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INTERVIEW

2023.03.08

青山吉能が“わたし”に出会い“わたし”を探す旅の1枚――1stアルバム『la valigia』を語り尽くす

青山吉能が“わたし”に出会い“わたし”を探す旅の1枚――1stアルバム『la valigia』を語り尽くす

声優アーティスト・青山吉能が、ソロとしては初のCD作品となる1stアルバム『la valigia(読み:ラ ヴァリージャ)』を、3月8日にリリース。ヒグチアイが作詞・作曲を手がけた、青山の内面をそのまま描き切ったかのようなミドルナンバー「透明人間」をはじめとする新曲7曲に、これまで配信シングルとして発表してきた3曲を加えた計10曲を収録。さらにパッケージ版には、2021年12月に自主企画として開催した初のワンマンライブで披露された「たび」も収められた。多種多彩な楽曲を歌うなかで、青山の心はどう動き、どんな挑戦を経てこの1枚を作り上げたのか――その裏側に迫る。

INTERVIW & TEXT BY 須永兼次

たくさんの出会いや挑戦を通じて、青山が本作で得たものとは

――ソロデビューから早1年。『la valigia』は非常に充実した1枚となりましたが、制作自体はいつ頃から動きだしたんでしょう?

青山吉能 これが実は、これまでの配信シングルのときと同じく結構ギリギリで……完成した今だから言えるのですが、制作途中で「あれ?3月に出すって聞いていたけど、延びたのかな?」と思ったくらいでした。

――そんなにですか(笑)。

青山 このアルバムの発売日の“3月8日”という日付は、世の中の99.9999パーセントの人にとってはただの“3月8日”ですけど、私と私が大事に思っている人たちにとってはとても大切な日なので、この発売日をないがしろにしたくない気持ちが強くて。なので心配もありつつ、割とギリギリのタイミングで制作が始まってからは、怒涛のレコーディングラッシュでした。

――以前の取材で「まだ形にできていない曲がある」とお聞きしていたので、てっきり徐々に進めていたものだと思っていました。

青山 ただ、制作自体は始まってはいなかったのですが、おっしゃるように配信シングルの制作時に募集したデモの中から「いつか歌いたい」と思っていたものがいくつかあったので、そういった楽曲も今回収録しています。逆に、今まで集めたデモの中にはなかった「ライブを想定した曲」、みんなで一緒にアクティブに動けるような曲としてイチから制作したのが8曲目の「STEP&CLAP」で……その発注を行ったのが、12月末くらいかな?

――おー……(笑)。

青山 「おー……」ってなりますよね(笑)。楽曲が届いたのは1月下旬で、その2日後にレコーディングして……という流れでした。なので2月8日に行ったアルバムの完成記念配信(※YouTubeの公式チャンネルで生配信された「青山吉能 1stアルバム発売1か月前生配信!」)のときは、本当に完成したばかりだったんですよ。

――そんな本作のタイトル『la valigia』は、イタリア語で“キャリーケース”や“旅の準備”といった意味をもつ言葉です。

青山 元々「旅」というテーマを設定して制作してはいたのですが、最初にざっくりと「こういうタイトルだったらいいなぁ」と考えていたのは漢字2文字の言葉だったんです。ただ、アルバムの楽曲が徐々に出来上がっていくなかで、その言葉とアルバムの内容が離れていっているように感じて。プロデューサーからも「外国語っぽいタイトルにしたい」と相談があったので、改めて一生懸命考えた結果、このタイトルになりました。

――そのタイトルが航空券風にデザインされているジャケットも、非常にお洒落ですよね。

青山 素敵ですよね。このチケットは、1stデジタルシングル「Page」のときから信頼しているデザイナーさんが手作りされたもので、それを写真とかと一緒に並べて撮影したんです。マスキングテープのちょっとしわがかっている感じも、すごくリアルでお気に入りです。テイチクオンライン限定盤のジャケットには、チケット部分に「SEAT 0308」と記されていたり、細かいところにまでこだわっていただいたので、ぜひそういうところも見ていただけたら嬉しいですね。

――さて、ここからは本作収録の新曲について、1曲目の「Sunday」から順にポイントなどをお話いただけますか?

