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INTERVIEW

2024.05.23

“犬コン!”特別賞受賞の大渕野々花のアーティストデビューシングル「朱く染めて心臓」がリリース!本作、そして彼女の素顔に迫ったリスアニ!初インタビュー!

“犬コン!”特別賞受賞の大渕野々花のアーティストデビューシングル「朱く染めて心臓」がリリース!本作、そして彼女の素顔に迫ったリスアニ!初インタビュー!

2023年、フライングドック主催のオーディション“犬コン!~フライングドッグ15周年記念アーティスト発掘オーディション~”で特別賞を受賞し、声優としての活動を本格的にスタートさせた大渕野々花。そんな彼女のアーティストとしてのデビューシングル「朱く染めて心臓」が、5月22日にリリースされた。TVアニメ『怪異と乙女と神隠し』のエンディング主題歌となる本楽曲、ボカロPのNeruが制作した一筋縄ではいかないサウンドと歌詞の世界観、それに負けない大渕の存在感あるボーカルが評判を呼び、中毒者を増やし続けている。そんなクセの強い楽曲を堂々と歌いこなし、ルーキーらしからぬ風格を放つ彼女は、一体どんな歩みを経てデビューに至ったのか。期待の大型新人・大渕野々花の素の表情に迫る!

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

エンタメへの葛藤、就活――紆余曲折を経て声優・歌手になるまで

――リスアニ!初登場ということで、まずは声優や音楽活動を志すようになったきっかけから教えてください。

大渕野々花 まず前提として、音楽活動を明確に志したことは一度もなくて。声優業に関しては、小学6年生の頃に、子役事務所に所属して演技のレッスンを受けたこと、それと同時期にアニメやマンガへの熱がより高まっていたことが掛け算されて、声優を目指すようになりました。

――子役事務所に所属していたということは、子供の頃から芸能活動に興味があったのですか?

大渕 きっかけとしては、8~9歳の頃、隣に住んでいた年下の子が当時子役として劇団四季のミュージカルに出演していて、それを観に行ったときに、その子が活躍している姿を見て楽しそうだなと思ったんです。で、その翌年に、それまで習っていたピアノを辞めたので、代わりに何か新しい習い事をしたいと思って、その子と同じ事務所に入ったんです。そこで歌と演技とダンスのレッスンを受けるなかで、自分は歌が好きということを初めて自覚して。歌手を目指していたわけではないのですが、歌が好きという気持ちはずっと持ち続けていましたね。

――プロフィールによると、小学校から高校時代にかけてドラマやバラエティ番組などに出演して、高校生の頃にはTBSの歌唱オーディション番組「Sing! Sing! Sing!」で入賞もされたとか。

大渕 「Sing! Sing! Sing!」はどちらかと言うと勢いで出演したみたいなところがありまして……。私は番組の3rd Seasonに出演させていただいたのですが、それ以前のシーズンをファンとして母と一緒に観ていたんです。それで、3rd Seasonが始まるとなったときに、私がちょうど参加資格の15歳になるタイミングだったので、母から「出てみなよ!」と薦められて応募したんです(笑)。その他の活動ももちろん本気で取り組んでいたのですが、何か将来の夢や目標を見据えてやっていたかというとそうでもなくて、いただいたご縁を大切にしたくて一生懸命やっていたら、気づくと大学生になっていました。その間も声優になりたい思いはずっと抱いていて、養成所に入りたい気持ちもあったのですが、そうなると当時所属していた事務所を辞めなくてはいけないのでなかなか決心ができなくて。

――そこから改めて声優の道に進もうと思ったのは?

大渕 大学生の頃、社会に直接貢献できる仕事にも興味が出るなかで、エンタメに対する葛藤が生じて、芸能活動を辞めて就職しようと思ったんです。ただ、声のお仕事をしたい気持ちは揺るがずあったので、ナレーションも職務内容に含まれるアナウンサーを目指したのですが、当時、学生キャスターを務めさせていただくなかで、自分が本当にやりたかったことに気づきまして。

――想像していたものと違ったわけですか?

