INTERVIEW
2024.12.06
2023年12月に開催された、南條愛乃のソロデビュー10周年を記念したライブ“南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories-”のBlu-rayがリリースされる。“FUN!”と“Memories”というそれぞれ異なるコンセプトとセットリストによって、多角的に南條のキャリアを振り返ることができたこの2日間。そこに彼女はどんな想いを込めたのかを改めて振り返ってもらった。そこから見えてくるのは、ファンとの信頼を結んできた現在と、その先に見据える未来でもある。オーケストラコンサートやアコースティックツアーなど、2025年の南條愛乃が“どこまで遊びに行くのか”というヒントも含めたロングインタビューをお届けしよう。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
――12月12日に“南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories-”のライブBlu-rayがリリースされます。この10周年ライブが開催されたのが約1年前のことで、その間に『The Fantasic Garden』を引っ提げての“南條愛乃 Live Tour 2024 ~LIVE of The Fantasic Garden~ supported by animelo”(以下、“The Fantasic Garden”ツアーを行うなど、南條さんも様々な活動をされてきました。
南條愛乃 1年前なのにもう遠い記憶のようで(笑)。
――そんな1年前のことを振り返っていただきます。あの10周年ライブは南條さんにとってどんな時間でしたか?
南條 当時はライブが終わったあとに、すごく多幸感のあるライブだったなって思っていたんですよ。それで最近ライブ映像を観返していたんですけど、映像チェックという目線ではあるものの、普通に面白かったなと思いながら観ていました。チェックしているというより、普通に映像作品として観ている感じ。改めて当時の多幸感を思い出しましたね。
――たしかに当日は南條さんのソロ10周年を祝う、会場全体が多幸感に溢れた時間でしたよね。こうして映像で改めて観てみると、ステージ上の南條さんも終始ニコニコしている、楽しそうな印象があって。
南條 そうなんです。ライブっていつもアルバムを引っ提げてになりがちで、どうしても大半が新曲になるのでようやく慣れてきた頃にツアーが終わってしまう感じがあって。それに比べると、このライブはある意味新鮮な気持ちや緊張感がありました。自分との戦いみたいな。特に2日間でセットリストがガラッと変わっていた部分が戦いでしたね。ただ、セットリスト自体は何度もライブで披露してきた曲たちがほとんどだったので、「次はあの曲だ、頑張んなきゃ……!」みたいに気負うことはなくできました。今回のライブはバンドメンバーとして久々に八木(一美/ds)さんにも参加いただけて、同窓会というか、昔からの馴染みでわいわい居酒屋で飲んでるみたいな気持ちでできました(笑)。
――確かに馴染みの面々と馴染みのメニュー、という印象はありましたね。
南條 そういう気楽な雰囲気でやれたので、ただただ純粋に楽しくて。楽曲を通して色んなことを思い出したりもして、お客さんと楽しみながら、気持ち的には“遊べた”という感じでした。
――そうした気楽さが多幸感に繋がっていくわけですが、それができるのも10周年という特別な場ならではですよね。南條さんの生まれ育った静岡で開催されたというのもリラックスできる一因だったのかなと思うのですが、その辺りはいかがでしたか?
南條 そうですね、地元・静岡というのは気持ち的にリラックスに繋がっているというか、緊張がほぐれる感じはありましたね。(富士市文化会館 ロゼシアター 大ホールは)過去にもライブしたことのある会場ということもあって、このアニバーサリーに自分が生まれ育った県へ皆さんをお招きするという意味でも、気持ちが温かくなれたというか。
――さて、そんな“-FUN! & Memories-”は事前に告知もされていましたが、2日間のセットリストやコンセプトそのものが異なるライブでした。改めてこの構成に至った経緯を教えてください。
南條 実はそもそも私、最初は1日だけのつもりで考えていたんです。そしたら「2日間です」って言われて、「へー、2日間もやるんだ!」みたいな(笑)。なので最初の構想段階では5周年の時の“5th Anniversary Live -catalmoa-”(2017年12月25日、神奈川・パシフィコ横浜)の延長線上で構成していくつもりだったんです。でも2日間と聞いて、なるべく多くの楽曲を、なんなら自分の持ち曲全てに触るだけでもできたらいいなと思うようになって。それで2日間違うセットリストにしたんです。これも、ドラムの八木さんが参加してくれなかったらできなかっただろうなと思っていて。
――確かに、近年のツアーから参加された方だと過去の膨大な楽曲を網羅するのはどうしてもカロリーが高いですよね。
南條 さすがに2日間全曲違うとなると、確認しないといけないこともたくさんあって。なので馴染みのバンドメンバーだったからこそできた部分は大きいですね。
――それもあってか、特典のメイキング映像を観ると、長く一緒にいる仲間たちだからこその雰囲気もあったように感じられるんですよね。八木一美さん(Dr)、星野 威さん(g)、キタムラユウタさん(b)、佐々木聡作さん(key)という馴染みのメンツに加えて、5年ぶりに森藤晶司さん(key)も加わって。
南條 そうですね。森藤さんは、2019年のツアーから聡さんとバトンタッチしたんですよね。なので、それ以降の楽曲を森藤さんに演奏してもらうのも大変かなと思ったんですけど、森藤さんには今回のステージで一緒に立ちたいという思いが最初から私の中にあって。まさかダブルキーボードになるとは私も思ってなかったんですけどね。
――森藤さんが出ずっぱりな構成を当初は想定していなかった?
