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INTERVIEW

2022.05.02

【インタビュー】80’sの夏の名曲たちをカバーしたミニアルバム『Memories of Romance in Summer』をリリース!降幡 愛がアルバムの魅力を語る!

2020年より1980年代サウンドのエッセンスを取り入れた音楽を生み出し続け、幅広い層から話題を呼んでいた声優・降幡 愛。そんな彼女の2022年の新作は、自身が敬愛する80’sサウンドの名曲たちのなかから夏をテーマにチョイスしたカバーミニアルバム『Memories of Romance in Summer』。中原めいこや山下達郎などなど、現在のシーンに強い影響を残す楽曲たちを、降幡流にアレンジした本作はどのようにして生まれていったのか、降幡に話を聞いた。

――今回リリースされたミニアルバム『Memories of Romance in Summer』は、降幡さんが敬愛する1980年代のポップミュージックのなかから、夏の曲をチョイスしたカバー作となりました。以前からライブでもカバーは披露されていましたが、それをアルバムにするという構想は以前からあったのですか?

降幡 愛 私のなかではなかったんですけど、ライブでもカバーを披露して、お客さんの反応やスタッフさんの反響で、カバーのアルバムいつか出したいなっていうのは少しずつ出てきていたんですよね。80’sやシティポップでもざっくりと夏っていうイメージの楽曲があるじゃないですか。そのなかでアルバムにして出していこうかというので今回の制作がスタートしました。

――80’sの音楽のなかでも夏をテーマにしつつも、それでも楽曲の数は膨大ですが、そこからのセレクトは苦労したのでは?

降幡 そうなんですよ(笑)。夏をテーマにセレクトするという、まあちょっと早いリリース時期ではあるんですけど(笑)、そのなかでも自分の好きな音楽や、80年代がリアルタイムのスタッフさんとも「俺はこういうのがやりたい」っていう話し合いもありました(笑)。

――そのなかで選曲で意識した点は?

降幡 全6曲というなかでバリエーションとバランスというのも考えましたし、私が好きな曲だと悲しい歌やバラードとか偏っちゃうのもあったので、スタッフさんとも話するなかで、私が知らなかった曲も入れていこうかなと。このなかでいえば「Lucky Chance をもう一度」がそうなんですけど、C-C-Bさんは知っていてもこの曲は知らなかったので、新しい魅力にまた気づかせてくれた曲でもあります。各曲ごとに色々テーマはありますけど、バリエーションに富んだ1枚になったのかなと思いますね。

――降幡さんが敬愛する和田加奈子さんや中原めいこさんもありつつ、スタッフからの提案も盛り込んだ内容になっていると。

降幡 私が好きな曲はどちらかというとマイナーな曲もあったので、そこで並べてみて、プロデューサーの本間(昭光)さんとも話をして。そこから「RIDE ON TIME」みたいな“ザ・80’s”というものを入れたほうがいいんじゃないかっていうご意見もいただいて。でも歌う身としては入れたほうがいいのわかるんですけど、「ハードル高!」って思って(笑)。

――たしかに80’sのアンセム中のアンセムですからね(笑)。

降幡 いやあ、色んな方がカバーされているんですけど、「う~ん、今の私にできるのかなぁ」って(笑)。

――リスペクトがあるからこそ、そのプレッシャーを感じつつの制作だったと(笑)。これまでオリジナルでは降幡さんが歌詞や世界観を作って、それを本間さんが制作するという過程でしたが、原曲がある今回はこれまでとは違うやり方になりますよね。

降幡 そうですね。自分でセレクトしてこの楽曲に決まって、本間さんがアレンジしてくださるんですけど、原曲のリスペクトを込めたアレンジというのはやっぱり本間さんすごいなって思っていて。私の歌詞から書いてくださったサウンドもすごいと思っていたんですけど、既存の曲でもやっぱり本間さんのアレンジにもなっているし、デビューから本間さんとやってきた私のサウンドも入っていて、改めて「ああ……プロの人だ」って思ったというか(笑)。

――まさに原曲はありつつ、そこはしっかりと降幡さんのサウンドになっているという。そんな本作の収録曲についてお伺いしたいのですが、まずは和田加奈子さんの「夏のミラージュ」ですが、TVアニメ『きまぐれオレンジ☆ロード』のEDテーマということもあって、降幡さんとしてはやはり外せないだろうという(笑)。

降幡 私を知ってくださっている方は絶対入れるだろうなって(笑)。80’sやシティポップが好きな方からすると隠れた名曲なのかなって思いますが、私にとっては“これぞザ・80’s”というもので。

――そうした大好きな曲を改めて歌ってみていかがでしたか?

