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INTERVIEW

2022.10.19

【インタビュー】第3期fripSide、オリジナルアルバム&セルフカバーアルバムついにリリース!新生fripSideの想いに迫る!

【インタビュー】第3期fripSide、オリジナルアルバム&セルフカバーアルバムついにリリース!新生fripSideの想いに迫る!

第3期fripSideの初となるアルバムが2022年10月19日に2枚同時リリースされた。1期&2期の楽曲をカバーした『double Decades』と、オリジナルアルバムの『infinite Resonance』。ボーカリストの上杉真央&阿部寿世の飛躍の第一歩となるアルバム2枚の狙いとは?

第3期fripSide、その制作過程とは

――いよいよリリースとなる『double Decades』と『infinite Resonance』。いきなり2枚のアルバムがリリースされるということで、まずsat(八木沼悟志)さん、レコーディングを終えられた感想はいかがでしたか?

八木沼悟志(以下、sat) 僕、今年3枚もアルバムを作っているんですよ(笑)。シングルも2枚でしょ?まだ収録されていないのもあるからオーバーワーク気味で、第2期のさいたまスーパーアリーナのライブも、相当厳しいリハーサルと本番を終えて、南條愛乃さんが卒業し、精神的にも肉体的にも、46歳、ここまで働くのかという感じもありつつ(笑)。ボーカルの2人は不慣れななか、アルバムレコーディングも初めてだったし、アルバム2枚で負担をかけてしまったけど、いい経験になったと思うんですよね。僕としても成長を感じましたしね。大変でしたが、この歳になっても挑戦する機会をいただけたNBCユニバーサルさんには感謝しています。普通だったら、肩を叩かれてもおかしくないと思うんですよ。第2期fripSideが大団円で終わって、そろそろ若い人に席を譲ってもいいんじゃないの?って。でも、新しいボーカル2人を入れて再起しろ!っていう。これは愛ですよ。頑張らなければいかんなということで、めちゃくちゃ気合いを入れました

――ボーカルのお二人は初めてのアルバムということですが、いかがでしたか?

阿部寿世(以下、Hisayo) まずはやり切ったなというのが第一の感想です。fripSideとしては20周年のカバーアルバムと私たちのオリジナルアルバムの2枚組ということで、約20曲を2ヵ月で録ったのですが、毎日のようにレコーディングスタジオに通っていましたね。satさんが言っていたように制作陣の大変さは伝わっていましたが、レコーディングでもコミュニケーションをたくさんとれたので、チームとしてレベルアップできたと思っています。

上杉真央(以下、Mao) すごくボリュームが多かったので、私も大変な時期だったなとは感じています。レコーディングするうえで、20周年アルバムとオリジナルアルバムでsatさんからのディレクションも違ったので、日々それにどう応えるか悩みながらでしたが、自分的にもやり切った感はありました。

2人の声の魅力を活かせばfripSideの歌になる

――ではここからは作品ごとにお話しを伺っていきたいと思います。まずは『infinite Resonance』ですが、第3期fripSideの方向性が様々な角度から見えたすごいアルバムになりましたね。satさんとしては、3人での音作りというものをかなり意識されたのでしょうか?

sat 13曲で僕たちがやりたいことすべてを表現するのは難しいけど、MaoとHisayoの声の魅力を活かす楽曲作りをしていったら、結果的にfripSideだったんですよ。この2人ならfripSideのお客さんも満足してくれるだろうという選考があって、彼女たちにボーカリストになってもらった。その彼女たちに合う曲を作ったら、fripSideになったんですよ。さらに言うと、第2期fripSideはあんなにお客さんも増えて、期待も大きくなって、ずっとやってきましたが、それが第3期になっていい意味でリセットできたんです。言い方が難しいのですが、第2期fripSideのときは“ファンの呪縛”みたいなものを僕が勝手に考えてしまっていて……このアルバムを聴いて「satさんの懐かしい部分が出てる」と思う人がたくさんいると思うのですが、リスタートならではの新鮮さもありましたし、第2期のときよりももっと自由に楽曲を作れたんです。そんな楽曲たちに2人がワクワクドキドキで挑んでくれた。当然厳しいディレクションをしながらでしたが、よく頑張ってくれたなと思います。実は『infinite Resonance』の前に『double Decades』を全録りしていて、「fripSideの歌唱とは?」「僕やfripSideのお客さんが求めるものとは?」というものを存分に感じてもらったんですよね。そのあとに「自分たちの曲だから自由な色に染めてね」という感じでオリジナルアルバムのレコーディングに臨めたのが良かったなと思いますね。

――MaoさんとHisayoさんにとっても『double Decades』を録ってから『infinite Resonance』に臨めたのは大きかった?

