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INTERVIEW

2023.03.08

青山吉能が“わたし”に出会い“わたし”を探す旅の1枚――1stアルバム『la valigia』を語り尽くす

青山吉能が“わたし”に出会い“わたし”を探す旅の1枚――1stアルバム『la valigia』を語り尽くす

ヒグチアイが“青山吉能”と真摯に向き合って描いた「透明人間」

――そして「My Tale」を挟み、6曲目は雰囲気をガラッと変えるピアノバラード「ツギハギ」です。

青山 ピアノバラードは私の原点でもあるので、すごく歌いたかったんです。この曲は「Page」制作時のデモの中にあったもので、今回のアルバムに収録した新曲の中で最初にレコーディングしたぶん、気合いも入りましたし、レコーディングではプロデューサーのOKを押しのけて「もう1回やらせてください!」とこだわった部分が、『la valigia』の中でもダントツに多かったです。

――OKが出ても、自分の理想に届くまでこだわられた。

青山 はい。この曲も全力で感情を出しすぎるのは合わないと感じたので、気持ちの乗せ方にも気を使いましたし……。アルバムの中だとバラード曲は箸休めのように捉えられがちだと思うのですが、すごくこだわって録った曲なので、中盤のポイントとして聴いてもらえたら嬉しいです。

――それに続く7曲目「Sweetly Lullaby」で、今度は世界が一気に明るく変わります。

青山 ここからまた新しい章が始まるイメージですね。それまで私のプロジェクトでは作曲家の方とお会いする機会がなかったのですが、この曲のレコーディングには馬瀬さんがいらっしゃって、ボーカルディレクションもしてくださったんです。だから今まで以上に「ちゃんと音楽をやっている感じ」がしました(笑)。例えば「サビのメロディがここで展開する理由」みたいなことって、作った本人にしかわからないじゃないですか。

――たしかに。

青山 でも、この「Sweetly Lullaby」では馬瀬さんご本人とディスカッションしながら作ることができて、それがすごく楽しかったんですよ。なので今後の音楽制作でも、できれば楽曲を作ったクリエイターの方の意志を最大限汲み取れる形でやっていきたいなと思いました。

――ということは、馬瀬さんとのやり取りで“育った”と感じたところもかなりあった?

青山 もう、全編そうと言っていいくらいです!なかでも特に変化したのは、2コーラス目中盤にあるスキャットのパートですね。スキャットって「楽しくてつい歌っちゃう」みたいにノリで出てくるものらしいのですが、私はそんな経験がまったくなくて、「楽譜どおりに決まった音をなぞる」ことばかりをやってきたんです。だけどその部分も馬瀬さんに導いていただけたおかげで、すごく楽しく歌うことができて……「ディレクション力、すごっ!」って思いましたし(笑)、元々好きだった曲がさらに好きになりました。

――その楽しい流れを引き継ぐのが、先ほどライブを見据えて作られたとお話のあった、8曲目「STEP&CLAP」です。

青山 「STEP&CLAP」は、本当に“楽しさ推し”みたいな曲ですね。ライブで皆さんと一緒に作っていくといいますか、「音源版だともの足りない!」と言われるくらいの曲に育っていくんじゃないかなぁと思いながら、レコーディングでもその場のノリやグルーヴ感を大事に歌いました。今のところはこの楽曲が、私の作品の中で一番の“ライブ感”がある音源になりますが、もしライブでこの歌をうたう機会があったら、これを超えることが課題の1つだと思っています。

――そしてここでまた雰囲気をガラッと変えるのが、アルバムのリード曲となる9曲目「透明人間」です。この曲はヒグチアイさんが作詞・作曲を手がけられていますね。

青山 そうなんです。発表されたときにみんな「わー!」ってなってくれて嬉しかったです(笑)。

―そんなこの曲の制作のプロセスについて、改めてお聞きしてもいいですか?

