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INTERVIEW

2024.04.27

小倉 唯、こだわりの“作詞術”とは?声優としてのキャリアから放たれる、自身も声優として参加するアニメタイアップOPテーマ「君色のキセキ」に迫る

小倉 唯、こだわりの“作詞術”とは?声優としてのキャリアから放たれる、自身も声優として参加するアニメタイアップOPテーマ「君色のキセキ」に迫る

多彩なカップリング曲と小倉 唯こだわりの作詞術に迫る!

――シングルのカップリング曲についてもお聞かせください。「ココロテレパシー」はハッピーな雰囲気のポップチューン。“一つ屋根の下 君と合わせ鏡”など、こちらもちょっと『ワンルーム、日当たり普通、天使つき。』を彷彿とさせる気がします。

小倉 実は「君色のキセキ」の姉妹みたいな曲になればいいなと思って制作した楽曲です。「君色のキセキ」では恋愛色をあまり出さないようにしたのですが、逆に「ココロテレパシー」は恋心が垣間見える楽曲にしたくて、甘酸っぱい青春感や恋模様を描いてみました。

――小倉さんはこの楽曲の作詞にも、哥丸雄貴さんとの共作名義で関わっていますね。

小倉 カップリング曲の候補がいくつかあったなかで、この楽曲が表題曲と相性が良さそうと思って選んだのですが、(作曲も手がけた)哥丸さんのデモに入っていた仮歌詞がすごく素敵だったので、その雰囲気を広げる形で作らせていただきました。

――温かな雰囲気の歌声が印象的ですが、どんなイメージで歌われましたか?

小倉 楽曲に小春日和みたいな印象があったので、柔らかい春の日差しの中で歌っているようなイメージで歌いました。駆け上がっていくようなメロディーラインが特徴的なので、そこではワクワクしているような、心のウキウキ感も歌声に乗せられるように意識しました。

――もう1曲の「Wild☆Kitty」も小倉さんが作詞で関わっていますが(Maho Hamaguchiとの共作)、こちらはダンサブルかつアッパーな楽曲です。

小倉 前作の「Empty//Princess.」がとても好評だったので、そういう要素を残したいなと思って、「Empty//Princess.」の姉妹みたいなイメージで作っていきました。かつ、これは私の中だけで考えていたことなのですが、せっかく自分がリリーシュカ役でアニメに出演するので、ちょっとリリーシュカみたいなトゲのある楽曲を入れてみたいなと思って。ほかの2曲とはガラッと変わったテイストの小悪魔ダンスナンバーになりました。

――歌詞で描かれている主人公の女の子は、独占欲が強くてかなりあざといですよね。

小倉 はい。あざとかわいいわがまま子猫ちゃん、というイメージです(笑)。「Empty//Princess.」で小悪魔路線をやってみたときにすごくやり甲斐を感じたし、ファンの皆さんからも好評だったので、そっちの路線も極めたいなと思って、結構攻めた内容になりました。レコーディングでも大人っぽいさやわがままな感じが出せればいいなと思って、ちょっと艶感のある声で歌うことを心がけました。

――今回のシングルでは3曲すべての作詞に関わられていて、前作の「Empty//Princess.」も全曲の作詞クレジットにお名前が入っていました。そこで改めて小倉さんの作詞術について聞いてみたいです。

小倉 作詞は単純に楽しくてやっているというのもありますし、自分がアーティストとして発表している楽曲は自分で責任を持って仕上げたい思いもあって、最近は作詞や歌詞の監修をさせていただくことが多くなりました。そのうえで心がけているのは、その1曲の中で何を伝えたいか、その曲のポイントとなるものを最初にきちんと設定して、その軸から外れないようすることを意識しています。

――その軸というのは、例えば「君色のキセキ」の場合はどんなものになるのでしょうか。

小倉 この楽曲で言うと、やっぱり作品の世界観を大切にしました。ワンルームと、そこに付随する日常という部分が描かれている作品なので、そういったところを意識していて。それこそ歌詞を書くときは最初に範囲を決めておかないと、意外とあちこちにいってしまって収拾がつかなくなってしまったり、「結局この曲は何を伝えたいんだろう?」というものになってしまうので、まず「この楽曲で一番見せたい部分はどこなのか」ということを明確にします。

――小倉さんが最初に自分で作詞したのは「かけがえのない瞬間」(2018年)でしたが、それ以降も定期的に作詞を行うなかで自分なりの作詞術が固まってきた感じですか?

小倉 そうですね。でも、そこは日々変化していますし、あとは曲調によって変わるところもあります。それこそ「秘密♡Melody」(2023年)の歌詞を書いたときは、どちらかと言うと語感を大事にしていましたし、逆に今回のシングルは全体的に文面を意識して、言葉だけで見ても良い歌詞だと思ってもらえるものにしたかったので、やり方は楽曲によってまちまちかもしれないです。

――なるほど。自分のなかで作詞のコツを掴めた瞬間、成長を感じる部分はありますか?

小倉 書きたいイメージがあるとしたら、そのイメージに近づくためにはどうしたらいいか、限られた音数の中で言葉をはめていく逆算になるのですが、それを導くのが最初の頃よりも速くなりました。やっていくうちにだんだん知識がついてきて、字余りしたら英語にしてみるとか、いくつかの解決策が自分の中で選択肢として出てくるようになって。歌詞を提出して「ここは少し変えたほうがいいですね」となったときも、同じような言葉でほかにどんな表現があるか、自分の中で瞬時に色んなパターンが思いつくようになったのは、成長を感じるところかもしれないです。

――発想が完全に作詞家ですね。プラスして小倉さんの書く歌詞は表記や字面、要は文字にしたときの見た目にもこだわりを感じることが多いです。

小倉 そこはファッションと同じ感覚かもしれないです。パッと見たときに「こうしたらお洒落だな」とか「このほうがキャッチ―かな」っていう。でもそれは感覚的なものに近くて、意外と深い意味はない場合が多いかも(笑)。

――でも、深い意味はないけど見た目にもこだわりをもって言葉を選ぶというのは、自分自身のセンスの問題でもあるわけで。たしかにそれを言語化して説明するのは難しいかもしれませんが、小倉さんの歌詞の特徴の1つだと思います。

小倉 確かに、そうかもしれないですね。いつも表記は何パターンも書いて、どれがパッと目に入るかを研究したりしています。例えば「君色のキセキ」でも、「君色」をカタカナにして「キセキ」を漢字にしたらどうかな?とか、想定し得るパターンを全部書き出して、どれが一番目に映るかひたすら眺め続けたりするんです(笑)。特に意識してはいなかったですけどね。

――歌詞を書くときに、何かにインスパイアを受けて言葉を紡ぐことはありますか?例えば言葉のストックを溜めるために本をよく読むとか。

小倉 意図的にしていることはなくて、たまに生活の中で面白いアイデアが浮かんだら、それをメモするくらいですね。私は基本、iPhoneのメモ帳で歌詞を書いているので、そこにメモ書きしていって、歌詞を書くときにそのメモ帳を見返したりします。

次ページ:声優の経験と、楽曲を通して表現する“女の子像”との関係性

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