Hisayo 『double Decades』でsatさんにたくさんディレクションしていただき、自分の意識も変わっていったタイミングで『infinite Resonance』に臨めたので、私としても良かったですね。このアルバムは幅広く色んな楽曲を歌わせてもらえたなと思っていて、fripSideの初期の頃を感じるようなものも多くて、「これがfripSide」というのをすごく感じました。

Mao 実は私は最後まで掴むのに苦労したまま、『infinite Resonance』のレコーディングを迎えたところがあります。『double Decades』のときにsatさんから言ってくださったことを踏まえたうえで歌おうとしていたのですが、不器用な私はなかなか上手くいかないことが多くて……。自分の中で「期待に応えたい」という思いがすごく大きかったので、satさんがどういう歌を求めているのかをずっと考えていました。

sat Maoは真面目すぎるんですよ。僕が言ったことを100%やろうとするんですけど、人間誰しも100%なんてなかなかできないから、彼女の中ですごく葛藤があったと思います。でも、最後まで挫けかったのはすごいですよね。

――satさんから見て、お二人の違いは感じますか?

sat 感じますね。お父さんとしては難しくて(笑)。同じ言い方をしても、受け取り方が正反対なんですよ。これはレコーディングだけじゃなくて、普段のやり取りでもそうで。Hisayoはガツンと言うと「はい!」って返事が返ってくるけれど、Maoは「私のどこがいけなかったんだろう……」って考え込んじゃうんですよね(笑)。

――ツインボーカルを追求するというところで、サウンドに強めの音質を感じたんですね。これはボーカルが2人いることと関係するのでしょうか?

sat ありますね。わかりやすく言うと、ベースやドラムの低音のさばきを変えました。ちょっと専門的な話になりますが、低音のアタックを強めて、リリースを短めにしたんです。そういう音色のセッティングにしないと、オケがボーカルに負けるんですよ。音楽って単純な足し算だけじゃなくて引き算もしないと成り立たないので、そこは共編曲の齋藤真也と一緒に夜な夜な打ち合わせをして、決めていきましたね。

――また「infinite Resonance」や「Your Way」、「Shape of Delight」などアッパーなバンドサウンド的なものも印象的でしたが、そこもツインならではというのは意識されましたか?

sat 最近のfripSideのトレンドはロックですけど、「fripSideってそうじゃないよね」というファンの方もいて、そこはバランスよくやりたいなと思っています。ただ、ツインボーカルでパワーが増したので、そこに負けないような強いオケを作れるようになったのは大きいですね。

第1期+第2期=第3期――fripSideのハイブリッドな進化形

――また『double Decades』『infinite Resonance』ともに、HisayoさんとMaoさんそれぞれのソロ曲が収録されているのもポイントですよね。『infinite Resonance』に収録されているソロ曲4曲についてお伺いしたいのですが、まずはHisayoさんの「Flames」と「with a smile」。この2曲を聴いて驚くfripSideファンは多いかなと。

sat 「with a smile」を先に作ったんですけど、彼女は若いですし、元アイドルという活動をしてたというのもあって、ライブで振りを入れて盛り上がれる曲ですね。Hisayoといえば“スマイル”でもありますしね。「Flames」はかなりの意欲作で、今回のアルバムで一番好きなんです、実は。普通の人が歌うとやぼったくなるだろう曲で、彼女の声だから成立していると思います。Hisayoはダンスがすごく上手なので、これもがっちり踊ってもらいたいですね。

Hisayo まず「with a smile」を先に聴いて、fripSideはバリバリにかっこいい曲が多い中で、自分で言うのもなんですけど、しっくりくるソロ曲だなと思いました。私はこの曲で作詞にも携わらせていただいたのですが、アイドルとして活動していたこともあって、アイドル時代のことも思い返しつつ、これから先fripSideとしての阿部寿世の未来に向けて歌詞を考えました。すごく自分らしい楽曲になっていますし、「satさんもそういうふうに考えてくださっていたんだな」というのがわかる楽曲です。「Flames」は最初に聴いたとき、とにかくかっこ良くてファンキーだなと思いました。fripSideでは珍しい管楽器が入っていて新鮮なのですが、サウンド的には懐かしさも感じる楽曲。ライブでかっこ良く踊りながら歌うのがすごく楽しみです。

――Maoさんのソロ曲「Distance」「Reach for the light」にはどのようなものを求めましたか?

