INTERVIEW
2023.06.02
『コードギアス 反逆のルルーシュ』、『BANANA FISH』、『ヴィンランド・サガ』。世界中にファンが存在し、情熱を傾けているアニメ作品とのコラボレーションを重ねてきたインターナショナルロックバンド・Survive Said The Prophetが、『ヴィンランド・サガ』とのコラボ第二弾シングル「Paradox」を引っ提げ、海外のアニメフェスのステージへ。カナダ・トロントで開催の“Anime North”へ向かう直前の彼らに「Paradox」への想いとバンド史上初にして、海外で開催のアニメフェスへの意気込みを聞いた。(5月中旬取材実施)
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――『ヴィンランド・サガ』との楽曲は「Mukanjyo」に続き2曲目となるSurvive Said The Prophet(以下、サバプロ)ですが、『BANANA FISH』などの海外でも人気の作品に参加されています。そういった作品とのサバプロがコラボすることについては、どのような想いがありますか?
Yosh 日本という枠にハマることのないインターナショナルロックバンドをやっているという自負があるなかで、このコラボレーションによって大きな答えが見つかったと認識していて。自分の強みは英語の歌詞が書けるということではありながら「日本語をもう少し入れてください」というリクエストもあったのですが、そこで嬉しかったのが日本語の部分もひっくるめて歌詞を読んで認識してくださったこと。そこでの評価が高かったことは、グローバル的に日本の文化も含めて、音楽はどんな形であれ伝わるんだな、という確信に繋がりましたね。こんなふうに夢が叶う方法がアニメの世界にあったんだ!と知ることになりました。これはやってみないとわからなかったですし、貴重な人生経験の1つになったなと思っています。
――戸惑いはなかったですか?
Yosh すごくありました。
Tatsuya もっと前の段階であったよね。
Yosh でもそれは文化を知らなかっただけなんですよね。今、思えば。
Tatsuya 日本のアニメで聴く音楽となると、どうしても「日本語」が大きな鍵になってくる。当初は英歌詞だけでやっていたこともあって、戸惑いはありましたよね。
Ivan 僕らはアニメに対しての知識がなかったですし、一緒にやることになったときには一体どういう反応があるのわからなくて。でもイギリスでライブをやったときに、最前列にいた方が『BANANA FISH』の曲を日本語も英語も完璧に歌っていたことがとにかく印象的だったんです。それには本当にびっくりして。もしアニメとのコラボがないままバンドだけで音楽をやっていてもその人に僕らの音楽が届いた可能性はあったのかもしれないけれど、バンドの音楽以外の要素によって繋がることもあるんだなぁと、すごく感動した瞬間でした。
Yosh 色んな人種の方が、言葉関係なく音楽をゼンガロング(全員がシンガロングすること)するって、音楽フェスでもレアなことだと思うんですよ。僕たちのイギリスでの初ワンマン、どうなるかわからなかったライブで見た光景が、そんな奇跡のゼンガロングだったんです。
Tatsuya なんだったら俺らより声が出ていたからね。
Yosh だってIvanも「俺よりも歌詞知ってるんじゃね?」って言ってたもん(笑)。
Ivan ギターだから普段はコーラスしかしないしね。でも、目の前で完コピですよ!その絵は印象的でした。ライブが終わったあとにも、「アニメ見ているよ。お前ら最高だよ!」って言ってくれるし、「日本が好きだよ」って言ってくれる人もいて、こういう繋がり方もあるんだな、アニメのタイアップをやらせてもらったからこその出来事だなって改めて感じました。
Show 日本の文化としては世界的に見てアニメが台頭していると思うのですが、日本で流行っているとか海外で流行っているとかあまり考えずに音楽を伝えていきたい気持ちもあって。でも、折角海外の人が好きだと言ってくれるアニメの曲を僕らがやらせてもらっているのだから、海外のアニコンなどでも最大限に楽しませてあげたいとも思うんです。僕もそうですが、ずっと聴いていた曲を目の前で演奏してくれたら嬉しいですからね。それを僕らが提供できることに喜びを感じています。
――そんなサバプロが制作した新たな『ヴィンランド・サガ』SEASON 2のOP・テーマ「Paradox」について、アニメ側のオーダーで印象的だったものはありましたか?
Yosh とても信頼していただけていたようで、オーダーは「サバプロさんの好きなようにやってください」というものだったんです。今まで曲提供をさせていただいたなかで、世界的にも多くの人が見ている『ヴィンランド・サガ』の楽曲として信頼している、という気持ちを受け取ったことはとても嬉しかったです。「Mukanjyo」のときは2曲くらい書きましたけどね。
Tatsuya そこで結構やり取りをしましたし、もがいて制作していた気がします。
Yosh しかも「Mukanjyo」はいきなり出てきた曲だったんです。俺が「うわぁぁぁぁ!」ってなって「これだー!」って生まれた曲でした。
Show 一期目は海外で流行ることを想定していなかったと思うんですよ、制作側も。そうなると基本は日本語で歌詞を書いてほしいというオーダーだったので、当時のYoshは苦労していましたね。日本語より英語のほうが得意ですから。そこで「Mukanjyo」ができたあとの「Paradox」のときには、「歌詞も英語で大丈夫」と言っていただけて。それなのに一番強いところに、Yoshが自分で日本語を入れてきましたね(笑)。
Yosh 実は、あれはリクエストにはなかったものでした。
Show アニメを通して、Yoshにとっても苦戦していた「日本語で歌う」という部分が強みに変わったように思います。
――そうして制作に取り掛かった「Paradox」。リクエストもなかったとのことですが、どんな意識で楽曲を制作されていったのでしょうか?
Yosh 「Mukanjyo」のときに自分とメインキャラクターを照らし合わせて、その間を取って歌詞を書くという奇跡的な瞬間があったんです。その手法をキープしたいと思って、制作に入りました。「自分じゃない自分」ってパラレルワールドには存在するというマインドがあって、その意識から「Paradox」というタイトルも引っ張ってきています。アーティスト活動をしているときの自分、ステージにいるときの自分。日頃歩んでいくなかで皆さんにも様々な面での生活があると思うのですが、コロナ禍に入ったおかげでその事実に対して疑問を抱く人は増えたと思うんです。自分もそうでした。そうやって考えていくうちに主人公・トルフィンの歩んでいる感覚をストレートではなくともみんなが共鳴するワードで綴って、なおかつ映像になったときに「これだよね」って感じてもらえる曲にしました。ただ、楽曲にあるダウナーでダークな部分は最初から入れることを決めていましたね。「Mukanjyo」は希望がありそうな雰囲気でサビで広がりを持っていましたし、「頑張ろうよ」という想いは歌詞にも出ていたんですが、「Paradox」については「この先なんて、どうなるかわからないよね」という気持ちを出して、その世界観をキープしながら通常のアニメの主題歌とは一線を画したものにしたいなって思ったんです。そのスタイルにチャレンジできたのも『ヴィンランド・サガ』だからこそなのかな、という気持ちでした。提出したらOKが出たので、嬉しかったです。
――音も物語に寄り添っていると感じる曲でしたが、皆さんが演奏面でこだわったとことを教えてください。
Tatsuya バースのリフは結構こだわりました。僕がよくリードギターをやるんですが、この曲に関しては久しぶりにスイッチして、Ivanがリードを弾いて僕がバッキングをやっているんです。今までやってきたことをどうやって料理していくかというか、久しぶりにチェンジしたこともあってなにか面白いことをやりたいな、という想いがありつつバッキングのリフを作っていって。自分なりのエッセンスを多めに入れたので、そういうところを聴いていただけたらなと思っています。
Ivan この曲だけ8弦ギターを使ったんです。少し前に手に入れたもので、良い感じに使えないかなぁと思っていたこともあって使ってみたのですが、すごくバランスの良い音になったんじゃないかなと思います。あと、歌詞の部分ですね。自分とアニメ、というか。ジャケット制作していたときに「どんなことを伝えているのかな」と歌詞を読んでいたのですが、今(Yoshの)話を聞けて、そんな想いを込めていたのか、と理解できたことが嬉しいです。
Tatsuya え!今(笑)?
Ivan でもさ、「実際どんなことを言っているの?」って聞くのもなんとなくできないでしょ?タブーじゃないけれど、メンバーであったとしてもアーティストだからいちいち説明してくれと言うのは美学がなくなってしまうんじゃないかと思って普段は歌詞を読みながら自分なりの解釈をしていくんですけど、今、話を聞けて良かった(笑)。
Yosh なに、これ。インタビューと同時にセラピーセッションしてる(笑)?みんな、ハッピーに帰れそうな空気になりましたね。
——それは良き時間です(笑)。Showさんはいかがですか?
Show 普段からフレーズについては歌に完全に合わせていくようにしているのですが、そうなるとライブでのやり方で難しさを感じることもあったんです。ただ今回はライブにスポットを向けて、こういうパフォーマンス、こういう見え方、と想定してドラムのフレーズを作っていきました。がっつり歌に合わせていくと、どうしてもドラムが難しくなってしまうんですよ、細々していて。譜面に書くと、繰り返しの部分がなくなるような感じというか……全部を採譜しないと表現できないものになってしまうことも多かったのですが、「Paradox」はフレーズの繰り返しも割と多くしているんですね。そこに対しては強くこだわりを持って作りました。
――なるほど。
Show それからシャウトですね。僕は元来シャウターではないのですが、今回は挑戦しています。レコーディングのときに自分だけで歌声を入れることは初めてだったのですが、現場でYoshから「これやってくれない?」って言われたのが「Paradox」の最後の“Burning out and fading away”というフレーズだったんです。最後の締め括りの一節を俺に任せていいのか?という葛藤もあったのですが、言葉に発するのとドラムに乗せるのとでは感情の乗せ方が違うなということも改めて感じましたし、ここをライブでどう表現するかをこれから考えて、こだわっていきたいなという気持ちがあります。
――そして、アニメの曲といえば「89秒」という縛りがあります。「Paradox」は89秒の中はもちろん、その先に広がる物語が非常に深い。今回はアニメ尺の先にどんなことを意識されましたか?
Yosh 89秒尺で聴いて、全体像の予想がついてしまう音楽ってシンプルすぎるのかな、という部分を考えるようになってきました。「Mukanjyo」のようにシャウトで終わらせたらつまらないなって思って、先に89秒尺と、フルコーラスのバージョンとを前もって作っていましたね。バース2からは僕たちのオールドスクールなテイストを入れて、90’sや2000年代のニュアンスを後に置くことは考えていました。89秒尺はとにかく「入るかな」とひやひやしながら作ってもいるんですけど、そこでフィットしたのでその先は存分に自分たちのテイストを入れました。「Mukanjyo」と同じく自分と照らし合わせているところが、たまたまメインキャラクターと人生のタイミングで並んでいたところを書いてみたんです。策略的なものではなく自分の気持ちに従ったことでたまたま出会ったフレーズなので、生み出せたことは奇跡だなと思っています。
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