【コラム】Midnight Grand Orchestra、銀河を旅し新しい音楽体験を届ける――1stミニアルバム『Overture』VTuber・星街すいせい×作曲家・TAKU INOUEの魅力に迫る

星街すいせいとTAKU INOUE、2人の出会い

今年3月に突如結成がアナウンスされ、 人気クリエイター同士のユニットとして話題となっていたMidnight Grand Orchestra。彼らが1stミニアルバム『Overture』をリリースした。

Midnight Grand Orchestraは、ホロライブ所属のVTuber・星街すいせいと作曲家のTAKU INOUEによる次元を超えた音楽ユニット。TAKU INOUEといえば、数々のゲーム/アニメに楽曲提供する本誌読者にはお馴染みのサウンドプロデューサーで、「Radio Happy」や「ミラーボール・ラブ」「クレイジークレイジー」「さよならアンドロメダ」といった「アイドルマスター」シリーズの楽曲はクラブでもアンセム化している。2018年にバンダイナムコスタジオを退社してフリーの作曲家/アーティストとなり、2021年にはデビューEP『ALIENS EP』も発表。Midnight Grand Orchestraでは作編曲と作詞の一部を担当している。

TAKU INOUE

TAKU INOUE

彼の最大の特徴は、音楽的実験とポップソングとしてのキャッチーさを両立した楽曲が非常に多いこと。フューチャーベース特有の不規則なシンセとポップス由来のメロディが1つになった「クレイジークレイジー」や、イギリス・ロンドンのハイパーダブ~ブリアル辺りを連想するダブステップ特有の揺れるワブルベースを使った切ないバラード「さよならアンドロメダ」など、様々な実験を盛り込みつつポップな楽曲を作る名手として知られている。

一方、星街すいせいはメンバーのYouTubeの総チャンネル登録者数が6,000万人を超える人気VTuberグループ・ホロライブの歌姫。ホロライブは精巧な3Dモデルを使ったクオリティの高いバーチャルライブでも知られている。2018年にキャラクターデザインや動画編集、Live2D設定まで自身でこなす無所属の個人勢として活動をはじめ、ホロライブを運営するカバーの音楽レーベル・イノナカミュージックに加入。その後、ホロライブに転籍して活動を続けており、Midnight Grand Orchestraではシンガーと作詞の一部を担当。

星街すいせい

星街すいせい

彼女の最大の魅力といえるのは、声1つでガラッと景色を変える力強く伸びやかな歌声と、「曲のピークをどこに持ってくるか」を本能で察知しているように感じられる豊かな表現力。言うべきことをはっきり言う凛とした佇まいも相まって、女性人気が高いメンバーとしても知られている。昨年9月には1stアルバム『Still Still Stellar』がオリコンウィークリーランキングの6位を記録。同年10月には初のソロライブ“Hoshimachi Suisei 1st Solo Live “STELLAR into the GALAXY” Supported By Bushiroad”も成功させた、V界を代表するシンガーだ。

そんな2人の交流が始まったのは昨年のこと。

TAKUのデビューEP「ALIENS EP」のリード曲「3時12分」の制作に際して、彼が星街に「ぜひボーカルをお願いしたい」とDEMOを作成していた最中に、彼女からもTAKUへ「Still Still Stellar」を制作してほしいとオファーがあり、お互いの楽曲にそれぞれ1曲ずつ参加することとなった。

TAKUの「ALIENS EP」は宇宙のどこかにあるクラブでの一夜を時系列準に表現した作品で、「3時12分」は中でもクラブのピークが過ぎ始めた頃の様子を通して、様々な人の人生が行き交うクラブの魅力を表現していた。音楽的には全編を通してジャズテイストが色濃く出ており、きれいな低音が印象的な星街のボーカルには、「VTuberにもこんなにもすごい歌手がいたのか」と多くのリスナーが驚くこととなった。

星街のアルバム『Still Still Stellar』では、TAKUが「Stellar Stellar」の作編曲を担当。この曲ではアカペラの歌始まりで彼女の歌声を際立たせつつ、サビでバーンと音が広がるビッグバンドジャズ風のゴージャスなアレンジを追加。“そうだ 僕がずっとなりたかったのは 待ってるシンデレラじゃないさ 迎えに行く王子様だ だって僕は星だから”という星街自身による歌詞も相まって、彼女の代表曲の1つとして知られている。そんな共作を経て、「さらに音楽性を追究しよう」と始まったのが「Midnight Grand Orchestra」だ。

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