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INTERVIEW

2022.06.01

【10周年記念連載】第4回:ZAQ「QUEEN」――9ヵ月連続リリースとともに10年間を振り返る!

【10周年記念連載】第4回:ZAQ「QUEEN」――9ヵ月連続リリースとともに10年間を振り返る!

ZAQが歩んできた10年間の中で2016-2017年に刻まれた経験とは――?舞台『PERSONA3 the Weird Masquerade』で得た影響、「ZAQ」というセルフブランディングの必要性、そして2022年の最新配信シングルにも繋がる“ZAQらしい”音楽性の確立。10周年記念連載インタビュー第4回では、ZAQにとって大きな転換点となった2年間を記録すると共に、最新曲「QUEEN」の真価を探る。

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頼れば協力を得られると知ることができた舞台

――2016年は「hopeness」と「割レル慟哭」、「Serendipity」、2017年は「Last Proof」と「カーストルーム」、「BRAVER」をリリースした年でした。「Last Proof」が劇場版、それ以外の表題曲がTVアニメのオープニングテーマにもなりましたが、今振り返るとどういった年だったと思いますか?

ZAQ 「hopeness」から「Last Proof」の辺りはちょうどワンマンライブを頑張っていた時期だったのかな?タイアップも続いて色々な打ち合わせもしました。同時に、気持ちが枯渇していた時期からの回復期にもあたり、自由にやってみようという挑戦心がまた出てきたところだったと思います。

――前回のインタビュー(第3回)で、周囲のミュージシャンから受けた励ましが力になったということでしたが、ワンマンライブで支えてもらった人たちのことだったんですね。

ZAQ そうなんですよ。特に「hopeness」はワンマンライブ(“ZAQ LIVE TOUR 2015「KURUIZAQ」”)のリハーサル中にずっと、アニメ『紅殻のパンドラ』のオープニング曲をどうしようか転げ回りながら悩んでいたんですけど、そうしたらサポートミュージシャンの皆さんが色々とアドバイスをくださったんですね。ZAQにはピアノがあるんだからそこを活かした曲を作ってみるとか、って。あとは、外からの情報を仕入れる時期でもあったと思います。ピアノが主体のインストバンドであるmouse on the keysを聴いてインスパイアを受けたりとか。それで、これまでのZAQはテクニカルな部分をやってこなかったんですけど、ほかのミュージシャンの助けをもらいながら「hopeness」に変拍子を入れてみたりしました。

――アニソンでは変拍子や転調が定番になっていますよね。

ZAQ やっぱりフックがないと展開が動かない、というところがあるんですよね。

――「hopeness」のイントロは印象に残るピアノソロでしたが、周囲からの影響があったんですね。

ZAQ 舞台『PERSONA3 the Weird Masquerade』の影響もかなり大きかったですね。

――「~群青の迷宮~」(2014年)、「~蒼鉛の結晶~」(2015年)、「~藍の誓約~/~碧空の彼方へ~」(2017年)と出演されました。どういった影響を受けたのでしょうか?

ZAQ 今まで編曲までも自分1人でやってきて自分の理想を現実にするためにやりたいようにやってきたところで、頼れば編曲だってつけてくれる人がいるということを教えてもらったのが舞台ですね。1人で夜中にスタジオでセリフの練習をしていたらカンパニーのメンバーに、1人で練習しても正解なんて出るわけがないとめちゃめちゃ怒られたんですよ。練習して出した答えがいいかどうかの判断をするのは仲間なんだからもっと仲間を頼れ、って。大勢で1つの作品を作り上げることの大切さを教わりましたね。だから、次の「割レル慟哭」では自分にない刺激を外から得てアレンジの幅が広がりましたし、「Serendipity」でも編曲をR・O・Nさんに全部任せられました。

