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INTERVIEW

2023.11.17

somei、アニメ『僕らの雨いろプロトコル』EDテーマ「Another Complex」で2作連続アニメタイアップ!作品に寄り添い「心の内側を描きたい」という想いを元に書き上げた本作に迫る

somei、アニメ『僕らの雨いろプロトコル』EDテーマ「Another Complex」で2作連続アニメタイアップ!作品に寄り添い「心の内側を描きたい」という想いを元に書き上げた本作に迫る

今年の夏、TVアニメ『デキる猫は今日も憂鬱』のOPテーマ「憂う門には福来たる」でデビューを果たしたシンガーソングライター・somei。早くもリリースされる2ndシングル「Another Complex」は、TVアニメ『僕らの雨いろプロトコル』のEDテーマ。2作連続アニメタイアップとなる。

“様々な姿を持ち、移りゆく季節に寄り添うソメイヨシノのように、たくさんの表情を持ち多くの人の瞬間に寄り添えるアーティストになれるように。”という願いが込められたその名前の由来通り、新曲で新たな表情を覗かせた。eスポーツを舞台に動き始める少年少女の青春群像劇に、瑞々しい感性で寄り添う。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

「アニソンらしい曲になったと感じています」

──デビュー作に続いて連続のタイアップとなります。『僕らの雨いろプロトコル』のEDテーマが決まったときはどのようなお気持ちでしたか?

somei 次のシングルも「良い曲を書くぞ」と気を引き締めて臨んだのですが、前回のタイアップと同様に当初は「決まりました!」とは聞いていなかったんです(笑)。カップリングを決めましょうという段階になって、改めて背筋が伸びました。自分自身ゲームも好きですし、青春っぽさのある作品に携われることができるのが嬉しいなと。

──どんなゲームがお好きなんですか?

somei 「スプラトゥーン」などのFPS系のゲームが好きなんです。オープンワールドのゲームにも興味があるので、これからやってみたいなと思っています。特に「Stray」という猫ちゃんを操作するゲームが気になっていて、サイバーパンクの世界観を体験してみたいなって。

──「サイバーパンク」が前作に収録されていましたし、someiさんは猫もお好きですものね。そして今回は青春群像劇とあって、前作とは違ったサウンドメイキングに。

somei 「憂う門には福来たる」は元気な感じでしたが、「Another Complex」では心の内側の気持ちを描きたいなと思っていました。この曲を歌うこと自体、自分にとって挑戦だったような気がします。スピード感もあるし、息継ぎ的なところも難しくて。歌っているときもずっと全力疾走!アニソンらしさもある曲だなと感じています。でもこういう曲を歌いこなしたいという気持ちもありました。あと、SNSを見ると1stのときとは違った印象を皆さんが受け取ってくださっているようで嬉しいです。お話に寄り添って今回も曲を作っているので、物語が進んでいくに連れて伏線回収していくような感じになっていくと思うんです。だから今後、聴いてくださる方の反応も変わってくるのかなと思っています。そこは楽しみであり、ドキドキしているところですね。

──今おっしゃっていた「心の内側を描きたい」という想いはsomeiさんのモードでもあったのでしょうか。それとも制作サイドからのリクエストだったのでしょうか?

somei 『僕らの雨いろプロトコル』のお話を聞いたときに、自分の中で「燃えるような感情を描きたい」という想いが生まれて。それと、「青春感が欲しい」というリクエストをいただいていたんです。思春期特有の、気持ちがざわめいている感じを出せたらなと思い、今回は心の内側を描きたいなと思いました。

──青春の葛藤も描かれていますよね。でも“もう止まらない この感情が 嬉しい 寂しい 全てを叫ぶ”というフレーズが真っ直ぐでとても印象的だなって。

somei ありがとうございます。最初は「感情が止まらない」というイメージから作り始めていったんです。『僕らの雨いろプロトコル』の脚本を読ませていただいたときに、登場人物一人ひとりの感情が抑圧されている印象があって。それを曲にして表すとしたら、どういう言葉がふさわしいのかなと。

──特に主人公の瞬は、家族のことで色々な葛藤を抱えていて。

somei お互いに言語化できない想いがあって、そのうえでぶつかってしまう。登場人物たちに寄り添うとしたら「どんな言葉が良いんだろう?」「感情が止まらない理由はどこにあるんだろう?」と考えながら、歌詞を書いていきました。でも、歌詞に関しては結構苦戦したんです。

──そうだったんですね。どんなところで苦戦されたんでしょうか?

somei 言葉選びにかなり悩みました。ボーカルのレコーディングに入ったときにも「なんか違うな」「こっちに届いてこないな」としっくりこないところがあったんです。そこから、レコーディングの途中で「歌詞を変えよう」という話になって。それがBメロの部分です。それと、サビの真ん中あたりのところを書き直すことになりまして、急遽レコーディングの日を分けたんです。

──そのあたりは力強い言葉が特に多いですよね。

somei ぼんやりした言葉だと伝わらない印象があって、力強い言葉を探していました。自分が納得できる言葉が見つかるまで、ずっと頭を抱えていましたね。こんなことを言っていいかわからないのですが、レコーディングの時点では「歌いきれているのかな、大丈夫かな?」と心配でした(苦笑)。人の耳に届くまでは、これが正解なのかわからなくて。配信が始まって皆さんの意見がもらえるようになってからは、少し自信を持てるようになりました。

