方がすごくきれいだなと思いました。自分で言うのもなんですけど(笑)。朔ちゃんの方が少しロウで、私は少し高く聴こえるけど、重なる部分でも2人の声の区別が付くし、でもバラバラではない。すごく良い聴こえ方でバランスがいいんだろうなと思いました。
――Suzu☆Renaの楽曲はキャラクターとして歌っていることもあってか、よりはっきりと声質の違いが感じられましたが、この曲はお二人の歌声が溶け合うような瞬間もあって。もちろん聞き分けはできるのですが、あえてお互い寄せているのかなとも思いました。
矢野 あまり意識はしていなかったのですが、私はいつもならもっと張って歌っているので、その意味で朔ちゃんの方向に寄って聴こえるかもしれないです。やっぱり私と朔ちゃんは相性がいいと思うんですよね。以前に私のFCイベント(2024年9月15日開催の“HINATOON 4th Anniversary EVENT ~ひなんぼうといた夏を~”)で朔ちゃんがMCを担当してくれたことがあって、長年の付き合いなので私としてはすごくやりやすかったのですが、後々聞いたら朔ちゃんはMCをするのが初めてだったらしくて。その意味でもきっと相性がいいんだと思います。
――この間、SMA VOICEの6周年企画で、お二人で釣りに行かれたそうですね。
矢野 そうなんです。朔ちゃんは釣りやお魚が好きなので、結構前からプライベートで「一緒に釣りに行きましょう、妃菜喜さん!」と言われていたんです。私も「行こう!」と言いながらずっと行けてなかったんですけど、ようやく実現しました。私は釣り自体が初めての経験で、どうやって竿を投げるのかもわからないくらいだったんですけど、何とか1匹釣ることができて楽しかったです。
――せっかくなのでお寿司のこだわりも聞いていいですか?
矢野 お寿司は元々好きだったんですけど、去年の夏くらいからより「お寿司いいな」と思うようになって。でもあまり挑戦するタイプではないので、行ったことのあるお寿司屋さんに通うことが多いです。なかでも季節のお魚を食べるのが好きなんですけど、それこそ去年の秋くらいにお寿司屋さんで(漢字の)読み方のわからないお魚に出会って。それがこの楽曲の歌詞に出てくるウスバハギで、フグに近い感じの淡白な味のお魚なんですけど、それがすごく美味しかったんです。でもすぐ名前を忘れてしまうので何回も「あのお魚、なんでしたっけ?」みたいなことを言っていて(笑)。
――歌詞にしたら忘れることはないですからね(笑)。
矢野 マネージャーさんともウスバハギの話をしていたので、「それも歌詞に入れたらいいんじゃない?」みたいな話になってリクエストさせていただきました。きっと楽曲を作る側からしたら「ウスバハギなんてどう歌詞にしたらいいんだよ!」ってなったと思うんですけど(笑)。朔ちゃんはマッコウクジラが好きなので、それも歌詞に入れていただいています。
――ちゃんとお二人の好きなお魚の要素が入っているんですね。ちなみにこの曲の歌詞は“通はギョクから”で始まりますが、矢野さんはお寿司を食べる時、何から頼みますか?
矢野 私は淡白めなお魚、タイやカンパチを最初に頼みがちです。
――まさに“淡い→濃い、の様”ですね。
矢野 私もいつかこの歌くらいの通になりたいです。まだウスバハギくらいしか知らないので(笑)。
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