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INTERVIEW

2022.04.29

【インタビュー】従来のパブリックイメージを離れた、同時リリースの2作に迫る! 大橋彩香 11thシングル「Be My Friend!!!」・『Acoustic Mini Album “Étoile”』リリースインタビュー

【インタビュー】従来のパブリックイメージを離れた、同時リリースの2作に迫る! 大橋彩香 11thシングル「Be My Friend!!!」・『Acoustic Mini Album “Étoile”』リリースインタビュー

声優アーティスト・大橋彩香、2022年最初のリリースは、なんと2作同時。自身も出演するTVアニメ『史上最強の大魔王、村人Aに転生する』のOPテーマに起用された11thシングル「Be My Friend!!!」と、昨年末リリースの『Acoustic Mini Album “Lumière”』と対をなす『Acoustic Mini Album “Étoile”』を、ともに4月27日(水)にリリースする。本稿では、この2作収録の新曲を中心にインタビュー。従来の大橋のイメージから離れた楽曲たちへの取り組みについて聞いた。

ここまでの積み重ねがあったからこそ、殻を破れた「Be My Friend!!!」

――今回は、シングル「Be My Friend!!!」と『Acoustic Mini Album “Étoile”』が同時発売となります。

大橋彩香 私、2枚同時リリースって初めてなので、「同じ日に私の顔のあるCDが2つドンって並ぶのは面白いなぁ」と思いました(笑)。それに「Be My Friend!!!」は“鋭”で『Étoile』は“陰”と、今までの私のパブリックイメージとは程遠いものになったといいますか。2枚とも、私としては結構珍しいタイプの作品になったような気はしますね。

――特に「Be My Friend!!!」は、シングル表題曲としてはかつてないほど激しい曲になりました。

大橋 そうですね。ほかのシングル表題曲やキャラソンのイメージしかないような方は、すごく驚くかもしれないなと思っていて。それにファンの方も、私のラジオで初めて1コーラスを流したときには、イントロが流れた瞬間みんなすごくびっくりしていたんですよ(笑)。あまりにもゴリゴリなサウンドだし、途中にラップまであるし……その後MVがアップされたんですけど、それもあの内容なのでみんなの感情が追いついてなくて。反応を見ていて面白かったです(笑)。

――大橋さんご自身は最初、「Be My Friend!!!」にどんな印象を持たれましたか?

大橋 元々作品側から「OPらしい曲で」という希望をいただいてはいたんですけど、ここまでメタルっぽい激しい曲だとは思わなかったので、私もびっくりしました。今までは主題歌になる作品のタイプとの兼ね合いでかっこいい表題曲には縁遠かったので、「表題曲で、ついにかっこいい曲をやれる日がきたかも?」とわくわくしてはいたんですけど……想像以上でした(笑)。あと、ラップがあったのも驚きでしたね。というのも私、「#HASHTAG ME」で勝手にラップは卒業したつもりになっていたんですよ。でも、あれがあったからこの曲のラップを乗り越えられたような気もしているので、“HASSYさん”には感謝しています(笑)。

――メロラップへの苦手意識を克服されて、その後「#HASHTAG ME」を経て、今回……と段階を踏まれていますしね。

大橋 そうですね。「#HASHTAG ME」よりも難しいラップですし、1番・2番でちょっと構成も違うので結構苦戦はしたんですけど、曲調的にはすごく好みなので「ラップを乗り越えれば、この曲は歌っていてすごく楽しい曲になるはず!」とも思いました。

――そのラップ部分、苦戦を感じないほど非常にかっこ良く感じたのですが。

大橋 いやぁ、難しかったです。私、声優としてセリフを言うときと同じように、ラップも「全部の発音をはっきり言わなきゃ」ってきれいに歌ってしまう癖があるんですよ。なのでそこをぐじゃっとした雰囲気を出せるように、今回は苦手な部分を全部アルファベットで書いて「英語を言う」ように歌ってみたんです。

――それは、日本語の部分も?

大橋 はい。しかもそのままアルファベットに直したわけではなくて。これは作詞・作曲してくださった岡嶋かな多さんにディレクションを通じて教えていただいたテクニックなんですけど、例えば「一瞬で打ち解ける」の「ける」を「kale」って書いて「ケィル」みたいに歌うと、ガチガチにきれいな発音からちょっと脱せられるんですよ。

――その試みはほかの曲でも、ラップ以外の部分を歌う際のヒントになるかもしれませんね。

大橋 たしかに。平メロでも日本語そのまますぎて躓くところがあったら、同じように崩してみたら良くなるのかな?ちょっとノリを変えてストンと自分に落とし込めることができれば、壁を超える速度も速くなるのかも。

――ラップ以外の部分では、こういった曲がお好きなぶん、かっこ良く聴かせるための歌い方のイメージも浮かびやすかったのでは?

大橋 はい。こういう曲はあまりファルセットとかを使わずに地声でパーンと出せば、めちゃめちゃかっこ良くなるだろうなとは思っていたので、キーが高くても極力地声で頑張ろうという意識でレコーディングに臨みました。やっぱりヘビーな曲を歌う方って、どこまでも果てしなく地声か、もしくはミックスボイスのパワーバージョンみたいな歌声で高音を出しているイメージなので。

――実際、サウンドに歌声が力負けしていないように感じました。広がりがありつつ強い部分と、突き抜けていく部分とが両方あって。

大橋 良かったです!今回はボーカルレコーディングの前に楽器レコーディングを見学させていただいていて、ヘビーな楽曲が得意な楽器隊の皆さんの演奏を見て「これは、負けるわぁ」と敗北を感じていたので……(笑)。

――昨年から通い始められていたボイストレーニングは、この曲で活きた部分はありましたか?

