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INTERVIEW

2023.04.27

宮野真守が追求するエンターテインメントと楽曲制作のこだわりに迫る

宮野真守が追求するエンターテインメントと楽曲制作のこだわりに迫る

自身も「ブライアン・ナイトレイダー」役として出演するオリジナルTVアニメ『THE MARGINAL SERVICE』のOPテーマ「Quiet explosion」をリリースした宮野真守。23枚目となるこのシングルについてはもちろん、昨年末に行われたライブツアー“MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~”についてもたっぷり語ってくれた。真摯にライブエンターテインメントに向き合いながら楽しむことを追求する姿勢、信頼するクリエイターとともに作り上げる楽曲制作の裏側をじっくり味わえるインタビューをお届けする。

INTERVIEW & TEXT BY 生内清香

宮野真守が身一つで体現した最高のエンターテインメント

――まず5月31日に映像化のリリースが決まっている、昨年11月~12月に行われた約3年ぶりのツアー“MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~”はいかがでしたか?

宮野真守 ライブ制作の打ち合わせに入った当時は、コロナ禍でのライブ開催に関して今よりも一進一退の状況で、どういった形のツアーにできるか手探りでした。ただ、どんな形であってもファンのみんなにとってライブの時間はとても尊いものなので、今の自分の最大限の力を出して面白いものを絶対に提供しなければいけないと思いました。コロナ前にやっていたライブよりも演出面での制約はたくさんありましたが、タイトルもあえての“ENTERTAINING!”。エンターテインメントをどう面白く見せられるかはすべて自分にかかっているという使命感を持ってステージに立たないと、みんなを楽しませることなんてできない。縮小されたという印象が残らないような面白いライブをチーム一丸となって作っていきました。でも、エンタメってそういう縛りとか制約があるときにこそ、逆にアイデアやパワーが出たりもするので、今しかできないライブエンターテインメントにできたと思っています。声を出さずにやってみたコール&レスポンスもとても楽しい記憶として残っているし、ファンのみんなが受け入れて一緒に楽しもうとしてくれたことがすごく嬉しかった。僕のライブって、やっぱりファンのみんなとコネクトすることがすごく大事で。例えば、僕が会場に投げキッスする曲もあるじゃないですか。

――「Kiss×Kiss」ですね。

宮野 それに対して、ありがたいことに以前なら声も使って最大の感情を表してくれていたわけじゃないですか。でも、今はそれを我慢させているという(笑)。声が出せないせいか崩れ落ちる方々を何人か見かけて、ごめんねと思いながらもまたやるっていう(笑)。コール&レスポンスも含め、そういったファンのみんなと作る楽しい瞬間を積み重ねていけるのがツアーで、それがツアーファイナルでのMCで話した「みんなの声が聞きたいです」という言葉に繋がりました。ファンのみんなも最終的に声を出したいという気持ちが残ったんじゃないかと思います。「みんなと次に向かえている」という希望を感じるツアーでもありましたね。

――幕間映像では遂に漫才に挑戦しましたね。

宮野 コントは“演じる”が入るので役者としてのクッションが入るのですが、漫才はお芝居がきかないからすごくハードルが高いんです。構成作家の伊福部(崇)さんから、時間や規模が限られているなかで何ができるかを考えて漫才はどうかと言われたとき、最初はマジか!と思いました。でも、自分でも納得できたし、やるしかないな、と。漫才師みたいなことやるっていうコントにはなりましたけど(笑)、楽しかったです。

――これまでの幕間映像を振り返って観られたのも楽しかったです。

宮野 そう感じてもらえたのは嬉しいです。制約の中から生まれたアイデアという側面もありましたが、苦しいからこそ出てくるアイデアの妙というか。こういうところにも面白さって眠っているんだなと思いました。

――「制約」という言葉は一切感じないライブでしたよ。

宮野 ライブの印象を聞いた方に「すごく派手でしたね」と言ってもらえたのはすごく嬉しかったです。ビジュアル的な部分でも、今回は衣装の細部まで重要で。舞台装置ではなく、“宮野を派手に飾る”というテーマもありました。だから、ステージを作り込むのではなく、縦のスクリーンを置いて派手な宮野を全身で見てもらえるようにして。スマホを使って、TikTokのような縦型の動画もリアルタイムで映すことしました。

――「TEAM MAMO」の紹介パートですね。終演後に動画サイトにアップもされていたので、帰ってからもう一度余韻に浸ることもできるし、行けない公演の雰囲気を感じることもできて嬉しい演出でした。

宮野 あの動画の発信はツアーならではですよね。次の公演が楽しみになったと思うし。今回は逆転の発想がいっぱいできたツアーだと思います。

誰しもが心の中に人知れず燃やす “Quiet explosion”

――そして、23枚目のシングル「Quiet explosion」が発売されました。宮野さんが「ブライアン・ナイトレイダー」役で出演するオリジナルTVアニメ『THE MARGINAL SERVICE』のOPテーマです。出演のお話があったときの作品に対する印象はいかがでしたか?

