――今後の展開でDが擬態して大戦隊内に潜入することになりますが、ちょっとしたサスペンスであり、それを視聴者が楽しむシチュエーションの音楽はどのように作りましたか?
池 あれは一貫していて、彼らの基地である浮遊城のシーンからすでに前フリをしているんです。そこではただ面白いだけでなく、どこか悲哀を帯びている音楽をつけています。これは同じメロの色々なバージョンがすでにあるものです。ただ、それだけだと足りなかったので、2曲ほど付け足してあのシーンを構成しています。あれは視聴者側が仕掛けをわかっていて、登場人物だけそれに気付いていないという、いわばドリフターズの「志村、後ろ〜!」ですよね(笑)。そういうところも、さとう監督のコメディー作りが生かされています。
――池さんが本作をご覧になって思わず笑ってしまったシーンは?
池 いやぁ、そういうシーンばかりですよ(笑)。それもゲラゲラ笑うというより、じんわりと笑わせるタイプ。これは『TIGER & BUNNY』や『神撃のバハムート』のときからそうで。でも、この作品が一番そういった面白さが発揮されていると思います。
――脚本家の方へのインタビューで、「ストーリーのテンポ感を上げてもらいたい」という要望がさとう監督の方からあったそうですが、音楽の方でテンポ感を作っていく演出はありましたか?
池 ちょっとテクニカルな話ですけど、リズムでシーンを埋めないようにしていました。どちらかというと、間尺が伸びたように見せたかったんです。戦闘員Dの周りは、尺が詰まって見えると、さとう監督のお得意の「え?そうなの?」みたいな面白さが全部落ちてしまうんです。ガチャガチャするのではなく、伸びるように伸びるように音楽を付けていかないとその面白さが音楽を飲んでいってしまう。だから僕も僭越ながら第1話のダビングには参加させていただいて、その辺りの整理を少しさせていただきました。
――劇伴の曲数はどのくらいありますか?
池 最初の2話分はフィルムスコアリングでビッチリ書かせていただいて、そのあとに付け足した楽曲もあって、全部で30曲くらい。標準的な数だと思います。以降の選曲は、さとう監督と担当の方にお任せしています。
――フィルムスコアリングはどんな形で進められましたか?
池 線画+背景がついているくらいの映像をいただいて、それを観ながら書いていきました。そこで構想を練ったり、さとう監督に直接電話をして聞いたりして詰めていったのですが、そのあとで絵が差し替わったりカット尺が変わったりすることもあるので、実際に映像に当てて書くまでには至りません。フィックスしたところから書き上げるまでの時間は過去最短なくらい結構タイトなスケジュールでした。
――レコーディングはどんな様子でしたか?
池 今回はさとう監督と僕の願いが叶って、海外で行なうことができました。本当は現場に赴きたかったのですが、進行がギリギリになったので譜面データを送って遠隔で指示を出しました。ミュージシャンの皆さんも6年くらい付き合いのある信頼のおける方ばかりです。
――ミュージシャンの編成はどのぐらいの規模ですか?
池 普段、日本で録る2倍くらいのサイズです。ハリウッド映画の音楽を録れる規模ですね。一昨年の『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』がそうで、それと同じくらい。この編成も海外でレコーディングをすることになった要因の1つで、端的に言って日本だとこれだけの人を収容できるスタジオがないんですよ。一時期ホールで録ったりとかしましたけど、やっぱり海外じゃないと難しくて。
――広さもそうですし、音の空気感とかも変わってくるんでしょうね。
池 一番は広さですね。響くスタジオで録り慣れているレコーディングスタッフがそこにいるので、マイクの立て方一つで違ってきます。この規模で十分ではあるけれども、僕としてはまだ足りない。でも次のレベルにするにはこの2倍くらいの値段になってしまうんです(笑)。いつか、さとう監督と行ってみたいものですね。
――音楽に着目してご覧になる方へ、本作の見どころを教えていただけますか?
池 今回、作品に没入してご覧いただけるように作っているので、そこにはかなり自信があります。作品をしっかりと理解して、僕自身が入っていって、ちょっとした感情の動きに音がついていって、観ている方の気持ちを押していく。僕自身、日々少しずつ成長しているので、その辺りをぜひご覧いただければと思います。あとは、さとう監督のじんわりくるコメディー感の「わかるで〜」って感じを皆さんに観ていただきたいですね。それに何の疑問もなくついてく私(笑)。さとうけいいち監督の本気ぶりをぜひお楽しみください。
●作品情報
TVアニメ『戦隊大失格』
TBS系全国28局ネットにて4月7日から
毎週日曜午後4時30分からスタート
TVアニメ『戦隊大失格』公式サイト
https://anime-sentai-daishikkaku.com
池 頼広 公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/IkeYoshihiro
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