大渕 私がやりたかったのは「声を使ったお仕事」ではなくて「感情表現ありきで声を使ったお仕事」ということに気づいたんです。よく考えると、アナウンサーは声優とは対極にあるお仕事で、声優が感情を解放する仕事だとすれば、アナウンサーは感情を抑制する仕事なんですね。ニュース原稿を読むときは、凄惨な事件や事故を取り扱うときも冷静でいなくてはいけないし、パンダのかわいいニュースなんてたまにしかないわけですよ(笑)。もちろんとても実りのある経験ではあったのですが、それを一生続けるのは自分にとっては難しいかもしれないと思って。そういった経験もあり、声優になりたいという想いが甦ってきたんです。

――なるほど。それで2021年、声優の養成所に入所したわけですね。

大渕 それともう1つ、就活時代に背中を押されたエピソードがありまして。アナウンサーの試験を受けたとき、選考の一環で特技を披露することになったので、私は歌を1フレーズ歌ったのですが、それを聴いていた音響スタッフさんが、選考が終わった後で私に「歌、本当にお上手ですね。頑張ってください!」と声をかけてくださったんです。そのときに私は思わず「アナウンサーではなくて芸能活動を応援された!」と思い込んでしまって(笑)。その帰り道、「これは養成所に通うべきかもしれない」と考えていたら、電話で不採用のご連絡をいただいたので、逆に清々しい気持ちで養成所に通うことに決めました(笑)。落ちたことを知らされたとき、そのことに悲しんでいない自分に気づいたんですよね。そこで就活もスパッと辞めました。

――そしてフライングドッグ主催のオーディション“犬コン!”で特別賞を受賞し、今に至ると。きっとご自身の歌が人の心を動かしたことが自信になったし嬉しかったんでしょうね。

大渕 そうですね。自分は歌のスキルに自信があるわけではないのですが、それとは関係なく伝えられるものがあるんだなと思いました。そう言ってもらえたときの喜びが計り知れないというか、中毒性があるなと思って(笑)。私は直接的に誰かの役に立つ仕事をしたいと思っていて、当時はエンタメが人々の役に直接立つかどうか疑問も抱いていたのですが、「感動しました!」という言葉をいただいたときに直接貢献できることに改めて気づかされて。そこで私の中にあったエンタメへの葛藤は晴れました。なので就活のおかげで今があるんです。

――声優になる以前から役者として活動されていたわけですが、演技自体には楽しさを感じていたのですか?

大渕 演技をしている最中は、自意識が存在しないので楽しいと思うことはないのですが、みんなで一緒に何かを作り上げることや、自分の演技プランが誰かに褒められたり、他人が出さない提案をできたときに喜びを感じます。それにプラスして、自分が思いつかなかった演技プランを他の人がやっているのを見て「すごい!やられた!」と感じることも好きで。ある種、言葉を交わさない意見交換の場みたいに感じて、それが楽しかったんですよね。

――演技を介して、色んな人の色んな意見に触れられることにもやり甲斐を感じていたんですね。

大渕 演技のお話に限らず、人の持論に興味があって、他人の意見を聞きたくなるんですよ。「何でそう思うの?」と聞きがちなので、人によっては「この子、なんでこんなにぐいぐいくるんだろう?」って思うかもしれないくらいで(笑)。自分と人との差異を楽しむ節がありますね。

――元々音楽活動を志す気持ちはなかったとのことですが、今回、アーティストデビューすることになって、歌手としてはどんな活動をしていきたいと考えていますか?

大渕 これは役者としても言えることなのですが、どんな色にも染まれるアーティストになりたいです。求められたものを何でも出せる人……と言うとかなりハードルが高いですけど(笑)、スキル面ではそうありたいと思っていて。それとファンの方に対してのあり方としては、私自身が色んなアーティストの楽曲に助けてもらった経験があるので、そういうものを届けていきたいと思っていて。

――というのは?