青春に年齢は関係ない 感情が揺れ動く瞬間を過ごすことが青春

──お話を伺いながら、曲づくりに真摯に向き合われていたことを感じます。歌詞の中に“後悔だけはしないように”という言葉がありますが、someiさんも後悔をしないように曲に挑まれていたんですね。

somei そうですね。自分の中で“後悔はしないように生きたい”という想いがあるんです。やらないで後悔をしたくないと言いますか。時間は有限だとは思っているんですが、できるかぎりは力を振り絞りたいなと。

──それはeスポーツの世界にも通じるものがあるのかもしれませんね。お話を伺いながらアニメの登場人物たちの挑戦とsomeiさんの挑戦は、重なるところがあったのかなと思いました。

somei 確かに!曲作りの中で自分も一緒に青春したような気がします(笑)。

──someiさんの中で「青春」ってどのようなイメージがありますか?

somei 世間一般には「学生時代」というイメージがあるかもしれないんですけど、あまり年齢は関係ないと思っているんです。私は今、大人の青春を楽しんでいるところで。色々と悩み抜いて、走って。何かに一生懸命になったり、誰かのことを大切に思ったり……感情が揺れ動く瞬間を過ごすことが青春なんじゃないかなと思っています。

──感情が揺れ動く瞬間を瑞々しい感性で切り取った「Another Complex」。タイトルはどのような想いからつけられたのでしょうか?

somei このタイトルに辿り着くまでも時間を要していたんです。「この感情が入り混じった様をどう表現すればいいんだろう?」「この曲の中にあるものを象徴する言葉ってなんだろう?」とずっと悩んでいて。英語から日本語まで色々と探していました。そのなかで、「コンプレックス」という言葉を調べていたところ、感情の様だったり「抑圧されながら無意識のうちに存在し、現実の行動に影響力をもつ」などの言葉の意味があることを知ったんです。ほかにも「複雑な」「込み入った」などの意味もあるそうです。「あ、こういうことなんじゃないか!」「見つけた!」って自分の中で腑に落ちるところがありました。

──そこに「Another」をつけた理由は?

somei 「そしてこのひとも……」という意味をつけたくて。自分だけじゃないよってことが伝えられたらと思っていました。

──すごく良いタイトルですね。コンプレックスって少しマイナスなイメージを持たれている方も多いんです。

somei そうなんですよね。言葉の意味を調べて私自身もハッとしました。「本来どんな意味を持っているんだろう?」と、単語一つひとつを調べていったことで、言葉の意味を考えるきっかけにもなりました。

──この曲は古川貴浩さんが編曲を手がけられていますが、アレンジを聴かれたときはどのような印象がありましたか?

somei (アニメの)コンペにこの曲を出すとなったときにアレンジをいただいたんですけど、最初の一音からすごく好きで。ふいに降ってきた雨がポツンとあたるような印象を受けました。アニメのタイトルにも合っているなと思っていますし、雨が降ってきたことをきっかけに空を見上げるというイメージがすごく素敵だなと。

──エンディングの映像には、桜の花が登場します。someiさん仕様なのかな、なんてニヤニヤしてしまったのですが……。

somei そうなんです!美桜ちゃんの名前から「桜」にしたのかなとも思うのですが、桜に敏感になってしまっているので、つい嬉しくなってしまいました(笑)。それと、桜が咲いているということは、アニメの時系列よりも未来の場面だと思うんです。美桜ちゃんが幸せにみんなと過ごしているのを見て「良かったな」って。こんな幸せな未来が待っているんだと思うと、勝手に安心しました(笑)。

──美桜ちゃんのお話がありましたが、本作の中で共感するキャラクターはいますか?それぞれ個性豊かですけれども。

somei そう、キャラが濃いんですよね!のぞねぇ(稲月 望)はしっかりしているから私ではないし、悠宇ちゃんほどバッサリしているわけでもないし、美桜ちゃんほどピュアなかわいらしさはないし……じゃあ誰なんだろう(笑)?あ、でも瞬に共感するところはあります。瞬って「やりたいことをやれない」状態じゃないですか。立場は全然違うんですけどわかるなって。

──例えばどんなところが?

somei 私は普段絵を描くことが好きなんですけど「曲を書かなきゃいけないから、絵を描くよりも音楽を優先しなきゃいけない」って思っていた時期があったんです。「それをする時間があったら音楽に集中しなきゃいけない」って勝手に思ってしまっていて……。

──客観的に見ると「やればいいのに」と思ってしまうけれど、本人としては一線引くことでけじめをつけているんですよね。

somei そうなんです。自分の中で制限を設けてしまって、勝手に苦しくなる。その気持ちはわかるなぁって思います。最近は結構描いているんですけどね。煮詰まったときに絵を描くとスッキリするところがあるんです。

──今回の取材はリモートインタビューでsomeiさんのお部屋からお話していただいていますが、someiさんの後ろには幼少期に描かれた絵がありますね。小さい頃からものづくりが好きだったんだなと改めて思いました。

somei 時間を忘れて取り組んでしまうタイプなんです。ものづくりが好きなのは父の影響もあるかもしれません。工作などのものづくりも好きで。レジンを使ってものづくりをすることもあります。

──レジン、良いですよね!

somei すごく綺麗なんですよね。いただいたお花をレジンに閉じ込めて、アルバムのようにしています。自分にしかわからないんですけど「これはあのときのお花だな」って思い出しています。

次ページ:三者三様の物語が詰め込まれたシングルに

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