INTERVIEW
2023.12.12
――歌詞を書く際にはどんなことを意識されましたか?
寺島 曲を聴いた印象や『コリウスの夢』の物語のキーポイントはどこかな、ということをプロットの段階で読ませていただいて、「どういう歌詞がいいだろうか」と模索していきました。
――これまでにも第1期最初のオープニングである「Nameless Story」からたくさんの楽曲でタッグを組んでこられています。物語も進んできたなかで少し時間軸として過去に戻るお話ではありますが、どういった視点で歌詞を描いていかれたのでしょうか。
寺島 僕のお芝居の感覚とも似ているのですが、どちらかというとそこに存在しているものに合わせていくタイプなので、楽曲の音が変われば自然と歌詞の方向も変化していくんです。それを「メグルモノ」(TVアニメ『転生したらスライムだった件』オープニング主題歌 第二弾)を作っているときにすごく感じていました。「Nameless Story」からだいぶサウンドが変わって、楽曲の持つ気配に寄せていこうと思うと、自然と言葉も傾向が変わっていくものだなと思っていたので、まずは雰囲気に寄って言葉選びをしていきました。不思議なことに共通項が出てくるものなんですよね。それって『転スラ』だからなのか、僕の中にあるものなのかはまだ精査できていないですが、おかげで自然と「寺島拓篤が作る『転スラ』の曲」という一本の軸になっている気がします。結局「ヒカリハナツ」は一周巡って「Nameless Story」の続編のような、後継のような形になったなと僕的には思うんですね。当然、歌詞を見たときに、文字面からは全然違うものという感覚を持てると思うのですが、メッセージや根幹にあるテーマはだいぶ「Nameless Story」に近い感じになりました。「Nameless Story」もある種の“やり直しの物語”。転生したことで、そこから次の一歩を踏み出す、という新しい一歩への背中を押す楽曲ですけれども、「ヒカリハナツ」もそうで。『コリウスの夢』がまさにそういったストーリーでもあるので、それを表現できたらいいなと思って書いていきました。
――『コリウスの夢』の物語自体にはどのような印象がありましたか?
寺島 まさに“番外編”!僕らが子供のころから見てきた色んな作品のスピンオフ作品ですよね。「この事件の頃、その一方で実はこんなことが起きていました」という物語を、第3話完結という美しい形で表現されているなと思いました。視覚的にも異国の風景が広がることでスピンオフ感も出ていますし、よく出来ているなと思いました。
――そんな物語の印象、そして楽曲の印象から生まれた「ヒカリハナツ」ですが、歌詞の視点としてはどういうところに定めて作詞をされたのでしょうか。
寺島 第三者的な視点というか、僕の視点ですね。もちろん今回のキーマンになるであろうコリウス王国の人たち……ゼノビアとサウザーとアスランのみんなが微妙にすれ違ったままいざこざしていますが、心の中にある美しいものや彼らの抱えている輝きが大事で。それが良い未来に進むためへの一番の光になるということを軸に描いていこうと思いました。あとは、もう1人のキーマンであるルミナスの名前といったキーワードをどう織り交ぜようかなと考えていきました。“Luminous”は元々ある英語で、光り輝くということに繋がりますし、“強さ”という意味ではルミナス自身を見れば、その通りですから。そこ上手くリンクしたなと思います。
――寺島さんが描く89秒で聴かせる世界観と、その先のストーリー。普段からどのように意識されていますか?
