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REPORT

2023.04.14

パワフルなのに緻密――これすなわち、最強のライブ! “DIALOGUE+ Zepp Tour 2023 「Superday ─Latitude─」”横浜公演レポート

パワフルなのに緻密――これすなわち、最強のライブ! “DIALOGUE+ Zepp Tour 2023 「Superday ─Latitude─」”横浜公演レポート

3月26日、声優アーティストユニット・DIALOGUE+が、“DIALOGUE+ Zepp Tour 2023 「Superday ─Latitude─」”の横浜公演をKT Zepp Yokohamaにて開催。1月末から続く全国ツアーのファイナル公演にふさわしいパフォーマンスを、場内のログっ子(※DIALOGUE+ファンの総称)にみせながら、随所で自らの燃えたぎる想いも乗せたステージに。作り込まれたものでありながらも全力全開のパワフルさも感じる、現状の“最高”を感じさせる充実のライブだった。

TEXT BY 須永兼次

かっこよさもキュートさも楽しさも、最初っから全部乗せ!

この日は開演前に、DIALOGUE+の総合プロデューサー・田淵智也がステージに登場。声出し解禁になった本公演のレギュレーションについて、具体例も挙げながら改めてログっ子に直接伝えていく。そのなかで「あなたたちを縛るのではなく、守るため」といった想いも直接言葉にしたことも功を奏したのだろうか。公演中、変な荒れ方をしていたような場面は、筆者の知る限りではなかったように思う。

そしてメンバーによる影ナレが流れるなか、バンドメンバーがステージに登場。M0として演奏の始まった「introduction Superday」に乗せてメンバーが1人ずつ登場し、質問に回答。ライブ中のMC少なめなDIALOGUE+にとって、ライブ冒頭に自己紹介も兼ねつつ人柄を感じさせる登場というのは、非常に効果的なものだ。

そうして全員登場してからのタイトルコールに続き、コールとクラップで盛り上がりをもたらすにはうってつけの「ドラマティックピース!!」からライブはスタート。ただ単に盛り上げるだけではなく、パフォーマンスにも見どころ十分。緒方佑奈が1コーラス目で力強い歌声を聴かせたかと思えば、2コーラス目の冒頭からはダンスとともにセクシーさを醸し出した歌声で魅了。2サビ後には守屋亨香と飯塚麻結が、フィーチャーされたダンス部分でしっかりセンターとして魅せまくる。一方歌声の面では、2-Bメロでは内山悠里菜が終盤のロングトーンを、ダンスに合わせて尻下がりに表現。内山のその姿が、登場時に名乗りとともに高らかに発した「音楽、サイコー!」の言葉と重なり、ぐっとくる。

内山悠里菜

内山悠里菜

だが、早々にエモくなっている暇はない。なぜって、早くもツアー前半戦“Longitude”でオーラスを飾ったブチ上げ曲「大冒険をよろしく」が始まったから。驚きの感情もよぎるなか、冒頭「横浜のみんなー!盛り上がっていくぞー!」と宮原颯希が飛び出してログっ子をヒートアップさせて始まったこの曲、運動量も段違いでわちゃわちゃ感もあるのに、細かい振付がピッタリ合っていたり後列の4人が前列4人の間を抜けて前後を入れ替えたりと、テクニカルさもバッチリ両立。正直、2曲目にして「目が足りない!」と思ったほどだ。

宮原颯希

宮原颯希

しかも、2コーラス目の序盤では村上まなつが歌声とステージングに思いっきりクセをつけてアクセントとして非常に重要な役割を果たしたりと、ただ駆け抜けるだけでもないのが素晴らしい。そして大サビではログっ子とともに左右に揺れて会場に一体感が生まれると、飯塚が締めのセリフをバシッと決めて、勢いそのままに「D+ has come」へ。やや短めの楽曲というのも相まって、シャープかつ力強いダンスとともに届けたこの曲は、より駆け抜ける感が強いものに。そんなこの曲で、特に1-Bメロ等での突き抜けていくボーカルが印象深かったのが守屋。ここのみならずこのあとも惹きつける力をもった、ピンと張った歌声を随所で生かしていく。

飯塚麻結

飯塚麻結

こうして怒涛の3曲を披露した8人。この日最初のMCパートでは、村上からこの日の衣装がデビュー曲「はじめてのかくめい!」のものであることが語られ、「初心を忘れないように、全力で頑張っていきたいと思います!」と宣言。稗田寧々からツアータイトル“Latitude”が「熱量の上昇」という意味であり、「つまり今日は、最初からぶっ飛ばしていきますよー!」とシャウトを続け、その稗田と鷹村彩花がステージ中央に位置取って2人のセンターボーカル曲「走れ」へ。ドン!と心に飛び込んでくるようなインパクトのある稗田と、かわいげ成分もありながらこういったロックではシャープな響きを生む鷹村、2人の真っ直ぐで個性の異なる歌声がログっ子の胸へと突き刺さっていく。