降幡 本当に好きな曲ということもあって1曲目に入れたんですけど、カラオケでもよく歌っていた曲なので、和田加奈子さんの歌い方にちょっと寄っちゃっている気もしていたんですけど、実際にマイク前で歌ってみると、私の今までの歌い方も含めてこの曲は自分に合っているんだなって感じました。本間さんもスタッフさんも、「ふりの歌声に合っている曲だ」って言ってくださっていて、それは一つ発見でありつつ、自分の好きな曲が自分に合っているって言われるとめっちゃ嬉しいなあって(笑)。

――オリジナルにもある、少しタメの効いた、だんだんと高揚していく歌い方もキマっているなと。あと、オリジナルはかなりリバーブがかかったボーカルになっていましたが、降幡さんも少しリバーブをかけた歌唱になっていますね。

降幡 かけてますね。レコーディングのときから、自分の返しの耳中もすごくリバーブがかかっていて(笑)。そこからだんだん整えながら歌っていって、またトラックダウンのときにも煌びやかなリバーブかけて調整していきました。オリジナルはガンガンかかっていてそれも好きなんですけど、自分のバージョンはそこといい塩梅でバランスをつけていきました。

――続いては1986オメガトライブの「君は1000%」。こちらも80’sの定番曲ですね。

降幡 これも大好きな曲で入れたんですけど、男性ボーカルのカバーなんですよね。これが一番最初にレコーディングした曲で、自分としてもすごくテンションが上がった曲だったんですけど、初めてマイク前で歌ったときに本間さんも「ふりさんは本当にこの曲が好きなんだね」って伝わったみたいで。アグレッシブに、”君は1000%!”って跳ねるように歌って、素直に気持ちよく歌えましたね。

――あの弾ける感触はありつつも、イントロを含めて少し沈んだ感じから始まるのが面白いなと。

降幡 最初の”君は微笑みだけで”というところですよね。最初のイントロが不穏な感じで始まって、そこが原曲とはまた違う感じで。ギターもいつもの林部(直樹)さんにレコーディングしていただいて、あのキュイーンという何かが始まりそうなフレーズからリズムが入っていって……っていうすごくノリのいい楽曲になっていて、アレンジ具合が本間さんらしさだったりすごいなって思うところでした。

――あの導入から爽やかに転じていく流れはお見事だなと。

降幡 そうなんですよ。原曲から爽やかな楽曲ではあるんですけど、私が入ることで不穏さや違う色に見えるようになっていて。

――あと原曲はカルロス・トシキさんの流暢な英語もありますが、そこは歌ってみていかがでしたか?

降幡 ここめっちゃ大変でした(笑)。あと歌はダブルで録っていて、全体的に広がりがある仕上がりになっていると思いますね。

――続いては、こちらも降幡さんが敬愛する中原めいこさんの名曲「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」ですね。これはもちろん降幡さんチョイスで。

降幡 はい(笑)。中原さんの楽曲はほかにも候補に入れていたんですけど、中原さんの夏といえばこれじゃないですか。それに自分のソロではこういうアップテンポな、南国感がある曲ってあまり歌ってこなかったので、自分でも新鮮で楽しかったです。踊りたくなるというか。

――たしかに。原曲の世界観やサウンドが、言ったらアニメソングっぽさも感じられて、そのなかに降幡さんが逆に入り込むのは新鮮だなと。

降幡 だと思います。中原さんの楽曲はどれも好きで、歌い方もかわいい声じゃないですか。でも私がそれをやるとキャラクターソングみたいになっちゃうので、自分の歌い方でもありつつも、女性のキュンとする歌い方というバランスが難しかったんです。でも最終的にはシンプルに楽しく歌った感じですよね。

――特に”君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね”と歌うサビがそうですが、そうしたキュートさ、ちょっとした妖艶さというバランスもお見事で。

降幡 あそこは息継ぎが大変だった記憶があります(笑)。先ほどおっしゃっていただいたアニメソングっぽいというのはまさにその通りで、この曲はMVを制作しているんですけど、ジャケットのデザインをしていただいたNOSTALOOKさんにアニメーションで作ってくださったんですよ。なのでそこはちょっと意識しました。アニメがつくというので気合いが入るというか、表情もほかの曲よりいっぱいつけましたね。

――デュア・リパの「Levitating」のMVでも話題になったNOSTALOOKのデザインというのもこのコンセプトにピッタリでしたね。

降幡 NOSTALOOKさんには「アニメのエンディングやオープニングみたいにしてほしい」って発注していたんですが、まさにという出来になりました。

――続いては、C-C-Bの「Lucky Chanceをもう一度」。C-C-Bというと「Romanticが止まらない」や「空想Kiss」など有名な曲がありますが、この選曲は意外でした。

降幡 ですね。私も、これはスタッフさんから「この曲いいよ」って言われて、聴いた感じがすごくよくて入れた楽曲なんですよね。その前の「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」が強い曲じゃないですか。その流れでの「Lucky Chance」も強い曲で、そこはいい感じのバランスで組めたかな、この楽曲って入れてよかったなって思います。