大渕 私はこれまで、ふとそこにある音楽に救われてきたので、大渕の音楽もそういう存在になれたらと思っています。これは就活中にも「あなたの軸はなんですか?」みたいなことを聞かれたときにずっと言っていたことなのですが、私には「人々の生活を豊かにできる人になりたい」というモットーがあるんです。なので自分の音楽活動も、日常の中に馴染みながら、ふとした瞬間に元気になってもらえるような、みんなの生活をそっとアシストするようなものにしていきたいです。

――ご自身にとってそういう存在になってくれた音楽やアーティストを聞いてみたいです。

大渕 高校時代に、いわゆる邦ロックと呼ばれるバンドにハマって、インディーズからメジャーまで色んなバンドさんの楽曲を聴いていたのですが、その中でもライブにも行ける範囲で追いかけていたのがクリープハイプさんでした。一般的には恋愛の楽曲が多いイメージがあると思うんですけど、もっと踏み込んだ楽曲も多いですし、恋愛の楽曲だと思われているものも引きで見ると普遍的なことを歌っていたりしていて、そういう部分で支えられたことがたくさんあったんです。インディーズ時代の「風にふかれて」という楽曲とか。

――クリープハイプの音楽は、大渕さんの生活の側にいてくれる感覚があった?

大渕 はい。尾崎(世界観)さんの弾き語りも含めて、すごくナチュラルに生活の隣にいてくれる感じがするんです。一緒に落ちてくれる感じというか、ほっといてくれる感じがすごく好きなんですよね。もちろん「頑張ろうぜ!」っていう風に引き上げて欲しい人も世の中にはいると思うので、そういう人にも応えられるアーティストにはなりたいのですが、自分の経験としてはそういう想いが第一にあって。クリープハイプは私の音楽においての原点というよりも、青春ですね。

――では原点に当たるアーティストは?

大渕 一青窈さんです。父が車の中でずっと聴いていたので、物心ついたときから歌詞の意味もわからず口ずさんでいて。ただ「ハナミズキ」のようにメジャー感のあるポップな楽曲よりも、台湾にゆかりのある方ということで、中華的なサウンドや歌謡曲っぽさが全開な楽曲のほうが好きで。井上陽水さんが作曲している楽曲もあって、世間的にはアクの強めな楽曲のほうを好んで聴いていました。

――これはデビューシングルの収録曲からも感じたことなのですが、大渕さんはアクの強い音楽が好きなんですか?

大渕 そうかもしれないです(笑)。これはもう小林 私さんに提供いただいた楽曲(「夢.jpeg」)の印象が強いと思いますけど。

シニカルでオカルティック!?Neruとの出会いが生んだデビュー曲

――今回のデビューシングル「朱く染めて心臓」は、TVアニメ『怪異と乙女と神隠し』のエンディング主題歌です。タイアップのお話を聞いてどう感じましたか?

大渕 夢だと思いました!というのも、会社の方から直接お電話で知らされたのですが、その日はお休みで私は寝起きだったので、すごく自意識過剰な夢を見ているのかと思って(笑)。そもそも『怪異と乙女と神隠し』というタイトルからして、どう考えても私の好きな作品だったんですよ。私は小さい頃からオカルト系のお話が大好きで、中学生のときは2ちゃんねるのオカルト板に張り付いていたんです。スマホを買ってもらった中学二年生の夏休み、深夜の一番ヤバそうな時間に布団にくるまりながらオカルト板を見て、「ウワッ……!」ってなるのをずっとやっていて。

――めっちゃ中二病っぽいですね(笑)。

大渕 やめてくださいよ!(笑)。でもそれが本当に楽しくて。アニメも小学生の頃からダークなものが好きで、『xxxHOLiC』や『ローゼンメイデン』『地獄少女』のような作品ばかりを好んで観ていたので、『怪異と乙女と神隠し』もタイトルを聞いた瞬間に絶対好きな作品だと思いました。

――ということは、お話をいただいてから作品のことを知ったわけですね。

大渕 そうですね。ただ、これは後から気が付いたのですが、原作者のぬじま先生がXに投稿していたマンガを読んだことがあったんですよ。すごく面白かったので記憶に残っていて。その後に原作をしっかりと読ませていただいたら、それはもう私好みの作品でした(笑)。私は大学で日本文学を専攻していて、所属していた中世文学ゼミに鎌倉時代の妖怪の研究をしていた子がいたりして、そういう絵巻物や地獄絵図にも興味があったので、作品の中に日本古来の妖怪や絵巻物風の演出が出てきた瞬間に「好き!」ってなりました(笑)。

――オカルト要素はもちろん、ストーリーとしても引き込まれる面白さがありますよね。

大渕 キャラクターたちもそうですし、ドキドキハラハラな事件を解決していく物語性も魅力的ですよね。何よりも、人間が抱える葛藤や複雑な感情、誰しもが陥りうる境遇といった部分が核にあるので、そこが素敵だと感じました。刺激的な物語を浴びた末に辿り着くのが、心を抉るような人間の心理描写だったりして。

