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INTERVIEW

2023.01.20

福山 潤、『吸血鬼すぐ死ぬ2』オープニング「NEW DRAMA PARADISE」リリース! 人が作っているものを良い形で伝えることが“僕の表現の場”

福山 潤、『吸血鬼すぐ死ぬ2』オープニング「NEW DRAMA PARADISE」リリース! 人が作っているものを良い形で伝えることが“僕の表現の場”

福山 潤と『吸血鬼すぐ死ぬ』が再びタッグを組む!2021年に放送されたアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』で新横浜を舞台にバンパイアハンター・ロナルドとドタバタの日常を過ごす吸血鬼ドラルクを演じる福山は、同作のオープニング「DIES IN NO TIME」で作品の顔となる歌声も響かせたが、そんな『吸血鬼すぐ死ぬ』が第2シーズンに突入。そんなアニメの幕開けを再び飾る福山。新たなオープニングである軽快なダンスチューン「NEW DRAMA PARADISE」を楽しみながら作ったという彼に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

「この数年で音楽活動に対しての肩の力が抜けました」

――音楽活動をずっとされてきた福山さんですが、メジャーデビューから5年ですね。

福山 潤 早いもので。

――デビュー以降音楽の聴き方や受け止め方などに変化はありましたか?

福山 ポニーキャニオンさんでやらせていただく以前から音楽をやっていましたが、その出発は「今までやってこなかったことや苦手なこともやっていこう」という意識があったんです。でもこの5年間はまた少し変わってきていて。特にここ2年くらいは肩の力がより抜けてきたかなぁ、と思います。なかでも今回5枚目のシングルになるときには、4枚目の「DIES IN NO TIME」の作り方がかなり面白かったので、その延長線上にある感覚でした。これまで自分の中での「こうしなきゃ」というものは少ないほうではあったんですが、今出来る面白いものをやりましょう、というような形になってきました。

――肩の力が抜けてきたというここ2年はむしろコロナ禍に入って様々な制作過程の変化もあり、できなくなったことも多かった時期かと思います。そういうなかでも楽になっていったのでしょうか。

福山 その環境だったからかもしれないですね。僕はコロナ禍に入ったときにはまさにライブ準備が佳境にあった時期だったんです。準備をしていて、ライブのリハーサルもして、演出はもちろん舞台装置も着々と準備していたなかで本番1ヵ月くらい前に中止になってしまって。それでも何か代わりのことができないかということで“P’s LIVE! –Boys Side-”や配信ライブも行い、後ろ向きな意味ではなく、そのなかでできることをやれたら、それがベストなんだろうという考えになったんです。そのタイミングでたまたま『吸血鬼すぐ死ぬ』のための「DIES IN NO TIME」が制作も収録も出来上がりも含めてすごく面白くて。カップリングも面白いものが出来ました。では今作はどうしましょうか、ということで動き出しました。実は「NEW DRAMA PARADISE」は出来上がってからだいぶ時間が経っているのですが、その曲と改めて向き合うのも楽しかったですし、それがこの期間に辿り着いた1つの答えであり成果なのかなと思うんです。そういった部分で肩の力が抜けてきたんだろうと思いますね。

――「面白かった」のはどういった部分でのことだったのでしょうか。

福山 まず、「こうすれば良かった」という改善点はいいんですが、それが後悔ではないものとして出ればいいかなぁ、と思ったんです。「NEW DRAMA PARADISE」に関してはそれが大前提としてあって、制作はタイトなスケジュールだったのですが、すごく楽しい作業でした。やっぱり(作詞の)松井洋平さんとの作業やチームの力が大きいです。松井さんはクリエイターであり、作詞家であり、僕の翻訳家でもあるんです。作詞に関してのことや持っていきたい方向など僕の言いたいことを通訳してくれるし、僕の言葉をかなりの純度で理解してくれるんです。だから松井さんの存在はとても大きいです。

――そして今回は作曲にfhánaの佐藤純一さんを迎えられています。福山さんから楽曲に対してのオーダーはあったのでしょうか。

福山 僕からのオーダーはなかったです。アニメのタイアップなので当たり前ですが、制作側からのオーダーもありますから。いわゆる吸血鬼といえばロックでハードでゴシックっぽいというイメージがあると思うのですが、「DIES IN NO TIME」はジャジーで、みんなで聴いて楽しく幸せになるようにという制作からのオーダーがあって出来上がりましたし、今回はダンスミュージックになりました。前回はロナルドとドラルクを主眼に置いた作詞だったのですが、今回はその2人を中心に置くのではなく登場人物たちが出て来るような曲と歌詞にしてほしいという明確なオーダーがあったんです。そこからの出発でした。

「NEW DRAMA PARADISE」は新横浜の歌!?

――届いたものを聴かれた際にはどのような感想がありましたか?

