スターダストプロモーション所属の黒木ほの香、小峯愛未、小山百代、汐入あすかによる声優ユニット、サンドリオンのラストライブ“Sound Orion Live Finale~メリーメニーメモリーズ!!!!~”が、2024年12月25日、埼玉・ところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールAにて開催された。2023年に日本コロムビアから念願のメジャーデビューを果たし、アニメ主題歌を担当するなど順風満帆に思われた彼女たち。だが、2024年11月4日に本公演をもって解散することを発表。2016年の結成以来苦楽を共にしてきた4人は、たくさんの思い出が詰まった楽曲たちと共に笑顔で約8年間の活動にピリオドを打った。
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 武田真由子
毎年クリスマスシーズンにはライブイベントを行うのが恒例となっていたサンドリオンだが、クリスマス当日の開催は今回が初。これで見納めとなる彼女たちのステージを目に焼き付けるべく、会場に集ったドリオンズ(サンドリオンのファンの呼称)に届ける最高のクリスマスプレゼント――メンバー本人がそのように意識していたかはわからないが、この日のライブはいつも以上に盛り沢山の内容で、あらゆる手を尽くしてドリオンズとの楽しい一日を作ろうという彼女たちの想いが感じられた。
ライブはメンバー4人が部屋でくつろぎながら思い出のアルバムを開くオープニングムービーからスタート。そして会場にメジャーデビューに際して新調されたライブのオーバーチュア「Overture~The Beginning of a SoundOrion’s Great Adventure~」が流れ出し、白と薄い水色をベースにひらひらの飾りが付いた新衣装を纏った4人がステージに登場する。彼女たちが開幕に選んだ楽曲は「Angel Ladder」。メジャー1stシングルの表題曲にして大冒険の始まりを告げる新しい旅立ちの歌だ。「後悔の無いように最後まで楽しんでいきましょう!」(黒木)と呼び掛けるとドリオンズもクラップしたりペンライトを振って応える。
可憐なエンジェルボイスを会場中に降り注ぐと、続いてはインディーズ時代からのレパートリー「Go!Action」へ。サビでは4人揃ってステージ前の台に乗って歌唱するなど、ハイテンションに盛り上げる。さらに自己紹介曲「Be Shine! Sound × Orion」に繋げ、各々の個性をアピールすると、MCで改めて1人ずつ挨拶。「今日は人生で一番幸せな日にしましょう!」(小山)、「今日は黒木さん出し切るので、みんなも一滴残らず何かを出し切ってください!」(黒木)、「今日はみんなのことをすごく幸せにするつもりで来たので覚悟してください」(汐入)、「私たちが一番楽しいクリスマスを過ごせたなと言えるくらい楽しみましょう」(小峯)と意気込みを語る。サンドリオンというグループ名はシンデレラのフランス語表記がモチーフになっていることから、新衣装がシンデレラのドレスっぽいことに触れて喜ぶ一幕もありつつ、「次はすごいものを持ってきました!」(小山)と、ここからは“怒涛のメドレー”に突入することを宣言。「多分みんなひっくり返っちゃうと思う」(小峯)、「正直エモいとかじゃなくて面白いメドレーかも」(黒木)といった言葉がさらに期待を高める。
そのメドレーは間違いなく“怒涛”と呼ぶに相応しいものだった。なんと全25.5曲を約20分に渡ってノンストップで披露したのだ。神々しいハーモニーから一転ロックに迫る「メグル・オモイ・メグル」で幕を開けると、黒木が作詞した「S. T. A. R. T」で空気を華やかに塗り替え、瞬く間にキラキラしたエレポップ「ハッピーアイスクリーム」へ。そこから「FAQ」の一節をクールに届けたかと思えば、活動最初期からの持ち曲「恋フルシルシ(Re-arrange ver.)」を頭サビの部分だけ歌って、清竜人提供のシックなダンスチューン「ダッサイ」を艶っぽく歌唱。さらに小山のソロパートから4人でのユニゾンへの流れがエモかった「未来地図」、歌声だけでなく振付も愛らしい「無重力ランデヴー」、しっとりとした歌声が染み入る「告白星(Re-arrange ver.)」と矢継ぎ早に歌い繋いでいく。ワンコーラスどころかほぼワンフレーズのみの楽曲も多く、片時も目が離せない。
