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INTERVIEW

2022.08.02

【インタビュー】作品へのリスペクトを――『RWBY 氷雪帝国』OPテーマを手がけたVoid_Chords・高橋 諒が語る楽曲のテーマとは?

【インタビュー】作品へのリスペクトを――『RWBY 氷雪帝国』OPテーマを手がけたVoid_Chords・高橋 諒が語る楽曲のテーマとは?

プログレ魂が炸裂!ハイブリッドなOPテーマ「Beyond Selves」

――「Beyond Selves」はバンドのエネルギッシュな生演奏と緻密なアレンジが合わさった、Void_Chordsらしいハイブリッドな楽曲に仕上がっていますが、サウンド面で特に意識したことはありますか?

高橋 先ほどもお話ししたようにアグレッシブにしたかったので、ロックをベースに特徴的な管楽器を入れてジャズロック的な目線を入れつつ、ジェフさんが作られる音楽の方向性もちょっと感じられるように、プログレッシブな要素もミックスしました。あとは『RWBY』の鮮明な色彩感を感じていただけるように、ビビッドにフラッシュするような印象を音としても大事にしましたね。

――2番以降のアレンジに顕著ですが、ポリリズムもこの曲の肝になっているように感じました。特に間奏の展開はもはや異次元的といいますか……(笑)。

高橋 今回はプログレ魂が出ました(笑)。ミクソリディアのソロのあとの展開は、いわゆるメトリックモジュレーションという技法を使って、ドラム、ギター、ベース、マリンバ、その他の楽器も含めて全員が別々の拍子の括りでループパルスを演奏しているんですけど、128拍で全員が合うようにできています。僕が多大な影響を受けた(スティーヴ・)ライヒ的な発想ですね。ただ、それだけだとVoid_Chordsとしては物足りないかなと思って、結局サックスソロも加えました(笑)。

――それがVoid_Chordsらしさにも繋がっているわけですね。あと、先ほど異次元的と形容させていただきましたが、この間奏で楽曲の景色がガラッと変わる印象があって。それはもしかしたらこの楽曲のタイトルでもある「Beyond Selves(=自分を超える)」を表現しているのかなと思ったのですが。

高橋 そうなんですよ。「Beyond Selves」したあとの感覚といいますか、自分がすごく研ぎ澄まされている状態、意識が拡散していくんだけど一点に向かって進んでいくような、自分を超える瞬間が垣間見えるような景色というのを表現したくて。それが伝わって良かったです。

――歌詞はVoid_Chords楽曲ではお馴染みのKonnie Aokiさんが書かれていますが、「自分」という境界を超えることや、先ほど話題にあがった「極と極の交わり」といったテーマからは、ある種の普遍性が感じられます。

高橋 『RWBY』の世界の説明でもあるし、僕らが現実で囚われているビジョンからの離脱みたいなものも表現されていて。これはVoid_Chordsのテーマとも繋がってくるのですが、強い光と強い闇みたいに両極端なものを、どちらが良い・悪いではなく、その両方を内包したり知ることで見えてくるものがあるはずで。歌詞に「影に導かれる光」と「光に導かれる影」というフレーズがあるのですが、それはまさにこの作品(『RWBY』)そのものだし、僕らの人生そのものでもある。非常に多層的な歌詞になっていますね。

――今回のフィーチャリングシンガー、Lさんとは初のコラボレーションになりますが、この楽曲の重厚さにも負けないパワフルかつ存在感のある歌声が印象的でした。

高橋 Lさんは女性シンガーなんですけど、キーはほぼ男性キーと言っていいくらい低い声が得意な方なので、楽曲を作る際はその歌声が上手く響くようにバランスを考えて最適化するのに結構試行錯誤しました。逆にカップリング曲の「Relight Emotions」を歌ってくださったnanahaさんはレンジが広くて、お二人が対照的なシンガーなので、シングルとしても良い対比が生まれたかなと思います。

フィジカルに作用する、Void_Chords流のダンスミュージック!