sat 「Reach for the light」はfripSideサウンドのど真ん中で、Maoは10年来の知り合いで今までもfripSideの仮歌をたくさんうたってもらっていたので、fripSideの理解度は高いですし、このど真ん中の曲を歌ってもらおう!と最初から決めていました。もう1曲の「Distance」は逸話があって……『double Decades』では「上杉節を消せ!」と散々言ってしまったので、彼女の表現を活かせる曲を1曲作ると約束して生まれたのがこの曲なんです。2曲とも素晴らしい曲になりましたね。

――Hisayoさんが前半で新しい部分を担って、後半でMaoさんがfripSideらしい部分を出すという構成も面白いなと思いました。Maoさんは2曲ソロで歌ってみてどうでしたか?

Mao 「Reach for the light」はsatさんからfripSideらしい歌唱を求められて私も頑張ったのですが、レコーディングの時点ではまだアレンジは完成してなくて、私の中では楽曲にガチッとハマった声を出すのに苦労し……。

sat 間に合わなくてすみませんでした!(笑)。

Mao いえいえ!責めてるんじゃないんです!(笑)。それで完成した楽曲を聴いたら、satさんがおっしゃっていたことの意味がわかって、「fripSide全開のサウンドで歌うってこういうことなんだ」って。そんな学びのある1曲でしたね。「Distance」はfripSideというより“上杉真央”として歌っていいよという作品だったので、私も楽曲に一番合う歌い方を考えました。テンポも一番ゆったりしていますし、歌詞も大人のしっとりした感じだったので、これは私のアダルト感を全開にしていいんだなと思い、fripSideらしさは意識しつつ、「上杉真央はどう歌ったらいいのか」という課題に挑んだ楽曲でした。

――そしてもう1枚、『double Decades』についても聞かせてください。改めて第1期&第2期の曲をカバーするということで、選曲も大変だったんじゃないですか?

sat そうですね、悩みすぎて引退しようかと思いました(笑)。というのは冗談ですけど……過去の曲をやり直すことについては、もう感覚がマヒしているのでそんな苦労はしないのですが(笑)、fripSideは300曲以上あるので、選曲は非常に悩んだなあ……。「どうすればこの2人が歌ってファンの皆さんに彼女たちの良さが伝わるのか」というのを大前提に選曲していきました。あとはこの2枚のアルバムでツアーを回るわけですけど、まだ僕たちは駆け出しなので持ち曲がそんなにないじゃないですか。なのでツアーで1ステージを成立させるための最適解は何かなと。

――そういった目線も持ちセレクトした結果が今回のラインナップに繋がったと。

sat 出来上がってみると、サウンドもボーカリストも、第1期と第2期で20年やってきたものが、第3期でハイブリッドな感じになっていて、どちらにも寄ってないんですよ。僕の感覚ですけど、声の性質的にMaoは南ちゃん(南條)に近くて、Hisayoはnaoちゃんに近いですね。さっき、「Flames」はfripSideにしては珍しく管楽器が入っているという話がありましたけど、実は第1期の楽曲では結構管楽器を使っているんですよ。だから、僕にとっては新しいという感覚はなくて、第1期+第2期=第3期になっているという感じ。1+2=3なんですよ(笑)。

――1+2=3!式としては当然なんですが(笑)、今のfripSideにはピッタリなフレーズですね。さて、レコーディングで過去のfripSideに向き合ったお二人はどうですか?

Hisayo カバーする楽曲が決まってその選曲を見たら、やっぱり私がほとんど前から聴いていた楽曲だったんですよ。でも自分が歌うとなったときに、まずは自分なりに考えて歌ってみるんですけど、ファンの皆さんが納得する歌声とは違う気がして、「ここはこうしたほうがfripSideらしくなるよ」というディレクションをsatさんからもらって、「こうすれば良くなるんだ!」というのがわかった感じですね。こういうのって、今まで教えてもらったことがなかったので、ディレクションで学ぶことが多く考えることも増えました。音楽ってこんなにも奥が深いんだと実感しましたね。

Mao 今まで自分がいちファンとしてfripSideの楽曲を聴いてきたこともあり、カバーさせていただく曲には100%の“正解”があるというのを知ったうえでのレコーディングだったので、元々の楽曲の良さを私たちの歌で潰すわけにはいかないというプレッシャーがありました。でも、satさんからどの楽曲も丁寧にディレクションしていただいたおかげで、fripSideらしい歌というのを学ぶことができました。

次ページ:歴代のボーカリストによる競演

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