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INTERVIEW

2023.10.31

芹澤 優が語る、『わた推し』とキャラソンへの深い愛情とこだわり――『私の推しは悪役令嬢。』OP/EDテーマから見えてくるアニメ音楽のユニークと可能性

芹澤 優が語る、『わた推し』とキャラソンへの深い愛情とこだわり――『私の推しは悪役令嬢。』OP/EDテーマから見えてくるアニメ音楽のユニークと可能性

2023年秋クールの新アニメ『私の推しは悪役令嬢。』(以下、『わた推し』)は、今流行りの“悪役令嬢もの”作品だが、一味違った要素が加えられているのがポイント。乙女ゲームの主人公に転生したレイ=テイラー(CV:芹澤 優)がお近づきになろうとするのは、本来の攻略対象であるイケメン王子さまではなく、“推し”キャラクターの悪役令嬢・クレア=フランソワ(CV:奈波果林)。“推し”への一途な想いを貫くレイとクレアの関係性を軸にした、異世界ガールズラブコメ作品というわけだ。そんな本作のOP/EDテーマを歌うのもまた、レイとクレアの2人。しかもEDテーマは放送回によって、2人のソロ歌唱バージョン、デュエットバージョンが流れ、さらには歌詞の内容も2人の進展に合わせて変化していくこだわりの深さ。キャラソンならではの新鮮な表現が詰まった本作について、主人公のレイ役を務める声優の芹澤 優に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

レイとのシンクロ率が高い芹澤 優の、“推し”への愛が止まらない!

――まずは『わた推し』という作品に最初に触れたときの印象を教えてください。

芹澤 優 作品との出会いはオーディションがきっかけで、私はレイとクレアの両方でオーディションを受けたので、その前にそれぞれの目線で原作を読ませていただいたのが最初でした。個人的に“悪役令嬢もの”にはそれまであまり触れてこなかったのですが、「悪役令嬢ってこんなにかわいいんだ……!」と思いました(笑)。特にうちのクレアさまは……。

――「うちの」なんですね(笑)。

芹澤 はい!(笑)。クレアさまは悪役と言いつつ、すぐほほを赤らめてしまうタイプで、チョロくてかわいいので、そこがすごく魅力的だと思いましたし、私が演じるレイもテンポの良さが自分と合っていると感じたので、原作もすごいスピードで読むことができて。序盤はラブコメっぽいけど、読み進めていくにつれて現実的な問題に踏み込んで、深いところを突いてくるエピソードが多くなるんですよね。身分の差とか同性同士の恋愛観のお話も出てきて。

――その意味では骨太な部分もある作品ですし、特にレイがユニークかつ愛らしいキャラクターで、観ていると頬が緩んでしまうんですよね。

芹澤 嬉しいー!物語の後半は結構重い部分もあるんですけど、前半はレイがクレアさまに何を言われてもブレることなく、真っ直ぐに愛を伝えていくので、その気持ち良さがあって。好きな人にこれだけ好きって言えたら最高だろうなって気持ちになります(笑)。

――先ほどレイとクレアの両方の視点で原作を読まれたというお話でしたが、そのとき、どちらのほうが自分的にハマりそうだと思いました?

芹澤 絶対レイだと思いました。クレアさまのかわいさは、どんなにツンケンしていたとしても「またまたあー」と言えるような感じというか、全然嫌味にならないところだと思っていて。でも私がやると単純に“嫌な人”になりそうな気がするんですよね(苦笑)。私がオーディションで演じたクレアさまは、もっとツンケンしていて気が強い、お嬢さまとしての意識が高くて隙の無い感じだったのですが、アフレコで奈波さん(クレア役の奈波果林)が演じているのを聞いたときに、強がっているんだけどずっとかわいい感じがあったので、「これこれ!」と思いました。

――逆にレイはどんなところが自分にハマりそうだと思いましたか?

芹澤 私もレイみたいに結構めげずに人と接することができるし、なんなら学生時代は、ちょっと冷たくしてくる子と仲良くなることが多かったんですよ。「優ちゃん、かわいいね!」って言ってくれる子よりも、誰も見てないような私の欠点を指摘してくる子のほうが友達になりやすいんですよね。そういうマインドは、レイと似ている部分だなって思いました。

――芹澤さんとしては、自分の欠点をズバッと言ってくれるような子のほうが接しやすいんですか?

芹澤 そういう子のほうが、警戒しないでいられるというか。私は相手に優しくされるほど、「この人、本当は何を考えているんだろう?」って考えてしまうタイプで。でも、ズバズバ言ってくる人は自分にウソがないということだから、私にとっては接しやすいんです。

――芹澤さん自身も相手に対して思ったことをズバッと言うタイプですか?