青山 はい。さっきもお話したように、もっと作家さんとやり取りしながら作品を作りたい気持ちがあったので、ヒグチさんに曲を書いていただけることが決まったとき、「ヒグチさんに青山吉能の人生を、余すことなく描いてほしい」と思ったんです。それでまず制作に向けて顔合わせをさせていただいて、その後、二人だけでお茶に行ったんですよ。

――そこで、さらに深い話をされた。

青山 はい。ヒグチさんが制作ノートみたいなものを取り出して、お茶をしながら色んなことを聞いてくださったんです。それこそ「青山さんには兄弟はいるの?」みたいな他愛もない話から、声優業や仕事への取り組み方みたいな深い話まで……2時間くらいぶっ通しでしゃべり続けまして。それで「わかった!これで書いてくるね!」と言って颯爽と去って行かれたんです。それから1ヵ月くらい経った頃に「透明人間」という曲名のデモをいただいて、歌詞を見て歌を聴いたらもう完璧で……「どうしよう?」と。

――「どうしよう」?(笑)

青山 やっぱり「あ、ここはこうして……」みたいに音楽家っぽいことを言いたいものじゃないですか(笑)。でも、そんな余計な言葉がいらないくらい完璧だったんです。しかもヒグチさんはレコーディング当日にも来てくださって。「“青山吉能”の言葉として歌詞を書いたので、“嘘”とか“正義”に違いがあったらダメだから」ということで、「私はここの箇所はこういう気持ちで書いたんだけど」みたいに細かく伝えてくださって……でも、どこにもなーんの問題もないんですよ!特に、自分ではそんなに深刻に考えていなかった「私ってなんだろう?」という漠然とした悩みを、すごく綺麗に汲み取ってくださったことには、本当に驚きました!

――それはこの楽曲のメインテーマのような要素だと思うのですが、それも特に青山さんから「書いてほしい」と言ったわけではなかった。

青山 そうなんです!別にそれは深刻な悩みとかではなくて、例えて言うなら「明日の夕飯、何にしようかな?」程度のものなんです。でもそれを、お茶したときの「自分の仕事はすごく多岐にわたっているけど、本当の私ってなんだろう?」とか「誰が見ている私が正しいんだろう?」みたいな話を受けて、こんなにも鮮やかな言葉にしてくださって……もう、その通りすぎました!

――聴く側としても、昔から青山さんを知っている方がこの歌詞を目にすると「……そう!」と膝を打つだろうなと感じました。

青山 私との関係値が深ければ深いほど、そう感じるような気がします。そのなかでも一番大事だなと思っているのは、後半にある“あなたはあなたの目を 信じてほしいの”という歌詞です。私はその現場ごとに色んな“私”がいて、それが全部少しずつ違っている。だから、あなたが見た“私”というのは、紛れもない私なんですよ。

――ただ、同時に1番のBメロでは“わかったふりしないで でもあきらめないで そばにいて”とも歌われていますよね。

青山 “わかったふりしないで”は怖すぎますよね(笑)。ただこれも、ヒグチさんが私の話からすくい取ってくれたんだと思っていて……私って両極端の印象を持たれることが多いんですよ。「お調子者」とも「真面目」とも言われるし、「陰キャ」とも「陽キャ」とも言われる。でも、そのどっちを言われたときも「いや、違うし」ってなるんです(笑)。だからこの“わかったふりしないで”というのは、私が何か1つの言葉で当てはめられることに向いていない、ということを表していて。だけど、私について「これは間違っているかな?」と不安にならずに、あなたの目を信じてほしい――ということを伝えたかったんです。それをこの1曲の歌詞にギュッと詰め込むなんて……もう、才能しかない。自分ではこんなに上手く言語化できなかったので、本当にヒグチさんに私の人生を託してよかったです。

――歌うときも、何か特定の感情を意識するというよりも、いい意味で思ったままにという感じで?

