TRUEがシングル「rebind」をリリースする。自身にとって18thシングルとなる本楽曲は、TVアニメ『もののがたり』のEDテーマで、来年のTRUEデビュー10周年に向けた最初の一歩ともなる。それにふさわしく、大きな愛のメッセージが込められた楽曲を、TRUEは豊饒な表現力で聴く者に届けていく。インタビューではシングル収録曲について聞くなかで、TRUEが胸に抱く、アニソンアーティストとしての矜持や理想にまで話は広がっていった。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司
――先ほど別室で待機していたら、「rebind」についてTRUEさんが「過去イチ」とおっしゃっているのが聞こえてきたのですが、よろしければ何が「過去イチ」なのか教えてもらえますか?
TRUE あ(笑)。ジャケットの話をしていたんですよ。実は今回、デビューの頃からアートワークを手がけてもらっていた乗上拓摩さんにお願いしていて。同じ方と作り続けているとどうしても慣れが出てしまうということで一度は離れていたんですけど、久々にタッグを組ませていただいたんです。そうしたらすごく新鮮な気持ちで取り組めて、素晴らしい作品ができたんですね。過去イチ、「お気に入り」の作品になりました。実は、今まで様々なアートワークを作ってきたなかで最高に気に入っていたアートワークは「フロム」なんですけど、そのときにお願いしたデザイナーさんでもあります。
――以前、ファンクラブのコラムでジャケットの話題が上がったときにもおっしゃっていましたね。
TRUE 「フロム」は、妖精兵器と呼ばれる少女たちが愛する人を守るために命を賭けて戦場に行くという、『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』のEDテーマでした。その主人公のクトリをジャケットではモチーフとしていて、育てられた巣の中で大人になった私が丸くなって寝ている、というものだったんですね。
――歌詞でも“おかえりなさい”と歌っていました。
TRUE あのとき、作品と私の楽曲を理解していただいたうえでのアートワークに感動しました。時を経た今回の「rebind」では、大切な人との記憶が飛び去っていく、けれどもそれは決して悲しいことではないから穏やかな表情で見送る、という表現を見せてくださいました。楽曲の解釈をアートに置き換えるセンスが素晴らしいですし、お洒落なんですよね。楽曲に新たなエッセンスを与えてくれるので、曲がどんどんと広がっていきますし、そこはとても嬉しいです。
――楽曲をよく理解してくれるデザイナーと素晴らしい共同制作ができた、ということですね。では、その「rebind」について、TRUEさんから改めて制作の経緯やコンセプトを教えてもらえますか?
TRUE まず、EDテーマをお願いしたいというお話をいただいてから原作を読ませていただいたんですけど、本当に素晴らしい作品だったので二つ返事でお請けさせていただきました。その段階で先方から、バラードであること、作曲は劇伴を担当されているXELIKさん、というお話はいただいていたんですけど、『もののがたり』ってジャンプ作品の王道的な、真っ直ぐな作品だと私は思ったんですね。人と人との絆や愛が描かれていて、とても清らかなマンガだと受け取りました。なので、おのずと私の役割も見えてきたというところはありました。XELIKさんとは初めてのタッグでしたが、第一稿をいただく前に、温かい気持ちになれるようなEDテーマにするのがいいのではないか、という共通認識は持てました。ただ、そのうえで+αしてTRUEの音楽にしなければいけないので。TRUEサイドのディレクターさんも参加しながら、XELIKさんが表現したいもの、私がアーティストとして表現したいものに向けて、少しずつブラッシュアップを重ねていき、かなり時間をかけてやり取りをしましたね。
――聴いたとき、感動巨編映画の主題歌のような印象を受けました。そういった雄大さは最初からイメージとして持たれていましたか?
