『スター☆トゥインクルプリキュア』以降、シリーズ4作で6曲のエンディングを彩ってきた吉武千颯(「あこがれ Go My Way!!」は北川理恵と、「ヒロガリズム」は石井あみと歌唱)。そんな彼女の輝かしい足跡がもう一歩追加された。すでにテレビ画面から、『ひろがるスカイ!プリキュア』(以下『ひろプリ』)後期ED主題歌として子供たちの耳に届いている「Dear Shine Sky」だ。弾ける感情を様々な歌に込めてきた吉武が、子供たちの“明日”を後押しするため、今作で心に描いた空とは?
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司
――『ひろプリ』の後期ED主題歌「Dear Shine Sky」を担当することが決まり、どのように歌おうとイメージしていましたか?
吉武千颯 毎年、OP主題歌と前期・後期ED主題歌は同じタイミングでオーディションが行われていて、この曲もオーディションでは1番だけを歌ったのですが、今までのED主題歌とは違う雰囲気で、少し大人っぽさのある楽曲だと思いました。でも、しっとりした特徴はあるんですけど、プリキュアのキラキラ感がすごく詰め込まれていて、星がいっぱい広がっている夜空がすぐにイメージできました。
――楽曲の中で、特に意識したポイントはありましたか?
吉武 サビ始まりの「Dear Shine Sky 空におまじない “明日も素敵な日になれ” 一番星 瞬いて」という歌詞を見たときは“夜”のイメージが湧いてきて、「夜、明日に向かってお願いごとをしているのかな」と思いました。だから、今日という一日に寄り添いながら明日へ背中を押せる楽曲になるよう意識して歌ったことを覚えています。すごくストレートな歌詞ですし、ある意味、この楽曲のすべてという感じがします。それと私、小さい頃、おまじないをするのが好きだったんですよ(笑)。
――女の子はおまじないが好きなことが多いですよね。
吉武 よく「流れ星にお願いすると願いが叶う」っていうじゃないですか。そういうイメージと重なって、「明日もいい日になりますように」と空にお願いするような気持ちを大切に歌いました。それと“遠ざかる今日にThank You”は一日の終わりにすごく寄り添った歌詞だと思ったので、そこでも想像を膨らませていきました。全体として歌詞の中に、楽しい気持ちや遊び心がたくさん込められていると感じたので、それが小さなお友だちにも届くように、と思っていました。あとは、しっとりした楽曲だからこそ、歌詞への感情を大きく膨らませて小さなお友だちにもわかりやすく、というところも意識しながらオーディションに挑んでいました。
――小さなお子さんに伝えたい感情というところを詳しく教えてもらえますか?
吉武 大人の場合は「会社の人に怒られた」とかになると思うのですが、子供の頃でも、お友だちと喧嘩しちゃったとか、今日はおうちの方に怒られちゃったとか、「あーあ」ってなっちゃうような日があると思うんです。そういうときにも、明るくなれるようなイメージで歌っていました。
――今、吉武さんの手元にある歌詞にメモが書き込まれていますが、それはレコーディングで使用した歌詞ですか?
吉武 はい。歌のイメージに合わせて、フレーズ毎だったり思ったことを色々レコーディング日までに書き込みをしているんです。例えば「ホッとする気持ち」と書いたり、あとはわかりやすく伝えたいところにハートを描いていたりしています。“大好き”や“夜空”といった『ひろプリ』ならではと思うワードには、気持ちを込められるように印をつけてもいました。あとは、プロデューサーの方に「夜をイメージした曲」「明日に向けての気持ちを大切に」と言っていただいたので、そういう言葉も書き込んでいます。自分にしかわからない書き込みなので、ぐちゃぐちゃにしか見えないと思いますけど(笑)。
――レコーディングは譜面ではなく、その歌詞を見ながらですか?
吉武 ハモを録るときは譜面を見ますが、メインの歌を録るときは歌詞の紙を見ながら歌いますね。オーディションやレコーディングまでに音源と譜面を照らし合わせながら音をある程度覚えて、自分がやりたいことは頭の中に入れておくようにしているので。色鉛筆で書き込んだメモは現場で指示されたところで、そういうポイントを見ながら歌うことが多いです。私がメモを書き込んでいると待ってくださるので、その間に自分の中で整理して、それから歌って……みたいな感じですね。
――練習とオーディションとレコーディング本番で、歌い方は何か変わりましたか?
