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INTERVIEW

2023.05.12

高橋洋子、原点回帰の「エヴァ」新曲リリース!奥深い歌詞の世界を語る

高橋洋子、原点回帰の「エヴァ」新曲リリース!奥深い歌詞の世界を語る

高橋洋子の新作は『EVANGELION ETERNALLY』という象徴的なタイトルのシングル。そのリードトラックで新曲の『罪と罰 祈らざる者よ』は、『残酷な天使のテーゼ』の編曲を担当した大森俊之が作編曲を手掛けており、歌詞もエヴァらしさの色が濃い哲学的な内容だ。歌とともに作詞を手がけた高橋洋子にその世界観を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉

みんなに『エヴァ』をイメージさせる言葉選びとは?

――まずは「罪と罰 祈らざる者よ」の制作模様から教えてください。

高橋洋子 高橋&大森(俊之)コンビで、「聴いた誰もがすぐにわかるようなものにしてほしい」というオーダーがありました。サビ歌始まり、アグレッシブさ、マイナーコードで神秘性のある楽曲といった要素を詰め込んだ1曲になりました。大森さんとのお付き合いはもう30年以上になりますので、『エヴァ』が完結して、ぐるりと回って先ほどのオーダーが届いたときには「私たちのコンビにオファーするなら、やっぱりこれですよね」という思いで、気づいたらこの曲になっていたという感覚でしたね。

――高橋さんは作詞の方もなさっていますが、どんな思いで書き始めましたか?

高橋 皆さんがイメージする『エヴァンゲリオン』の主題歌やテーマソングって、“優しい”“温かい”といったものではなく、“何か罪を背負うような”とか、主人公の生い立ちやドラマの背景に迫るものだと思います。そこは死守しようと思いました。かといって、すべてが悲しく終わりたくはないなと思って、落としどころを考えつつ、メロディに当てはまる言葉を乗せていきました。その後で自分の中で思うストーリー性を作り上げていきました。あとはオーダーとして、 “夏の日”“永遠に”“輪廻”といった言葉を入れてほしいとのリクエストがありました。

――確かにそれらのワードは『エヴァ』を強く想起させます。それも含めて原点回帰な印象がありますね。冒頭の“モナド”(単体で万物を構成するとされる哲学用語)も、それらしいですね。

高橋 “モナド”はオーダーではなかったのですが、『エヴァ』らしく、でも出てきていない言葉を一生懸命探しました(笑)。そういった世界を“スピリチュアルな”とは言わずに表現したり、現実だけど現実ではない、でも嘘ではない、空想かもしれないし本当にそうかもしれないといった、微妙な駆け引きのある世界観にしたかったんです。タイトルの『罪と罰』は、生きていくために、何らかの形で命をいただいて食べる、それ自体がカルマ(業)であることを示しています。“(業)だとすると、作中のあの少年少女たちはどうやって生きていきますか?”という問いにもなっています。

――これらの言葉選びに、長年『エヴァ』の楽曲に携わってこられた高橋さんならではの重みを感じます。

高橋 『エヴァ』って、哲学的なところがあると思うんです。“人はどうやって生きようと思っているか”とか、“幸せの定義は?”とか。そして、“では、どうしますか?”という投げかけが常にあって。戦わないで済むに越したことはありませんが、それを全否定することも難しく、どこに着地するのがいいのかという問いに対して、私なりに答えを出した形です。

“ストーリー性”のある歌詞世界を読み解くヒント

――もう1つ、先ほど“ストーリー性”とありましたので、そこを詳しくお聞かせいただければと思います。

高橋 つまるところ、本当だけど本当じゃない世界の話です。仮定で進めていくなかで、想像の世界だけのことを語るのはとても陳腐な気がして。この歳になった私が歌うとなったときに、どの目線で歌うのがいいかといったら、やっぱり母性とか母親といった眼差しになります。そのときに、“この世界は無慈悲だ”と言ってしまったら、それで終わりです。無慈悲な世界のなかにも、漏れ出る慈悲はあるわけで、そういうものに繋がるような世界観はいつもどこかにある。それは“逃げ場”と言えるかもしれません。そんな休まる場所が、音楽的にあればいいなと思ったんです。歌サビ始まりというオーダーでしたので、何の言葉から始めるのかは大事でした。

――それで“無慈悲な夜から”と、印象に残る始まりになったんですね。

高橋 この歌の歌詞の中で、始まりに使うにはこれが一番わかりやすいですよね。響きやすい、届きやすいかな。自分が生み出したいと思わなくても、生まれてきてしまう、そういう世界の中で私たちは生きていく。祈ったり祈らなかったりするけれど、でも、そうせざるを得ないという背景の中に、人間がいるんだというところからスタートしています。

――“夏の日に~”からの一節も『エヴァ』の世界観の色を濃くにじませています。

高橋 ここで私たちが見ていく世界観は、要するにパラレルワールドなんですよね。別のパラレルを選べば別の人生があるというくらい、実は選べる状況にいるという。そして“奪い合って手に入れたら勝ち”と言われているけど、本当にそうなのだろうかと。これは本当に難しい問題だと思うし答えはないと思うんです。だからこそ、その答えが自分から生まれてきたものでなければ紐付けられないと思います。それを念頭に自分はどういう道を進みますかと、2番で問うています。

――踏まえて続く2番のストーリーなんですね。

高橋 2番では、“子供は心配してほしい、大人は心配されたくない”。“さあ、あなたはどっちですか?”という投げかけをしています。甘えたいって言えたら楽なんです。でも、甘えられないからみんな大変なんです。それから、自分たちが見ている世界が偽物なのか本物なのか、それを本物と言い切れるのか。自分で歩いたもの、見たもの、作ってきたことが本物になっていくんじゃないのか。ということを、私だけではなく、この世界を作っているみんなが、一歩ずつ歩きながら作っていくっていうのが、この世界なんだと思うんですよね。

――後半の展開も迫るものがあります。“死”と母性、そして“輪廻”へと続く言葉も、エヴァらしくもあります。

高橋 “明日死ぬと言われたら、あなたはどうしますか?”“もし昨日死んでいたら、あなたの明日はどうでしたか?”というところまで考えたときに、人は初めて“ああしておけばよかった”とか“今なら間に合うかな”と考えると思うんです。人は、特に男の人は大昔から狩人をしてきた歴史もあるので、生きていくために戦うような遺伝子を持っていると思います。今日の日々においてもそう。そのなかで自分の足で立ち上がって明日を作る強さを持ってもらえたら、という母としての気持ちで書いています。

“正しく歌う”ことの大切さと難しさ、そして個性

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