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INTERVIEW

2022.11.28

【連載】第2回:インタビュー・安藤武博(プロデューサー)/「正義」と「狂気」がテーマのRPG「ユアマジェスティ」――RPG×音楽の魅力に迫る!

【連載】第2回:インタビュー・安藤武博(プロデューサー)/「正義」と「狂気」がテーマのRPG「ユアマジェスティ」――RPG×音楽の魅力に迫る!

「Tokyo 7th シスターズ」や「ブラックスター -Theater Starless-」といった作品に加えて、「D4DJ Groovy Mix」のゲーム開発などでも知られる DONUTS GAMESの最新アプリゲーム「ユアマジェスティ」の配信がスタートした。

この作品は24人の王/姫が活躍する、「音楽×RPG」をテーマにしたロールプレイングゲーム。プレイヤーは王に仕える小役人となって、ときに傍若無人な王たちとともに戦いに挑んでいく。「正義」と「狂気」の二面性を反映させたゲームシステムと、すべての王/姫に個別に用意されたテーマソングなどによる、ド派手なバトルが楽しめる作品になっている。このゲームの制作過程や作品に込めた想いについて、DONUTSの執行役員・ゲーム事業部長を務める本作のプロデューサー、安藤武博に聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 杉山 仁

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【連載】「正義」と「狂気」がテーマのRPG「ユアマジェスティ」――RPG×音楽の魅力に迫る!

本作に込められたこだわり


――まずは開発が始まった経緯を教えてください。DONUTS GAMESさんはこれまで一貫してオリジナルタイトルで勝負してきた会社ですが、今回の「ユアマジェスティ」はどのようにアイデアを考えたんでしょう?

安藤武博(プロデューサー) 前段として、まずは僕がDONUTSにジョインした経緯をお伝えしておきますね。僕は元々スクウェア・エニックスを辞めてフリーのプロデューサーになり、その後現在のDONUTSの事業部を率いることになったのですが、それは「ユアマジェスティ」のディレクターも担当している、塚口綾子(元コーエーテクモゲームス)とゲームが作りたかったからなんです。最初は僕が塚口に「DONUTSを辞めてフリーになってほしい」という話をしたのですが、「それは無理。そっちがDONUTSに来ればいい」という話になって(笑)。

――なるほど。

安藤 それで4年ほど前に、塚口とのタッグで初めて手がけたのが「ブラックスター -Theater Starless-」でした。ですから、あの作品が3周年を迎えて「次は何を作ろうか?」という話になったのが、「ユアマジェスティ」の始まりです。その際、塚口から、今度はターゲットが女性に限定されない作品はどうかという話が出て、それなら「ロールプレイングゲームだな」と。塚口は前職のコーエー時代から「金色のコルダ」や「アンジェリーク」、「遙かなる時空の中で」など女性向けのシミュレーションゲームやアドベンチャーゲーム(ネオロマシリーズ)を手がけた人ですから、その塚口が男女で楽しめるRPG作品を手がけるのは、プロデューサーとしてとても魅力的だと思いました。また、僕らは今6本ほど手がけているうちの3つが音楽ゲームなので、「DONUTS GAMESは音ゲーの会社」と思っている人も多いかもしれません。

――たしかに、「Tokyo 7th シスターズ」なども展開していますし、「D4DJ Groovy Mix」のゲーム開発も担当されていますからね。

安藤 そうなんです。ただ、僕らとしては、元々特定のジャンルにこだわっているわけではないので、特に日本においてはゲームジャンルの中でもメインの1つになっている「ロールプレイングゲーム」に挑戦したいと思いました。「塚口さんって女の子向けゲームの人でしょ?」と思う人もいるかもしれませんが、全然そういうわけではなくて。じゃあ、実際に塚口が男性もメインターゲットに据えた作品を手がけてもらったらどうなるか、というところから考えていきました。

安藤武博

安藤武博

――「音楽×RPG」というテーマで、CV/歌唱担当を分担したダブルキャスト制にするアイデアはどんなふうに決まっていったんでしょう?