鷹村彩花

鷹村彩花

ほか5人も、揃ったダンスでステージを美しく彩れば、続く「パンケーキいいな」は、イントロでの内山を中心にほか6人が輪を形作ると、そのバランスを保ったまま行進するようなコミカルかつ息の合ったダンスからスタート。その内山の、出だしや1サビラスト等での無垢さ溢れる歌声も非常によく効いていたし、ウインクも織り交ぜて魅せながら歌っていく部分をはじめ、飯塚がセンターやメインを取るときの瞬発力の凄さも再認識させられた曲に。そして「夏の花火と君と青」で、パフォーマンス・歌声ともに特に惹きつけてくれたのが宮原。1-Bメロの村上のソロ中、歌詞に合わせてハッとした表情で空を見上げる表現や、ソロパートでの楽曲にマッチした青春感ある歌声が印象的。その青春感と結びつく、ほどよくあどけなさも薫る鷹村のボーカルも同様に心に残ったポイントだ。その鷹村がソロをとる落ちサビではログっ子が客席をオレンジの輝きで染め上げ、大きな花火のような光景を形に。彼ら・彼女らも演出の一部となって、この曲を作り上げていった。

村上まなつ

村上まなつ

爆上げ曲だけじゃない! 魅せる・聴かせる彼女たちの良さ

その余韻が残るなか、ドラムのリズムをバックにアルバム新曲「うしみつあっパレイド」の振付講座が行なわれた。キョンシーのように1列になったDメロなど、楽曲に沿った“ホラー”をモチーフにした振付が散りばめられたダンスも含めてパワフルにみせて場内のボルテージをさらに爆上げ。ただペンを走らせていただけの筆者も自然と汗をかくくらいの熱気に、場内は包まれる。最後は村上がサックスをバックに連続スピンを決めて、美しく楽曲を締め括ってみせた。曲明けにはログっ子の振付の揃いぶりをメンバーが絶賛。続けて『DIALOGUE+2』のリード曲「絶景絶好スーパーデイ!!」のMVのスーツ姿の写真を映し出しつつ、それぞれが「〇〇っぽい」とわいわいとトークを展開していく。

その雰囲気を一気に変えたのが、「シャーベットマーメイド」。無機質かつ的確な表現をベースにしたこの曲が、良い意味で場内をクールダウンさせる。だが、単なる無機質・無表情というわけではなく、音源以上にゾクリとさせるものになっていた2-Aメロの緒方や、消え入るように曲を締めくくる鷹村のセリフは音源以上のものに進化。落ちサビ直前の守屋のソロも、まさに歌詞どおり“揺蕩う”ような感覚を与える。

守屋亨香

守屋亨香

曲が終わると世界が“巻き戻る”ような演出を挟んで、キュートで華やかな「恋は世界定理と共に」へ。この曲ではピュアさ溢れる内山や、歌声の芯は残しつつもそこにかわいげを乗せて、元々持ち合わせた存在感に愛嬌を上乗せして届けていく稗田など、各々のソロのボーカルが楽曲の世界へと惹き込んでいく。その稗田は、歌声だけでなくDメロの「kiss me?」のフレーズでの満開笑顔でも魅了。続く4ペアになってのダンスしながらのパートでは、いじらしい恋心を込めた宮原の歌声もまた胸を捉えるものだった。

稗田寧々

稗田寧々

そして、後奏に続いて鐘の音がゆっくり流れると、直前までソロパートを中心に歌声を跳ねさせて“遊んで”いた村上が、ピアノの音色をバックに「おもいでしりとり」の冒頭ソロをしっとりと歌い始める。この日は、1コーラス目をスローなピアノバラードにアレンジしての、特別版での披露。そこに全員が歌声を美しく乗せて、ハーモニーを響かせ聴かせていき、1サビのラストからは通常版に。

