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INTERVIEW

2022.06.09

【連載】アニソン制作の実情を語る!『くノ一ツバキの胸の内』EDテーマプロジェクト『くノ一ツバキの音合わせ』スペシャル座談会 第1回:音楽・白戸佑輔×音楽プロデューサー・山内真治、西田圭稀×鈴木Daichi秀行×椿山日南子×ha-j

【連載】アニソン制作の実情を語る!『くノ一ツバキの胸の内』EDテーマプロジェクト『くノ一ツバキの音合わせ』スペシャル座談会 第1回:音楽・白戸佑輔×音楽プロデューサー・山内真治、西田圭稀×鈴木Daichi秀行×椿山日南子×ha-j

GECPの巧みな仕事

――1話での白戸さんご自身のお仕事に対しては、皆さんいかがでしたか?動画でも白戸さんの曲はノータッチだったので、ぜひ鈴木さん、ha-jさん、椿山さんから曲とアレンジについてのコメントをいただいてみたいなと。

鈴木 やっぱりこれが「完成版」じゃないですか。アニメのエンディングで「あ、こうきてほしいよね」っていう展開や音がちゃんと入っている、一種のお手本みたいな仕事。だから、言葉はちょっと悪くなってしまうけど、良い悪いを判断するものじゃないんです。「さて、これを自分なりにどうアレンジしようか?」と、頭を悩ませる曲(笑)。

白戸 ははははは(笑)。

鈴木 この正解がある中から、どこまで崩していいものか。まあ、作り手側としては、やっぱりこのバージョンより良いと思ってもらいたいわけですよ(笑)。そういう対抗意識もあるなかで、どこまで白戸くんのバージョンを壊して、どこまで残すか。そういうリファレンスとして、とてもちゃんとできている曲だという印象でした。

――この曲のある意味一番スタンダードな形を、しかもハイレベルな形でお出しになられたみたいな印象ですよね。ha-jさん、椿山さんはいかがでしたか?

ha-j 白戸くんの中の「乙女」を見たなって感じでした。

白戸 ha-jさん、僕、実はこう見えて、乙女な曲が得意なんですよ(笑)

ha-j うん、知ってる(笑)。「Anison Days」ってTV番組で、白戸くんの曲を時々演奏するんですよ。そのたびに、「すっげー『乙女』だな、この人」って思った。今回も「『乙女』きたなー!」と思いました(笑)。

――「乙女」というのは、どんなことなんでしょう?

ha-j 音楽的にもう少し噛み砕いて言うと、なんだろうなぁ……あんまりロジカルなものではなくて、なんとなく感じて体現するものな気がするんですよね。なので、言葉が上手く見つからない。

鈴木 メロの感じとかに、かわいらしい部分が多めにあるんですよね。

ha-j そうそう。それくらいしか言えない。

椿山 私はまず、すごくわくわくするような、王道の展開だと感じたんです。ですけど、それぞれほかの皆さんのアレンジを聴いてから、もう1回白戸さんのバージョンを聴いてみると、わくわくするなかにもほっとする感じがある。どこか懐かしいような……。「平成」っぽい感じを受けました。私は個人的にそういうのがとても好きなので、良いなぁと。あとはコードが適度に泣いてくれるのが好きで、それがこの作品が「女の子たちの成長物語」なことを体現してる感じするのも、好きなところですね。

――いかがでしょうか、白戸さん。皆さんからコメントをいただいて。

白戸 いやもう、褒めてくださいましたけど、ある意味たたき台みたいなもんですからね。ほかの人のアレンジが上がってくると、むず痒くなってきますよね。「え、僕もこれくらい、変わったことやりたい」みたいな(笑)。Daichiさんがおっしゃったように、絶対にこういう仕事では、みんな口に出さなくても、「元のアレンジを超えてやろう」という意識は絶対あるだろうから。改めて、みんな、ずるいなぁ……と思っちゃいました

――トップバッターって損ですよね(笑)。

白戸 そうなんです。「自分もリハーモナイズ(※メロディについているコードを付け替えること)したいよぉ~」って思ってました。

鈴木 はははは(笑)。まあ、基準がハチャメチャだと大変なことになるからね。

白戸 そう。元からコードを変にできない。

――そんな制約があるなかでも、白戸さんがアレンジでこだわられたポイントはあります?

白戸 アレンジよりもメロディですかね。38人と大勢の声優さんが歌うので、誰にとっても無理のない音域を意識しつつ、ちょっとキュンキュンくるものをもたせたい。だからサビ前とかもメロディが下がって終わるんですけど、ああいうのって書くの怖いんですよ。作家として。たしかにきれいにメロディが着地できるんだけど、やっぱりサビ前ってメロディが上がりたいじゃないですか。「おっしゃいくぞー!おらー!」みたいな。でも、そこを抑えて、でも良いものにするように工夫しました。アレンジは……そうだなあ。クラップで楽しさをちょっと紛れ込ませるくらいな感じですね。

アニソン作曲家の未来を見据えて

――面白いですね。裏話を掘るほどに、「職業作曲家は発注先とこうして仕事をするのだ」みたいな、仕事の実態が見えてきます。

山内 十数年前から、DAWを操る若者がどんどん増えています。それってつまり、音楽をセミプロみたいな感覚でやっている人が増えているということ。そうした状況だから、本当のプロが何をやっているのかを、動画とか、こういう記事の形で表に出して、理解される環境が醸成されたように感じているんです。この記事を10年前にやろうとしたら、多分「そういうのは機材の専門誌でやればいい」と言われるだけだった気がするんですけど。

白戸 ああ、たしかに。

山内 今だったらもう少し「わかるわー」「すごいわー」と感じてくれる人の層が厚くなっているんじゃないか。実際、この間の動画も、「マニアックすぎやしないかな?」と不安に思いながら公開してみたら、すごく面白いものになったし、反響もあった。これからこういうのがどんどん世に出ていくことで、チャレンジする若者がどんどん出てきて、いずれは今プロの一線でやってる人たちを越えていくようになったら、それって素敵じゃない?と。そういう、20年後を見据えたプロジェクトなんです。

――では最後に、このプロジェクトに参加されたことで、ご自分の活動に何か影響を与えられたと感じている点があれば皆さんに伺いたいのですが、いかがでしょうか?

白戸 影響とは少し違うかもしれませんが、「やっぱりほかの人の真似、できねーな!」って改めて気付かされました(笑)。先輩のことを追いかけていた時期もあったんです。それこそDaichiさんとか、最初に話題に出ましたけど、スタジオまで押しかけて「教えてください!」って頼んで、コピーをして、勉強にはなったんですけど……でも、真似はできなかった。そのことを思い出すきっかけになりましたね。「他人は他人、自分は自分」だな、と。

鈴木 僕は……結構アレンジって、「どういう作業なの?」と質問されても、とても説明しづらい。でも多分、今後、「アレンジって何やるんですか?」と聞かれたら、このプロジェクトのプレイリストを渡して「こういうことよ」って言えば済む。めっちゃわかりやすいですよ。「Bメロ以外、同じ曲だよ。わかる?これがアレンジだよ」と。プロが本気を出した、音楽作家向けの教材です。

――なるほど!

鈴木 しかも、アニメのための曲という、ある程度の制約があるのがいいんですよね。キャラクター設定や作品の雰囲気には沿わねばならない。単に「それぞれ好き勝手やってください」というプロジェクトのだったら、変わったものが出るのは当たり前だけど、参考にはしづらかったと思います。キャラクターの曲という範囲に収まっている、商業音楽として成立しているものがこれだけのバリエーションできてるって、ちょっと驚異的です。

山内 音大とか専門学校の教則CDにしてほしいと、真面目に思っています。

――長さも89秒で共通ですし。

鈴木 テンポも一緒なんで。でも、テンポが一緒に聴こえないんですよね。

――アレンジの不思議ですよね。

ha-j 僕はもう、参加して学びだらけでした。白戸くんの感想と少し重なりますけど、聴いていて、「これ、どうやって作ってるの?」とわからない部分があるんですよ、やはり。「プロってすげぇな」って純粋に思いました。自分もプロなのに、精進続けるべしですね(笑)。

椿山 私も勉強になりました。一番勉強になったのは、皆さんのアレンジのバランス感覚ですね。例えば今回のこのメンバーで言えば、鈴木さんのアレンジはサビは明るく、女の子らしさもあるんですけど、音色の使い方とか、リズム感でちょっと近寄りがたい演出もされている。そこのギャップの出し方。違う要素だけど、1曲の中ですごく馴染んでいます。ha-jさんは曲全体はすごくのんびりとした、のほほんとした、オーダーに沿ったものでも、それだけだと退屈になりそうなところを、変拍子や、楽器の使い方で派手さ、キャッチーさを残している。白戸さんは和の感じをメロディで表現しつつ、あえてアレンジでは和の雰囲気をそこまで出さない。和を全面に出しすぎず、ポップに仕上げる。皆さんそれぞれのバランス感覚が、本当に勉強になりました。

INTERVIEW & TEXT BY 前田 久


●リリース情報
「くノ一ツバキの胸の内 あかね組音楽集」
2022年7月6日(水)発売

価格:¥3,850(税込)
品番:SVWC 70589~70590
商品仕様
・CD 2枚組、アニメ描き下ろし三方背ケース仕様
・あかね組くノ一・ランダムステッカー封入

詳細はこちら

●作品情報
TV アニメ「くノ一ツバキの胸の内」

【放送情報】
TOKYO MX 4月9日(土)より 毎週土曜24:00~
とちぎテレビ 4月9日(土)より 毎週土曜24:00~
群馬テレビ 4月9日(土)より 毎週土曜24:00~
BS11 4月9日(土)より 毎週土曜24:00~
毎日放送    4月9日(土)より 毎週土曜27:38~
中京テレビ  4月9日(土)より 毎週土曜26:25~
AT-X 4月10日(日)より 毎週日曜21:30~

【配信情報】
dアニメストア :4月9日(土)より 毎週土曜24:30~
Netflix :4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
U-NEXT : 4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
アニメ放題 :4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
ABEMA : 4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
バンダイチャンネル:4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
Hulu:4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
GYAO! :4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
ひかりTV :4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
FOD :4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
Amazon Prime Video: 4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
WOWOWオンデマンド: 4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
TELASA :4月12日(火)より 毎週火曜24:00~
JCOM:オンデマンド:4月12日(火)より 毎週火曜24:00~
みるプラス-見放題パック:4月12日(火)より 毎週火曜24:00~
auスマートパスプレミアム :4月12日(火)より 毎週火曜24:00~
Video Market :4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
DMM.com:4月12日(火)より 毎週火曜12:00~
music.jp :4月12日(火)より 毎週火曜12:00~

【原作】
山本崇一朗「くノ一ツバキの胸の内」(小学館「ゲッサン」連載中)

【スタッフ】
監督:角地拓大
シリーズ構成:守護このみ
キャラクターデザイン:奥田陽介
色彩設計:山口 舞
美術監督:吉原俊一郎
美術設定:青木 薫
撮影監督:大島由貴
CGディレクター:千野勝平
編集:瀧川三智
音響監督:明田川 仁
音楽:白戸佑輔
制作:CloverWorks

【主題歌】
オープニングテーマ:the peggies「ハイライト・ハイライト」

【キャスト】
ツバキ:夏吉ゆうこ
サザンカ:根本京里
アサガオ:鈴代紗弓 ほか

関連リンク

「くノ一ツバキの音合わせ」特設サイト
https://kunoichi-tsubaki.com/otoawase/

『くノ一ツバキの胸の内』公式サイト
https://kunoichi-tsubaki.com/

『くノ一ツバキの胸の内』公式Twitter
https://twitter.com/tsubaki_anime

白戸佑輔 公式Twitter
https://twitter.com/sirato10

鈴木Daichi秀行 公式Twitter
https://twitter.com/daichi307

椿山日南子 公式Twitter
https://twitter.com/hinako_tsubaki

ha-j公式Twitter
https://twitter.com/woo_papa_AKITA

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