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INTERVIEW

2023.11.14

富田美憂がアーティストデビュー5周年イヤーに届ける“優しい強さ”を湛えた歌――配信シングル「Silent Beat」に込められた成長の軌跡に迫る!

富田美憂がアーティストデビュー5周年イヤーに届ける“優しい強さ”を湛えた歌――配信シングル「Silent Beat」に込められた成長の軌跡に迫る!

20歳のバースデー当日となる2019年11月15日にソロアーティスト活動を開始した富田美憂が、アーティストデビュー5周年イヤーに突入する今年11月15日に、それを記念したデジタルシングル「Silent Beat」をリリースする。声優として多数の作品に出演して活躍する一方で、アーティストとしても多彩な楽曲を発表し、表現者として、1人の人間として、成長し続けてきた彼女の等身大の姿が刻まれたのが、今までにない“優しい強さ”を湛えた今回の新曲と言えるだろう。24歳を迎える彼女がこれまでの活動で得たもの、それを経て今届けたい歌、様々な喜びが待ち構えているであろうアーティストデビュー5周年イヤーの活動について語る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

アーティスト活動と声優の仕事のなかで見つけた、心に余裕を持つ大切さ

――もうすぐアーティスト活動5周年イヤーを迎えるわけですが、これまでの活動を振り返ってどんな思いがありますか?

富田美憂 この4年間は本当にあっという間で、自分の感覚的には一昨年くらいにデビューしたくらいの気持ちです(笑)。でも、その間に色んな楽曲を歌わせていただきましたし、アーティスト活動を通じて“アニサマ”をはじめ大きな舞台にもたくさん立たせていただくことができて、すごく濃い経験のできた4年間だったからこそ、駆け抜けるようにあっという間だったのかなと思います。

――それだけ充実していたわけですね。アーティスト活動に対する向き合い方に関しては、デビュー当初と比べて変化はありましたか?

富田 根本は変わっていないと思います。それがブレなかったのは、ファンの皆さんやいつも支えてくださるスタッフさんのおかげだと思っていて。自分の中では、軽い挫折を味わうようなこともたくさんあって、正直苦しかった時期もありました。例えば去年の今ぐらいの時期に喉を壊してしまって、1週間声を出さずに治療していた時期があったんです。そのときは声が出せなくて、「もう歌えなくなったらどうしよう……!」って真剣に考えてしまって。でも、現場に戻ると周りのスタッフの皆さんが心配の声をかけてくださったり、舞台に立ったらどんな自分でも受け入れてくれるファンの皆さんの温かさを感じることができたんですね。皆さんが私に「ここで辞めてはいけない!」「強くあれ、自分!」と思わせてくれたからこそ、今ここにいられていることをひしひしと感じています。

――富田さんは2019年11月にアーティストデビューしましたが、その直後に世の中がコロナ禍に見舞われたので、その意味で歯痒い思いをした瞬間もあったのではないでしょうか。

富田 やっぱりライブで声出しできないというのは大きかったです。最初はお客さんの声の反応がないなかでのMCが難しくて、思うようにできないなと感じていたのですが、でも、ステージの経験を重ねるうちに、お客さんも声を出せないなりに身振り手振りで気持ちを伝えようとしてくださっているのがわかってきたので、1stワンマンライブ(2021年9月開催の“富田美憂 1st LIVE ~Prologue~”)の頃には、しゃべらずともお客さんと意思疎通できていることを感じていて。なのでそれほどしんどさを感じることはなかったです。

――それを経ての今年2月に開催された“富田美憂 2nd LIVE 〜Fizzy Night〜”ではお客さんの声出しも解禁されて。

富田 すごく嬉しかったですし、私もお客さんも「これ言いたかったんだよ!」みたいなことがすごくたくさんあったと思うので、MCも無駄に関係ないことをしゃべりすぎてしまって(笑)。他にも「Some day, Summer day」は皆さんとのコール&レスポンスありきで作った楽曲だったので、やっと本来の形を皆さんと一緒に作ることができました。

――歌唱や表現の面において、この4年間の活動で成長や変化を感じることはありますか?

富田 表現のレパートリーはすごく広がったと思います。今回の新曲「Silent Beat」は全体的に優しい感じで歌っているのですが、多分、デビュー当時の私だったらパワーで押し切っていたと思うんです。昔の私は1か100しか知らなかったので(笑)。それこそ1stアルバム(『Prologue』)で色んなタイプの楽曲にチャレンジしたり、色んな作品のタイアップ曲を歌わせていただいたからこそ、そういう塩梅の調整もできるようになったと思いますし、この4年間の経験があったからこそ、今回の楽曲を歌えたのかなと思います。

――ちなみに、今の富田さんの中で、アーティスト活動に対する思いというのはどれくらい大きいのでしょうか。

富田 私はアーティスト活動と声優の仕事のどちらも本気で頑張りたい気持ちがずっとあるので、その2つは私の人生そのものです。だから常にその2つのことを考えながら生きています。例えば、街を歩いていてふと耳に入ってきた音楽からやってみたいことのヒントを見つけたりとか、日常生活での経験をアーティスト活動に盛り込んでいくのが楽しくて。なのでアーティスト活動をやることで自分の生活がより豊かになったと思いますし、自分にとっては大きなことだと思います。

――話を逸らしてすみませんが、富田さんは性格的に人生を楽しめるタイプの人ですか?