青山 本当に思ったまま歌いました。だからこそ、例えばさっきお話した“わかったふり”から始まる部分も、ひと言ずつ全部違う感情で歌えたんですよ。“わかったふりしないで”はすごく突っぱねてるけど、“でもあきらめないで”はちょっと寄り添っているし、“そばにいて”なんてもう「愛してる」と同じじゃないですか?そういう全然違う感情が連なって言葉になっていたので、起承転結のように流れを作るのではなく、1行ごとに全然違う人になっていいとヒグチさんに後押ししていただいて……それでこの“感情モンスター”のような楽曲が出来上がりました(笑)。

――そういう意味でも、この曲もライブで歌ったときの感情を通じて、もう一段化けるところがあるのかもしれません。

青山 実はこの曲、アルバムのテイチクオンライン限定盤に収録されるスタジオライブ映像で歌わせてもらったのですが……そのときの「透明人間」が、もう良すぎて!音源には美しく整えられた良さがありますけど、ライブにはそういう“正しさ”とは違った良さがあるんですよね。すでに音源とはまた違った魅力が感じられる楽曲になっています。

――ちなみに、3rdデジタルシングル「My Tale」のインタビューの際に、自分らしさについて「私よりもファンの皆さんのほうが詳しい気がしている」や「理想が多すぎてたまに自分がわからなくなる」などとおっしゃられていましたが、このアルバムを経たことで青山さん自身は自分らしさを掴むことができましたか?

青山 いや、逆にドツボにハマっているような感じがします。でも今はそれでいいといいますか、それを見つけたら終わりのような気がしているんですよ。「自分がわからない!」「できない!」というマイナス感情が私を強くさせている気がするので、そういう部分と上手いこと向き合いつつ……いつか自分の身や心を削らずにお仕事ができるような日がやってくるまで、削り続けてみようかなと思っています。

“らしさ”を拡張し、さらなる挑戦にも繋がる意欲作。 青山吉能、3rdシングル「My Tale」リリースインタビュー

自身の変化を消化し、変わらぬ強い想いを込めた、始まりの曲「たび」

――さて、アルバムは10曲目に置かれたデビュー曲「Page」で締め括られるのですが、パッケージ版にはもう1曲、2021年12月に行われたワンマンライブのために作られた「たび」も収録されています。

青山 この曲は、あの会場に集まってくれた人と配信を観てくれた人たちだけに向けて書いたラブレターだったので、正直自分の中では音源化を考えていなかったんです。だからあまり簡単に広がってほしくない気持ちがあって……なので今回はパッケージを買ってくれた方だけが聴けるようにしていただきました。

――歌詞は青山さんが自分で書いていますが、レコーディングにあたって久しぶりに歌われるとなると、歌詞の解釈や捉え方も少し変わっていたのでは?

青山 おっしゃる通りです!もう、恥ずかしくて!(笑)。でもそれは、月日が経ったことによる感情の変化と、特に去年から今年にかけての身の回りを取り巻くものの急激な変化が原因だと思うんですよ。それこそ2021年12月4日のライブでこの曲を歌ったときは、「こんなに最高の曲は、もう書けない!」という気持ちだったので。ただその頃は、昔から私のことをずっと好きでいてくれるファンの方が多かったのですが、今はありがたいことに、最近私のことを知ってファンになってくださった方がすごく増えたんです。だから当時の気持ちで歌詞を書いた「たび」を今レコーディングすると、誰に向けた曲なのか意味が変わってしまうようで、恥ずかしさを感じてしまったんです。なので今回はまず、「“ファン”ってなんだろう?」ということをすごく考えました。

――その考えは、レコーディングまでにはまとまりましたか?

青山 はい!歌詞もそのままなので、「たび」がラブレターであることに変わりはありません。ただ、私は昔から「(ファンは)新規も古参も関係ない」と言っていますが、愛の深さに差はあると思っているんですね。だから皆さんを平等に愛するために、自分も皆さんへの理解を深めたいと考えていますし、ファンについてはもちろん「愛ってなんだ!?」とか「推してるってなんだ!?」みたいなことを自分の中で整理してからレコーディングしました。それとこの曲、元々ライブのために作った曲ということで、今回のレコーディングもライブ感のある環境でやらせていただいたんです。

――どんな方法を取ったんですか?