――たしかにビートの強い楽曲が並ぶ中盤のインパクトは大きいですね。またこの曲はオリジナルとはまた違った印象の強い曲で。

降幡 そうですね、C-C-Bさんへのリスペクトがありつつも違う顔が見えたかなって。

――トークボックスも入った導入から、少しヘヴィーな雰囲気もあるのは新鮮で。

降幡 「何が始まるんだろう?」ってなりますよね。C-C-Bさんって3人のボーカルがいるので、原曲のパンチに負けないようにひとりで歌わなきゃなっていうのがありました。あとはガヤのところは女性スタッフさんに入ったりして工夫したり。どちらかというと、男子の暴れん坊な感じとかを、”「あいつはNo No No」!”って腕を振り上げたりして歌って、勢いを出したいなと。歌ってみて、もっと早くに知っておけばよかったなって思った曲です。

――C-C-Bといえば松本 隆&筒美京平の黄金コンビですが、松本さんの歌詞をうたった感想はいかがでしたか?

降幡 改めて、松本先生の歌詞は面白いなって。歌っていても「あ、こうくるか」っていうのがあって。Bメロの”どうせRival「あいつはNo No No」”なんていうのも、こんなの絶対出てこないな、すごいって思いながら歌っていました。

――それこそ降幡さんもフィクショナルな作詞をされてきましたが、そこもいい影響になったのかなと。

降幡 私も受け手に想像を膨らませてもらいたいなって書いていたんですけど、全然懐の深さが違うなと(笑)。男の子がどうにか彼女を振り返らせたいと思ったときに、そこで警察が出てくる視点が面白くて。「そういう方向性に持っていくんだ、書けないー!」って思っていました(笑)。

――そして続いては中山美穂さんの大バラード「You’re My Only Shinin’ Star」ですね。こちらは楽曲を作られた角松敏生さんのバージョンも有名ですね。

降幡 これは今年のバースデーライブで初めて披露したんですけど、レコーディングよりライブが前だったので、まずライブのことで頭がいっぱいだったんですよ。そこからレコーディングという流れだったんですけど、ライブでのバンドさんのサウンドで慣れちゃっていて、ちょっと音数が寂しいなって思うぐらいで。

――たしかにこちらのバージョンでは、比較的音数の少ない、優しいアレンジですよね。

降幡 それもあって、最終的には歌詞に沿った感じで歌えたなっていうのがあります。私は、この楽曲は角松さんのバージョンで知っていたんですけど、最後の”いつまでも側にいて I Love You”っていうフレーズを、角松さんはライブとかだと”Because I Love You”って歌っているんですよね。中山美穂さんのバージョンも素敵なんですけど、今回は角松さんのバージョンのエッセンスも入れたいなと思っていて、チームの女の子に角松さんチームと仲のいい人がいたので確認してもらって、そしたらOKもらえて、レコーディング直前に急遽”Because”を入れることにしました。

――ニクい演出ですね(笑)。

降幡 女性ボーカルと男性ボーカルでそれぞれで視点が違うなって思っていたので、最初はそれを自分で歌うのはどうしようかって思っていたんですけど、先にライブで歌っていたときは、今まで支えてくださった方や私のアーティスト活動の想いを抱えながら歌っていたので、それを改めてレコーディングでも歌えたかなって思います。

――そして最後の山下達郎さんの超名曲「RIDE ON TIME」です。歌うのがプレッシャーとおっしゃっていましたが、またパワフルなオリジナルとは一転して、しっとりとしたアレンジとなりました。

降幡 私も最初に曲をもらったときに「これ、なんの曲だろう?」って思ったぐらいで。自分が思っていた印象と全然違うアレンジにしてくださって、めちゃくちゃかっこいいけどまたプレッシャーだと思って(笑)。でも、自分のボーカルで一回歌って聴いたときに、やっぱり自分の声質と合っていて、これはすごいことだなって。原曲のアグレッシブさというのとは違って、もうちょっとローな感じが私にはハマるんだなって改めて気づいたというか、本間さんが今まで私と一緒にやってきたことで入れてきてくださったんだなって思いましたね。

――オリジナルの硬いピアノというのもエレピの柔らかいものになっていたり、そのチルなアレンジがまた降幡さんのボーカルにも合っていると感じますね。

降幡 もちろん山下さんの歌声も、カバーする前にめちゃくちゃ聴いたんですよ。ほかにも色んなアーティストの方のカバーも聴いたんですけど、やっぱり山下さんのはどこを切っても山下達郎!っていうもので。そのエッセンスも自分なりに取り入れて、そこから抜いていくという作業がありました。原曲を聴いて、改めて山下さんの偉大さを感じつつ、頑張ったレコーディングでした。

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