宮野 すごくワクワクしました。最初はどういう作品になるんだろう?と思いましたが、絶対に面白いものにできると思ったきっかけは、僕の相方を演じるのが森川(智之)さんだったこと。森川さんとのバディは絶対楽しいって想像できました。

――森川さんが演じるゼノ・ストークスに宮野さん演じるブライアン・ナイトレイダーがぶつかっていく関係で。

宮野 ブライアンは無鉄砲な性格のキャラクターなので、思いっきり森川さんにぶつかっていけばいいなと思って、その安心感がありました。バディといってもいがみ合いながら物語が進んでいくので、そこも面白がって観てもらえたらと思います。

――まだ3話が終わったところで、ラバー・スーツの謎もまだまだこれからですが、どんなところが見どころになりそうでしょうか?

宮野 それぞれが抱えているものとか、伏線となるようなエッセンスが張り巡らされてはいるのですが、基本は1話完結で観られる戦いが描かれていくので、ある意味ポップに観ることができると思いますし、ギャグ要素も多いので、そういう部分も楽しんでもらえたらと思います。

――OPテーマの依頼があったときは、曲調などの要望もありましたか?

宮野 ロックで、「破壊」「打破」「創世」といった言葉を使ってほしいとアニメサイドからオーダーをいただき、なるほどと思いました。最終的には「宮野さんの音楽ラインで作ってください」とも言っていただいたので、例えば「BREAK IT!」とかとはまた違うロックで、今の自分が作る音楽としてもっと踏み込んだ内容にしたいと思ったんです。疾走感があるロックというよりは、重厚感があって気持ちいいグルーヴで大人な感じを出しつつ、マージナルサービスの“人知れず戦う”という部分をピックアップできればと思いました。楽曲をプロデュースしてくださったstyさんが1コーラスのデモをあげてくれたとき、「Quiet explosion」という言葉がすごくかっこいいなと思って。「爆発」や「エクスプロージョン」も監督から使ってほしいと言われていた言葉にありましたし、「マージナルエクスプロージョン!」と叫ぶシーンもアニメ本編にあるので、「explosion」はアニメの中でも印象的に響く言葉なんです。そこに「人知れず」という意味を持たせて「Quiet explosion」とstyさんが名付けてくれました。そして、楽曲を仕上げていくなかで、聴く人の日常にもフィットする歌にしたいなと思いまして。静かに秘めた想いはきっと誰しもが持っていて、「これをやってやるぞ!」とか「自分はこんなことをやっているんだ!」と言わずとも、目標に向かって命を燃やして戦っていると思うんです。それこそ満員電車に揺られるお父さんにも聴いてもらいたいですし、心の奥底が燃え上がるようなロックで聴く人を応援できればと思いました。

――今回は最初からstyさんに頼もうと?

宮野 そうですね。今回作りたい楽曲はstyさんが作るロックがフィットすると思いました。「Quiet explosion」は歌い方がとてもテクニカルなんですが、styさんと作ると、R&Bに入っているようなフェイクや細かいビブラートだったり、そういう技を駆使したロックになるので、とてもおしゃれでかっこいいんです。

――「境界線」など、世界観を象徴する言葉が歌詞にも散りばめられていて。

宮野  “幻と現在(うつつ)の間で”という表現もお洒落ですよね。そして、そこまで詳しくは話していないけど、やっぱり今の時期に歌う意味も加味してくれているのかなと思います。もちろんアニメの中でも戦うんですが、先ほどのライブの話じゃないですが、我々にもやっぱり取り戻したい何かがあるから、サビの頭で“取り戻そう”と歌うことにはすごく意味がある気がします。そしてさらに、「アップデートしていこうよ」って希望まで入れてくれていて。

――テクニカルな歌という話もありましたが、レコーディングはいかがでしたか?

宮野 40歳手前のここにきて、今までで一番ハイトーンな曲という(笑)。そのヒリヒリ感が戦っている感じとして出て結果的によかったと思っているんですが、今までで一番エモーショナルなハイトーンになっていると思います。

――MVは無機質なセットに赤と青の不穏な光の中で歌う演出でした。

宮野 映像監督から、無骨な鉄骨の前でモードな衣装で歌ったらかっこいいのではないかと提案を最初にもらいました。無骨さと粋な感じがミックスされていて面白い仕上がりになりましたよね。作品が持つアンバランスさや境界線みたいなところが表現されていて、それはCDジャケットのビジュアル作りでも同じで。服装はモードだけど、工事現場のような背景に黄色いボードで境界線の質感を出しています。MVのパフォーマンスにダンスを入れたり火花を散らす案も最初はあったのですが、今回はバンドを従えてシンプルに、自分のパフォーマンスで楽曲のメッセージを伝えることにしました。

様々な形の“究極の愛”を描く「Invincible Love」

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