リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2022.07.27

【インタビュー】TV『オーバーロードⅣ』OPテーマ「HOLLOW HUNGER」担当・OxTインタビュー!オーイシマサヨシとTom-H@ckに楽曲への思いを聞く

【インタビュー】TV『オーバーロードⅣ』OPテーマ「HOLLOW HUNGER」担当・OxTインタビュー!オーイシマサヨシとTom-H@ckに楽曲への思いを聞く

クリエイターとして。アーティストとして。お互いをリスペクトしながら思うままに、マイペースに制作を重ねるOxTが、その結成からタッグを組むダークファンタジーアニメ『オーバーロード』の第4期のOPテーマを手がけることに。「HOLLOW HUNGER」と銘打たれた1曲はこれまでの疾走するデジタルロックの印象とは一線を画した、新たなOxTを感じさせるもの。ラテンのサウンド感を宿しながらもシンプルな音の構築の中で“遊ぶ”ように奔放に響く音像が印象的なナンバーだ。世界を広げていくアインズたちの視線の先の躍動感を感じさせる本作について、オーイシマサヨシとTom-H@ckに聞く。

「オーバーロード」の初放送から7年。OxT結成から7年。今、思うこと。

――第1期放送が2015年。OxTとしては「Clattanoia」以降、多くの楽曲で共に歩んできたアニメ『オーバーロード』ですね。

オーイシマサヨシ OxT結成の年でしたよね。

Tom-H@ck そうだよね。時間が経つのは早いね。

オーイシマサヨシ でも4期まで来たのはすごいことですよね。原作が長く続いているからと言って、おいそれと長期のアニメ化は出来ないわけでしょうし、確固たるオバロ人気が日本国内のみならず海外でも熱気を帯びているからこそなんでしょうね。今回の新曲「HOLLOW HUNGER」の、第4期のノンテロップ映像が公開されたとき、海外からのコメントも多くて。英語だけではなくスぺイン語とか、ほかの言語もめちゃくちゃ多かったので、全世界から愛されている作品なんだなぁ、と改めて思いました。

――それこそ7年という時間を、1つの作品と共に歩むこともなかなかない機会ではありますよね。楽曲を作る立場としては、こうして長く関わる作品に対してはどのような想いがありますか?

オーイシマサヨシ 僕はアニメタイアップをする際のポリシーとして「その作品のファンになる」というものがあるんです。その敷居を跨いでからじゃないと曲も書かないし歌もうたわないと決めているので、一度ファンになっている作品ですから毎回お声がけをいただくと光栄ですし、長く続く作品だと「ファンになるまで」という1つの作業をパスできますから、気持ち的にはほかの作品に比べるとすぐに作品に没入できる感覚はあります。

Tom-H@ck 作品ごとに感覚は違うかなと思うんです。大きいとか小さいとかってことではなくて、作品によっての色や匂いは違うと思っていて。その作品と関わった当時の自分がどんな生活をしていて、制作する環境がどうなっていたかによっても如実に作品への皮膚感覚みたいなものって変わると思うんですね。それは1期、2期というシーズンによっても変化していくと思うんですけど、『オーバーロード』に関しては個人的には“自然体でずっと傍にいてくれる作品”という感覚があって。OxTの「Clattanoia」を、『オーバーロード』で出させてもらい、その大きな器を最初にもらったような気がしていて。その器に僕ら2人が入って、活動しながら、すごく自然に歩んでこられたような気がしています。もちろん作品へのありがたみとか世界の大きさも感じているんですけど、気づいたらずっと傍にいる作品というような感覚ですね。ワンマンライブをするときには「Clattanoia」は絶対にやるし、すごく盛り上がるし、それをやるたびにオバロの絵が浮かぶんです。家族とまではいかないですが、ずっといるような感じで。

オーイシマサヨシ 「家族」と呼ぶにはダークファンタジーすぎますよ(笑)。

Tom-H@ck ガイコツだし、大きいし(笑)。

オーイシマサヨシ でもたしかにね。OxTにとっては最初に作っていましたからね。やっぱり同じ作品の主題歌を何期も担当する場合って、ネタ切れになることだってあるんですよね。同じ世界観ですから、トリミングする場所や抽出する要素が枯渇してくることもなきにしもあらずなのですが、オバロについてはそういうことがないんですよね。

Tom-H@ck たしかに。

オーイシマサヨシ アプリゲームや映画も含めれば、主題歌系は6曲くらいやっているんですけど、それでも「抽出する要素がないわ」と思うことがないですし、今回も新しいチャレンジが出来たなと思っているんです。たしかに不思議な感じはしますね、自分たちにとってのオバロという存在は。それだけオバロの世界観の深さが起因しているのかもしれないですね。

――アウトプットしすぎてアイディアがなくなることがないくらいに、常に刺激や影響が供給されているということでしょうか。

オーイシマサヨシ そうですね。それに毎年、原作も新刊が出ますし。そういう意味でもずっとing(現在進行形)でいてくれる作品なこともあると思います。

「オーバーロード」がOxTに及ぼしたもの。

――先ほど「Clattanoia」のお話が出ましたが、『オーバーロード』との出会いとなったこの曲は、ある意味OxTの指針にもなりました?