吉武 オーディションのときはシリーズの内容を詳しくは聞いていないので、自分の中でイメージをどれだけ膨らませられるか、というのが大切なんです。でも、レコーディングのときは、今回の『ひろプリ』の場合だと“ヒーロー”や“空”がテーマといったことを色々と教えてくださるので、それを自分が作ってきたイメージに加えて歌っていく感じです。
――「Dear Shine Sky」のレコーディングではどのようなディレクションがありましたか?
吉武 『ひろプリ』は『プリキュア』シリーズの20作品目ということもあって、オープニングやエンディングアニメで『ふたりはプリキュア』をオマージュしている部分があるじゃないですか。ソラちゃんとましろちゃんの、お互いに足りないところを補い合っているところは、なぎさとほのかの関係性に似ていますし、“2人でひとつ”みたいな、お友だちならではの良さがあると思うのですが、Dメロの“視線(め)と視線(め) 手と手 可能性(パワー)と可能性(パワー) 重ね合わせたら…”ではそういうところを想像しながら歌ってほしい、と言われました。
――ディレクションは、近年の『プリキュア』シリーズの楽曲を手がけている井上 洸プロデューサーですか?
吉武 はい。私は井上さんと音楽を作っている時間が大好きで。「もうちょっとこういう風に歌ってみようか」と言われることもありますけど、自分で「あ、ここはちょっと違ったな」と頭の中で思っていたところを「もう1回やったら大丈夫」と声をかけてくださることもあって。お互いに表現したいものを合わせるところで、安心感や心強さがあるんです。今回も、自分が作ってきたものを自由に出させていただけましたし、ありのままの自分でレコーディングできてとても良かったです。
――レコーディングに際して、今後のストーリーについても教えられていましたか?
吉武 すごくざっくりとではありますが、教えていただきました。
――では、想像というか、自分なりの解釈を込めた箇所はありましたか?
吉武 これは私の中の解釈なのですが、『ひろプリ』は“空”がテーマの作品ということで、OP主題歌の「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」が朝の空、(前期ED主題歌の)「ヒロガリズム」が昼から夕方、この「Dear Shine Sky」が夜で、1日の流れを表しているようだと思いました。オーディションも3曲通して受けていたので、3曲で1つの物語になっているのかな、と思いながら歌いました。
――間奏には前期ED主題歌の「ヒロガリズム」のフレーズが混ぜ込まれていますね。
吉武 そうなんですよね。どちらの楽曲も作曲しているハマダコウキさんの遊び心なんだと思います。でもそれもあって、前期から後期にかけて想いが繋がっていく、というところを意識しながら歌いました。
――作詞は、『Go!プリンセスプリキュア』から『プリキュア』シリーズの楽曲を手がけてきた大森祥子さんです。大森さんの歌詞についてはどのような印象をお持ちですか?
吉武 大森さんの歌詞は、いつも読んでいてワクワクするんです。今回も“夜空”と書いて“ブランケット”と読んだり、その表現力がすごく楽しいなと改めて思いました。『ひろプリ』のボーカルアルバム『~FLY TOGETHER!!!!!~』に収録されている「Try Try Try」(歌:石井あみ・吉武千颯)も大森さんが作詞されているのですが、“絶好調”を“なみ”と読んだり、遊び心がいっぱい詰まっているんですよ。1つの表現に対して色んなイメージが膨らんでくるので、見ているだけでウキウキしちゃうような歌詞だと思います。
――コーラスはすべて吉武さんが担当されたと思いますが、レコーディングで印象に残ったことはありましたか?
吉武 コーラスは上ハモも下ハモも複雑だったので、覚えるのが大変でした。でも、メインのメロディを録ったあとにコーラスを録ったので、メロディで込めた思いをハモでも表現できるように意識することができて。メロディに寄り添うように作っていく感覚がありました。
――完成版を聴いたときの印象も教えていただけますか?
吉武 感動したのは、“視線(め)と視線(め) 手と手 可能性(パワー)と可能性(パワー)”で、声がエコーのように繰り返されているところです。完成版のアレンジを聴いたとき「すごく素敵だなあ」と思いましたし、星空のイメージがより浮かぶミックスだと感じました。そこからの“重ね合わせたら… 何でもできるの 奇跡起こせるの”は、まさにプリキュアと思える歌詞なので、すごくお気に入りです。
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