青山 はい。まずこの「Sunday」は、実は2ndデジタルシングル「あやめ色の夏に」の制作時に迷っていた2曲のうちのもう1曲のほうなんです。

――あのとき「ほぼほぼ決まり」だったほうの曲!

青山 そう!そこで私が「あやめ色の夏に」をゴリ押しして、ちゃぶ台を返ししてしまったんですけど……(苦笑)。曲調、全然違いますよね?

――違いますね。この曲も、2ndデジタルシングルがリリースされた7月に似合いそうな曲調ではありますけれども。

青山 だからこそすごく悩んだのですが、あのときは「今の私が表現したい夏はこっち」ということで「あやめ色の夏に」を選んだんです。ただ「Sunday」も楽曲としての完成度がすごく高いし、「青山吉能が歌ったら絶対に最高のものになる」という謎の自信があったので、今回のアルバムに収録できるよう私からお願いをしました。この開けていく感じの曲調がアルバムの幕開けにもすごくピッタリだと感じたんですよね。それとこの曲と同じく馬瀬みさきさんが作詞・作曲・編曲をしてくださった7曲目の「Sweetly Lullaby」もすごくいいんですよ!今回のアルバムではたくさんの収穫があったのですが、なかでも馬瀬みさきさんに出会えたことは、自分の中でも大切な経験になりました。

――そこからアルバムは「あやめ色の夏に」が続いて、3曲目は新曲の「moshi moshi」です。

青山 この曲は、このアルバムの中でも飛び抜けてユニークな曲になっていて。曲単体で聴いても気になる存在なのに、アルバム1枚を通して聴いた後にも頭に残っていて、もう1回聴きたくなっちゃうんです。こういった語り入りの楽曲を歌う経験は、キャラクターソングを含めても今までなかったのですが、最近はポエトリーリーディング的な楽曲が流行っているので、せっかくならそれを“自分の言葉”で表現してみたくて。なので私も少しだけ作詞にも関わらせてもらって、雨野どんぐり先生との共作という形になりました。

――歌詞には今回、どのように携わられたんですか?

青山 デモの段階からついていた歌詞の世界観がすごく良かったので、それをもっと“青山言葉”にしてわーっと書いたものを、どんぐり先生にお渡しして、文字の当てはめ方や語尾の落とし方などの技術的なところを整えていただきました。自分の魂をより込められる歌詞になったと思います。

――無機質ながらも圧を感じるような歌の入り方も印象的だったのですが、そこもレコーディングで気をつけたポイントだったのでしょうか。

青山 そうですね。こういう重たい歌詞は、スーっと、リニアモーターカーのように歌うと良さが出ると思ったので、とにかく「圧はあるけど、熱が入りすぎないように」というのを心がけました。それを表現するのはすごく難しかったのですが、逆に普段よりも体力は使いませんでしたね。

――神経は使ったけど、体力面ではそこまで。

青山 はい。それは多分、「楽曲によっては、全力が必ずしも正義なわけではない」ことに気付いたからかもしれないです。今までの私は「何ごとも全力で取り組むことが美学なんだ!」と思っていたのですが、例えばこの曲を超熱血で歌ったら、この曲が持つ独特の雰囲気を壊すだけだと思うんです。ちなみにこの曲、実はこの次に収録されている「Mandala」と同じ日にレコーディングしたんですよ。私はスタンス的にそれまで1日2曲録ることはあまりなかったのですが、スケジュールの関係もありまして(笑)。

――その「Mandala」は、夜の街をイメージさせるような、大人なシティポップになっています。

青山 この曲はデビュー曲「Page」を書いてくださった矢吹香那さんと前口ワタルさんのタッグに作っていただいたので、そもそも存在だけでエモいんですよ。しかもこの曲は「あのときよりも大人になった女性」をテーマに作っていただいたもので、同じ日に「moshi moshi」の歌を録るなかで力を入れすぎない「等身大」の歌い方を見つけたおかげで、“大人の女性”像をすんなり設定することができました。

――その大人感を出すために、ポイントにされたことはどんなことでした?

青山 レコーディング前に、年齢的なものではなく概念的な“大人”というものについて考えてから臨みまして。“余裕のある人”を表現したいなと思ったんです。実際歌っていくなかでも、その余裕感をちゃんと表現できた気がしています。

ヒグチアイが“青山吉能”と真摯に向き合って描いた「透明人間」

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