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INTERVIEW

2023.03.08

奥井雅美が語るデビューからの30年と、80歳まで“歌う”ことへの想い――30周年ベストアルバム発売記念インタビュー

奥井雅美が語るデビューからの30年と、80歳まで“歌う”ことへの想い――30周年ベストアルバム発売記念インタビュー

1993年に「誰よりもずっと…」でデビューしたアニソンシンガー・奥井雅美が30周年ベストアルバム『Mas“ami Okui”terpiece』を発売。本作には彼女が30年の間に発表してきた楽曲の中から選りすぐりの48曲を収録。そのうち「Get along」「ONENESS」はセルフカバーを行った。本作の発売を記念して、彼女にインタビューを実施。3月12日(日)開催のライブ“奥井雅美 30th Anniversary Live 2023 EVE ~一夜限りのBirth Live~”を控え「歌詞を覚えるのに精一杯」と語る彼女に、これまでとこれからを語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY はるのおと

自身の活動のターニングポイントになった楽曲とは?

――月並みな質問ですが、まず30周年を迎えての気持ちをお聞かせください。

奥井雅美 もちろん「嬉しい」とか「ありがとうございます」という気持ちが前提にありますが、すごく不思議な感じがしますね。どうして30周年を迎えられたのかわからない(笑)。最初はコーラスの仕事をやっているときに買い取り契約(ショット)でアニソンを歌わないかという話がきて、「アニメの歌をちょっと歌って、自分の名前でCD出せちゃうんだ」くらいの気持ちで歌い始めたので、30年も続けるとはまったく思っていなかったし。でもどこかのタイミング……1stアルバムを出すあたりで応援してくださる方がいることがわかったくらいかな。そこでアニソンを歌うことや作ること、裏方仕事なんかも含めて私の生活の一部、人生の一部になった感じがします。

――その心境は、例えば10周年を迎えたときとはまた違いますか?

奥井 10周年のとき・・・。その少し前に「(プロデューサーの)矢吹(俊郎)さんと離れ、ちょっとアニソンを歌いたくないな」みたいな感じになってたんですよね。そこでキングレコードの大月(俊倫)さんから「あなたはアニソンを歌わなきゃダメだよ」と言われ、ちっひー(米倉千尋)と期間限定でror/sを組んだりJAM Projectに入ったりして、アニソンカバーアルバムの『マサミコブシ』を出して、またアニソンの世界にググッと戻ってきたころで。そのときは自分も若かったので「まだ10年か」なんて思っていたけど、それからは早かった。特にJAMが活発に動いて並行してソロをやっていたときなんかはすごく忙しくてあっという間に過ぎたので。30年は長かったけど、早かったという感覚です。

――ここからはベストアルバムの話を伺います。大きく分類して3枚のCDに3つの時代の楽曲を収録していますが、こうした形にした理由は?

奥井 1枚目がキングレコード(スターチャイルド)の時代、2枚目が自分の自主レーベルのevolutionの時代、最後がランティスの時代で。細かく言うと1曲だけ歌わせてもらったワーナーさんだったり別レーベルの曲も入っているんですけど。こういうふうに分けたほうが流れがわかりやすく、30周年でオリジナルアルバムを1枚出すよりこうしてベストアルバムを出したほうが記念になるし、久々に私の曲を聴いてくれる方も多いんじゃないかなと思ってこういう形にしました。3枚組だと豪華な感じもしますし。

――奥井さんのベストアルバムは15周年で出された『大奥』以来ですね。

奥井 あれはevolutionのときだからスタチャ時代の「REINCARNATION」や「輪舞-revolution」はアレンジを変えていました。でも、今回アレンジはそのままです。ただ全曲リマスタリングはしていて、できるだけ全体を通して違和感なく聴けるようにしています。

――ちなみに奥井さんってこれまで何曲歌われたんでしょうか?

奥井 全然わからないです。把握できない(笑)

――それだけ膨大な数の曲からどうやって選曲されたのでしょうか?

