J-POPシーンに確かな足跡を刻み続けるWANDSが放つ1月22日リリースの 2025年初シングル「Shooting star」は、放送中のTVアニメ『名探偵コナン』EDテーマ。彼らの楽曲としては新鮮なシャッフルビートとプログレ風のアプローチが印象的な本楽曲は、2000年の解体(解散)後、長き休息期間を経て2019年に本格的に再始動した“WANDS第5期”の最高傑作との呼び声も高く、『名探偵コナン』ファンからもEDムービーとの見事なシンクロが賞賛されている。今回は2020年に『名探偵コナン』OPテーマとなった「真っ赤なLip」から続く『名探偵コナン』×WANDSのコラボレーションを改めて振り返り、「Shooting star」の魅力を深掘りしていこうと思う。
TEXT BY 阿部美香
「Shooting star」の魅力を語る前に、まずは『名探偵コナン』×WANDSの歴史を簡単に振り返っておこう。
2000年の解体(解散)後、長き休息期間を経て2019年11月、初期WANDSのギタリスト、コンポーザーとして多数の名曲を生んだ柴崎 浩(g)、解体までWANDSを支えたキーボーディスト・木村真也(key)に加え、新たに若きボーカリスト・上原大史(vo)をフロントに迎えたWANDS第5期。そんな彼らの華麗なる本格復活劇に欠かせないのが『名探偵コナン』シリーズとの過去4曲に及ぶコラボレーションだ。
2020年にリリースされた復活シングル「真っ赤なLip」は、『名探偵コナン』OPテーマに初起用された楽曲だ。ドラマチックな要素が強く、力強い上原のボーカルと柴崎の重厚なギターサウンドが印象的で、“トリック”“罠”“trap”といったミステリーを想起させる歌詞の内容が『コナン』の緊迫感あるストーリーとも絶妙にマッチ。主人公・江戸川コナンが久々にダンスを踊ったOPムービーも大きな話題を呼んだ。そのインパクトは絶大で、『名探偵コナン』放送1,000回記念プロジェクトの一環として行われた「The Best of OPED」投票企画で歴代OPテーマ内で第1位を獲得し、『名探偵コナン』×WANDSの初コラボは大きな結果を残した。
『名探偵コナン』×WANDSコラボ第2弾は、2021年の第54代OPテーマ 「YURA YURA」。インパクト大だった「真っ赤なLip」から一転、この曲はWANDSお得意の哀愁あるポップなメロディと軽快なリズム、歪みを抑えたギターサウンドが繰り出すバラードチックな清涼感が特徴の楽曲だ。コナンたちの日常のさりげない1コマを感じさせる歌詞には、“何も言わずに ずっといつでも 肩を寄せ合って”というフレーズも登場し、工藤新一と毛利 蘭の切ない関係を投影してしまう。
コラボ第3弾曲は、2023年リリースの第57代OPテーマ「RAISE INSIGHT」だ。こちらも「YURA YURA」からグンとイメージを変え、キャッチーなポップテイストでありながらもロックチューンとしての疾走感を兼ね備えた楽曲になっている。ハイキーなシンセサウンドをアクセントにした力強さとあでやかさを両立した点も印象的だ。歌詞に登場する、“信じるべきモノ 見誤ってしまわぬように 導き出す力 RAISE INSIGHT”のフレーズは、卓越した洞察力で事件を解決するコナンの勇姿にシンクロ。『名探偵コナン』TVシリーズを代表する言葉「真実はいつもひとつ」も鮮やかに脳裏に浮かび上がる。
そして第4弾コラボとなったのは、2024年リリースの「大胆」。江戸川コナン/工藤新一の最大のライバルとして立ち塞がる月下の奇術師・怪盗キッドの誕生と、2人の初対決を新規映像とともに贈るTVシリーズ特別編集版である映画『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』のテーマソングに起用された。ストリングスと骨太なギターリフから始まるこの曲は、リズミカルなビートと劇場版だからこそ映える耳に残る雄大なメロディがポジティブなエネルギーを与える。“月明かり照らす夜が この心騒つかせる”から始まる、怪盗キッドに寄り添って上原が紡いだという歌詞には、“何度でも受けて立つさ”や“来世で取り返してやる”といったコナンファンの心を揺さぶるフレーズも散りばめられた。