――当時のプロデューサーはいましたが、初めて同年代のクリエイター仲間を得たことが良かったのかもしれませんね。

ZAQ そうなんですよね。音楽に関しては3歳からやってきた自負があったんですけど、舞台に関しては経験がまったくないわけじゃないですか?年下の先輩から色々教えてもらいましたけど、それはたしかに年が近かったからこそ聞き、頼ることができましたね。

――しかも、初舞台がシアターGロッソというのは大きな経験だったかと思います。

ZAQ 超大抜擢だったと思います。発表会でも「お前誰?」って感じで見られていましたし。でも、跳ねのけてやるという気持ちでしたね。ゲームの「ペルソナ」愛は誰にも負けないと思っていたし、アニメの『ペルソナ』もずっと好きだったので。芝居として落とし込めるかはわからなかったですけど、演じるアイギスについても感情の変化などをすごく理解していたつもりでした。でも、大海原に飛び込む気持ちでいたらお芝居自体もすごく楽しかったし、周りの人にも褒めていただいたので、積極的に教えを乞うように稽古をしていましたね。

――一番大変だったのは?

ZAQ それはもう、セリフ覚えですね。あと、(アイギスは)戦闘用ロボットということで感情がないので、最初の頃は棒読みでも大丈夫と言われていたんですけど、なんせキャラクターボイスが坂本真綾さんなので……。

――それは怖い。

ZAQ そう、怖かったですね。感情の機微を上手く表現できるか不安でした。あとは殺陣が本当に苦手で、戦闘シーンはすぐに(特殊能力の)ペルソナを映像で出してもらっていました。肉弾戦が強いアイギスのはずが肉弾戦以外でもほとんどペルソナだったかもしれない(笑)。だから次にやるときはアクションがない舞台がやりたいですね。

――それは演技力が必要とされる舞台ということですね、

ZAQ そこは頑張る。でも、運動神経が悪いのは仕方がないので。

――そんなに苦手ですか?

ZAQ めちゃめちゃ苦手ですよ。私、50mのタイムが12秒でしたから。中学校3年生で(笑)。

――2016年のシングルでは周囲から得た力を投入されたとのことですが、翌2017年はどのような年でしたか?

ZAQ 環境の変革が起きた時期ですね。まず、それまではイケイケで、天才キャラとして見せていたのに、「Last Proof」ではウィッグキャラをやめました。もっとZAQの内面を見せていく方向に変えたんですよ。MVでバンドメンバーに出演してもらったのもそういうことですね。

――等身大の姿を見せるように。にしてもウィッグはそれほどに重要なアイテムだったんですか?

ZAQ 「Serendipity」まではめちゃめちゃ重要でしたね。曲だけを聴いてもらえればいい、私の顔なんて覚えてもらわなくていい、という尖った人間だったので、曲によって髪型やメイクやキャラクターを毎回変えるというコンセプトで動いていたんです。

Serendipity ジャケット写真

――ペルソナを作っていたんですね。

ZAQ そうなんですよ。ペルソナを(笑)。でも、コアなファンを作っていくためにも、「Last Proof」からは全身で戦おうということになったんです。だから、「カーストルーム」でも地毛でピアノを弾いていますね。楽曲に関しても、もっともっと自分の内面に寄り添ったものを作っていこう!……ってずっとお世話になっていたプロデューサーが離れることになって(笑)。「カーストルーム」は「おろおろ」期ですね。

――尖ったスタンスから脱却した直後のセルフプロデュースということで、アーティストZAQの方向性を決める必要があったかと思いますが?