青山 演奏してくださる方々と同じスタジオに入って、いっせーのせで録ったんです。もしこれが通常の録り方だったら、多分、迷ってしまって歌えなかったと思いますし、ミュージシャンの皆さんの呼吸を感じられたおかげですごくやりやすさも感じました。

――度々ライブにまつわるお話が出てくるので、今度はお客さんの前でのライブも、どうしても期待してしまうのですが……。

青山 そうですね……そもそも普通はアルバムがリリースされたら、その作品を引っ提げたツアーが発表されるものだと思うんですけど、私はそういう「アルバムが出たら、次はライブだよねぇ」というのが当たり前みたいな風潮をぶっ壊していきたいんです。

――「当たり前にあるもんじゃないぞ」と(笑)。

青山 そう。それにライブ自体とても時間とコストがかかるもの……という意味でも、当たり前のものではないんですよね。しかも私のプロジェクトは、“手弁当”をテーマに自分でワンマンライブを主催したことから始まっているのもあって、「皆さんと一緒に作る」という意識が特に強いんです。だから、ほかの声優アーティストさんたちとはちょっとスタイルが違うのですが、そのことをあまり悲観せず、「これが青山吉能のスタイルなんだなぁ」みたいに捉えてもらえたら嬉しいです。

――逆に言えば、リリースに関係なくてもいいタイミングがあれば、ライブをやっていきたい?

青山 そうですね。やっぱり文脈って超大事じゃないですか?そういうことも考えながらですかね……何ごとも「やらなきゃいけないから、やる」が一番しんどいと思うので(笑)、自分で自分のことを上手くプロデュースしながら、頑張っていきたいです。


●リリース情報
1st ALBUM
『la valigia』(ラ ヴァリージャ)
3月8日発売

■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら

【通常盤】

品番:TECI-1797
定価 税込3,300

<CD>
1.Sunday
作詞・作曲・編曲:馬瀬みさき
2.あやめ色の夏に
作詞・作曲・編曲:永塚健登
3.moshi moshi
作詞:雨野どんぐり・青山吉能 / 作曲・編曲:宮原康平
4.Mandala
作詞・作曲:矢吹香那 / 編曲:前口ワタル
5.My Tale
作詞:タイラヨオ / 作曲・編曲:hisakuni
6.ツギハギ
作詞・作曲・編曲:トミタカズキ
7.Sweetly Lullaby
作詞・作曲・編曲:馬瀬みさき
8.STEP&CLAP
作詞:渡邊亜希子 / 作曲・編曲:小幡康裕
9.透明人間
作詞・作曲:ヒグチアイ / 編曲:木原良輔
10.Page
作詞:青山吉能 / 作曲:矢吹香那 / 編曲:前口ワタル
パッケージ版ボーナストラック:たび
作詞:青山吉能 / 作曲:野田晶子

【テイチクオンライン限定豪華盤】

品番:TEI-280(BD:TEI-281)
価格:¥8,800(税込)

豪華版内容
・通常盤
・特製アクリルスタンド
・青山吉能書き下ろし毛書レプリカポスター
・未公開写真ポストカードセット
・特典ブルーレイディスク (デジパック仕様)

<Blu-ray>※総収録時間58分
・Music Video
Page Music Video / あやめ色の夏に Music Video / My Tale Music Video
・Yoshino Aoyama Studio Live Session
レコーディングメンバーとのスタジオセッションライブをシューティング。
ソロアーティストとしては初となるライブ映像は必見!
透明人間 / Sweetly Lullaby / Page
・Yoshino Aoyama’s Making & Documentary
ミュージックビデオ撮影時とレコーディング時のオフショットを交えたメイキングパートと、青山吉能のロングインタビューで構成された約30分のメイキング&ドキュメンタリー映像。

【アニメイト限定盤】
品番:TEI-286
価格:¥4,400(税込)
内容:通常盤(TECI-1797)+バンドルCD-R(TEI-283)

<バンドルCD-R>
・通常盤収録曲inst ver.10曲
・Special track(アニメイトver.)

【ゲーマーズ限定盤】
品番:TEI-287
価格:¥4,400(税込)
内容:通常盤(TECI-1797)+バンドルCD-R(TEI-284)

<バンドルCD-R>
・通常盤収録曲inst ver.10曲
・Special track(ゲーマーズver.)

関連リンク

青山吉能 レーベルサイト
https://www.teichiku.co.jp/artist/aoyama-yoshino/

青山吉能 公式Twitter
https://twitter.com/Yopipi555

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