――そんな物語のエンディングに流れるのが、大渕さんが歌う「朱く染めて心臓」ということで。ボカロPとして有名なNeruさんが作詞・作曲・編曲を手がけた、作品の内容の濃さに負けないくらいアクの強い楽曲です。

大渕 はい(笑)。それこそ私が声優を目指し始めた頃、小学6年生のときにNeruさんの音楽にも一方的に出会っていて。当時の私はニコニコ動画の住人で、ボカロランキングも毎日張り付いて観ていたんです(笑)。それでNeruさんの音楽にもドハマりしていたので、今回はたまたまご一緒する形になったのですが、すごく嬉しかったです。しかも私が個人的にも好きな歌謡曲要素を感じる楽曲になっていて。

――歌謡曲だけでなくあらゆる要素が混ざり合った、妖怪で例えるなら鵺(ぬえ)みたいな楽曲ですよね。

大渕 サウンド的には、陽気なスカや哀愁漂う歌謡曲調など、Neruさんらしさ全開のすごい構成の楽曲で(笑)。その意味では『怪異と乙女と神隠し』の登場人物たちとも通ずる部分もあると思いますし、色んな人に刺さる楽曲だと思います。

――歌詞の内容的には、どんな部分が作品に寄り添っていると感じますか?

大渕 歌詞は主人公の化野 蓮くんをモチーフに書いてくださっている一方で、ある種、報われない恋の歌、破滅的な恋の歌としても聴けるものになっていて。それこそ引きで見ると、人間の葛藤や相反する気持ち、感じが出ているように感じました。『怪異と乙女と神隠し』はシリアスとコミカルのバランスが絶妙だと思うのですが、この楽曲もNeruさんならではのシリアスとコミカルを兼ね揃えた、作品にもぴったりな楽曲だと感じました。

――ブロックごとにサウンド感が様変わりする楽曲なので、歌うのも大変だったと思うのですが、どんなことを意識してレコーディングに臨みましたか?

大渕 まず歌声や歌い方に関しては、プロデューサーさんから「儚さや可憐さが欲しい」とディレクションをいただいて、それを意識して歌いました。A・Bメロは歌謡曲的な哀愁漂うメロディなのですが、その割にスカ調でテンポが速いので、余韻があってこその物悲しさや哀愁を表現するのに苦労しました。もう1つ肝になったのが熱量で、最初に1コーラス歌ってみたときに「余裕があって必死さが足りない」と言われたんです(笑)。なので本レコーディング前にキーを一つずつ上げていき、ギリギリのキーで高音域を必死に歌う感覚を体に覚えさせたうえで、原曲のキーで歌い直しました。声優としては恥ずかしいお話しですが、声の表現はやりすぎと感じるくらい思い切った表現でやらないと伝わらないことを改めて感じて、勉強になりました。

小林 私によって“素の大渕野々花”が表現された「夢.jpeg」

――カップリングも多彩な楽曲が揃っていますよね。まずはシンガーソングライターの小林 私さんが作詞・作曲されたアクたっぷりの楽曲「夢.jpeg」についてお聞かせください。

大渕 大渕音楽チームとの会話の中で私が何気なしに小林 私さんが好きというお話しをしたことがあって。そうしたら後日、「小林 私さんに楽曲をお願いしました」と言われてとんでもないことになりました(笑)。小林さんはYouTubeの生配信でも有名ですけど、「異邦人」(久保田早紀)など私の好きな楽曲をよくカバーされていて、いち視聴者として好きだったんですね。生配信ではユーモラスですけど、「そんな方がこんな歌詞を書いてしまうんだ!」という、ある種、ミステリアスなところがあって。そういう部分も含めて憧れがありました。

――楽曲を書いてもらうにあたってどんなお願いをしたのでしょうか。

大渕 普段はあまりない機会なのですが、私が小林さんの楽曲が好きという気持ちを汲んでいただき、制作前に一度ご挨拶を兼ねて打ち合わせをさせていただいたのですが、そのときに私がどういう歌詞を好きかヒアリングしてくださったんです。そこで何か引っかかるものが1つ2つあればと思って、好きな歌詞の要素を大量に挙げたのですが、そうしたらそのすべてを踏まえた歌詞を書いてくださったんですよ。それと同時に私のメンタリティーやスタンスにすごく馴染む歌詞で、テンション感が自分の素に近いんですよ。少しの時間お話ししただけなのに、私のことを捉えきってくださっていて、見透かされているようでなんか恥ずかしくなりました(笑)。