南條 要所要所にお願いする感じになるのかな?なんて思っていたら、オファーした段階で聡さんと森藤さんで割り振りを決め始めていて(笑)。キーボード2人のステージに馴染みがなかったので、視覚的にも新鮮でしたね。歌っていても、特にピアノにリードしてもらう曲も多かったので、楽曲の特徴がより出て面白かったです。
――それにしても、2日間でセットリストをほぼ全曲変えるとなると、リハーサルも倍かかるわけで。メイキング映像でも当日リハの模様が収められていましたが、多少慌ただしくもあるなかで、ここでもリラックスした雰囲気を感じ取ることができました。
南條 そうですね、メイキング映像的としては良くも悪くもドラマ性はなく、「撮れ高がない!」と思いながら撮られていたかもしれません(笑)。
――その自然体感がまた良かったですよ。そうしたライブ初日の“FUN!”のステージですが、タイトル通り南條さんのライブにおける楽しい要素が詰め込まれたセットリストでした。
南條 昔からやってきた「飛ぶサカナ」とかもそうですけど、他にも最近のツアーだとなかなか入れられなかった楽曲もあって。今回“FUN!”と“Memories”のコンセプトを考えている時に、“FUN!”はわかりやすくアップテンポな楽曲を詰めようかなと思ったのですが、10周年なので、全部アップテンポというよりも、「これはみんなと楽しい思い出を作れた曲」みたいなところも考えるようになって。それで、より感傷的でエモい楽曲は2日目の“Memories”に持ってこうかなという感じで分けていきました。“FUN!”はただアップテンポな曲だけじゃなくてバラード系の曲もありつつ、それも“楽しい”の括りに入れて構成していて。“FUN!”のほうが体力を使う日ではあったんですが、楽しかった記憶を思い出しながら、私自身も楽な気持ちで臨めました。
――たしかにそうした構成だからこそ、中盤のバラードも効いていて。「逢えなくても」のボーカルも絶品だったなと。
南條 ありがとうございます!「逢えなくても」は本当に久々で、少しドキドキしながら歌いました。
――そのあとの「みんなの“好きな言葉”で書いた歌」など、緩急がしっかりした曲順でした。そして後半「一切は物語」のあとの「誇ノ花」での映像演出も素敵でしたね。
南條 映像を使った演出は元々やりたいと思っていて。2023年に開催した“ジャニトラツアー(南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~ supported by animelo)”の時は、10周年を記念したアルバム『ジャーニーズ・トランク』を引っ提げてのツアーだったので、ステージにも色々盛り込みたくて。ただステージのスペース的にも舞台セットを取るかダンサーさんを取るかで、結果、映像モニターを盛り込むようなスペースがなくて……。なので今回の10周年ライブにはリベンジとして盛り込みたかったんですよね。実は、今回のライブにおける「一切は物語」のシルエットを使ったダンサーさんの演出は、本当は“ジャニトラツアー”でやりたいと思っていたものではあって。
――なるほど、“ジャニトラツアー”との対比も含まれているわけですね。
南條 そうなんですよね。“ジャニトラツアー”からこの日までそこまで期間が間も空いていなかったので、住み分けがどこまでできるかなというのもあって。でも取り組み出したらきれいに収まりました。“FUN!”と“Memories”のセットリストを見比べると伝わるかなと思うんですけど、意外とブロックごとにきれいに整列してくれて。メドレーのゾーンが同じ場所にあったり、こんなにきれいな対称に収まるものなんだなとびっくりしました。“ジャニトラツアー”との住み分けも含めて、すごく上手くいきましたね。
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