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INTERVIEW

2022.10.29

【インタビュー】藍井エイル×『SAO』の最強タッグ、再び!n-buna(ヨルシカ)による『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』の主題歌「心臓」で改めて向き合った“藍井エイルの歌”――

【インタビュー】藍井エイル×『SAO』の最強タッグ、再び!n-buna(ヨルシカ)による『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』の主題歌「心臓」で改めて向き合った“藍井エイルの歌”――

2022年、デビュー10周年イヤーを駆け抜けている最中の藍井エイルが、彼女にとっても大事なアニメ作品の1つである『ソードアート・オンライン』との新たな楽曲を発表した。『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』主題歌で、ヨルシカのn-bunaがプロデュースした「心臓」は、自身の歌唱をアップデートさせた、藍井エイルの新たなフェーズを感じさせる1曲だ。藍井エイルと『ソードアート・オンライン』という、同じく10周年を迎えたもの同士のコラボのなかで、彼女はどのような歌を響かせようとしているのか。

10年経って見つめ直した自身の歌声

――ニューシングル「心臓」ですが、エイルさんと縁の深い『ソードアート・オンライン』(以下、『SAO』)の最新作『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』(以下、『冥き夕闇のスケルツォ』)の主題歌となります。改めて『SAO』はエイルさんにとってどんな作品ですか?

藍井エイル ずっと隣にいてくれた作品という気がしますね。『SAO』のおかげで私のことを知ってくださった方もたくさんいて。素敵な作品に長く携わらせていただいて、心から感謝していますね。

――2012年の「INNOCENCE」以降、現在に至るまで数々のシリーズで主題歌を歌ってきたわけですしね。

藍井 そうなのですが、実は劇場版を歌うのは今回初めてなんですよね。そもそも劇場版の曲を歌うこと自体が初めてで。『SAO』が10周年、藍井エイルも10周年というなかで今回こうやって歌わせていただけるというのはインパクトが強いですし、本当にありがたいなって。

――インパクトでいうと、タイトルもまた……。

藍井 「心臓」っていうタイトルもなかなかですよね(笑)。n-bunaさん……すごいなって。

――今回「心臓」が主題歌となった『冥き夕闇のスケルツォ』はエイルさんが「INNOCENCE」で担当された頃よりも前のお話である≪アインクラッド編≫を基にしているんですよね。

藍井 そう、≪フェアリィ・ダンス編≫よりもっと前の話なんですよね。

――そういう意味では初めて≪アインクラッド編≫の楽曲を歌うことについてはどんなイメージがありましたか?

藍井 ≪アインクラッド編≫のときからLiSAちゃんのオープニング(「crossing field」)で、“夢で高く跳んだ”って、“跳ぶ”という言葉がすでに使われていたんですよね。「心臓」でも“飛ぶ”というイメージを意識してほしいというオーダーがありまして。≪フェアリィ・ダンス編≫でも≪アインクラッド≫編でも『SAO』は“飛ぶ”というのは大事にされてきたテーマなのかなって。

――そんな「心臓」ですが、今回はヨルシカのn-bunaさんによる楽曲となりました。エイルさんはヨルシカやn-bunaさんにはどんなイメージをお持ちでしたか?

藍井 えーっと……すごく厳しくて、すごくこだわりが強くて、ちょっと怖い人……っていうイメージでした(笑)。

――わははは、なんですかそのイメージは!(笑)。

藍井 だって、ヨルシカさんの曲ってすごいじゃないですか。「えっ、どこからどこまで出すの?」っていうレンジの広さがありますし、それを歌っているsuisさんもすごすぎるし。ストイックに音楽に向き合っていて、会って怖かったらどうしようって思っていましたが(笑)、全然そんなことなくて。

――良かったですね(笑)。今回楽曲の依頼はエイルさんから?

藍井 はい。前からヨルシカさんの楽曲を聴いていたので、スタッフさん経由でn-bunaさんにお願いして。届いたデモがすごく仕上がっていて本当に素晴らしかったんですよ。ちなみにこの曲、最初のデモから5回くらい歌を録り直しています。5回も録ったのなんて初めてで。

――プリプロの段階からそんなに歌い直していったんですか?

藍井 最初は仮歌さんが男性っぽい声でロックに歌っていて、そういう方向性なんだと思いロックに歌っていたんですよね。そこから少しずつまろやかになっていってアレンジも変わっていって。さらに、アニメ制作サイドからのオーダーやn-bunaさんのリアレンジで色々変わっていったので、その結果、最後のAメロはかなり静かな感じになっています。本来は歌詞の2行目くらいからかなりガツって入る曲だったんですけどね。

――たしかに完成したものを聴くと序盤はすごく静かな導入で。

藍井 5回の間にかなり変わった感じですね。それこそ本RECのときはだいぶ印象が変わって、映画を彷彿とさせる音色みたいなものをすごく感じました。

――そこも劇場版というものに合うような音作りになっているものかも。

藍井 TVアニメっていう感じではないですよね。映画だなという気がしました。

――たしかに全体的に聴いても、非常にシンプルなトラックですよね。音の隙間が多いというか。

藍井 そうですね。トラック数もシンプルで。ハモはいつもダブルで録るのですが、今回シングルにしましたし。なので、自分の歌がかなり浮き彫りになるんですよね。

――なるほど。

藍井 なので、この曲を歌うときは、めちゃくちゃ緊張します(笑)。ピアノだけを追って、そこでピッチを合わせていかないといけないので、難しいですし少しずれるだけですごく目立つんですよ。

――たしかにロッキンでありつつ、イントロからのピアノと、そこに乗るボーカルも肉感のある非常に印象的な仕上がりですよね。レコーディングはいかがでしたか?

藍井 難しいところでいうと、サビ頭の“早く”という部分の“は”は息が抜ける音じゃないですか。でも“は”と発音するときに息を抜きすぎると喉に負担がかかってしまうんです。なのでそのあとの“心臓が伝う 本能で今翔んで”の“で”が上がり切らなくなってしまうんですよね……というすごく繊細な曲で、“早く”の“は”であえてHをあまり発音しないで、Aから発音するってやらないといけない。でもそれをやりすぎるとエモーショナルさがなくなるので、そこが難しい。

――あの1フレーズだけでもかなり集中しないといけない。

藍井 この曲は最初から最後まで全集中という感じですね。とても難しいことをn-bunaさんに鍛えていただいています。これを普段から歌っているsuisさんって……すごいですよね。

――キャリア10年を経て、またとてつもない挑戦になっていると。

藍井 本当に心臓が飛び出そうになる曲です(笑)。何も隠せない、裸の状態で歌っている感じなんですよ。音数も少なくてシンプルな構成で、ハモもシングルだし……改めて歌と向き合った曲だなと思いました。

――テクニカルな面での挑戦があり、そこを藍井エイルの曲として成立させなくちゃいけないという。

藍井 エモーショナルさを持ちつつも、バランス良く対極にある発生に持っていかなければならない。前にボイトレの先生から、「正しい発声とエモーショナルは対極の部分にあるので、そこを少しずつバランスを取っていきましょう」と言われたことがあるんですけど、そういう基礎をまたイチからやっている感じですね。

――と言っても、エイルさんはキャリアでいうとベテランに入るんですけどね(笑)。

藍井 いやいや……ライブで歌うのもまだ自信がないです(笑)。

次ページ:臆病さも受け止めた現在、そしてこれからの藍井エイル

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