奥井 まずスタッフさんが代表曲やライブでみんなが喜んでくれる曲、ランティス期だとCDになっていない曲なんかを選んでくれて、そこから私が好きな曲や思い入れが強い曲を少し入れ替えさせてもらいました。私はゲームの「マブラヴ」シリーズ、特に冥夜というヒロインが好きだから彼女をイメージした「紫音-sion-」を入れたり。あと「SYMBOLIC BRIDE~Rebellion of Valkyrie~」はアルバム表題曲ですけど、亡くなったドラマーのmasshoi(山内 優)君に叩いてもらったんですね。彼のプレイが大好きだし、みんなでレコーディングしたりPV撮ったりして思い入れも強いので「どうしても入れたいです」とお願いしました。

――そうした思い入れがある曲が並ぶなかで、難しいかもしれませんが収録曲から自分の活動のターニングポイントになったと感じる曲を5つ挙げください。

奥井 まずは1枚目から2曲目の「REINCARNATION」。これは初めて自分たちのチームでアレンジをやらせてもらったんです。そこで私もプロデューサーの矢吹さんも歌謡ロックが好きだから、とそんな楽曲にしたら、林原めぐみさんがラジオで「この曲はかっこいい」と言ってくれたんですよ。めぐちゃんは当時からすごい人気だったので、ファンの多くが「林原さんが言うんだったら」と聴いてくれるようになって。大きなターニングポイントでした。次は「TURNING POINT」。これはMr.Bigのベーシストのビリー・シーンと、TOTOのギタリストのスティーヴ・ルカサーに参加してもらって、MVも一緒に撮りました。それで洋楽ファンから「アニソンとか歌ってる人に参加してるの?」みたいな反応もありましたけど、私自身は「世界のミュージシャンってすごいな」と感じられた良い機会でした。そういえば当時来日したビリー・シーンにInterFMの英語の番組に連れて行かれたんですよ。そこでいきなりセッションが始まって「歌え」と言われ、私は英語とか全然歌えないのでずっとフェイクしてたという恥ずかしい思い出があります(笑)。

――そうだったんですか!すごい思い出ですね。

奥井 2枚目からは「Olive」で、これはevolutionを作った際に行った記者会見で披露しました。オリーブの実ってそのままだと硬くて食べられないけど、熟したり煮たりして食べると美味しい。当時は「evolutionでアニソンのフェスをやりたいね」と、後の“Animelo Summer Live”に繋がる話も出ていた頃で、evolutionがオリーブみたいに美味しい未来になればいいなという想いでこの曲を作りました。あとは「宝箱-TREASURE BOX-」。自分では絶対作らないし歌わないような曲で。作曲してくれたカヨコちゃん(現在は草野華余子名義)は当時から売れていたけど、その後めっちゃ売れて大先生になったし。ターニングポイントというか良い記念になった曲ですね。最後は3枚目に収録された「炎~闇ノ飛翔~HIKAGE」。「牙狼」はJAMでもお世話になってるけど、個人としてもシリーズ作品にヒカゲという役で出演して変な演技をしてしまって(笑)。でもそんな経験もあって今があるので、選ばせていただきます。

――なるほど。いくつか意外な曲があったりと、面白かったです。例えば「輪舞-revolution」が入るかなと思っていたんですが。

奥井 あー、でもあれは“作品力”ですね。「輪舞-revolution」は今では一番の代表曲だけど、作っていたときはそうなると思っていなかったので。本当に『少女革命ウテナ』という作品人気のおかげだと、特に海外で歌うと感じます。

――もう1つ、30周年で触れたいのが最新曲の「曖昧さ、幸福論」です。「only one No.1」や「Cutie」、「女神になって」といった過去に奥井さんが歌われていた『デ・ジ・キャラット』曲や「ぜったい」「邪魔」といったほかの奥井さんの曲も匂わせるフレーズが歌詞に盛り込まれていて、感激しました。

奥井 「みんながそうやって思ってくれたらいいな」とブシロードのプロデューサーの方とも話していました。

――あの曲はどういった想いで作られたのでしょうか?

奥井 『デ・ジ・キャラット』が24(にょ)周年記念で新作アニメを作るってことで、普通だったらブシロードさんはあれだけ売れてる声優さんを抱えているんだからそっちにいくと思うじゃないですか(笑)。でも声優さんも当時の方だし、主題歌も私に声をかけてくれて。その想いに応えるため、まず作曲とアレンジも矢吹さんにお願いするところから始まりました。でも矢吹さんが色気付いちゃって(笑)進化した少しややこしい曲を作ってきたんですよ。でも絶対にあの当時やっていたサウンドに近いほうがいいだろうと思い、もう1曲作ってもらったんです。歌詞は「成長はしたけど、当時のこともちゃんと忘れていない」という想いを歌に込めたかったので、自分が過去に出した曲の言葉を少しずつ入れてあんなふうになりました。

“奥井雅美”というアニソンシンガー

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