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2022.08.13

【ライブレポート】黒崎真音、“再起動”完了とともに放たれた歓喜の「ただいま!」――。新たな発表も飛び出した、3年半ぶりとなるワンマンライブを開催!

【ライブレポート】黒崎真音、“再起動”完了とともに放たれた歓喜の「ただいま!」――。新たな発表も飛び出した、3年半ぶりとなるワンマンライブを開催!

7月31日、東京・Spotify O-EASTにて、黒崎真音のワンマンライブ“MAON KUROSAKI LIVE2022『-REBOOT-』”が開催された。およそ3年半ぶりとなる有観客でのワンマン、そして昨年に突如として彼女を襲った悲劇からの再起動となったこの日。そこにはあれから止まってしまった時を動かした彼女が、“黒崎真音のライブ”という本来の魅力をしっかりと見せつけながらも、そこに至るまでに抱える様々な感情を音楽で語るという、実に重厚かつ感動的なものとなった。この日彼女は音楽で、言葉で何を我々に語りかけたのか――。

再起動開始、その第一声は――。

この日の会場であるSpotify O-EASTの1Fフロアは、黒崎の復活を待ち望んだファンでパンパン。しかし開演を待つファンの多くは、コロナ禍で声が出せないということもあってか、会場BGMが鳴るなかでも独特の静けさがあるというか、何か緊張した空気感というものが、筆者たちがいる2階席まで届いてくるようだった。O-EAST特有の広いステージ上にはバンドセットが広く配置されている。そして何より目を引いたのは、ステージ後方にある巨大なスクリーンだ。会場が暗転すると、そのスクリーンにはヴァイタルサインのような信号が映し出され、心臓の鼓動のような音が鳴り響く。それが実際に何を意味するかはわからないが、まるで彼女が活動を停止せざるをえなくなったあのときからヴァイタルが回復していくその過程を示しているようにも感じられる。そして映像がアンティークなパソコンの再起動画面へと変わる頃には、会場に鳴る心音が早くなっていく。そして文字通りの再起動が完了したことを示す“REBOOT”というタイトルが映し出されるなか、黒崎がステージに登場、「LIMIT BREAK」のイントロダクションが鳴らされた。注目すべきは、その“第一声”である。深刻な病を乗り越えてのライブの開催が発表されたとき、それは当時喜びをもって迎えるべきではあった。しかしまた、どこかではわずかながら果たして本当に大丈夫なのか?という感情もまた、この日会場に詰めかけた多くの観客にはあったはずだ。しかし、「LIMIT BREAK」で聴かせたその“第一声”は確かに力強く、彼女が戻ってきたのだと確信させるのに何より雄弁に耳に飛び込んでくる。ステージ上の黒崎は時折からだをゆらゆらと揺らしながら爆音に乗って、突き抜けるようなパワフルな歌唱を響かせる。そうした力強さは続く「Gravitation」でも変わらず、スクリーンに映し出された鋭くギラギラとした眼光にはっとさせられる。これこそが、我々が待ち望んだ“黒崎真音のライブ”なのだ。

言葉ではなく、歌で伝える“これまで”のこと

まるで一瞬の出来事のような2曲を終え、最初のMCへ。そこで黒崎は「最後まで……ついてきてくれますか!」と何度も観客を煽っていく。久々のライブでありながらいつも通りの黒崎という印象のコンパクトなMCを挟んだあとにはスマートフォンゲーム「とある魔術の禁書目録 幻想収束」の主題歌「JUNCTION」へ。スクリーンには「とある魔術の禁書目録 幻想収束」の映像が大きく映し出される。続く、ダンスもクールにキマる「刹那の果実」では『グリザイアの果実』が、ヘビーな「SCARS」では『HELLSING』……と、この日の派手な映像演出もまた会場の盛り上がりに大きく貢献していた。そうしたアニメ作品とのコラボを経たあとは、2019年発表のアルバム『Beloved One』から「A.I.D」へ。この曲のモチーフでもあるゾンビになったように黒崎もステージに膝をついて妖しく歌い上げる。そこからダークな雰囲気のまま「“lily”」で、より自身の内面を抉っていくような物悲しい歌声を聴かせていく。そんなエモーショナルなパフォーマンスを聴かせたあと、背景のスクリーンに時を刻む時計が映し出される。そして鳴らされたのは――黒崎と神田沙也加とのユニット・ALICesの「Chocolate_Cosmos」だ。スクリーンには黒崎と神田のシルエットが映る。そのMVをバックに、黒崎は神田のボーカルトラックに声を重ねる。スタイリッシュで切ないサウンドのなかで刻まれるALICesのデュエットはあまりに美しく響き、観客の胸を打つ。そして歌い終わると、黒崎はしばしステージ上をうろうろと歩く。ステージ上の黒崎も、客席のファンたちもALICesの残した余韻にしばらく漂うような時間が過ぎ去っていった。そしてアコースティックギター1本で鳴らされた「Black Bird」へと続くのだが、これもまた彼女の生き様を示したアルバム『Beloved One』からの1曲だ。そこで語られる言葉たちはあまりに悲痛で、「”lily”」から始まったこの一連のブロックは、まるで彼女が昨年からの時間のなかで得た感情をそのまま、ダイレクトに客席に届けているようだった。MCで語ることではなく、音楽で雄弁に自身の感情を語る。それはまるで、彼女自身の喪失からの再生という過程を見せているようでもある。そうした重苦しいムードのなか、このブロック最後に鳴らされたのは、「体温-I’ll be by my side forever-」だ。ダークな雰囲気のステージには生命が脈打つような黄色いライトが照らされるなか、彼女の声はどこか掠れて震えているように聴こえる。この日、この瞬間でしか出すことのできない彼女の生身に触れるような歌声は美しく響き渡った。

まるでドキュメンタリーのような彼女の生き様を観た、そんなエモーショナルなブロックのあとは、バンドインストを挟んでEDMゾーンへと一気にシフトチェンジする。衣装も身軽にキュートな猫耳をつけての「Love 〇 JETCOASTER」「Peko♡Peko♡Peach♡」を笑顔でプレイ。一気に華やかなムードのなか、バンドメンバーとの和気あいあいとしたトークを挟んで、今度は再びアグレッシブなパートへ。ストゥールに腰掛けて赤い布を振り回しながらの「Red Alert Carpet」、ステージ中央に置かれたシンバルを一心不乱に叩きながらアグレッシブに歌を乗せる「UNDER/SHAFT」、そして続く「X-encounter」でのデジタルサウンドに乗せて躍動感溢れる歌唱を聴かせるパフォーマンスは強烈の一言。MCでは有観客でのライブができなかった期間の苦悩を話しながら、「去年は皆さんにたくさんの心配をおかけしました。でもこの通り……MC噛んだりしますけど、元気に過ごしています。待っていてくれたみんなのおかげです、本当にありがとう」とファンに感謝を述べた。そして「私にとっての始まりの曲」を告げてから、デビューアルバム『H.O.T.D.』から「君と太陽が死んだ日」を鳴らす。ヘビーなサウンドのなかで歌われる激情。それは決して終わりではなく、また新たな始まりであることを告げているようだった。そして本編最後にはメロディアスなロックナンバー「VANISHING POINT」を鳴らし、最後までエネルギッシュに歌い上げてステージを去った。

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