富田 ……やっと楽しめるようになってきました(笑)。ここ数年で心に余裕が持てるようになったんです。それこそ10代の頃、アーティストデビューしたてのときは「頑張らないと!」という気持ちが強かったですし、(声優業の)オーディションも「受からなくては……!」っていう感じでずっと生き急いでいて。でも、そう思っているときほど上手くいかないんですよ。多分、焦りが乗ってしまうのか、空回ってしまうことのほうが多くて。

――そこから、心に余裕が持てるようになったのには、何か転機があったのでしょうか。

富田 私の母が、「先のことを考えすぎるよりも、今いただいているお仕事を1つ1つ丁寧にやっていけば、おのずと仕事が増えるようになると思うよ」と言ってくれて、そこに重きを置いて仕事をするようにしたら、本当にその通りになっていったんですよ。1つ1つの仕事で100点を出せば、その現場の人たちは私のことを評価してくださって、また別の機会でも呼んでいただけるようになる……ということに声優活動9年目にしてやっと気づくことができて(笑)。

――お母さまの助言が素晴らしいですね。

富田 声優の仕事をしていると、嫉妬心や焦り、色んな負の感情を感じることもあるんですけど、オーディションは誰かが受かって誰かが落ちるのは当たり前だし、年間何十本と受けて全部合格している人なんていないので、誰もが落ちる回数のほうが多いはずなんですよ。なので落ちてもそれはしょうがないことだと思うようにしたら、私自身も嫉妬やふがいなさといった自分の弱い気持ちを自分で受け止められるようになって。そこから心に余裕が生まれるようになったんです。そういう余裕があれば人にも優しくできるし、仕事も丁寧にできるので、いいことしか生まないなと思って。そういう意味で自分が大人になれている気がしています。

――きっと周りの先輩方の仕事ぶりから学ぶことも多かったのではないでしょうか。

富田 それはすごく感じます。漠然と「大人ってなんだろう?」と考えたときに、私は自分自身の自己分析ができて、心に余裕もあって周りに優しくできる人が大人だと思うんです。ありがたいことに、私の周りにはそういう先輩方がすごく多くて。ただ、昔の私は先輩から学ぶことだけがすべてだと思っていたんですけど、自分の心にも余裕ができたことで、年下や後輩の人から学べることもたくさんあることに気づいたんです。以前は自分だけのことでいっぱいになっていたんですけど、今は視野が広がったように感じていて。本当にいいこと尽くめなので、この心の余裕をずっと保ち続けられるように、自分への戒めとしてインタビューでお話して残しておきます(笑)。

新曲「Silent Beat」に込められた、自身の“弱さ”も受け止められる“強さ”

――新曲「Silent Beat」はデビュー5周年イヤーに向けた最初の楽曲になりますが、富田さんとしてはこのタイミングでファンの皆さんにどんな楽曲を届けたかったのでしょうか。

富田 最初にこの楽曲のメロディを聴いたときに「Present Moment」(2019年11月にリリースされた1stシングル)っぽさを少し感じたんですよ。私の中でデビュー5年目というのは、小学校から中学校に進学するじゃないですけど、新しいところに行くという意識が強くて。そのなかで、私のことを応援してくださっている方がこの楽曲を聴いて、今までの私との思い出を振り返ってもらえるような楽曲にしたいなと思ったのが、まず1つありまして。

――なるほど。

富田 もう1つは、この楽曲で自分自身の成長を見せたい気持ちがあったので、歌もあえて優しく包み込むようなイメージで、温かく歌わせていただきました。「Silent Beat」は自分の弱いところや欠点を受け入れて、その弱い部分も富田美憂の一部だから、それを認めたうえでさらに強くなっていく、という楽曲でもあるんです。そういう余裕感や包容力は、さっきお話したような今までの経験があったからこそ出せるものだと思うんですね。なので自分自身の背中を押すような楽曲でもあり、皆さんが新しいことに挑戦するときに、「自分自身の弱いところを受け止めて頑張ろう!」と思ってもらえるような楽曲になれば、という思いで制作しました。

――富田さんはデビュー当初から、“強さ”をテーマの1つとして掲げていましたが、今回の新曲も今お話いただいたような“優しさ”を感じさせつつ、ちゃんと“強さ”も込められているように感じました。