ここで突然音が止まって照明が暗くなるなか、小峯・小山・汐入がかっこよくポージングすると、その後ろからサングラスをかけた黒木が登場。スポットライトに照らされるなか、サングラスを外して「よう、待たせたな」とハードボイルドにキメて、黒木がかねてから久々に歌いたいと語っていたライブではご無沙汰気味の初期曲「肯定的思考Time」を4人で花道を駆けながら歌って盛り上げる。そのまま花道中央のセンターステージに留まって「Sun!Sun!dream on!」「僕らのSailing!!」をステージから飛び出さんばかりの勢いで立て続けると、「キラーチューン」の小峯がソロで歌う冒頭の一節だけを挿み、煌めきに満ちた「Wander Future」へ。あまりの詰め込み具合を気遣って、黒木が「みんな、スペシャルメドレー、ついてこれてる?」「この後も聞き逃さないように気をつけてー!」と呼び掛ける場面も。
メドレーはまだまだ終わらない。「Wow Wow Wow Wow~♪」という力強いユニゾンから「Have a nice journey」のラスサビのエモーショナルなパートを歌い上げて一体感を作り上げると、黒木が突然しゃがみこんで「また返事ない、自信なくしちゃうなあ……」と落ち込み始め、小山が「ネガティブ発見!キューティークルクル、キューティクル~!」と元気の呪文を唱えて「ライフ・イズ・キューティクル」を披露……と思いきや小峯が汐入に向かって「大変!こういう時に元気が出る曲、知ってる?」と話しかけて、小峯が常々サンドリオンで一番好きな楽曲と公言している小山・汐入の歌唱曲「ゼロイチ」に突入。歌唱する2人に挟まれながら満更でもない顔で喜ぶ小峯を黒木が後ろに引っ張っていく茶番劇もまた彼女たちらしいし、「あみちゃんこの曲好きでしょ?」(汐入)、「世界で一番好き!」(小峯)というやり取りも微笑ましかった。
そして「きっと星は輝いている」「ひとり ひとつ」というメッセージ性の強い楽曲をワンフレーズずつ届けると、「みんな、一緒に踊れるかな~?」(小山)と呼び掛けてボカロPのいよわが提供した愛らしいナンバー「メロン・ソーダ・フロート」をダンスと共に披露。そこから4人はメインステージに戻ると「ブランコリック」をパワフルに歌い上げ、堀江晶太が書き下ろしたエモーショナルなアップナンバー「ゆびきりの唄」へ。さらに情熱的なシンフォニックロック「Imitate Fiction」へと雪崩れ込み、かわいいだけではないかっこいい一面をアピールする。続く「君だけのオリオン」は冒頭の小山のソロパートから一気にドラマチックなラスサビへと移行するメドレーならではの特別仕様。そして怒涛の25.5曲メドレーは、離れていても心は繋がっていること、またいつか出会えることを願い約束する「illuminations」で締め括られた。
その後のMCで、黒木がステージ演出を含め監修した通称“YM(よう、待たせたな)”パートが0.5曲分にカウントされていたことを種明かししつつ、「メドレーが20分あってしんどかったんです」(小峯)と冗談めかしてメインステージのステップに腰掛けた4人は、先ほどのメドレーにもリアレンジバージョンが含まれていたバラード「告白星」を改めてフルで披露。しかもアレンジはオリジナルバージョン、アンビエンスなサウンドに4人の儚い歌声が溶けて想いが込み上げていく。後半、立ち上がって横並びで歌う4人のスポットライトに照らされた姿は、まるで夜空に輝く星のよう。ひと際強く輝く4つの星と、それらを取り巻く無数の星々。まるでオリオン座のような光景が、聖夜の夜を美しく飾った。
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