ZAQ 悩みました。ZAQを続けていくうえでの永遠のテーマですよね。それまではプロデューサーという大きな柱があって、「次はこういうことをやってみよう」「次の時代はこうなるから」と方向性を示してくれたので、私は「良いですね!」と言いながら作っていたし、それがすごく楽しかったんですよ。だから、「カーストルーム」のときはやっぱり怖かったです。作った楽曲を世に出してみないと良いかどうかがわからないという不安な状態になったので。でも「カーストルーム」が、TVアニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ』の力も借りながらも、たくさんの方に褒められたことで、プロデューサーではなく自分で「Go!」を出してもZAQらしさを出せるという確信を得られたのがこの楽曲でした。自分が作ってきた音楽に答えがあったと気づいて、自信がつきましたね。ZAQの知名度が上がった実感もありましたし、自分が作った音楽を好きな人の声が後押しになっていました。“Animelo Summer Live 2017 -THE CARD-”のテーマソングを作れたことも自信に繋がりました。

――「Playing The World」ですね。アニメの主題歌とは異なるところでのオファーというのが大きな自信になったと。

ZAQ そうですね、かなり嬉しかったですし、“アニサマ”というプロジェクトを原作に作るというのは本当に楽しかったです。2015年にはMOTSUさんと「アニソンCLUB!-R』というTV番組の司会をしていて、そこで(“アニサマ”プロデューサー)齋藤(光二)さんとの絆ができたからこそという部分はありましたけど、作り続けてきたからこそ面白さを買ってくれたという自信にはなりましたね。

――でも、「カーストルーム」は悩みの中で生まれたとは思えないほどにハジけた名曲だと思います。強い癖のあるイントロも印象に残りますが、多くの人に開かれたような高揚感あるかっこいいサビも耳に残りますし、急展開を見せる楽曲でした。

ZAQ 私がACID JAZZにハマったのはプロデューサーの最後の言葉で、「次の『ようこそ実力至上主義の教室へ』というアニメではACID JAZZをやろうか」と言ってくれたんです。だから、イントロだけはACID JAZZなんですけど、サビからはポップな展開になって明るくかっこいいところで終わる、と決めたのは自分でした。プロデューサーが決めた方向性を自分1人で切り開いたという展開ですね。「カーストルーム」でプロデューサーのあとを引き継いでくださった(元ランティス、現株式会社Precious tone代表の佐藤)純之介さんに、この曲はなんという音楽のジャンルになるか聞いたことがあるんですよ。そうしたら、これはZAQというジャンルだと言われて、自分の中ですごく腑に落ちたことがありました。自分が作ればZAQというジャンルになる、と認めてもらえた安心感で私は救われましたね。

カーストルーム ジャケット写真

――たしかに、ZAQさんの楽曲には異なるジャンルが同居しています。

ZAQ そうなんですよ。さかのぼれば、「Last Proof」はロックだし、「Serendipity」でいったらダブステップ、「割レル慟哭」ならインダストリアルロックで、「hopeness」はピアノロックですね。「カタラレズトモ」や「Philosophy of Dear World」はドラムンベースということで意外とジャンルは1つだったんですけど、「カーストルーム」以降は混ざるようになってきました。その次の「BRAVER」もスタジアムロックっぽい感じもするし、少しこじんまりとしたタイトなリズムもある。無理やり融合したものを成立させるという力業になってきたところがありますね。

――自分の力で辿り着いたZAQのカラーですね。

ZAQ でも、制作途中はこの展開が合っているのか合ってないのか不安なままに進んでいましたけどね。だから、「カーストルーム」のアウトロは最後につけたんですけど、高揚感のままで終わることもできたところを、イントロのかっこいいエレピソロをもう1回持ってくることで融和させました。イントロから変化したけど別の生き物になったわけではないんですよ。ピカチュウからカイリュウになったわけではなく、ピカチュウからちゃんとライチュウになる、みたいな(笑)。

――(笑)。次の「BRAVER」はセルフプロデュース第2作となるわけですが、TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』のオープニングという人気シリーズの主題歌でもありました。

ZAQ そのときもかなり不安の状態ではありましたね。「ACID JAZZーっ」と言いながら消え去ったプロデューサーでしたけど(笑)、「カーストルーム」の最初はまだいたので。「BRAVER」は最初から1人だったんですよ。でも、純之介さんと第1、2期の主題歌を研究して、アニメに忠実に、という想いで作ったのが「BRAVER」ですね。ある意味、挑戦していない楽曲になりました。

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