富田 そこは私もすごく意識して歌いました。やっぱりファンの方から見た富田美憂のイメージは、“強さ”が一番に来るのかなと自分的にも感じているので、その意味では富田美憂らしさをちゃんと残して原点回帰的な部分も表現しつつ、でも、今まで色んな歌をうたってきた経験があったからこそできる歌い方にしたくて。今回の楽曲を作ってくださったAiraさんは初めましての作家さんですし、ジャケット写真やビジュアル面も新しいチームにお願いさせていただいたので、新しいことをたくさん盛り込んだ楽曲でもあるのですが、真ん中には富田美憂があることを感じていただけると思います。

――その“強さ”のベクトルが今までとは少し違っていて、しなやかな“強さ”、より大人な“強さ”になったように感じたんですよね。

富田 ありがとうございます!今までは結構パワー重視で歌ってきましたけど、今回はタイトルにも“Silent”と入っているので、情熱を表に出しすぎるというよりも、歌の感じは柔らかいけど心の中に熱いものを持っていることを、歌の端々から感じていただけるように表現しました。

――ちなみに自分の中での“強さ”の定義が、デビュー当初と比べて変化した部分はありますか?

富田 デビュー時はまだ10代だったこともあって、「強くあらねば!」とすごく思っていたんです。それはわかりやすく言うと「なめられてはいけない!」みたいな気持ちだったんですけど(笑)。でも、今感じる“強さ”というのは、それこそ「人に優しくできる」といったことで。きっと“優しさ”と“強さ”は紐づいているんじゃないかなって思います。

――今回の楽曲は作曲・編曲だけでなく作詞もAiraさんが手がけていますね。

富田 Airaさんには私の今までの楽曲の世界観を踏襲したうえで、今までの経験を経た富田美憂の歌詞にしてもらえるようにお願いしました。個人的にはサビの“翼羽ばたかせる”というワードは、今までの私の活動を盛り込んでくださったのかなと思って、嬉しい気持ちになりました。

――このフレーズは2ndシングルの「翼と告白」がパッと浮かびますものね。

富田 ですよね!全体の印象としても“尖った強さ”というよりも、さっきお話したような“優しい気持ちからくる強さ”を感じて。私は特にDメロから落ちサビにかけての歌詞がすごく好きなんです。“もう前に進む時間だよ”のところは、客観的な自分が私に語りかけてくるような、ちょっと抽象的なイメージで歌わせていただきました。

――先ほど楽曲コンセプトの1つとして挙げていた、ファンの方が富田さんとの思い出を振り返りながら楽しめるような内容にもなっていますし、きっと富田さん自身の思い出とも紐づく部分も多いのではないでしょうか。

富田 1番のAメロの歌詞は、自分の初ソロライブのことを思い出したりもしました。アーティスト・富田美憂として初めてステージに立ったのは、「Present Moment」のリリースイベントを行ったヴィーナスフォートのステージだったのですが、あの会場は控室からステージに行くまでの道が長くて、かなり歩くんですよ。しかもそのときが1人で歌う初めての経験だったので、マネージャーさんやメイクさんに「大丈夫だよ!」「あなたならいける!」って励まされながら、すごく不安な気持ちでステージに向かったことをよく覚えていて(苦笑)。でも、ステージに立って皆さんの顔を見たら、「楽しい!」という気持ちしかなくなったんですね。そういうことを思い出しながら歌いました。

――そのワクワク感が強い1番の歌詞に対して、2番の歌詞は少し不安な部分も滲み出ているようにも感じました。そこは先ほどお話いただいた、この4年間の活動で不安を覚えた時期のこととも重なったのでは?

富田 重なりました。歌っているときも「あのオーディション、絶対に受かりたかったんだけど、落ちたんだよなあ」っていうことを思い返しながらレコーディングさせていただいて。でも、最近はオーディションでも毎回「この子を演じるためにこの間のオーディションは落ちたんだ」と思えるようになってきたので、それも自分の強くなってきた部分だと思うんですよ。そういう経験があったからこそ生まれた自分の強さも乗せられているように思います。

――他にレコーディングでこだわったポイントはありますか?

富田 ディレクターさんが何回もこだわって録ってくださった箇所があって。それがDメロにある“魔法なんて信じなくてもいいの”という歌詞の“いいの”の部分で。テストのときはもう少し毅然とした感じで歌ったのですが、ディレクターさんが「ここでちょっと儚さを出してほしい」と言ってくださって。多分、ここは一番録り直しました。

――そういった“儚さ”をここで表現することによって、富田さんのどんな一面を引き出そうと思われたんでしょうかね。

富田 私は仕事仲間から「強そう」とか「緊張しなさそう」と言われることが多いんですけど、そんなことはないぞ、と(笑)。人並みに傷つくし、緊張もするし、落ち込みもするし、泣いたりもするんですね。私のアーティストイメージも“強さ”という印象が強いですけど、今回はビジュアル面を含めて“儚さ”も出したかったので、この部分でそれを表現することができました。

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