元々存在する美しいパフォーマンスに加え、特別版を通じて歌声の面からも切なくも美しい楽曲の新たな魅力を提示することで、ユニットとして“キラーチューン”の存在に甘えないという姿勢を感じることもできたところで、歌声の美しさがさらに際立つ最新シングル「かすかでたしか」へ。ほのかな無垢さと柔らかさのバランスが良好な鷹村の冒頭のソロは耳心地が良く、1サビ前の稗田や2サビ前の守屋のソロはサビの壮大さを予感させるいい助走として機能する。これは、ライブ会場という空間だからこそよりはっきり体感できたもの。つまりは、ライブに現地参加する醍醐味を味わえるボーカルだったということだ。そのサビの最高点を美しく彩る歌声が、やはり緒方の欠かせなさを再認識させる――いや、落ちサビ以降のハーモニーを聴けば、歌詞通り心が繋がったこの8人でなければ、とログっ子なら誰もが思ったであろう。それを大サビに入ってから引っ張っていける飯塚の歌声の映え方も含め、この8人でなければ作れない“到達点”の1つを見たような感覚さえあった。

緒方佑奈

緒方佑奈

後奏でメンバー同士向き合い輪を作ったところで暗転し、温かなギターの音色が響くなか、互いやログっ子との絆を感じさせるセリフを言い繋いで「夕空航路」へ。ここでも巧みなコーラスワークで聴かせていき、歌唱中にはユニゾン相手と視線を交わしながら歌って、温かな空気で場内を包んでいく。そのハーモニーも凄さを誇示するためのものではなく、あくまでもその暖かな空気を作るために必要な要素として生み出したもの。それを8人揃っての歌として聴けることも、この場でじっと聴き入るログっ子にとってはたまらなく嬉しいことだったのではないだろうか。

曲が終わり、続いてはドラムのリズムに乗せて宮原が熱く場内のログっ子と配信視聴者への感謝を言葉にし、その横で飯塚が場内のログっ子を煽りさらに会場の熱量を上げにかかる。そしてバンドメンバーに事前に答えてもらった“自身のチャームポイント”を紹介しながら各メンバーがソロプレイで魅せると、内山の「みんなで最高の日にしましょう!みんなで、凄い日にしましょう!」の煽りに続いて「絶景絶好スーパーデイ!!」から終盤戦が始まる。

SNSにメンバーがダンス動画を多数投稿していたサビの「スススダンス」など、キャッチーな振付で一体感を生み出しながら、その先頭に立ち勢いMAXの場内を引っ張っていくDIALOGUE+。ラストに向かって全力全開だからこそ、Dメロに込められたメッセージがより響く。アツくなったのはログっ子だけではなく、ステージ上のメンバーも。大サビではテンションが一段と上がった飯塚の、振付中の指振りやステップが非常に激しく、それでいて遅れや無駄もない。それが8人横一線になっていたなかでも、自然と目を引いた。

そして稗田が「まだまだこんなもんじゃねーよなぁ!Zepp Yokohamaー!」とシャウトし、ステージの端から端まで一往復駆け抜けると、「最高の景色一緒に作るよ!」の言葉に続いて「ダイアローグ+インビテーション!」をコール。曲振りのテンションそのままに、いつもよりも深く鋭い切り込み隊長感の出る稗田のソロを皮切りに、ログっ子に名前を呼ばれたメンバーが、それぞれ個性をフィーチャーしたソロパートを中心に躍動していくと、さらに続けた「ぼくらのユニバース」でも、とにかくアグレッシブなパフォーマンスを展開。それも勢い任せの大味なものではなく、8人で「×」を作って回転ドアのように時計回りに周回したり、表情変化に至るまで緻密なものだ。そうしてこの曲も全力で駆け抜け、かき回しから締め括り……と思いきや、緒方の「みんなー!最高の新曲、もっともっと聴きたくない!?」との音頭からもう1回、ログっ子とのコール・アンド・レスポンスを通じで大サビの“おかわり”を楽しみきり、超アツい空気のなか曲が締め括られた。

そしてそのまま本編ラストナンバー「デネブとスピカ」へ。自身のソロに合わせて飯塚がスピンしながら上手端まで一気に移動してパフォーマンスしたりと、メンバーもリミッターを吹き飛ばしてのステージを展開。だが、そんななかでも1サビで歌詞に沿った切なげな表情で顔を見合わせながら歌う緒方・宮原など、“表現者”としての側面も忘れていないからこそまた思わされたのだ、「目が足りない!」と。大サビ冒頭のソロでの、またも懸命な感情をアウトプットする村上の姿も、さらに心をぎゅっと掴む。ときに遊びときに切実さを出せる彼女は、様々なアングルから心を捉える表現者だ。ラストは、大サビ後の「ラララ」の部分を延長して、拳を振り上げてログっ子と最後の最後まで魂を燃やし続けると、内山の「ありがとうございましたー!」の言葉で楽曲を締めて本編は幕を下ろす。

ログっ子と一緒に、これからも“かくめい”は続く

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