リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2022.08.24

【インタビュー】MYTH & ROIDが『メイドインアビス 烈日の黄金郷』へ込めた“慈愛”――EDテーマ「Endless Embrace」リリースインタビュー

【インタビュー】MYTH & ROIDが『メイドインアビス 烈日の黄金郷』へ込めた“慈愛”――EDテーマ「Endless Embrace」リリースインタビュー

慈愛に向けて込めた途切れぬ幸福感に満ちた歌声

――そうして作られた楽曲を歌われたKIHOWさん。レコーディングの思い出と、本作の歌唱でKIHOWさんだからこそ出たもの、出したかったものを教えてください。

KIHOW 制作の期間やレコーディングを含めると、今までで一番時間をかけた作品になったんじゃないかなと思います。それくらい繊細に、みんなで組み立てた楽曲です。今回の楽曲のキーワードとなる「慈愛」を歌に投影するうえで表現した“絶えることのない穏やかさ”ですが、物語の複雑な要素などを具体的に想像するわけではなくて。単純に何も付け入る隙がないくらいの幸福感に包まれている、という日常では瞬間的にしか感じられないような気持ちをとにかく途絶えさせないようにしました。歌唱の技術というよりは、感情のコントロールで形にしたと言っても過言ではありません。偶然ではなく、その表現ができるのは自分ならではの歌唱かなと感じています。

――Tomさんはどのようなディレクションを付けられたのでしょうか。

Tom-H@ck 楽曲に対しての、内なるエネルギーや想いはパンパンにあって。そのエネルギーを歌声に詰め込まなきゃいけない、という気持ちがあったので、KIHOWにはそのまま伝えました。例えば、自分が誰かを慈しむ、慈しみを与える。その立場になったと思って、深いところまで感情移入してほしい、そして歌詞の意味をストレートに歌にしてくれ、と。僕自身も感情移入をして伝えることで表現の第一声も変わってくるので、しっかり深い部分まで感情を入れたうえで丁寧に歌について言葉にしていきました。その想いを受け止めたKIHOWも歌声として表現してくれたことで、今回のレコーディングもとても熱量高くやれたと思います。「慈愛」がテーマなので、サビでは100%の力で腹から声を出すような表現をしなくてもいいよ、と伝えました。

――KIHOWさんの歌声だからこそ出したかったのはどんな部分ですか?

Tom-H@ck これが難しくて。これまでもいくつかバラードをリリースしているので、「また同じだな」とはなってほしくなかったんです。過去のバラード系としては『オーバーロード』の「HYDRA」もあり、あの曲はウィスパーボイス的なところで感情を表現して歌う、というものだったのですが、今回はそこにいかないほうがいいなと思ったので、地声を残す歌い方を意識してもらいました。これがKIHOWの声の特性としても、今までのバラードとはちょっと違う雰囲気を出せるかなと思ったんです。初めて聞く人を驚かせる、という意味でも、そこを丁寧にディレクションしましたね。

――それが今回の曲の独特の揺らぎに繋がっているんですね。

Tom-H@ck 間違いなくあると思います。ドレッシーな声は力を抑えてますが、地声はどちらかというと力強いので。そこの狭間でボーカルが揺れているのは間違いないですね。

――エンディングで流れるからこその余韻もありそうですよね。

Tom-H@ck 89秒のエンディング部分では僕のアレンジが全部使われているんです。上ものの部分はKevinさんが基本的には作っているのですが、この部分だけはピアノのフレーズを僕がジャズ理論を組み上げたもので作り上げました。聴けばそこだけが違う楽曲のような印象を抱くと思うのですが、それを89秒に落とし込み、MYTH & ROIDとして、KIHOWの歌声で、ただでは終わらないところとして作った部分です。

――そんな「Endless Embrace」がアニメで流れた際の感想を教えてください。

KIHOW 正直、何度観ても不思議ですね。一生自分の歌を客観的には聴けないし観られない、と思うと他人の目や耳を借りたいと思うこともありますが、そのぶん聴いてくれた方の感想はとてもありがたくていつも楽しみにしています。

――今回、曲からイメージできる色は白、とおっしゃっていましたが、ジャケットは非常にビビッドな色使いとなっています。これはどういったイメージで制作されたのでしょうか。

Tom-H@ck 候補はいくつかあったんです。赤色のものもあったし、もう少し光を感じさせるものもあったのですが、最終的にこのジャケットイラストに。実はこれ、AIで描いたものを踏まえつつ、あらたに油彩画家さんが描いたものだそうなんです。AIにイメージをインプットすると、AIがその世界観を表現してくれるんですね。それが歪んでいたり、変貌したり。それが絵に落とし込まれる、ということを試したんです。そんな最新技術を駆使したイラストです。これはほかの候補とは違って、人が人を抱きしめている様子が感じられて。それこそ「慈愛」。AIが作り上げた基本の形としても表現されていたので、このジャケットに決めました。

――ご自身も絵を描かれるKIHOWさんからご覧になっての感想はいかがですか?またAIによる作画、という特殊な手法についての印象もお聞かせください。

KIHOW 一番初めに目に入る色や、抽象的ではあるものの楽曲タイトルに相応しく描かれた形がとても素敵だなと思いました。特に、色に関してはその奥行きが楽曲の感情やアビスの深さを意識させてくれるようで愛を感じますね。AIによる作画ベースで作ってもらったことも、絵に人間の残す跡が少ないようで少し不気味にも感じますが、そこも含めて面白くて気に入っています。