芹澤 それが言えないんですよ。相手が言ってくれたら私も言えるんですけど、私は初めましての相手に対してはネコを被りがちなので(笑)。もちろん相手にどう受け取られるかを考えながら接するのは普通のことだし、そこは良し悪しの問題ではないと思うんですけど、私は相手に対して「何を考えているのかな?」と探ってしまうので、ズバズバきてくれる人のほうが、こちらとしてもあっけらかんと接することができて好きでしたね。

――その意味では、もしかしたらクレア役もハマったかもしれないですね。作品の話に戻りまして、レイを演じる際に心がけたことは?

芹澤 レイは、特に物語の前半に「かわいい!」とか「好き!」というセリフがすごく多いんですよ。でもそれが全部一辺倒になってしまったらもったいないなと思って。何かにときめくときというのは、色んなときめき方があって、じわじわくるときもあれば、推しにレスをもらった瞬間みたいに反射神経で「うわーっ!」ってなるときもあって(笑)。レイも色んな方向からクレアさまにときめくので、私も「レイは今、クレアのどんな部分にときめいたんだろう?」ということを意識しながら演じました。キュンとなっている感じや、高まりすぎて大声で叫んでしまう感じとか。様々な推しへの愛の表現を考えました。

――そのバリエーションを出すのは大変だったのでは?

芹澤 私も推しの女性アイドルがいるので、「もし私が推しへの気持ちを表現するならどうするだろう?」ということを考えるとやりやすかったです。まあ、私はライブとかでは感情を表に出せない地蔵タイプなんですけど(笑)。もちろんレイにとっての一番のときめきはクレアさまなので、私の気持ちを変に投影することはせずに、クレアさまへの愛をぶつける感じで演じていました。

――推しの話が出たので聞いてみたいのですが、芹澤さんは普段アイドル活動もされていて、どちらかというと“推される側”じゃないですか。その“推される側”として“推す側”の気持ちを理解できたり、いつも推しから受けている反応が今回のレイの演技の参考になったりしましたか?

芹澤 ああ~、今言われて「確かに!」と思いました。私は“推す側”としては本当に地蔵タイプで、気持ちの高まりを外に出すことはあまりなくて、盛り上がるのは家で1人でMVとかを観ているときくらいなんです(笑)。でも、こんなにも様々なバリエーションの“好き”の感情の出し方を引き出すことができたのは、この10年間、ファンの皆さんが目の前にいてくれたおかげなのかもしれない……!推しに対するぶち上がり方というのは本当に人それぞれなんですよね。しかも私は他の声優の方よりもアイドルとしての活動が多かったので、ライブや握手会で推してくださっている人と接する機会がたくさんあって……皆さまのことを参考にさせていただきました(笑)。

――現時点でアニメは第5話までしか放送されていないですが、物語の後半ではレイのまた違った一面が出てくるのでしょうか。

芹澤 その第5話辺りからクレアのことが“推し”から“好きな人”になっていくんですけど、やっぱり“推し”と“好き”は違うものということは感じました。後半は恋愛的な要素も描かれていくので、レイの雰囲気も変わっていくと思います。

――楽しみにしておきます。他にレイの魅力があれば教えていただけますか?

芹澤 個人的に好きなのが、この物語は乙女ゲームの世界という設定なので、本来の攻略対象である王子たちが登場するんですけど、彼らに対してのレイの反応が本当に嫌そうなんですよね(笑)。王子との好感度が上がってしまうと、「あー!フラグが立っちゃうよ……」みたいな感じで、めっちゃテンションが下がるんです。そうやって本来のゲームシステムに抗うレイがかわいくて好きです。

――レイは本当にクレアさま一筋ですものね。

芹澤 そう!超一途なんですよ。本当に自分の気持ちに真っ直ぐなので、演じていても気持ち良かったです。ただ、レイも自分の中で思っていることはたくさんあったり、クレアさまに対しても何だかんだで一線を引いている部分があるので、後半ではそういうところが徐々に出てきてより魅力が深くなっていくと思います。

――お相手のクレアの印象についてもお聞かせいただけますでしょうか。

芹澤 うちの悪役令嬢が一番だと思います!本当にかわいくて。奈波さんご本人も魅力的な方で、自分では認めないタイプの天然なんですよ(笑)。そういう本人のチャーミングな部分が、クレアにも滲み出ていて、嫌な感じがまったくないので、うちの悪役令嬢は“悪役”じゃないのかもしれない(笑)。優しくて、誇り高いクレアさまが大好きです。

――確かに高慢だったり高飛車なところがあまりなくて、観ていて憎めないんですよね。

芹澤 誰かが“嫌な奴”と誤解してしまいそうなことをしても、レイがすぐにその行動の理由を解説してくれるんですよね。それもあって、どんどん愛おしさが増していくし、クレアさまが強がれば強がるほど、“好き”の気持ちが増していく感じがあると思います。

――奈波さんとのアフレコはいかがでしたか?

芹澤 奈波さんは本当にチャーミングな方で、私もずっと「好きだな」という気持ちで収録できたので、すごくやりやすかったです。もちろんご本人とキャラクターは別ですけど、レイにとってのクレアさまへの“好き”と、私から奈波さんへの“好き”は、形は違えども同じベクトルだと思うんですね。なので「大好き!」みたいなセリフもすごく投げかけやすくて……こんなこと、本人がいる前では恥ずかしくて言いたくないですけど(笑)。

レイとクレアのツンケン&ラブラブな関係性が詰まったOPテーマ

――今回はOPテーマ/EDテーマともにレイとクレアのキャラソンになっています。そういう機会はなかなかないので、芹澤さんも嬉しかったのでは?

芹澤 お話をいただいたときは純粋に嬉しかったですし、完成したアニメを観させていただいたときに、オープニングは楽しく始まって、エンディングは凝ったギミックが仕込まれていて、観ながら泣きそうになりました。本当に最初から最後まで『わた推し』の世界、2人(レイとクレア)のことを感じながら終われるので、最後のコーヒーまで一品一品こだわり抜いたフルコース料理と言いますか(笑)。これはすごくいいものだなって思いました。

――OPテーマの「レイジョアハンズ!! ~Raise Y/Our Hands!!~」はレイとクレアの2人で歌う、ラテンのスパイスが効いた賑やかなテクノポップ。第一印象はいかがでしたか?

芹澤 すごく面白くて、頭に残るフレーズが盛りだくさんの楽曲だなと思いました。冒頭からずっと2人のラップっぽいセリフが同時に聴こえてくるような作りになっていて。もっと“かわいい”に振り切った方向も考えられるなかで、“かわいい”だけでも“楽しい”だけでもない、『わた推し』は一癖ある作品ということがオープニングからも伝わってくるような楽曲に感じました。レコーディングも、レイが「クレアと一緒に歌っていいよ」と言われたら飛んで喜ぶと思うので、私もルンルンで歌わせていただきました(笑)。

――レイとして歌うにあたって特別意識したことはありますか?

芹澤 もちろんキャラクターとしての声質は意識しましたが、そもそもレイの声が私の地声に近かったので、「こんなに悩まずに歌えることってある?」と思うくらい悩まず歌うことができて。私はキャラソンを歌うときに結構悩んでしまうタイプで、“キャラクターらしさ”と“歌としての魅力”のバランスについて考えがちなんですけど、この楽曲は、レイはレイっぽい口調だし、クレアはクレアっぽい口調で歌詞が書かれているので、すごく歌いやすくて。きっとテクノボーイズ(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)さんが、そこを意識して作ってくださったんだろうなと思って、すごく感謝しました。

――歌録りとアフレコはどちらが先だったのですか?

芹澤 歌を録ったのは、アフレコを進めていた最中でした。なので(レイが)自分の中に馴染んでいましたし、この曲は奈波さんのほうが先に録っていたので、より歌いやすくて。「クレアさまの声が聴こえる!」っていう感じで、よりデュエット感を味わいながら楽しく歌うことができました。

――楽曲の中で、この2人らしさを感じたポイントはありますか?

芹澤 サビの“屈服なさい!”(クレア)からの“諸⼿で万歳!”(レイ)は、この2人が楽しそうにやっている感じもありますし、コーラスの歌詞は“Ah!Cool!Youʼre cool!”なんですけど、どう考えても“悪役”と聴こえるところとか、すごく凝った歌詞になっていて、文字で見てもこの2人の世界をすごく感じられると思います。

――ダジャレが多用されていますよね、この曲。

芹澤 そうなんですよ!タイトルにもなっている“レイジョアハンズ!”は“レイ”とも“令嬢”ともかかっているし。ギミックがすごすぎて、テクノボーイズさんの頭の中はどうなっているんでしょうね(笑)。

――Aメロのレイとクレアのやり取りが、微妙に掛け違いになっている感じも、この2人の関係性っぽいなと思いました。

芹澤 確かに!クレアは“思い知らせてあげなきゃいけないかしら?”で思い知らせようとしているけど、レイは“この想いを報せなくちゃ”で楽しい時間を一緒に過ごしたい気持ちが溢れていて。ここまでキャラクター同士の関係性を反映したキャラソンってなかなかないのですごく歌いやすかったです。

――後ろにガヤっぽいセリフも入ったりしていて、歌の面でも工夫が盛りだくさんですが、レコーディングはいかがでしたか?

芹澤 ずっとふざけていました(笑)。とりあえずノリ良く録って、もしやりすぎだったら止めてもらおう、くらいの気持ちで。それくらいレイの気持ちになって、はっちゃけて歌うことができました。そういえばラスサビは元々今とは違うメロディだったんですけど、奈波さんが間違えて歌った節が良かったらしくて、テクノボーイズさんが「そっちにしましょう」ということで今の形になったんです。私たちのアイデアも柔軟に採用してくださって、一緒に作っている感がとてもありました。

次ページ:実は泣ける曲!?様々なバージョンが用意されたEDテーマとキャラソン特有の魅力

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