オーイシマサヨシ 指針というか、OxTを組むときに1つのスローガンとしてあげていたのが「カラフル」なんです。作品に合わせて色んな色彩を放っていこう、と。2人とも音楽業界が長いですし、ある種の器用さもテクニックも持っている2人だし、1人じゃできないことも補いあって色んな色彩感を出せるんじゃないかってことでパレットを広げたときだったんです。そういう意味では「オバロに合わせた俺たちなりの色彩を出そうぜ」という曲でもあったので、たしかに指針にはなっていますし、「俺たち、できるじゃん!」という自信にもなったかと思います。

――タイアップではそれこそ様々なタイプの楽曲を要求されるかと思いますが、スランプはあったりするんですか?

オーイシマサヨシ ソロではスランプ経験があるんですけど、OxTはないです。僕は1人だと考え込みがちだし、ふさぎ込んでしまうこともあるんですけど、Tomくんがいることによって新しい風が吹くし、風通しもよくなるので、曲が書けないとか行き詰まった感じを覚えたことはないです。そこは感謝です。

Tom-H@ck 同じく僕もないです。表現として合っているかわからないけど、「恋人」と「結婚」みたいな感じで、一番好きな人と結婚しちゃいけないような感じと一緒というか(笑)。自分がめちゃめちゃ力を入れているものって、少しのズレも許せなくなっちゃうようなところがあると思うんです。でもそれがOxTになると、いい意味で「遊び場」みたいな余白や空間がたくさんできるんです。人間はそういう空間の中では詰まることもないですから、全然すんなりいくんです。こだわりがない、というネガティヴなものではなく、束縛のない大きなフィールドがそもそもOxTにはあるので、2人共悩むことがないんじゃないかなっていう気がします。

――Tom-H@ckさんはOxTとしてもMYTH & ROIDとしても『オーバーロード』の楽曲を作っていらっしゃいます。ボーカルは違いますが、モチーフは同じ。そこでの表現について意識的に違いを持たせているのでしょうか。

Tom-H@ck 一番の違いはボーカルですよね。ボーカルが違うことで、そもそも書く曲が変わってくるんですね。それぞれのボーカルの好きな音域も違えば響きも違いますし、こういう歌い回しがいいな、と意識していくと、その時点でジャンルも違えば方向性も違う楽曲が生まれるんです。一番はそこだと思います。ただ2つのプロジェクトの中で1つの作品をどう見せていくかということに関しては、若干ですが、OxTの方が「陽」の面を出していて、MYTH & ROIDについてはその裏の「影」というか。そういうものを音楽に落とし込んだり、アーティスト像として落とし込むということはなんとなく考えているかもしれないです。それでもやっぱり作品があって、ボーカルがいて、という兼ね合いで楽曲が変わることが一番大きな違いだと思います。

――オーイシさんの声と『オーバーロード』の親和性についてはどのようにお考えですか?

Tom-H@ck 「Clattanoia」のときにはまだ2人ともそのことがわかっていなかったんじゃないかと思います。この作品でオーイシさんがどう歌えばみんなが好んでくれる、大衆性を持った歌になるのかな、ということがわからなかった。そのときは落とし込み方についても紆余曲折があったのですが、今となるとオーイシさんのストレートなエネルギーみたいなもの、器用で複雑に浮くこともできればもっと感情的にもできるし、スマートに歌うこともできるけれど、オーイシさんは根に持っているストレートな部分がすごく声に出ていると思っているんです。それがロックや勢いのあるサウンドに乗ったときに、ものすごくパワーを宿す。それがオバロの曲にオーイシさんの声が乗ったときの良さなのかなと思います。特に「HOLLOW HUNGER」も複雑なことをやったり、すごくテクニックを使ったりもしているんですけど、元のストレートの音の太さが生かされているとも思うので、それはオーイシさんの一番の良きところなのかなと思います。

――ここまでOxTの楽曲を歌ってきて、ご自身の声の表現力の変遷を感じることはありますか?

オーイシマサヨシ コンテンツによってボーカルは使い分けているつもりではあります。たとえばOxTであれば「SSSS.GRIDMAN」の曲はオバロとは全く違う喉の使い方をしていますし、もっと言えばソロで歌っているような、最近で言えば『恋は世界征服のあとで』のOPテーマ「恋はエクスプロージョン feat.田村ゆかり」の歌い方とも全然一線を画して、チャンネルを切り替えているつもりなんですね。なんなら同じボーカルなのかなとか、同じ作曲者なのかがわからないくらい大きくチャンネルを切り替えていると思うんですが、その技術は元々あったものではないと思うんです。OxTの活動を通じて、そして『オーバーロード』というフィルターを通して僕自身が成長したからだと思うんです。さっきTomくんが話してくれたように「Clattanoia」のときには暗中模索感があったんです。どういうボーカルにしようかとか、僕の記憶するところでは、声がストレートすぎるからもう少し外連味のあるボーカルにして欲しい、というメーカーさんからのオーダーもありましたし、「Clattanoia」は初めての英語詞曲だったので、外国の方が聴いても発音がわかるようにネイティブスピーカーの先生を立てて発音指導もしていただいて、そういうスキルも学びつつボーカルに生かしていった経緯もあったので、成長させてもらっているし、学びのあるコンテンツだと思います。

次ページ:オバロ第4期のオープニング曲に込めた想い

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP