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INTERVIEW

2022.07.20

【インタビュー】楽曲と作品が二人三脚で歩いていくように――シンガー・宮川愛李が『シュート!Goal to the Future』OP主題歌「アオレイド」に秘めた蒼い熱量とは?

【インタビュー】楽曲と作品が二人三脚で歩いていくように――シンガー・宮川愛李が『シュート!Goal to the Future』OP主題歌「アオレイド」に秘めた蒼い熱量とは?

青春は決して楽しいだけじゃない

――そうしたなかで「アオレイド」もそうですが、今までにリリースした「Sissy Sky」や「Reboot」は、『名探偵コナン』のアニメ作品の主題歌となっています。アニメやアニソンというものにはどういう印象をお持ちですか?

宮川 アニメやマンガはすごく好きなんですけど……私、あまり他人に本当に好きなものを好きって言えないんですよね。「私も好き!」って言って、相手が同じものを好きだったときに、どっちのほうが詳しいとかどっちの好きが重いかみたいなものを、勝手に自分で測っちゃうみたいな。「負けた~!」って思ったりするんで(笑)。

――わははは、愛が深いゆえに(笑)。

宮川 本当に損な性格をしてるんですけど。だから、本当に……好きなんです!アニメ!(笑)。

――本当は声を大にして言いたいと(笑)。

宮川 本当に好きなんですけど、語れない!なんかもう、恐ろしくて(笑)。私1人でずっと今まで好きなものを「わー良いなー」って思ってきたので、あまり周りとアニメの話で盛り上がるのはなーって……こ、こんな私でもいいですか?(笑)

――いいと思います(笑)。そういう内に秘めたる愛情というものは。

宮川 そう、それくらい愛があります!でも私の知らないアニメの裏情報を知ってたりするのを見ると、「えっ!?私このアニメに対して何も知らない!」みたいに思ってしまうんです。なので、一番好きなアニメとかは絶対今まで人に言ってこなかったんですよ。

――アニメに対してそうした深い愛情があるとなると、『コナン』の主題歌を担当したことはご自身にとっても大きな出来事だったのでは?

宮川 デビューした年に「Sissy Sky」を歌わせていただいたときは、お恥ずかしい話、実感がまったく湧いていなかったんです。まだデビューして1年目で、毎日精一杯の、いっぱいいっぱいの気持ちでいたので。だから『コナン』のタイアップが決まったときも、「わっ!そうですか!わかりました!」みたいな、全部同じくらいの気持ちで「頑張ります!」みたいな感じでこなしてしまっていたんですよね。

――デビュー直後なので実感が湧く余裕がなかった。

宮川 「Reboot」で主題歌を担当させていただいて、そこで自分らしさを出しつつ『コナン』への想いも表現できるようになったなと思います。「Sissy Sky」の頃はとにかく一生懸命だったな、心が精一杯だったんだなっていう思い出が強くて。そこから「本当にアニメのOPテーマ、EDテーマをやらせてもらえているんだ!」って実感が湧いてきて、スタッフさんから「映像が出来ました。宮川さんの歌に合わせてアニメーションが動きます」と言われて映像を観たときに、初めて「はー!嬉しいーっ!」ってなったくらいで。だから、良く言えばレコーディング中は特に大きなプレッシャーを感じることなく自分らしく歌えてるかな、という部分はありました。作詞に関してもそれは同じで、自分らしい作品に対する想いも書き映せているんじゃないかとは思っています。

――好きだからこそ、最初はプレッシャーに感じることなくフラットに入られたのはアーティストとしては良かったのかなと。

宮川 そうですね、たしかにその部分は大きいかもしれないです。

――そうした経験を経て、アニメ作品の楽曲を作るときに意識していることはありますか?

宮川 例えば「今回の作品は冬がテーマなので冬らしい楽曲にしてほしいです」というオーダーをいただいた場合は、そういうテーマをしっかり意識して作りますね。原作があればしっかり読んでから作り込みたいという想いがあるので、私の楽曲と作品が二人三脚で歩いていく、みたいな感覚はあります。もちろん私の想いだけで独りよがりにならないようにもしたいし、私だけが伝えたい想いじゃなくて、どういう作品なんだろうって自分なりに噛み砕いてから一緒に歩んでいくような、ニュアンス的にはそういう感じで作り込みたいと意識しています。

――そうした流れで、今回の「アオレイド」はTVアニメ『シュート! Goal to the Future』のOP主題歌となりました。ちなみにこの作品は1993年にアニメ化もされた、人気サッカーマンガのその後を描いた作品になっています。原作となる『シュート!』はご覧になったことは?

宮川 タイアップのお仕事をいただいたときは、まだ名前しか知らなかったです。私は2000年生まれなので、原作もアニメも生まれる前なんですよね。サッカーもそこまで詳しくなかったので、新鮮な衝撃を受けたアニメ・マンガでした。私の知らないサッカーの魅力や仲間と一緒にやり遂げるスポーツの感動や熱量をものすごく真っ直ぐ感じられる作品で、かなり大きなインパクトを受けました。

――そうしたなかで今回の『Goal to the Future』に対する印象はいかがでしたか?

宮川 今回放送が始まる前に、出演される声優の方々と一緒に試写会に登壇させていただいたんですよね。映画館で2話分先行で観たんですけど、真剣なスポーツの描写がある一方で、コミカルな描写もあったり、登場人物1人1人が抱えている裏のストーリーが深く掘り下げられていたり、イメージ的にはかなりカラフルなストーリーのアニメだな、という印象がありました。今回の『Goal to the Future』は完全にオリジナルストーリーですが、『シュート!』のエッセンスを今の掛川(高校)のサッカー部のみんなからも感じられたり、そういうところは時を超えた作品の魅力なんじゃないかなと思います。まるでタイムカプセルを開けたときみたいな、カラフルさが感じられるんじゃないかな、というイメージで歌詞も書きました。

――「アオレイド」は、サッカーあるいは『シュート!』本来が持つ爽快感がある一方で、主人公の(辻)秀人が抱える葛藤なども、歌詞やサウンドにも込められている気がして。具体的には若者の焦燥感といいますか。

宮川 楽曲に関しては『シュート!』の世界にマッチしてるなっていう第一印象でしたね。作詞するにあたっては、その時点では『Goal to the Future』の主人公がこういう性格で、など詳しい話は伺わないまま、「じゃあ『シュート!』を現代に蘇らせるとしたらこんな感じだ」というのを自分で想像して書いたつもりだったんですね。ですが、私の感覚が案外主人公と元相棒の2人の関係性が感じられるような歌詞になっていると感じています。初めに楽曲を聴いたときから感じた焦燥感やアップテンポさというのは、決して良いことだけじゃなくて、心が焦っているとか、鼓動が早くて緊張している部分も表現しているなと感じていて。10代特有の青い緊張感、心の若さみたいなものを存分に出せるような楽曲にしたいなというイメージがありました。アニメのオープニングとして起用していただき映像がついて、初めて「あっ、これすごいマッチしたかも!上手くいったかも!」という達成感を感じることができました。

――特に1番の歌い出しから青春の甘酸っぱさや苦さみたいなものが表現されているなと。ここのフレーズは比較的スムーズに出てきましたか?

宮川 どうだったかなー?作詞の順番はいつもバラバラなんですよ。楽曲に対してここから始めよう、みたいな決まりは特になくて。「あ、これ良いリズムだな」というのがあったら「これは、どこだ?……ここだ!」みたいな、パズルみたいにハマりそうな場所からはめていく感じですね。なので、今回もどこから作ったかはあまり覚えてないんですけど、Aメロは早い段階で出来ていたと思います。私の中でも、ここは一番初めにイメージを湧かせることができるパートなので、アニメーションがついたときにも「これはどういう歌なんだ?」というのを第一印象でわかってもらえるような言葉選びが大事だなと思っていました。そこで世界観が少しでも感じられるような形になるようにというのは意識して作りましたね。

――そうした葛藤から“もう一回立って走り出せれば”というサビへと繋がっていくのかなと。一方でボーカルについてはどう臨まれましたか?

宮川 レコーディングの前に思っていたのは、“決して楽しいだけじゃない”ということですね。アニメの中での彼らにとって、サッカーは人生を賭けた戦いであって、決して「スポーツだ。熱いぜ!走るぜ!行くぜ!勝ちに行こうぜ!」みたいなものだけで表現するのはもったいないな、と思っていました。サッカーだけではなくほかのスポーツや、スポーツ以外のことでも、何かに人生を賭けて戦っている人たちが「こんな上手くいかない、こんなきれいなもんじゃない!」という、みんなが見ているところの後ろ側の悩み・葛藤みたいなものをちゃんと表現できるようにしたいな、と。声に関しても、私の声はハッキリしていると自覚があったので、サッカーの魅力や少年たちの心の叫びみたいなものを私の声で届けられるようにという強い意志を持って歌いました。そういう想いはしっかり声には乗ったかなと思っています。

――たしかに熱血というよりは、「内に秘めた熱さ」というものを感じさせるところが特徴的ですよね。「アオレイド」では全編英語詞のEnglish ver.もありますね。

宮川 これは私の日本語の歌詞を英語に直してもらっていて、私が直接英語の言い回しを考えたわけではないんですけど……私なりに頑張りました!全部英語でフルサイズのレコーディングをしたのは初めてで、正直に言わせてもらうと……ちょっぴり納得できていない部分もあって(笑)。もっとこうやりたいっていう技術面での反省はあるんですけど、海外の方に『シュート!』の世界観を表現して、声でも歌詞でも伝えたいことはたくさん詰めたつもりです。そういう部分で『シュート!』の良さ、「アオレイド」の良さを両方感じていただければなと思ってます。

次ページ:自分の進むべき道を、この年ではっきりさせる

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