お姫様を夢見るアイドル・古賀小春のはじまりの物語。【TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」第3芸能課観察記録06】

TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」（以下、「U149」）の第7話「声を持たないのに語るもの、なに？」が放送された。本コラムでは「U149」の物語や音楽、アイドルたちの魅力を追いかけていく。

【特集】TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」が彩る夢のステージを紐解く！

TEXT BY 中里キリ

小春を守るナイト・ヒョウくん登場！

アバンタイトルは迷子になった幼い日の古賀小春を、シンデレラのドレスとガラスの靴を履いた“お姫様”が迎えに来てくれるシーンからスタート。お姫様はいつも小春を守ってくれる母親の姿のようであり、遠い未来に成長する小春自身の姿でもあるように見える。シーンは変わって小春の自室。壁にはまるで先ほどのお姫様をモチーフにしたような映画作品のポスターが貼られているという、第7話の幻想的？な物語の展開を予感させる導入だ。小春の部屋からは彼女が母親と家族の愛情に包まれて、お姫様に憧れた生活をしていることが伝わってくる。そして、同居人である頼もしいナイト・イグアナのヒョウくんの存在。ランドセルの色までヒョウくんに合わせているのが小春らしい。

小春と一緒にやってきた第3芸能課でヒョウくんは大人気。真っ先にヒョウくんを抱き上げる姿が不思議に絵になる桃華、まずは知識から入ろうとするありす、ソファの向こうまで撤退する梨沙とプロデューサーと、関わり方は様々だ。小春の口からヒョウくんを紹介する形で、一目惚れに近い小春とヒョウくんの出会いや、すぐ迷子になる小春がヒョウくんと一緒なら大丈夫＝目立つイグアナを連れた女の子はすぐに見つけてもらえる、といったことが伝えられていく。

そしてたくさんの人を笑顔にしたいという小春の願いに星が応えたように、第3芸能課に“小春とヒョウくんが一緒に子供たちと触れ合う”という仕事が舞い込む。自分の仕事の知らせにはぼんやりした反応だった小春が、ヒョウくんと一緒と聞いた途端に身を乗り出して食いつくのが微笑ましい。

小春とヒョウくんが担当する仕事は、“アニマルダイアリー夏休み出張版！ふれあいステージ”というイベントステージのゲスト。MCは先輩アイドルの高森藍子と道明寺歌鈴だ。子供たちとイグアナのヒョウくんがふれあって、ついでに大量のイグアナ人形をグッズとして捌くという狙いの企画のようだ。子供たちを笑顔にしてグッズも好評で、小春の初仕事は大成功の結果だった。

小春の心象を形にしたようなミュージカル

めでたしめでたし……と思いきや、物語の後半は幻想の色が濃くなる。笑顔に包まれたふわふわな気持ちのままの小春は、不思議なちょうちょや、動物たちを追いかけたりするうちに迷子になってしまう。小春が道々で出会う動物たちと、第3芸能課の仲間たちを想像の中で結び付けていくのが、彼女にとって第3芸能課という場所も身近で大切な存在になっていることの証のようだ。雨のあずまやで泣きつかれて眠ってしまった小春の元に、集まってくる動物たち。ありすみたいな小鳥や、晴や薫のような犬たちと語り合いながら、小春は自分がなりたいお姫様とはどんな存在であるかを考えていく。

新曲「アイム・ア・リトル・プリンセス～お星さまにお願い～」は、そんな小春の夢の世界を形にしたようなミュージカル調の楽曲だ。小春が動物たちと無心でたわむれ、色とりどりの花々がアイドルを照らすサイリウムに変わる。小春がいつかなりたい自分、そして形になり始めたアイドルという世界への憧れを心象風景として描いた美しい一幕だった。アニメ「U149」という作品をきっかけに声を得た古賀小春というアイドルにとって、「アイム・ア・リトル・プリンセス～お星さまにお願い～」はもちろんはじめてのソロ曲。作詞を朝倉路、作編曲を渡部チェルが担当している。

やがて、自分を探すプロデューサーたちの声で小春は目覚める。動物たちは幻のように消えていたが、プロデューサーと第3芸能課の仲間たち、そして何よりヒョウくんがナイトのように寄り添ってそこにいた。みんなで歩く帰路、泣いている迷子の女の子を見つけた小春は、今度は自分が手を差し伸べる側になる。「お姉ちゃん、お姫様？」と問いかける女の子に、まだ自分はお姫様じゃないと答えた小春は「小春はお姫様みたいに、みんなを幸せにするアイドルですよ」と続けるのだった。だが迷子の女の子にとっては、きっとこの日の小春こそが憧れのお姫様として記憶されたはずだ。

そこから流れるように美しい導入ではじまったEDは「お願い！シンデレラ」。古賀小春が歌うソロバージョンだ。「アイドルマスターシンデレラガールズ」のはじまりの曲として記憶されているこの楽曲は、これまでも多くのアイドルたちが歌い、シンデレラガールズの仲間として迎え入れられてきた特別な楽曲だ。迷子になった小春を見つけるまで時間がかかったことを詫びるプロデューサーに小春が答えた「でもプロデューサーさん、小春のこと、見つけてくれましたから」の言葉は、ずっと続いてきたプロデューサーとアイドルの関係性のことを指しているようでドキッとさせられた。

エンディングでは、はじめてのファンレター（差出人は迷子の女の子だろうか）を笑顔で読み返す小春の姿が描かれた。それは本当に美しい、アイドル・古賀小春のはじまりの瞬間だった。

●作品情報
TV アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」

原作：バンダイナムコエンターテインメント
原案：「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」廾之（サイコミ連載）

【スタッフ】
監督：岡本学
副監督：高嶋宏之
シリーズ構成：村山沖
アニメーションキャラクターデザイン：井川典恵
コンセプトアート：大久保錦一
デザインワークス：
野田猛小田崎恵子中村倫子渡部尭皓槙田路子
美術設定：曽野由大
高橋武之金平和茂
美術監督：井上一宏
色彩設計：土居真紀子
3DCG：石川寛貢榊正宗神谷宣幸
撮影監督：関谷能弘
編集：三嶋章紀
音響監督：岡本学
音楽：宮崎誠川田瑠夏睦月周平
音楽制作：日本コロムビア
アニメーション制作：CygamesPictures