――その素の自分とリンクする部分を知りたいです。

大渕 1つは結構現実主義なところですね。それこそ歌詞に“夢も見ないし”というフレーズがあるのですが、私は睡眠時の夢も見ないし、あまり夢物語を描くタイプでもないので、ダブルミーニングで私らしさを感じます。それと私はなぜか人から冷めてると思われやすいところがあって、「野心が足りない」と言われたこともあるんですよ。「いやいや!胸の内にはたぎる炎があるかもしれないじゃん!」と思ったんですけど(笑)。そういう人から理解をしてもらいにくい部分が“貴方好みに暮らせないし”という歌詞に当てはまる気がしますし、身に覚えのある言葉ばかりですね。

――sugarbeansさんの編曲によるジャジーなサウンドもかっこいいですよね。

大渕 実はsugarbeansさんも大好きな方で、それこそ“犬コン!”のオーディションで自由曲として歌った吉澤嘉代子さんの「地獄タクシー」はsugarbeansさんが編曲された曲ですし、私が好きな吉澤さんの楽曲は軒並みsugarbeansさんが編曲されたものなんです。小林 私さんとsugarbeansさんのタッグなんて、まるで私の妄想していた二次創作が公式で叶ってしまったような気持ちで(笑)。もしバックのサウンドがウッドベースだったらもっとたおやかで女性的なイメージになっていたと思うのですが、そこをあえて硬めのエレキベースの音にしていることによって、小林さんの性別に捉われず人間の本質的な部分を描くスタイルが音に乗っていると思います。

――ときにドスを効かせたブルージーな歌い口も素晴らしいです。

大渕 ありがとうございます!他の3曲はしっかりとディレクションしていただいたのですが、この楽曲は最初に「まずはご自由にどうぞ」みたいな感じで渡されたので、私が小林さんの楽曲という自分の好きなお部屋で自由に暴れ散らかした感じです(笑)。表現という意味では意識的というよりも、ミュージシャンの方たちの演奏のグルーヴ感に引っ張られて引き出されたところがあって。歌詞も自然体な内容だと思うので、セッション感が出て良かったなと思います。

――そしてシングルの限定盤には、同じく“犬コン!”で特別賞を受賞したイナツさん提供の「終わらないストーリー」を収録。これから始まるストーリーへの希望を感じさせる、ストレートなアップチューンです。

大渕 色んな方の気持ちに寄り添える楽曲だと思います。サウンド的にはパンキッシュな曲調で、爽快感のあるドラムがパーン!と鳴り渡りつつ、ストリングスの繊細で美しい響きが切なさも演出していて、疾走感だけでなく儚さも感じられる楽曲だと思います。歌詞についても、「あれ?イナツさんって私のことを数年前から見てくださっていたんだっけ?」と思うくらい、自分のこれまでの歩みに寄り添った歌詞を書いてくださって。最初に音源を聴いたとき、あまりにも良すぎて涙してしまいました。

――“鳴り止むことないメロディを乗せて 歌っていくから”という歌詞には歌い続ける決意も乗っていて、歌手としての第一歩を踏み出した大渕さんに相応しい楽曲ですよね。

大渕 この曲を聴いたとき、自分がこれまで経験してきた紆余曲折は、人生の先輩方や大人からすれば想像するのはたやすいことなのかもしれないと思ったんです。多分大人の方はみんな、大なり小なり似たような経験をされてきたはずで。それに気付いたときに、救われた気持ちになったんです。次は私がこの楽曲を通して、自分よりも世代が若い人たちの背中を押せるような歌を歌いたい、年齢を問わず色んな人を励ませるようになりたいと思って。今の私ではまだまだ説得力に欠けるかもしれないけど、例えば10年後に歌ったときに「たしかに!」と思ってもらえるようなアーティストになりたいですし、その意味では課題でもあり、自分の背中を押してくれる存在でもあり、現状でのご褒美曲でもある。色んな顔を持った楽曲だと思います。

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