これらの曲はいずれも『名探偵コナン』の世界観と融合。WANDSの多彩な音楽性と高い実力が楽曲を通じて存分に発揮され、それぞれのシーンにおいて重要な役割を果たしながら『名探偵コナン』ファンに忘れ難い印象を与えている。2019年に第5期WANDSが始動してからの数年間で、『名探偵コナン』シリーズと4曲ものコラボを紡いできたWANDSの音楽は、今や本作に欠かせないピースの1つなのだ。
そして2025年、『名探偵コナン』×WANDSの歴史にまた新たな1ページが刻まれた。それがWANDS通算22枚目となるシングル曲「Shooting star」。これまでTVシリーズでは3曲のOPテーマを提供してきたWANDSにとって初めてのEDテーマというのも実に新鮮だ。
「Shooting star」の初お披露目は、楽曲リリースに先駆けて1月4日からオンエアがスタートしたTVアニメ『名探偵コナン』1148話「探偵団と二人の引率者(前編)」からだが、EDムービーにフィーチャーされたキャラクターが灰原 哀だったことにはファンも驚いたようだ。しかも映像の冒頭に登場したのは白いワンピースを着た灰原の幼児化していない元の姿・宮野志保。さらに映像は灰原がアニメに初登場した129話「黒の組織から来た女 大学教授殺人事件」(なんと1999年にこのエピソードがオンエアされたのも、同じ1月4日!)から始まり、悲しい過去を持つ灰原が周囲との触れ合いの中で温かい心を取り戻していく少年探偵団メンバーとのこれまでの名場面が、今回のEDムービーのために新規に作画されて折り込まれたことも大きな話題となった。
このEDムービーは、楽曲「Shooting star」とも見事に融合している。まずはシンセサイザーのアルペジオからリフへと繋がるミステリアスな響きのイントロ。強い風に吹かれて断崖に立つ宮野志保の思い詰めた表情が、謎めいた印象を残すそのサウンドによく似合う。そして歌が始まると“確かな温もりを知った”のフレーズに少年探偵団メンバーの小嶋元太、円谷光彦、吉田歩美に迎えられる灰原が重なり、“叶わぬ理想 嘆いてないで 大切なモノ愛したい 酸いも甘いも きっとドラマに必要なFlavor”というフレーズには元太、光彦、歩美、コナンと灰原との仲が深まっていくシーンが重なり合う。灰原の過去を知っていればいるほど、少年探偵団の仲間たちが“灰原 哀”として生きる今の彼女に欠かせない“大切なモノ”へと変わっていったことが感じられ、視聴者の胸を打つ。そんな灰原を見守っているコナンと蘭の表情にも温かな想いが喚起される。そしてEDムービーラスト、蘭とコナンが見上げた夜空には“今を駆け抜けて“Shooting star!””との歌詞にあわせて流れ星が降ってくる。上原が豊かな歌声を響かせる“Shooting star!”の譜割りに合わせて3つの流れ星がシュンと空をよぎり、最後の1つが一際大きな輝きを残すのもドラマチックだ。灰原の願い、コナンの願い、そして蘭の願い……3つの流れ星が彼らの切なさをいつか解消してくれることを我々も祈りたくなる。
「Shooting star」の歌詞の世界には2番以降にも『名探偵コナン』オマージュを感じさせるフレーズがある。“魔法なんてあり得ない 誰かが嘲笑った でもそれは少しだけ嘘だね”は、まるで魔法にでもかかったように現在を生きるコナンや灰原の姿や、魔法のように謎を解いていくコナンの頭脳を想像してしまう。また、“手を少し離すくらいじゃ この愛は冷えない”のフレーズには、新一と蘭のもどかしい距離も感じさせる。WANDS第5期の上原作詞ナンバーはWANDSファンからも「ドラマ色が強く心に残る」と評価されているが、だからこそ作品とのタイアップ曲は彩り豊かに物語と融合していくのだろう。(ちなみに、1番の序盤に出てくる“哀しくてやるせない”の部分にはちゃんと “哀”の文字が使われている!意図しているのか定かではないが……!)