安藤 音楽がテーマの1つになっているのは、我々の強みを生かすためですね。そしてWキャスト制は「ブラックスター -Theater Starless-」のときにとても良かったという感覚があったので、このやり方は崩さずにやりましょうと決めていきました。「ユアマジェスティ」の楽曲は歌のプロでないと歌えないようなものを意識しているので、このシステムが活きていると思っています。

――「演技」も「音楽」も、どちらも素晴らしいものを届けたいということですね。登場キャラクターたちが、正義(セイクリッド)と狂気(タイラント)の二面性を持っているというアイデアについてはいかがですか?

安藤 世の中にすでにたくさんあるロールプレイングゲームを後発のDONUTS GAMESが出すわけですから、差別化されていないと遊んでもらうことはできません。そのために「どうすればキャラが立つか」を塚口と話したところ、今回は「(男女問わず)王でいきたい」というアイデアが出てきました。「ユアマジェスティ」に出てくる王たちは、歴史上の王様やお姫様がモチーフになっていることが多いのですが、そういう人物って、元々キャラがすごく立っていますよね。

――たしかに。

安藤 その生き様自体が、大河ドラマのように物語として語り継がれていて、為政者として名君である部分と、暴君である部分を持ち合わせていたりする。人によっては聖人だけど、人によっては狂人みたいなところが王の魅力だと思ったので、物語やゲームシステムにそれを落とし込めば、面白いことができるんじゃないかと思いました。そこで「正義と狂気」「陰と陽」「白と黒」のような二面性を、物語の世界観やゲームシステムに落とし込むことにしたんです。

――なるほど、人を惹きつけるような派手な存在感のようなものを、「正義」と「狂気」の二面性を使って上手く表現できるんじゃないか、と。

安藤 はい。やっぱり、何かしらの狂気を孕んでる人じゃないと末代まで語り継がれるような存在にはならないと思うんです。それに、ゲームはその2つの要素を同一の世界に共存させることができるメディアでもあるので、「とんでもない強キャラたちのバトルロイヤルができるんじゃないか」と思いました。「ユアマジェスティ」のプレイヤーは小役人と言われる、王に仕える下僕(しもべ)で、基本的には王に「お前がなんとかしろ」と言われる関係です。ですから、戦闘シーンのレイアウトも特殊なものになっていて、プレイヤーである下僕が先頭で盾を持って王を守る一方、王たちはその後ろで「やれ!」と好き勝手に攻撃しています。そして、下僕が耐えに耐えて頑張ったところで、「よっしゃ!そろそろ行ったるわ!」と王たちが出てきてド派手な必殺技を繰り出すのが「ユアマジェスティ」のバトルシステムで。ゲーム内のキャラ同士の関係性が、そのままゲームシステムにも反映されているのがほかにはない特徴になっています。

――そうなってくると、バトルシステムの面でも通常のロールプレイングとはまた違った工夫をする必要があったんじゃないでしょうか?

安藤 一番気をつけたのは、戦闘が地味になりすぎないことでした。王に比べて強いわけではない主人公が前に出ていて「お前が守れ」と言われている状態で戦闘が始まるので、それをトータルで見たときにどのようにカタルシスを感じられるようデザインするか。やはりこれは難しかったです。ただ、ほかのロールプレイングゲームにはあまりない特徴だと思うんですが、「ユアマジェスティ」ではすべての王に主題歌があり、戦闘の中で王が登場する際には楽曲とともにものすごく派手にダメージを叩き込んでくれます。最初の我慢とあとにやってくる派手さによって、トータルで見たときに爽快感や派手さが感じられるように工夫していきました。

――なるほど。「ゲージを3本貯めてから出す最強の必殺技がめちゃくちゃかっこいい!」みたいな発想ですね。

安藤 そうです(笑)。ロールプレイングゲームのバトルシステムでは定番の「貯まると良いことがある」という要素を、作品の世界観に意味のある形で連動させることが1つのテーマでした。「なんで貯めるんだろう?」ということに関して、「僕(しもべ)なんだからまずはお前が前に出ろ」「わかりました!」という建付けになっていて。バトルシステムの面でもキャラクターたちの世界観を楽しんでもらうことを目指していきました。

――そういう作品だからこそ、音楽も非常に大事なんですね。

安藤 その通りです。

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