INTERVIEW
2023.08.30
にじさんじ所属のバーチャルライバーで、「突然天使の如く舞い降りてきた超癒し系男子」こと叶がアーティストとして音楽シーンへと進出したのは、2022年7月のことだった。1st mini album『flores』をリリースすると、爽快なナンバーからアグレッシヴなサウンド、抒情的なフロアチューンに日常系ポップスやノスタルジックな楽曲まで、幅広い楽曲でその歌声を響かせ、日々ゲーム配信動画でファンに語り掛けながら楽しそうにプレイしている様子とは違う表情で驚かせた。2023年3月には初ライブ、叶 1st Concert「午前0時の向こう側」を大成功に収めた彼が放つ新たな1枚が完成。「How Much I Love You」と銘打たれた1st singleについて聞く。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――昨年末にリリースされた2nd mini album『夜明かし』の反響はいかがでしたか?
叶 みんな、すごく喜んでくれていて。ライブでも歌ったのですが、そのときにも喜んでくれる方がたくさんいた印象です。
――まだマスクをしている状況ではあったと思うのですが、それでも観客の皆さんの様子はわかりましたか?
叶 色んな方がいらっしゃったのですが、初めてのライブだったことや、これまで色々なことがあったこともあり、喜んでくれた人もいれば泣いている人もいる感じでしたね。とはいえ、泣いていた人もそれは喜びの形として泣いていたとは思うのですが、とにかく楽しそうにしてくださっている方が多くて安心しました。
――今、改めてライブのことを振り返るとどんな想いがありますか?
叶 まだライブをしてから5ヵ月くらいしか経っていないんですけど、もう1年くらい経ったような感覚があります(笑)。思ったよりもライブから今日まであっという間だったなぁ、って。ライブが終わってからゆっくりと時間が経過している感じもあるんですよね。
――ライブに向けて走っていた時間が色濃かったのでしょうね。
叶 本当に、大変でした。ライブまでの1年くらいをずっと忙しなく過ごしていたので。ライブの準備や歌の練習をしながら、アルバムの制作期間が重なっていたこともあったんです。ライブとアルバム制作の走り出しが近かったこともあって、その重なっていたタイミングは歌の練習をする時間も尋常じゃないくらい設けていましたし、もちろんダンスの練習もありましたし、そのなかでいつ配信をしようかと考えてもいましたから、体力的にきつかった時期でもありますね。
――配信も毎日たくさんされていますしね。
叶 ファンの皆さんが待っていてくれていますし、配信をやりたい、という気持ちが大きいので。それに、むしろ配信をしている時間がゆっくり過ごせる大事な時間でもあったんですよね。それくらい色濃い毎日でした。
――前作から今回のシングルまで、少し時間が空きました。音楽活動をしてきたことによって、ご自身の活動に影響や変化などはありましたか?
叶 レーベル活動を始めてからは、考え方や感じ方は変わりました。でも最初の頃よりは慣れてきましたし、要領を掴めてきているのかなとも思っています。普段だとゲームばかりしちゃうので、逆にゲーム以外のことに集中できる時間があるのもまた良いなぁ、とも感じていますね。
――音楽活動を始めたばかりの頃に「なかなか上手くできないな」とか「慣れないなぁ」と思ったのはどんなことでしたか?
叶 全部です!全部!曲が決まって、練習をして、レコーディングをして、という一連の流れについても、どういう練習の仕方があって、どうやっていけばいいのかな、とか考えましたし、歌うときにもどうやって感情や気持ちを作っていけばいいのかな、という悩みから始まったので。歌うのに一番良い姿勢を探すことなども含めて全部が手探りでしたし、あたふたしていましたね(笑)。
――そういった悩みや戸惑いを克服するのに、「これをやって良かったな」ということはありますか?
叶 最初の頃は色んな人に意見やアドバイスを求めていたのですが、そこで聞いたことから「歌うことに決まりはない」という気づきに出会って。その考えに至ってからは、出来る限り自分がリラックスできる環境でやることが精神的にも一番良いことだと思いましたし、それを意識するようになってからは以前ほど「うっ、どうしよう……!」という状況にはならなくなりましたね。最初の頃は「これから収録だ……どうしよう……」となっていたんですけどね(笑)。
――以前リスアニ!で対談をしていただいたプロデューサーの和賀裕希さんは、デビューからずっと共に走ってきている方です。今のご心境として、和賀さんはどんな存在だと感じられていますか?
叶 スタジオに行って和賀さんがいるとすごく安心しますし、和賀さんがいないと不安になってしまうんですよね。個人的なやり取りも多くて、「美味しいお店があったから、今度一緒に行こうよ」と誘ってくださったり、結構声をかけてくださったりもするので、そんな近い存在の和賀さんがいるからこそ、自分らしく音楽の活動をできているような気がします。ディレクションもしていただいていますし、普段から話す機会も多いので、打ち解けやすかったんですよね。最初から「優しい人だなぁ」と思っていましたが、今ではそこに「安心」が加わっています。
――そして、アーティストデビューから1年。ご自身の中で音楽の聴き方は変わりましたか?
叶 あまり曲のジャンルには詳しくないんです。感性だけで「この曲は良いなぁ」と思うことが多いのですが、デビューしてからは聴いている曲のジャンルを理解して、自分はどういうジャンルの曲が好きなのかとか、どんなジャンルの音楽を歌っているときの自分の声が好きかな、といったイメージを持つようになりました。
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