原作・内藤騎之介、小説&コミックスシリーズが累計300万部を突破しているスローライフ・農業ファンタジーアニメ『異世界のんびり農家』。エンディングをVTuber・緋月ゆいが「Feel the winds」で優しく彩っている。
緋月は、Vtuber・渋谷ハル、プロゲーミングチーム・Crazy Raccoon、歌手のまふまふ、そらるがプロデュースするVTuber事務所「Neo-Porte(ネオポルテ)」の1期生。VTuberデビュー以降、「歌ってみた動画」を投稿したり、トーク・ゲーム配信をしたりと積極的に活動してきた。そんな彼女にとってアニメ主題歌を歌うこと、CDをリリースすることは夢の1つだった。そして『異世界のんびり農家』のEDテーマ、さらに2月22日(水)には同作をタイトルとしたメジャーデビューシングルがリリースと、圧倒的な歌唱力と表現力でそのチャンスを掴むこととなる。今回のインタビューでは、緋月ゆいが夢を叶えるまでの道のりを辿った。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
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──今日はさかのぼってお話をお伺いできればと思うのですが、まずはVtuberを志したきっかけ、Neo-Porteのオーディションに応募されたきっかけはなんだったのでしょうか。
緋月ゆい 元々配信者さんたちの活動を見ていたことが大きいです。いつか自分もやってみたいな、って。人と話すこと、誰かを笑わせることも好きだったので、自分にもできたらいいなとNeo-Porteに応募しました。それと歌うことも大好きで。Neo-Porteの応募要項に「音楽活動も応援します」といったことが書いてあったので、上手くマッチしたら良いなという思いでした。
──トークの配信と音楽、どちらもお好きだったのですね。
緋月 そうですね。主軸は歌にしたいなとは思っていたのですが、歌だけにするつもりもないし、歌をおろそかにして配信だけにするつもりもなくて。
──2022年3月の初配信のことって覚えていらっしゃいますか?
緋月 緊張がエグかったです。もともとプレッシャーに弱いんです。だから震えていました(苦笑)。直前にツイートをしたことを覚えています。「誰か緊張しない方法を教えて!」って。
──何か良い案はありました?
緋月 何をやってもだめでした(笑)。
──そればかりは無理もないですよね。
緋月 初配信でいきなり歌ったので余計に緊張してしまって。実は初配信が終わったあと、一度も歌の部分を聴き返していないんです。緊張しすぎて声が震えて裏返ってしまったこともあり、聴きたくなくて(苦笑)。大変なものを皆さんに聴かせてしまいました。でも歌ったことで吹っ切れて、自己紹介パートに入ってからはすんなり話せました。
──初配信でいきなりの生歌ってすごい展開ですよね。
緋月 面白いかなと思い、自分で考えた流れではあったんですけど「なんでこうしたんだろう」って(笑)。過去の自分を恨みました。
──Neo-Porteでデビューが決まったときはどのようなお気持ちでしたか?
緋月 『異世界のんびり農家』のタイアップが決まったときもそうだったんですけど、しばらく実感がなかったんです。エンディングロールに自分の名前が出て「あ、いる!」と(笑)。だから1期生としてデビューが決まったときもしばらく実感がなく、皆さんのコメントを見て「あれ?みんな私に向けてこんなにコメントしているんだ……」って。俯瞰して見ている状態でした。
──もう1人の緋月さんが頭の上のほうにいる状態ですね(笑)。
緋月 そうです(笑)。一週間くらいポワポワとしていました。
──逆に実感したきっかけってなんだったんですか?
緋月 一週間経ったあとに「やばい、1期生じゃん!」って(笑)。初配信をしてからはゲームの大会にも参加していたので、怒涛の日々で。それが終わって「あ、配信、これから頑張っていくんだな」って。でも1期生なので……0期生の先輩方はいるんですが、ちゃんとデビューして、っていうのは事務所の中では初めてだったので、自分も含め1期生みんなで事務所を盛り上げられるように頑張らなきゃなって想いはありました。
──そういったお話は1期生(或世イヌ、凪夢夛、夜絆ニウ、水無瀬、天帝フォルテ)の皆さんとされるんですか?