――では流れで「Relight Emotions」についても。こちらは80sブギー風というかソウル/ファンク路線の楽曲で、思わず踊りたくなってしまいます(笑)。

高橋 こういうストレートなビートの曲は久々に作りました(笑)。やっぱり気持ち良いですよね。今回は表題曲でアニソン的な構造の曲をやったので、カップリングは完全にいわゆる洋楽的にしようと思って。アニソンのフォーマットで曲を作る場合は89秒という時間の流れが大事になりますけど、この曲はそのアンチとして、リフメロ一発で聴かせてすぐに覚えられるもの、自分の作品には珍しくコード進行も最初から最後まで一緒という(笑)。そういうループやグルーヴの気持ち良さを音楽として大事にしたい、というのがテーマです。

――歌詞でも、肉体性やリアルな感覚への回帰といったことが歌われていて。

高橋 今は何でも表層的に説明してしまえる時代という部分がありますけど、だからこそ自分の体験として知ること、肉体として実感することがすごく大事だと思うんです。フィジカルな部分にちゃんと足を置くといいますか。そういった自らの体験に重きを置かないと、言葉や表現がどんどん上滑りしていくし、一時的な消費で終わっていくものになるんじゃないかとすごく感じていて。もちろん今のこの環境がネイティブな人たちは、そこから上手く自分の血肉となるスキルを得るのかもしれないですけど、自分はフィジカルな体験を大事にしていきたい。そういうテーマを直接的に捉えた曲ですね。

――だからこそサウンドも肉感的なファンク、ビートで感じる楽曲になっているわけですね。

高橋 肉体性への回帰というテーマはダンスミュージックとの親和性が高いですし、「Beyond Selves」みたいなテーマや言葉の乗せ方だとダンスを阻害してしまうところがあると思いますけど、「Relight Emotions」は構造も単純なので、ダンスしてバカになっていても言葉が直接ハートに入ってくるというか(笑)。僕もDJでハウスを回してて感じるのは、やっぱり踊っているときに入ってくるのは単純な言葉だったりするんですよね。なので表題曲とちょうど良いバランスの曲になりました。

――シングルの話から少し逸れるのですが、『RWBY 氷雪帝国』の第1話で、Void_Chords feat.L名義の楽曲「Capabilities Unseen」が挿入歌として使用されましたよね。

高橋 OPテーマの制作後に、挿入歌にも使っていただけるということで依頼をいただきまして。「Capabilities Unseen」は第1話の一番印象的なバトルで使われるということで、監督や制作陣の方からも、バトルシーンを象徴するような曲にしてほしいというお話だったので、「Beyond Selves」の雰囲気は纏いつつも、もっと直線的でシンプルにかっこいいものを目指して作りました。ほかにも何曲か挿入歌を作ったので、楽しみにしていただければと思います。

――『RWBY』といえば挿入歌の扱いも毎回評判なので、楽しみにしております!では最後に、今回のシングルの手応えについて、お聞かせいただけますでしょうか。

高橋 自分の作りたいもの、自分のスタイルが、今回のシングルで1つ結実した感覚があって。ジャズロックという比較的少ないスタイルを深堀りさせていただけて、それを喜んでいただけたのはすごく嬉しいですね。そういう意味では記念碑的な作品にはなったかなと思います。ただ、Void_Chordsは今後もスタイルを限定せずに活動していきたいプロジェクトなので、またガラッと変えて新しいことをやりたい思いもありますね。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
Void_Chords
「Beyond Selves」
TVアニメ『RWBY 氷雪帝国』オープニング主題歌
発売中

■mora
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ハイレゾ/配信リンクはこちら

配信リンクはこちら

価格:¥1,430(税込)
品番:LACM-24293

<収録曲>
1.Beyond Selves / Void_Chords feat. L
2.Relight Emotions / Void_Chords feat. nanaha
3.Beyond Selves(Instrumental)
4.Relight Emotions(Instrumental)

Void_Chords
「Revealed Dimensions」
TVアニメ『RWBY 氷雪帝国』挿入歌ミニアルバム
9月21日発売

商品予約リンクはこちら

価格:¥2,750(税込)
品番:LACA-25016

<収録曲>
全5曲収録予定

関連リンク

公式サイト
https://lantis.jp/void_chords/

公式Twitter
https://twitter.com/RyoTakahashi111

公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCkgsdh6IC-sD-bfbDCi7Bbg

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