6月から3ヵ月連続でリリースした配信シングルでは自身初となる作詞を経験するなど、新たな魅力を発信してきた声優・アーティストの岡咲美保。そんな充実の夏を経てリリースされるニューシングル「ココロトラベル」は、自身が主人公のリムル=テンペストを演じる人気アニメの最新作『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』のED主題歌となった。約5年に渡ってリムルを演じてきた彼女が岡咲美保として初めて歌う『転スラ』の音楽をどう受け止め、歌ったのか。そしてカップリングにはこの秋放送のTVアニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』EDテーマ「キボウノレシピ」ではポップで楽しい世界観を彼女らしくキュートに歌っている。2024年1月には初のワンマンも決定し、充実のアーティスト3年目を過ごす岡咲に、今の音楽活動も含めて聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
——今年の夏は6月からの3ヵ月連続配信リリースや、“Animelo Summer Live”のご出演などありましたが、改めて振り返って、岡咲さんにとってはどんな夏でしたか?
岡咲美保 声優アーティストとして活動してきた2年間のなかで、夏の音楽活動が多かったんですよね。デビューも9月でしたし。今年の夏は、より音楽漬けな日々でした。まず3ヵ月連続のリリースで制作から携わらせていただいたのがすごく大きくて、今まで歌をうたうとかMVを撮っていただくとか、自分はそこに力を注いでいたんですけど、それだけじゃなくて今回は楽曲を選ばせていただいたり、初めて作詞もさせていただいて。
——配信シングルでの制作は、岡咲さんにも大きな影響があったわけですね。
岡咲 はい。もちろん忙しくもあったんですけど、皆さんに届ける前の仕込みの楽しさみたいな、そういうのを感じた夏でしたね。
——そうした夏を過ごされたあとには、11月に早くもニューシングル「ココロトラベル」がリリースとなります。こちらについては配信シングルの制作と被っていたんですか?
岡咲 ほぼ同時期でした。なので毎週レコーディングをしているような感じでした(笑)。配信シングルの制作や今回の世界観の監修を話し合ったりするのもほぼ同時進行で進んでいたので、1日に何曲分ものお話をするというタイミングがあって。ずっと音楽に触れられて幸せでした。
——なるほど、とはいえ配信と今回のシングル、特に本作は2曲ともタイアップということで、アプローチもそれぞれ異なると思います。
岡咲 そうですね。ラフから完パケまでの自分の歌声を聴くたびに、私が声優ということもあるかもしれないですけど、曲によって全然違う世界観を楽しみながら作っていました。
——今回の2曲だけでもアプローチが異なるだけに、まさにこの夏は色んな世界観を行き来していたと。「ココロトラベル」は、岡咲さんにとって馴染みの深いアニメである『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』のED主題歌。主人公のリムルを長年演じてきた作品のエンディングを初めて担当することには大きな意味があるのでは?
岡咲 はい……もう、責任重大です……!岡咲美保として『転スラ』アニメの楽曲を担当させていただけるなんて夢物語だと思っていたので、まさかこんな嬉しいお話をいただけるなんて思っていなかったですし、今まで色んな数々のアーティストさんが繋いでこられた『転スラ』楽曲のバトンを私に回していただけるなんて……。これまで5年間リムルを演じさせていただいて、私とリムルとの絆、チーム『転スラ』の絆みたいなものに信頼して任せていただけたのかなと思うと、誇らしさと嬉しさで胸がいっぱいです。
——岡咲さんにとっても思い入れも強い作品だけに、感慨もひとしおですよね。
岡咲 本当に周りの方たちに恵まれてるなって感謝もしましたし、同時に、皆さんの想いに応えねばならないなという気持ちがすごく大きくなって。『転スラ』らしさはもちろんですし、『コリウスの夢』という今回のアニメーションにあててというのはもちろんなんですけど、役者としてリムルの一番近くに居れているのはやっぱり私なのかなって思うと、リムルの横で見てきた景色や、“リムルと私”みたいなところも織り交ぜながら歌えたらいいなって、色々考えながらの制作を進めていきました。
——そうした想いというのは、5年前のアニメ開始時から歌っているのと、5年経って歌えるとではまた意味合いも異なってくるのかなと。リムルのキャラクターソングは歌われてきたかと思いますが、それとはまた違う。
岡咲 はい、そこは大きかったです。『転スラ』として必要とされている私の居場所や役割は、リムルを担当すること。それは大前提として、でもそのなかで新たに岡咲美保という居場所をいただけたので、だとするならば、やっぱりリムルに対して想いを伝えられる場でもあるのかなというのは思っていて。だから最初からリムルの声で歌うというのは自分の頭には一切なくて。彼はアニメーションの中やマンガの中や小説の中で生きているキャラクターですけど、そこを飛び越えて私の目の前にリムルがいると思って、私の等身大の声で想いを伝えられたのかなというのは感じていますね。
——キャラクターソングのようにリムルの想いを歌うだけではなく、リムルに向けて岡咲さんの想いを伝えるような。
岡咲 キャラクターソングではリムルの声でリムルの気持ちになって、というところを、今回の「ココロトラベル」では自分の内側にスポットを持ってくるようなイメージでやっているので、それは全然違いましたね。
——そうしたアプローチについてはサウンドを受けても変わってくると思いますが、今回の楽曲についても岡咲さんがセレクトに関わっているのですか?
岡咲 はい、そうなんです。コンペで選ばせていただきました。事前に「こういう楽曲のテイストがいいです」とお伝えしようと思ったんですけど、『転スラ』のいいところってたくさんあるので、それぞれの作家さんが思う『転スラ』らしさみたいなところをあえて制限したくなかったんです。なので、あくまで自分の想いは控えめに伝えて作っていただきました。
——この曲が選ばれた決め手はなんだったんですか?
