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INTERVIEW

2022.07.27

【インタビュー】麻倉ももは3rdアルバム『Apiacere』でどんな音楽を歌うのか? 自分らしく声優としての表現を追求した新作について、そこに込めた想いを聞く。

【インタビュー】麻倉ももは3rdアルバム『Apiacere』でどんな音楽を歌うのか? 自分らしく声優としての表現を追求した新作について、そこに込めた想いを聞く。

2年ぶりとなる麻倉ももの3rdアルバム『Apiacere』は、近作のシングル曲で見せた彼女の新境地を更に推し進めた形で提示してくれている。普遍性と革新性が同居する現在の麻倉ももの“意志”について、制作へのスタンスなどもまじえたロングインタビューをお届けする。

チームの変化が麻倉ももに変化をもたらす

――3rdアルバム『Apiacere』(アピアチェーレ)聴かせていただきました。個人的に「ピンキーフック」がとても好きなのですが、この曲や「僕だけに見える星」などシングル曲も含めた2年ぶりのアルバムということで、麻倉さん的にはこの2年間でアルバム制作にあたっての変化などはありましたか?

麻倉もも 本当に身内的な話ではあるんですけど、制作チームががらっと変わったり、スタジオも初めましてのところだったりして、音楽活動での変化は多かったですね。

――その変化はタイミング的にいつ頃からなんですか?

麻倉 ちょうど「ピンキーフック」を作っていた頃からですね。その辺りのシングルも含めてのアルバムなので、今回収録されている曲はほとんど新チーム体制での音楽活動という感じです。

――麻倉さん的にはご自身のチームが変わってみていかがですか?

麻倉 チームの年齢層が若くなって、私と歳の近いスタッフさんも多くて。私が音楽をそんなにたくさん聴く方ではないので「こういう曲が合ってるんじゃない?」とか、「海外ではこういう曲が流行ってるよ」とか教わったりするようになりました。

――まさしくアルバム自体が若々しく今っぽい音になってるとは感じましたね。

麻倉 私も上手く言い表せないんですけど、また全然違う色のアルバムになったなとは思いますね。現代的というか、過去に歌ったことのないような音楽というか、曲の構成も最近はやっぱり長いとなかなか聴いてもらえないみたいで。これまではAメロ、Bメロ、サビ、それを2番で繰り返してからDメロ、といった形が多かったのですが、新チームになってからは「2番サビがない!」みたいな曲が増えました。

――確かに麻倉さん個人の好みでいうと昭和アイドル的なスタンダードな構成のものがお好きですよね。

麻倉 そうですね。そういう曲にばかり触れてきたので、短くするという感覚がそもそも私の中になかったんです。だから今回も新しい発見だらけでした。レコーディングでも年下のスタッフさんに意見を求めたりはしますね。音楽について以外も、このタイトルどう思います?とか、これどう受け取られるんだろうとか、若者の意見みたいな感じで参考にしたりします。

――そんな新体制で作られているアルバムですが、まずどういった取っ掛かりから着手されましたか?

麻倉 まずは今ある曲を並べてみて、あとはどういう曲が欲しいか、歌いたいかを考えてパズルのピースを合わせていくような感じでした。アップテンポ曲がちょっと足りないねとか、ここにこういう感じの曲が欲しいよねみたいな。

――今回は12曲中6曲が新曲と、新曲が多めの構成です。曲のピースを合わせていくときに新曲で色々遊びがききそうな。

麻倉 一応最初に新曲の方向性はざっくり決めていくのですが、例えば「Love me, Choose me」という曲は、元々アップテンポで明るいダンス曲が欲しくて曲を集めていたはずが、結果的に私が最終候補の中でこれがいいって、ちょっとマイナー調のかっこいい曲を選びました。そうやって当初予定していたものから外れていったりして、じゃあ次はこうしようかと1曲ずつ話し合って作っていきました。

――歌詞の内容についての依頼などは曲を決めてからですか?

麻倉 そうです。曲が決まったら、この曲はこういう歌詞の世界観でお願いしますと要望をお伝えして。

――ソロでの麻倉さんは基本的には恋の歌を歌うというのは、今回もブレませんでしたか?

麻倉 そうですね。やっぱり私の軸にあるものなので、今回も自然とそうなりました。

――少し漠然とした質問なのですが、チームが新しくなったり、ご本人的にも久しぶりのアルバムとなったときに、“アーティスト・麻倉もも像”についての話し合いにはならないんですか? みんなにどう思ってもらいたいとか、恋の歌のイメージがしっかり付いたうえで、今回はこういう角度にしてみようか、みたいな話とか。

麻倉 私含めてみんなで話し合うみたいなのはないんですけど、チーム側ですごく話してるとは聞いたことがあります。基本的には私がこういう歌詞がいいって閃いた案を共有して、問題なければそれで書いてもらいましょうとなるので、みんなで歌詞や方向性などを決める段階では「麻倉ももをこう見せよう」みたいな話はあまりしないですね。なんだか恥ずかしいですし(笑)。

――麻倉さんのアイデアと皆さんが提示してきたものをミックスして決めていく感じですね。アイデアを送るときは具体的にはどんなことをスタッフに伝えるんですか?

麻倉 世界観だったり登場人物だったり曲によって違うのですが、例えば「Love me, Choose me」は、主人公はこういう女の子でこんなことを考えてますみたいなアイデアを送りました。リード曲の「eclatante」は主人公というより“女の子の概念”みたいな感じにしたかったので、どういう子かというよりも、ときめくワードをたくさん入れたいと思って、“キャラメリゼ”や“ルージュ”や“カプチーノ”とか、そういうときめき単語を私がバーっとリストにして送って、それを歌詞に組み立ててくださったり。手法は1曲ごとに違いますね。

――以前「僕だけに見える星」のインタビューのときにも同じようなことをおっしゃってましたね。曲を聴いてこういうストーリーが乗ってるといいなとか、こういう言葉が入ってるといいなというアイデアが頭にパッとと思いつくと。

麻倉 そうですね。曲を聴くとまずこういう女の子でこういうストーリーがいいなみたいなビジュアルが思い浮かぶので、それをお伝えすることが多いですね。

――そういうアイデアは聴いたら即座に湧いてくるものなんですか?

麻倉 割とスッと浮かびますね。具体的にというよりはこういう感じかなあっていうフィーリングでしかないんですけど。

――さっきのお話の中で、同年代のスタッフの方から色んな方向性の曲を教えてもらったとおっしゃってましたが、麻倉さん個人として歌いたい曲に変化はありましたか?アルバムに必要なピースとは別に、新たな音楽の好みというか。

麻倉 自分では新しい曲を聴き始めたとか、最近このアーティストが好きでとか、そういう好みの変化はないんですけど、こうやってアルバムを作ってみると前作とは全然違う感じになったなとは思います。収録曲は私も一緒にスタッフさんと選んでるので、何か変わったのかなとは思うんですけど、どこがどうやって変わったのかがいまいちわからないんですよね。

――聴いていて不思議なのが、曲自体がすごく大人っぽくなったわけではないし、歌詞が大人の恋愛を歌ってるわけでもないのに、ちゃんと少し大人になっている感じがするんですよね。少し前にTrySailのインタビューをしたときに、各々が声優としてのキャリアを10年分積んでいるので、ストーリーがあってキャラクターがあるような曲に関しては、アプローチが変化しているという話をされてたんですけど、ソロ活動ではいかがですか?

麻倉 そうですね。やっぱり全然違うなとは思うんですけど、好みが大人になったかはわからないんです。どっちかというと自分でやりたいことや、自分の気持ちがちゃんと見えるようになったというか。例えばこれは嫌だなとか、これは好きだなっていうのが、昔は自分自身よくわからなかった。モヤがかかってて見えなかったところが、今は好きか嫌いかって問うたときに、ちゃんと答えられるようになったところは成長ですし、大人になったなと思います。

――ちなみに今回のアルバム制作で嫌だなと思ったことはありましたか?提示されたことで、それは違うと思うことってどんなことなんでしょう?

麻倉 基本的には曲に対してここのメロディを変えたいですとか、自分の耳馴染みを優先するというか、こうしたら気持ちいいなって自分でわかるというか。当然いただいたものも正解なのですが、「私はこっちのほうが気持ちいいです」って言えるようになりました。あとは歌詞もイメージと離れているものがあれば、別の案をいただいたりしています。

――歌詞は具体的にはどういうワードがイメージと異なりますか?

麻倉 例えば言葉遣いが悪いとか。「ヤバい」とかはあんまり入れないようにはしています。もちろん普段の会話で「ヤバい」って言うことはあるんですよ、たまにあの……TPOに合わせて(笑)。でも麻倉ももとして活動するうえで、それは自分自身でもあるんですけど、「麻倉もも」っていう存在を作ってるみたいな感覚もあるんです。だから多分、私がプロデューサーとして“麻倉ももさん”に歌わせたくないワードなんです。

――なるほど。それはご自身の好きなものでいうと少女漫画的なのか、もしくは昭和アイドル的なというか。

麻倉 どちらかというと昭和アイドルですかね。あんまり現代風の「だりぃー」みたいな感じじゃないほうがいいなっていうのが私の中にあって、あくまでちゃんとしたキラキラした、もうこれファンタジーだろ!くらいの女の子のほうが、基本的な設定としてはいいなと思います。

――ファンタジーという言い方はわかりやすいですね。楽曲の主人公もすごくちゃんと恋をしている、かわいらしい女の子じゃないですか。そこに麻倉さんの声優としてのキャリアが乗ったことによって、そのファンタジーに強い説得力が出ていると感じます。こんな女の子いないだろと思わせずに自然に聴けるようになっていますよね。

次ページ:アルバムを貫くブラス曲「eclatante」

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