TRUE 劇伴よりだったサウンド感をシングル曲として組み上げることができたのは、アレンジしていただいたh-wonderさんの力がすごく大きかったと思います。XELIKさんが作られるメロディはすごく品があって、人となりがメロディの流れからわかると感じました。ただ、劇伴のように優しく柔らかい曲ではなく、私という人間の魂を歌詞に乗せられるような、強さのあるサウンドにしたかったんです。h-wonderさんは同じ事務所の先輩後輩ということもあり、普段から仲良くさせていただいていますし、TRUEの音楽がどうあるべきか、どうしたらどこへ進んでいくのかをすごく理解してくださっているんですね。それを踏まえたうえでh-wonderさんが構成してくださったと思います。私が若かりし頃に世の中でヒットしていた、私が聴いて心打たれたバラードを思い出しました。なのでとても感謝しています。
――魂を乗せるような、というお話でしたが、作詞で意識した点についても教えてください。
TRUE 最初の着想は、ヒロインの(長月)ぼたんを見守る付喪神の婚礼調度たちでした。子を見守る親のようなんですよね。『もののがたり』って緻密なアクションが描かれていますし、(主人公の岐)兵馬とぼたんのラブストーリーもありますけど、それだけではなく。登場人物たちの愛すべてに理由があり、それが行動の根本となって物語が展開していくので、ぼたんと婚礼調度で曲を作りたい、というところからのスタートでした。そのなかで、イメージとして水引の蝶結びが出てきました。
――ジャケットの蝶はそこからなんですね。
TRUE それに家族って、結んだ紐が解けてしまったとしてもrebindできる、結び直せると思っているんです。何度もぶつかり、ほどけたら何度も結び直して、そうやって絆は強くなっていくんじゃないかな。普遍的な家族の愛って絶対に絶えることがないものですし、それをテーマにすることでたくさんの人の心にも届き、さらには作品がより広まることを願ってもいました。そういった点から最終的に、誰しも誰かを愛したことがあり、大切にされたことがあり、という内容の歌詞に辿り着きました。その、誰かと誰か一組の愛を、夫婦の姿を借りて描いたのも、皆さんにわかりやすくストレートに届くんじゃないかと思ったからです。なので、ある夫婦が出会い、子供をもうけ、その子が巣立ち、やがて片方が片方を看取る、という一生を描きました。
――コンセプチュアルな歌詞ですが、書き進めるのは苦労しましたか?
TRUE 今回は、思っていることを言葉にしてぶつけていく作業だったので、心の迷いなく書き進められました。それはやはりXELIKさんやh-wonderさんの力であり、作品の力でもあると思います。
――過去の作品を振り返ってみても、割と歌詞はすぐ形にできるタイプですか?
TRUE 作品によると思います。「DREAM SOLISTER」(『響け!ユーフォニアム』OPテーマ)は7回、8回とリテイクを重ね、監督とディスカッションを重ねながら書き直しましたし。それはTRUEとしてデビューしたばかりであったのと、当時は自分と北宇治高生をイコールにできなかったんですよ。自分の中にも高校時代と変わらない気持ちがあると気づけば(歌詞は)出てくるのに、なかなか向き合うことができずに時間がかかってしまった、という感じでした。今までで最も時間がかかった作品で……、大変だった!(笑)。でも、「Sincerely」(『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』OPテーマ)は割と時間をかけずに書き上げられました。ただ、かけた時間が良いものを作るわけではないので。「rebind」に関しても、等身大の言葉を綴ったからすんなりと書けたんだと思います。やっぱり、アニメの主題歌だからといって、ただアニメの曲を作るのではなく、私の色も曲にプラスしなければならない。そうでなければ私が歌う意味はないので。それに、私に任せてくれた作品に対しても失礼だと思います。もちろん、作品へのリスペクトが一番にはありますけど、私は必ず自分自身の想いを曲にするようにしているんです。
――アニソンアーティストであるTRUEとしての矜持ですね。
TRUE なので私の中では、アニソンでありながらアニソンではないんです。実は「rebind」では、私がMVに出演しないという、新しい試みをしています。それも、せっかく『もののがたり』という真っ直ぐな愛を描いた作品と出会い、それによって「rebind」という曲を生み出すことができたので、曲単体でも大きく育ってほしいという気持ちでした。それが作品へのご恩返しにもなると考えているんです。
――先ほども、曲が広がることで作品も広げられる、とおっしゃっていましたが、そこを目標としているわけですね。
TRUE 最近、ポップスの方がアニメの主題歌を作られることが多いですけど、そうすると作品から離れたところできちんと楽曲が育つんですよね。それによってアニメにも還元されるんです。私はアーティストとして、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品にものすごく助けられました。伝えるための力をもらったと思っています。でも、私にもっと力があれば、私の楽曲を通して様々な人が作品にもっと触れてくれたかもしれない、ともすごく感じていて。作品からもらうものがあまりに多すぎて、「私はどれだけのものを与えることができたんだろう」という気持ちにもなりました。感謝半分、悔しさ半分、みたいな。アニメに関わるすべてのアーティストは、その相乗効果を生み出さなければいけないと常々考えているんです。一方で、「DREAM SOLISTER」の「音楽は続いていく」というメッセージ、「Another colony」(『転生したらスライムだった件』EDテーマ)の「負けちゃいけない」というメッセージは作品を飛び越えて、楽曲の「強さ」として育ったことをここ数年で実感していますし、アニソンの可能性も感じとれるんです。だから私が理想とするのは、「自身に力があるアニソンシンガー」ですね。これからも成長していける楽曲を生み出していきたい、と願っています。
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