岡咲 コンペは割と曲数があったんですけど、それぞれの曲を聴くだけじゃなくて、実際に歌ってみたんです。そのときにこの曲は初めて歌ったのに懐かしく感じて。“心が旅に出かけてるのさ”という歌い出しから、私がリムルと出会ったことやこの5年間の旅路、これからの旅路、リムルが見てきた世界、そして『コリウスの夢』の世界……と、本当に色々な景色が感じられたので、この曲にさせていただきました。
——たしかに『転スラ』らしい世界観と、岡咲さんのポップな世界観が非常にマッチしたサウンドだなと感じますね。コンペの段階で歌った際にご自身のボーカルアプローチはすでに固まっていたのですか?
岡咲 同じ曲でも歌い方で聴こえ方って本当に変わるなというのはこの仕事をしていて常々思うんです。なのでガチガチに作り込むのではなくて、今回は溢れ出るものを素直に出したいなと思い、レコーディングは自分の気持ちをフラットにして臨みました。
——なるほど。
岡咲 私、自分のフラットな場所って意外とわからなくて。自信のなさもあり、どの私がフラットなのかまだ確立できてないんですよね。でも今回、リムルが目の前にいてくれたことでフラットになれた部分はあります。彼が「そんなの出たもんでいいよ!」みたいに言ってくれている感じがして。“いらないものなら全部置いてこう 身軽になって旅に備えなくちゃ”なんかは、私が彼の代弁者になって伝えているみたいなイメージはあったんですけど、リムルから私へのメッセージでもあると思うとなんだかすごく嬉しい気持ちになります。
——さて、「ココロトラベル」ではMVも制作されましたが、撮影はいかがでしたか?
岡咲 今まではスタジオでかわいく撮っていただくことが多かったんですけど、今回は自然に身を委ねて。周りの世界観がすごく素敵で、その異世界に迷い込んだ自分を映し出せばそれで物語が成立するような場所での撮影だったので、木々や光に包まれながら、ただただ楽しく撮影させていただきました。映像も、異世界感がありつつ自然のエネルギーも感じるものになっています。私は木漏れ日に手をかざす手だけのカットが好きで、あれを観ると元気をもらえる気がして、スクショをたくさん撮りました(笑)。
——パワースポットの写真を待ち受けにするみたいな(笑)。さて、本作のもう1曲「キボウノレシピ」もタイアップということで、TVアニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』のOPテーマとなります。
岡咲 そうなんです。「ココロトラベル」が異世界だったらこちらはゲームの世界で、ステージを変えて自分と見つめ合えるような作品でもあります。「ココロトラベル」とはアプローチの仕方がまったく違っていて、この曲は作品に準じてポップに届けたいなというのが一番最初に自分のイメージにありました。原作のコミックを読むと、肩の力を抜いて楽しい気分になれるし、自分もこの世界に入ったらこういうことをしたいなと思う一方で、「あ、だったら別にゲームじゃなくても、今送っている日常でもできることあるよね」という日常への活力をもらったり。そういう気軽さみたいなところを教えてくれるのがすごく好きなんですよね。なので、みんなでハードルを高く設定せずに、ゲームの中であろうが日常であろうが自分が好きなことを自由にやろうよ!みたいな、そんな想いを楽曲に落とし込めたらなというのをコンペ前にスタッフさんに伝えました。
——楽曲としてもそうした“楽しさ”を感じさせる、非常にポップな仕上がりとなりましたね。
岡咲 ポップさはすごく意識しましたし、主人公・アースの、自分の好きなことに真っ直ぐで揺るがない姿勢が好きで、そのアプローチをどういう方向性にするかをまず考えました。戦いのシーンもあるのでそれをかっこ良く語るのもアリかなと思ったんですけど、キャラクターも多いですし、個性豊かなキャラクターたちと出会うことでアースの柔軟さが際立っていくところも面白くて。だからみんなで歌ってハッピーになれるような曲にしたい!と思ったときに、サビの“君と君と君と スペシャル気分”というところでみんなで一緒に歌う光景が想像できたんです。アニメのキャラクターたちもそうですし、私もいつかライブで皆さんと一緒に歌えることを想像したらすごくわくわくしたので、「この曲で!」と決めました。
——ボーカルもまた楽しくキュートに、これぞ岡咲さんと思わせるような声になっていますね。
岡咲 ありがとうございます!「毎日、その日が楽しければずっと楽しいよ!」ということを伝えたいなと思ったときに、力が入りすぎると相手も一生懸命になっちゃうじゃないですか。私はレコーディングで、リズムに乗らなきゃとか、音楽としてこうやりたいっていうイメージを持って臨むんですけど、でもやっぱり一番はマインドで、私自身が楽しんで、音を楽しまないと、というのを考えて、笑顔で歌っているのが伝わる音色を意識しました。
——この曲もキュートなMVを制作されていますが、撮影はいかがでしたか?
岡咲 とにかく楽しかったです!
——楽しそうだったのは映像からも伝わってきますね(笑)。
岡咲 本当に楽しくて!「ココロトラベル」とはまた違ってかわいらしくポップに、映像もかわいいモーションをつけていただいて。アースが料理もするということで、私も……苦手な料理に挑戦しました……(笑)。
——なんとなく苦手そうだなというのは、あのイチゴを切る手つきからも感じられますね(笑)。
岡咲 最初に料理をするって言われたときに、ちゃんと「大丈夫ですか」って聞いたんです。でも、「やりましょう」という流れになりまして(笑)。で、やってみたらイチゴは切れたんですけどセンスがなくて(笑)。
——あはは(笑)。
SHARE