福山 アニメ制作側から届いた曲のイメージがジェームス・ブラウンの「リビング・イン・アメリカ」だったんです。それを聴きながら松井さんと作詞のイメージを作っていたときには「これを聴いていると、この世界観しか浮かばないよね」となり、聴くのを止めたんです(笑)。あくまでもイメージですが、歌があって、コーラスがあって、クラップをしてっていうものだと思う、ということで、作詞の世界をどう作っていくかを話し合いました。曲が上がってから歌詞をつける過程としてこれまではゼロから僕が作りますとか、松井さんに歌詞構造の方程式だけ作ってもらって僕がそこに言葉を乗せていく、など色々な方法でやっていたんです。色んなパターンをやったんですが、今回はスケジュール的に厳しいということですべて松井さんにお任せをしました。ただその前の段階で、松井さんへ僕の持つイメージの共有と言葉出しをしていたので、僕自身は作詞作業自体からは外してもらったんです。実際に上がってきた作詞は99%松井さんが作ったもので、2か所だけ僕が手直しをしているというものになります。さすがだなと思ったのが、打ち合わせで僕が言った言葉がたくさん入っているんですよね。そういったところも含めて、今回はこのスタイルで良かったなと思っています。最初に作る作詞って言葉をなかなか削れないんですが、これまでは音数でなんとかなっていた部分もあって。でも今回は音数が少ないので、だからこそ音はめも難しかったのですがそこを松井さんがすべて担ってくれたところがあります。

――逆に作業として引いたことで福山さんからご覧になった松井さんの歌詞についても客観視できるかと思います。松井さんの歌詞はどんなカラーがあると感じますか?

福山 ド直球ですよね、松井さんの歌詞って。言葉に対してあまりかっこつけない、というのが正しいのではないかと思います。例えば叙情的や時代を反映したものなど、色々と歌詞へのオーダーはあると思いますが、どの要望に対しても正面からいく。曲と合わせるとさらに「良い歌詞だな」と思えるような歌詞ですよね。あとはどのジャンルにも対応できてしまうところがすごいなと思います。

――その「NEW DRAMA PARADISE」の歌詞は風景描写も出てきますが、アニメの舞台の新横浜を歌っているそうですね。

福山 そうですね、でも明言はしていないんです。

――明言しない理由は?

福山 「DIES IN NO TIME」からの1つの流れですね。吸血鬼というものを撤廃しましょう、カップリングで吸血鬼を入れましょう、と「DIES IN NO TIME」が『吸血鬼すぐ死ぬ」という作品にマッチするし、何よりも「すぐ死ぬ」というネガティブなものをプラスに変えるところが面白いという側面があったんです。今回もなるべく作品に直接関わる言葉はやめましょうとなったもののゼロにするのは違う。それでもなんとか新横浜を入れようと松井さんが頑張ってくれたことで“Sing You Call”を「しんよこ」と発音しましょう、ということになったんです。そうすると色んなものが繋がるよねって。イメージとしては答え合わせでもあるんですよね。“近所のまばゆい都会はミラーボール”って完全に横浜のランドマークタワーですし、新横浜から横浜が見えますから。“見送ってばかりいるけれど”というのも新横浜って新幹線が止まるけれどあまり降りる人はいないですし、降りてもほかの場所に行くための下車なんですよね。そういった形でほかの場所へと行く人たちを見送る駅という立場が見えてくる。結局全部をそういうところで「しんよこ」にしましょう、と。そういう構成にしているので、景色を思い浮かべながら楽しんでもらいたいです。

――そんな松井さんの歌詞で紡がれた1曲。レコーディングに臨む際の目標やテーマを教えてください。

福山 力を抜く、ということを目標にしていましたね。歌に関しては自分の中でできるスキルをどんどん伸ばしていくことに変わりはないですが、加速度的に伸びるわけではないので、そこのところが「DIES IN NO TIME」では作品とマッチしてよく聴こえるようになってもいたんです。さっき言ったような「肩の力を抜く」ではないですが、ボーカルに関しても同じで背伸びせずに歌えたらなとレコーディングに臨みました。

――そしてMVはミュージカル調の作りです。お芝居をしているけれど歌っている、というMVの撮影はいかがでしたか?

福山 MVに対してはずっと一貫して「僕を使って遊んでください」とお話をしています。だから毎回曲が出来ると、ジャケ写の撮影のときなどに監督が来てくださって「今回はどうしましょうか」とお話をしてくださるんです。「今回はこんな感じにしたいんだけど」と聞かれ、「良いですね!ぜひやりましょう」と即決でした。ちなみに今回のMVを「ミュージカル調」と言っていただきましたが、実はちょっと違うんです。

――とおっしゃいますと?

福山 実はこれは「ミュージカル風」のもの風にしている、「ミュージカル風風」なんで(笑)。ミュージカルをイメージしているものをイメージしているMVになっています。そういった二重、三重のフィルターを掛けています。

――撮影で印象的だったことを教えてください。

福山 僕ら自身「芝居面をどのようにしましょうか」と打ち合わせる時間が取れなかったので、劇団単位で募集をしたんです。僕との意思疎通は劇団の人たちとやりながらすればいいし、監督は撮影の前に劇団と意思疎通ができる。劇団にはすでにチームワークがあるからまとまっていますし、限られた時間の中では一番良い形でしたし、非常に短い時間でしたが楽しく作ることができましたね。

次ページ:タイアップでも『吸血鬼すぐ死ぬ』を楽しむ

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