Tom-H@ckの考える「現代のカップリング曲」とは

――カップリング曲の「Clattanoia(penumbral)」ですが、これはOxTの「Clattanoia」のカバーです。『メイドインアビス』同様に『オーバーロード』も新たなシーズンが幕開けしたところでのこのカバー、なぜやろうと思われたのでしょうか。

Tom-H@ck OxTにもMYTH & ROIDにも僕がいるよね、ということで。昨今、カップリングを聴いてもらえているだろうか、と考えるアーティストは少なくはないと思うんです。制作するにもあまり日の目を見ない場合も多い。この先歴史に埋もれていく楽曲になるなら、もっと意味のあるものとしてカップリングも作らないといけないよね、という想いがあったんです。カップリングに意味を持たせるという僕の想いを秘めたまま『オーバーロード』も4期があるということで制作を始めたのですが、「Clattanoia」のバラードは鳥肌が立つくらいの良さがあったので、今、聴かせるならこれしかないだろうと思ったんです。「MYTH & ROIDにもOxTにも僕がいる」「どちらの作品も同じタイミングで新シリーズを放送する」「バラードとなったClattanoiaをMYTH & ROIDが歌ったときの衝撃感」、この3つの理由が決め手でしたね。

KIHOW 原曲が勢いのあるかっこ良さを持っているので、この楽曲をバラードで、しかも英語でとなると初めは想像することも難しかったです。初めて歌詞の英訳にも挑戦させていただいたのですが、原曲で完成しきっているものを歌を含めて触らせていただくのはとても恐れ多い経験でしたね。リアレンジも原曲とは別のベクトルでかっこいいものになりましたし、スタジオで聴いてくださった方全員がすごく良いと言ってくれたことが印象的でした。『オーバーロード』や原曲のファンの方にも聴いていただけるのがとても楽しみです。

――OxTの「Clattanoia」の攻撃的なところから、バラードになると一変して非常に優しい1曲になりました。

Tom-H@ck 音楽ディレクターからも「これはテンポが遅すぎませんか」と言われたんですが、僕はこれくらい遅いほうがいいと思ったんです。遅いほうが音楽の隙間ができるので、そこでの表現力を出す余白も大きくなることで、ボーカルが自由に遊ぶ場所が増える。それを今回のバラードの中で、攻撃的なサウンド感とは真反対な部分として意識しました。

――KIHOWさんにはどんなディレクションをされたのでしょうか。

Tom-H@ck 段階を踏んでいき、Aメロは60%、Bメロはもっと下げて50%くらいの力で歌って、サビは100%の力で、と数値で伝えていきました。あとは遊びの余白があるので、あまりディレクションしてしまうと良くないなと思い、自由に表現をしてもらいました。自分が感じたように、この場所では遊んでください、と。ただパワーの配分についてはセクションごとにディレクションをして、あとはKIHOWの良いと思う歌い方でやっていけるよう進めましたね。

――『メイドインアビス 烈日の黄金郷』もスタートをして、2022年も下半期の色が濃くなってきましたが、今年後半のMYTH & ROIDはどのような時間にしていこうと思っていますか?

Tom-H@ck 僕としては、MYTH & ROIDの世界観を現実世界でどんどん具現化していきたいと思っています。ライブだけではなく、曲をリリースすることも具現化の一部なので、自分たちが頭の中で思い描いている世界観を具現化する場を、たくさんやっていこうと考えています。ライブができないというのは人格が変わるくらい影響するもので。コロナ禍になって初めて気づいたのですが、これだけライブ活動を含め人前に立つことが少なくなると、僕たち音楽家ってエネルギーが減っていくんです。ネガティブになりやすかったり、細かいことを気にしたり。そういうものがスーパーポジティブだった僕でさえも出てきたことがありましたから。現在もコロナ禍は続いてますが、当初より緩和してきて今までの生活も少しずつ戻ってきました。海外でもイベントが再開され始めてますし、国内での活動もしっかり足元を固めてやっていこうと思っています。楽しみにしていてください。

KIHOW まず、大好きな『メイドインアビス』という作品に再び参加できたことへの喜びを噛み締めているのですが、このままの勢いで今年の後半からも初めてのことに挑戦して、皆さんと楽しんでいきたいと思います。いつも応援してくださっている皆さん、いつもありがとうございます!

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち


●リリース情報
11th シングル
「Endless Embrace」

2022年8月24日(水)発売

■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら

価格:¥1,320(税込)
品番:ZMCZ-15772

<収録曲>
1. Endless Embrace (TVアニメ「メイドインアビス 烈日の黄金郷」EDテーマ)
2. Clattanoia(penumbral]
3. Endless Embrace (instrumental)
4. Clattanoia(penumbral](instrumental)

●ライブ情報
MYTH & ROID One Man Live 2022 “deeper and closer”
2022年11月5日(土) 東京・代官山UNIT
開場:17:00 / 開演:18:00
チケット前売り:¥5,500(税込・ドリンク代別)

<チケット受付方法>
「Endless Embrace」CDに封入されているチラシにて
8月24日(水)12時よりCD購入者限定の抽選受付を開始

本公演に関するお問合せ
クリエイティブマンプロダクション 03-3499-6669(月・水・金 12:00-16:00)

関連リンク

MYTH & ROID
公式サイト
http://mythandroid.com/

公式Twitter
https://twitter.com/myth_and_roid

TVアニメ『メイドインアビス』
公式サイト
http://miabyss.com/

公式Twitter
https://twitter.com/miabyss_anime

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP