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INTERVIEW

2022.06.16

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 第4回目:田中宏幸(プロデューサー)「その日、世界で初めてアンドロイドが泣いた」というキャッチコピーからスタートした制作の裏側に迫る

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 第4回目:田中宏幸(プロデューサー)「その日、世界で初めてアンドロイドが泣いた」というキャッチコピーからスタートした制作の裏側に迫る

上松範康×RUCCA×Elements Gardenが贈る、新世代メディアミックスプロジェクト「テクノロイド」。上松といえば、大人気コンテンツ『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズや『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズ、最近では『ヴィジュアルプリズン』の生みの親でもある気鋭のクリエイター。そしてKAT-TUNや嵐、King&Princeの楽曲をはじめ、下野 紘や蒼井翔太らの曲の作詞でも知られるRUCCA、さらに上松率いるElements Gardenとでタッグを組んで生み出した新たなコンテンツは、切なくも美しい、アンドロイドたちの物語を描くものに。

今年1月にAPPゲームがリリースされ、ゲーム画面からタイトルが示すようにテクノミュージックが流れ出す。近未来サウンドともいえる楽曲にアンドロイドたちの歌が重なり、心惹かれるユーザー続出中の『テクノロイド』はアニメ化も発表されている。そんな「テクノロイド」を、リスアニ!は徹底解剖!第4回目は、本作のプロデューサーである田中宏幸(株式会社サイバーエージェント ゼネラルプロデューサー)へ、制作の裏側や今後の展開について話を聞いた。

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【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~


『テクノロイド』のコンセプト、世界観が出来上がるまでの過程

――そもそも企画の始まりはどういったところからだったのでしょうか。

田中宏幸 元々は僕がエイベックス・ピクチャーズにいた時代に、『異能バトルは日常系のなかで』という作品でElements GardenさんとRUCCAさんとでエンディングのテーマソングを出したのが出会いでした。そのときはかと*ふく(加藤英美里・福原香織)さんの曲を作っただけだったんですが、その後Elements Gardenさんとご一緒したのが『Dance with Devils』というミュージカルアニメ作品だったんです。そこでは劇伴と歌モノでしっかりとお世話になったという経緯があって。『テクノロイド』のスーパーバイザーとして入ってくださっている吉村愛さんも監督をされていましたし、音響監督の長崎行男さんもご一緒していた作品なのですが、その制作の過程のなかで所謂アニメの音楽制作だけではなく、『うたの☆プリンスさまっ♪』や『戦姫絶唱シンフォギア』でやっているような原作の開発から田中さんとご一緒したい、と上松範康さんから言ってくださって。『異能バトル』のときにお世話になったRUCCAさんと企画をまとめているので、それがまとまったらぜひやりましょう、というお話をしていたんです。その企画がまとまったのが、エイベックスを退社し、サイバーエージェントに入る前日の飲み会でした(笑)。サイバーエージェント入社0日目が『テクノロイド』の企画書をいただいた日になります。その前からRUCCAさんと上松さんとは企画の準備をしていたようなんですけど、最初のきっかけはこのような感じでした。

――Elements Gardenならではの「企画から立ち上げる作品」の企画書を受け取ったとき、どんなところに魅力を感じたのでしょうか。

田中 先ほど一番最初に頂いた企画書を見直していたのですが、RUCCAさんが「その日、世界で初めてアンドロイドが泣いた」って書いているんです。アンドロイドが泣くんだ、と思って。そのキャッチコピーに惚れました。人間とアンドロイドの性格の差分みたいなところを浮き彫りにして、人間の素晴らしさや愚かさをアニメやゲームで描きたい、という内容だったんですね。そこは今もコアバリューになっているものですが、そのRUCCAさんのコンセプトは大きな魅力だなと感じました。それと上松さんが、「トロン」という映画のような、ちょっとエレクトリカルな世界観でElements Garden的テクノのような、これまでのElements Gardenの音楽とは一線を画した音楽に挑戦をしたい、という音楽的な側面がありながらも、それを作品に落とし込むというのはなかなか面白かったので。今は作品が多いですから、差別化になるんじゃないかと思ったことで、その両方で魅力を感じました。

――Elements Gardenの楽曲の魅力、そしてRUCCAさんの構成力の魅力についてはどのように捉えていらっしゃいますか?

田中 Elements Gardenさんはこれ以前にも『うた☆プリ』や『シンフォギア』などでアニメファンやゲームファンから認められた存在だなと思っていましたし、1つのトレンドを作っていたと思うんですけど、僕的にはメロディが普遍的で良いなぁ、と常々思っていたので、もっと幅広いサウンド感にもトライできるんじゃないかなと感じていて。そういう意味でも今回の「田中と一緒に新しいトライがしたい」という企画をくださったことにやり甲斐を感じました。RUCCAさんは人としてすごく優しいので、物語がすごくピースフルで優しいですし、ネガティブなことも含めて抑揚をつけないとなかなか物語はドラマチックにならないものですが、心に痛い感じにならずに、切ないところに落とし込まれているのは性格を反映しているからだと感じています。ストーリーとしてはアンドロイドが感情を得て『kokoro』が成長していく過程のなかで生き方を選択していくところがコンセプトだったんですけど、芯にあるものがマッチョなものの、それに対してキャラクターがすごくピースフルかつジェンダーレスで、悪役がいないんですよね。そのバランスが良いなぁ、と。

――この『テクノロイド』という制作チームの中で田中さんの役割として大きいのはどういった部分でしょうか。

田中 僕は繋ぎ役ですね。RUCCAさんの考えているものをアニメやゲームや音楽のフォーマットに落とし込んだときに、お客さんにより魅力的に届くように調整をしたり、作品の内容的にはゲームもアニメもシナリオに関わっていますし、楽曲に関しても発注段階からすべて関わっています。その辺の言語化しきれない部分を言語化していくというのが、クリエイティブに関しての役割になっていますね。

――音楽の部分ではElements Gardenの菊田大介さんが中心に立っていらっしゃいますが、田中さんと菊田さんのテクノ感を共有されましたか?

田中 はい。最初は結構探り探りだったところもあって、まずは最初のユニットの1曲目は自己紹介ソングとしてキャラクター設定そのままに音楽にしていきましょう、と作っていったんです。菊田さんとは年代的にも近いし、見ていたものやリスペクトしている音楽も近かったりしたので、「こういう音楽をまた若い人たちに届けたいよね」っていう話のなかで、1曲ごとにコンセプトのやり取りをしていきました。

――曲発注の際に面白いなと思うのはどんなところですか?

田中 今回は「テクノミュージック」という縛りがあるので、いかに幅を出せるかは難しさでもあり醍醐味でもあるんですけど、僕が「こんな感じの曲なんじゃない?」というものは基本的にはすべてがテクノミュージックということでもなくて。だけどそれをちゃんとアレンジベースで落とし込み、しっかり『テクノロイド』の世界観に繋がるものにしてもらえるので、どんなアレンジにしたとしても、やはりメロディの強さが最強の強度を誇ることになるんだなと改めてわかりました。今の音楽シーンではテクノという言葉を言わずとも、ダンスミュージックは自然に浸透しているんじゃないかなって思います。

――彼らの、近未来の要素として大事にしているのはどんなことですか?

田中 ジャンルとしては「SF」なんですけど、難しくはならないように、あくまでデザインや世界観のチョイスのなかで未来を描いているので、いわゆるメカメカしい感じというよりもちょっと煌びやかなホログラムの要素で近未来感を出していたり、ゲームのイラストの背景にもかわいらしいものを入れたり、光もピンクや紫を陰として入れてみたり。SFのメカメカしいごつい感じというよりは、煌びやかさをデザインとしては意識しています。だから教室であろうと飲み屋であろうと、必ずどこかしらにはピンク色を差してもらっています(笑)。

次ページ:プロデューサーが語る各ユニットの制作過程

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