寺島 これは本当に難しいですよね。テレビサイズは大体1番か最後のサビを使用するんですが、僕はその間のミッシングリンク的なところでどんな物語を描くかをすごく考えます。僕的には1番や最後のサビは、どちらかというとウェイトとしてライトめにしていて、2番のサビがコアなことを表現していたりするんです。毎回流れるものにわかりにくい表現を入れるのもよくないだろうと思ってしまっていて、1番は割とわかりやすく作っているところがあります。『転スラ』のようなタイアップ作品の楽曲については、2番まで聴いて初めて全体がわかるような作りにしているので、映像と一緒にテレビサイズを聴いている方も、フルサイズで聴いてもらって、歌詞からキーワードを探してみてもらえたら嬉しいですね。今回も2番のBメロはまさに物語の核心に繋がっていて、ゼノビアの目が見えないところとリンクしています。彼女の「ネガウモノ」という能力でオーラのような、見えないものだけれど見えていることを、ルミナスの光と併せて表現したいと思ったんですよ。ぜひ、そういう紐解きもやってみてほしいですね。
――その1曲を、歌ではどのように表現しようと思われたのでしょうか。歌声が、10周年を越えたとは思えないほど瑞々しい印象でして……。
寺島 僕も思いました(笑)。「若いな」って。歌っていくなかで、自分なりに発声というほどのどっしりしたものではないにしろ、発音に近い感覚で、この音階でこの音のときに口をこれくらい開いていたほうがいいよなとか、音をこっちに抜いたほうがいいなといった細かい作業について、この10年間で自分の歌に対する好みも生まれてきたんです。それが今回のレコーディングでははまったなと思いましたし、それもあって今回の歌はすごく気に入っています。
――特に「ここの歌い方にはこだわったな」というのはどんなところですか?
寺島 サビです。細かくいえばたくさんありますが、Aメロの落とし具合もそうですし、それが重くならないようなブレスの混ぜ方も含めて、キーをあまり下に持っていかないように意識して歌いましたし。あと、サビの抜け感と滑舌もこだわりましたね。声優という職業が良い作用をしていると思います。一文字一文字、どの音のときにどの跳ね方をさせるか、一文字をどの尺にするか、そうするとどう伝わるか、と歌いながら考えることがすごく楽しかったです。
――寺島さんといえば、1年間の音楽活動は年末の“おれパラ”のために、と言っても過言ではないアーティストです。この1曲を持って、まもなく今年の“おれパラ”がやってきますね。
寺島 そうなんですよ。でも、その手前に色々なことがありすぎて……!だから自分の中で本番感覚が途切れないでいるんです。逆に言えばずっとスイッチが入っているから、いつオフになっているかもわからない。“おれパラ”も色々なものが重なっているところで、みんなで作っています。
――「ヒカリハナツ」はライブでどう表現したいですか?
寺島 もう、それを悩み続けています!少し前に、ふと「ヒカリハナツ」はライブでどうやればいいんだろう」って思ったときがあったんです。マイクスタンドとかもいいよな、と思ったのですが、僕のマイクスタンドはアクリルの筒で中が光るようになっているので、振り回せないんですよね(笑)。普段とは違うパフォーマンスにも出来るのかな、とは思ってもいますが、どうしていこうか思案中です。今回のセットリストの中でどういう展開にできるかな、ということを考えているので、全貌が見えるのはもう少し会議を重ねてからになりそうです。
――“おれパラ”でも肩の力は抜けるようになりましたか?
寺島 なりました!2年くらい前から、だいぶ楽になりましたね。やっぱり先輩方のファンの皆さんも来てくださるなかで、「めっちゃ頑張らないと」という身構えがあったのですが、「もう大丈夫かな」と開き直りに近い感覚があって。もちろん先輩方との会話もそうですが、だいぶホーム感がありますし、なんだったら「ホーム感」という表現がおかしいかも?と思うくらいホームになっていますね。早く小野さんとふざけたいなとか、森久保さんや鈴さんとしゃべりたいなとか、皆さんの歌を聴きたいなとか。楽しみな気持ちのほうが強いですね。
――年末に期待ですね。
寺島 楽しみですよね。早くそれを100%「楽しみ」にしたいです。今はまだ準備にも取り掛かれていないですから。
――2023年の“おれパラ”の話をしている段階で、もうまもなく1年も終わるタイミングとなってしまいます。どんな時間でしたか?
寺島 早かった……。2023年が終わるなんて信じられない。それくらい充実していたんだと思うのですが、どんなことがあったのかをあまり思い出せないくらいバタバタしすぎていて。2、3年分くらいのことがごっちゃになるくらい、色濃い1年でしたね。頭の中が整理できないままに走り抜けてきています。今年は“ナガノアニエラフェスタ”もあって、そこで声出しのライブを堪能できたんです。しかも思いも寄らないような共演もさせていただけましたし、すごく楽しい時間を過ごさせていただいて「やっぱりライブっていいなぁ」と思ったんです。今年の思い出としては、そのことがすごく印象に残っています。“おれパラ”も久々の声出しライブ。それを想像もしていますが、2024年も皆さんと「楽しい」を共有できるような時間にしたいなぁ、と思っています。
――では最後に「ヒカリハナツ」をどんなふうに皆さんに楽しんでもらいたいか、お聞かせください。
寺島 疲れたときに聴いてほしいです。無理やりじゃなく、自然と元気が出てくる曲だなと僕は思っていて。疲れていると色んなものがささくれ立って、自分の心にも陰りが出てくると思いますが、その影を落としているのは他所のものなので、自分の中の光を信じて軽やかに日々を楽しんでもらいたい。そんなちょっとした光の点を与えるような楽曲になればいいなと思っています。
●配信情報
完全新作アニメーション『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』オープニング主題歌
寺島拓篤
「ヒカリハナツ」
配信中
作詞:寺島拓篤
作曲・編曲:酒井拓也(Arte Refact)
配信リンクはこちら
https://lnk.to/LZC-2558
●作品情報
完全新作アニメーション『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』
<INTRODUCTION>
「大怪盗、〝サトル〟参上!!」完全新作アニメーション全3話!
WEB小説の連載開始から10年という節目を迎えた「転スラ」を祝し、2023年2月20日より『転スラ10thプロジェクト』が始動。プロジェクト企画第2弾として、原作・伏瀬書き下ろし小説「コリウスの夢」(「転生したらスライムだった件第2期」Blu-rayの特典ブックレットに収録)が全3話の完全新作アニメーションとして2023年秋に展開決定!
TVアニメ第1期と第2期の間に位置する冒険譚が、砂漠に灼熱の太陽が降り注ぐ「コリウス王国」で繰り広げられる。
リムルと仲間たちのスパイ作戦が始まる!!
<STORY>
イングラシア王国で子供たちを救い、教師としての残り少ない日々を過ごすリムル。そんなある日、自由組合のグランドマスター、ユウキからある依頼を聞かされる。その内容は、イングラシア王国と神聖法皇国ルベリオスに挟まれた「コリウス王国」で起こっている王位継承争いの内情を探って欲しいというものだった。リムルは〝サトル〟という名でコリウス王国に潜入捜査を開始。
だが、事態は一国の王位継承争いに留まらず、悪魔や吸血鬼の思惑も絡み合い、混迷を極めていくーー!
【STAFF】
監督:中山敦史
原作:川上泰樹・伏瀬・みっつばー『転生したらスライムだった件』(講談社「月刊少年シリウス」連載)
シリーズ構成:根元歳三
キャラクターデザイン:江畑諒真
モンスターデザイン:岸田隆宏
コンセプトアート:富安健一郎(INEI)
美術:スタジオなや
美術監督:佐藤歩
美術設定:藤瀬智康・佐藤正浩
色彩設計:斉藤麻記
撮影監督:佐藤洋
グラフィックデザイナー:生原雄次
編集:神宮司由美
音響監督:明田川仁
音楽:藤間仁(Elements Garden)
アニメーション制作:エイトビット
寺島拓篤
Lantis web site
https://www.lantis.jp/artist/terashimatakuma/
公式X
https://twitter.com/Terashima_dayo
「転生したらスライムだった件」ポータルサイト
https://www.ten-sura.com
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