サウンド的にも、「Shooting star」はWANDS第5期としての新しい試みがたくさん詰め込まれている。第5期以前にWANDSがTVアニメのEDテーマを担当したのは、第2期~第3期時代。WANDSの代表曲といえる1994年の『SLAM DUNK』EDテーマ「世界が終るまでは…」、1997年の『ドラゴンボールGT』EDテーマ「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」、1998年の『遊☆戯☆王』EDテーマ「明日もし君が壊れても」の3曲があるが、どの楽曲もミディアムテンポのバラードテイストを貫くナンバーだった。
ところが、同じアニメのEDテーマでも「Shooting star」はこれまでと一味違う。もちろん、解体前のWANDSと現在のWANDS第5期のトータルでの音楽性の違いもあるが、いわゆるEDテーマにありがちな落ち着いたサウンドを想像していると、イントロから裏切られることになる。実はアニメサイズではこの劇的なイントロ部分は時間にして約1/3にショートカットされていて、キラキラと重なるシンセサイザーのアルペジオから煌びやかなリフへとすぐに繋がっている。それはそれで、まるでOPテーマを感じさせる派手な入口にはなっているのだが、フルサイズの「Shooting star」はその間に重たく歪んだギターがストロークを刻み、変拍子的なドラムのアクセントとシンセ、ギターが絡み合ってドラマチックなシャッフルビートを経て歌に入る。とてもハイキーなシンセサイザーの音色や使い方も実に往年のフュージョン的で、プログレ風なフレーズが入り混じるが、そこに重さや難解さを感じさせないのも本楽曲の魅力だ。
2番に入るとさらに作曲・編曲を担当した柴崎のアレンジは緻密になり、ピアノがフィーチャーされるフレーズなども増えていく。また、2番が終わるとアグレッシブなエレキギターソロと再びのプログレ風のアレンジも登場。1曲の中でフレーズごとブロックごとに多彩なサウンドメイクが楽しめるのは、まさにWANDSならでは。90年代WANDSと今のWANDSの良さが見事にミクスチャーされた「Shooting star」は、洗練されたWANDS第5期サウンドの現在の完成形を思わせる。
上原のボーカルもより技術力を増しており、ビブラートの掛け方を変化させたり、同じフレーズでも歌い方を変えたりと、技巧的でありながらもとてもエモーショナル。以前よりも自然体に聴こえるその歌声は、テクニックをこれ見よがしにしない上品さにも満ちている。WANDS第5期の素晴らしいポップネスを、「Shooting star」で堪能してほしい。ぜひともフルサイズでも楽しんでもらいたい仕上がりだ。
●リリース情報
読売テレビ・日本テレビ系全国ネット「名探偵コナン」EDテーマ
「Shooting star」
1月22日発売
【名探偵コナン盤(CD+アクリルスタンド)】[完全限定生産]
品番:GZCD-7017
価格:¥1,800+税
※工藤新一&毛利蘭オリジナル描き下ろしアニメ絵柄ジャケット
<CD>
1. Shooting star
作詞:上原大史 作曲/編曲:柴崎浩
2. Shooting star[TV-SIZE ver.]
作詞:上原大史 作曲/編曲:柴崎浩
【通常盤(CD+Blu-ray)】
品番:GZCD-7018
価格:¥1,300+税
<CD>
1. Shooting star
作詞:上原大史 作曲/編曲:柴崎浩
2. Shooting star[Instrumental]
作詞:上原大史 作曲/編曲:柴崎浩
<特典Blu-ray>
「Shooting star」Single Limited Special Movie
「Shooting star」サブスク&ダウンロード配信中
https://wands.lnk.to/shootingstar
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996
WANDS
公式サイト
https://wands-official.jp/
公式YouTube Channel
https://www.youtube.com/@wandsofficial1218
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