緋月 いや、自分が勝手に思っているというか(笑)。話すことはあるんですけど、みんなで集まって「よし、頑張ろうな!」ってことはなくて。
──それぞれの中に想いがあるのかもしれませんね。1期生というのは、どの場所においても特別な想いがあるでしょうから。
緋月 そうですね。最近2期生もデビューしたので、より頑張らなきゃなという気持ちです。慕われるような存在になれたらいいな、ならないとなって。
──ではさらにさかのぼってパーソナルなお話を聞かせてください。音楽を好きになったきっかけはなんだったのでしょうか。
緋月 父がずっと音楽をやっていて。バンドでベースをやっていたんですよ。
──プロとしてですか?
緋月 いえ、趣味で音楽をやっていたんです。だから自宅にベースもアコギも(エレキ)ギターもあって。で、母はピアノを弾いていて。それで私も習い事でピアノを始めました。そのあと、アニメ『けいおん!』に出会い、「バンドって良いな」と思って。父のギターを借りて弾いてみて「やりたい!」と。それで自分のギターを買ってもらい、そこから「ギターボーカルかっけえ!」ってなったんです。歌うのって楽しい!と思い、友だちと女の子だけでバンドを組んで……。
──お父様、喜ばれていたのではないですか?
緋月 めちゃくちゃ喜んでいました(笑)。
──そこに至るまでは『けいおん!』の存在が大きかったんですね。
緋月 大きかったです!ガールズバンドが盛り上がっていた時期で、それに乗っかったところもありました(笑)。「かっこいー!」って。ミーハーです(笑)。
──具体的にどのバンドに興味を持たれていたんですか?
緋月 ええと、SCANDALさんだったり、かっこいいなぁって。ONE OK ROCKさんもよく聴いていました。
──ロックがお好きだったんですね。
緋月 そうです。だから歌い方も当時は全然違いました。
──今の歌声になるまではどんな経緯があったのでしょうか。
緋月 その後、バンドを辞めたんですよね。でも何か歌いたいなと思って、家で1人で趣味の範囲でピアノで弾き語りしていた時期があったんです。ピアノに合う歌い方はどんなものだろう?と思って、色々なアーティストさんの曲を聴いたり、歌い方を変えてみたり、自分なりに模索していって今の歌声になりました。
──バンドはどれくらい続けられていたんですか?
緋月 4、5年くらいやっていました。オリジナルの曲を作って、みんなで音を合わせて提案して。青春!という感じで楽しかったです。
──なるほど。バンドの良さ、クラシカルな音楽の良さ、どちらも知っているからこそ、今の歌声に辿り着かれたんですね。ちなみにピアノはどれくらい続けられていたんですか?
緋月 10年くらい習っていたんですが……途中から通わなくなり、フェードアウトしてしまって……。
──私も同じタイプです(笑)。10年くらい習っていて、ロックを好きになって、その当時はクラシックに物足りなさを感じるようになってしまい……。
緋月 まさにそうです!(笑)それで自分を弾きたい曲を弾くようになったのですが、(ロックな曲の)伴奏とクラシックピアノの演奏とはまた違うじゃないですか。なので、最初は目コピから入って。YouTubeで弾いている人たちの指を見て「あ、こう弾けばいいのか」「これで押さえるとこの音になるんだ」と覚えてから耳コピをしていきました。
──ギターも耳コピで覚えられたんですか?
緋月 ギターもそうですね。譜面を読むのがめんどくさくて(苦笑)。
──(笑)。基礎はお父様が教えてくれたんですか?
緋月 そうですね。タブ譜の読み方などは父が教えてくれました。バンドメンバーと初めてスタジオに入った日も父が着いてきてくれていたんですよ。一通りの楽器ができるので「ドラムはこうだよ」とメンバーに教えて、帰宅して(笑)。だから最初のコーチは緋月家のお父さんです(笑)。
──お父様すごい。皆さん初心者だったということですよね?
緋月 そうです。だから自宅に帰ったあと、それぞれめちゃくちゃ練習してくれていていました。
──お父様は今回のタイアップが決まったとき、相当喜ばれたのではないでしょうか。
緋月 「え?嘘?」って感じでした(笑)。『異世界のんびり農家』も追ってるらしくて。母もるんるんしながら、放送の一週間くらい前から予約していました(笑)。
──緋月さんの最初のファンがご家族なのかもしれないですね(笑)。ところで、先ほど『けいおん!』のお話がありましたが、その後ハマったアニメはありますか?
緋月 最近だと『ぼっち・ざ・ろっく!』です。当時の『けいおん!』の記憶が蘇って、ああ、バンドやりたい!って思いました。
──いつか『ぼっち・ざ・ろっく!』のカバーも聴いてみたいです。
緋月 実はリスナーさんからも今そのリクエストが一番多いです(笑)。
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