大橋 少しは活かせていた気になっていたのですが、「Be My Friend!!!」のレコーディング時期が結構前だったのもあってか、今改めて聴くとまだそんなに落とし込めていない気がしますね。えーっと、たしか……(スケジュールを確認して)……8月6日?あ、この曲録ったの、去年のデビュー日でした(笑)。逆に、カップリング曲の「Nobody Knows」は比較的最近録ったので、自分でも声の出し方の違いを感じます。

――また、サビにはデスボイス風のコールも入っているので、ライブの際には会場をより熱くしてくれる曲になるように思います。

大橋 そうですね。そのときにはお客さんも声を出せるようになっていたらとは思うんですけど……でも仮に声が出せなくても、久々の“フェスで盛り上がる系楽曲”ができたな、という気はしています。

――そして、すでにフルサイズが公開されているこの曲のMVは、かつてないほどにユニークなものになっていますね。

大橋 撮影前の打ち合わせでMVの監督が、王道のかっこいいライブテイストの撮影案を2つ提案してくださったあと、最後に「これは怒られるかもしれないんですけど、一応……」とプレゼンされた案が元になっていまして。それがうちのチームには、一番刺さったんですよ(笑)。それに、ジャケットやMVみたいに自分自身が映るものでのかっこいいオラオラした表現があまり得意ではないので、面白く落とし込んでいただけて良かったです。

――かっこよく歌うシーンも挟まれていますが、今回主軸となるのは曲タイトルにちなんで“友達作りの修行”です。

大橋 そうですね。修行僧でした。もう、イントロだけで笑っちゃって(笑)。筋トレも、撮影中はどこに使うかわからないまま腕立てをしていたんですよ。しかも撮影した日は、たまたま雪が降った次の日ですごく寒くて、地面もすっごく冷たくて……。

――本当に修行じゃないですか(笑)。

大橋 翌日には二の腕がしっかり筋肉痛になっていたので、「あ、ちゃんと筋トレしたんだな」って、なんだかんだで良い思い出になりました(笑)

――その修業を経て、後半は飲み会に参加しての“実践編”となります。

大橋 飲み会のシーンは先にエキストラの皆さんが撮影場所に集まっていて、私は別の場所でメイクと着替えをして途中から合流したんですよ。そうしたらすでに皆さん結構仲良くなっていたので、本当に人見知っちゃってて……メイキングに、その様子が収められているみたいです(笑)。

――こっそり撮られていた(笑)。

大橋 はい。まだメイキングは見ていないんですけど、スタッフさんはずっと「見どころ!見どころ!」って言っています(笑)。でも撮影の終盤には、エキストラさんともMVと同じように多少は世間話ができるようになったので、少しは成長できたかなと思っています。ぜひBlu-rayでメイキングまでチェックしてみてください!

出発点は「絶交」!? カップリング曲「Nobody Knows」が出来るまで

――さて、続いてはカップリング曲「Nobody Knows」についてお聞きしていきます。この曲はどのような経緯で誕生したのでしょう?

大橋 「#HASHTAG ME」のレコーディング後に打ち合わせをしまして、「人と絶交する曲がいいです」とお願いしたのがスタートでした。ただ、私のイメージは小学生くらいの時期に喧嘩してすぐ「はい絶交!」って言っちゃうくらいの感じだったんですけど、実際出来上がった歌詞は社会人として縁を切らなきゃいけない……みたいな大人の雰囲気漂う歌詞で。しかも絶交する相手との過去の思い出や築き上げてきたものがなくなっていくのを感じる深みもあったんですよ。

――制作のなかで、具体的な意見も出されたんですか?

大橋 そうですね。オケも、最初は静かで1サビのあとから盛り上がって……というイメージをすごく忠実に再現していただけたし、ラスサビでも「フェイクとかで盛り上げたい」というお願いを汲んでいただけたので、私の好きが詰まったイチオシの楽曲になりまして。なのでレコーディングのときは、ちょっとエモーショナルに歌わせていただきました。

――スパッと曲が終わる点も、楽曲の描く世界観に非常にピッタリだと思います。

大橋 こういう別れの歌で「うわー、なんかエモいー!」という感情を突然ぶった切られるように終わるのって、すごく合いますよね。余韻にも浸らせてくれずに、ダンッて心のシャッターを降ろされるみたいで。ただ、そもそも最近の私の曲ってスパッと終わる傾向があるんですよ。「Be My Friend!!!」も「Étoile」もそうだし……。

――それは、大橋さんが最近お好きなのもあって?

大橋 好きです。アウトロは暇なので……(笑)。

――ライブする側の感覚じゃないですか(笑)。

大橋 「BanG Dream!」とかで演奏する側に回ると、楽器的には盛り上がるし見せ場にもなるので、アウトロを演奏するのは大好きなんですよ。でも歌う側だと、手持ち無沙汰になっちゃうんですよね。それは私が余韻に浸ったり自分の世界に入るのが苦手で、「ど、どうしよう……」ってなってしまうというのもあるんですけど。

――特に客前だと。

大橋 そうなんです。ただこの3曲は全部かな多さんとMEGさんの曲だから、「もしかして、私が持て余してるのがバレた?」って勝手に思っていて(笑)。それに、よくライブリハとかで舞台監督さんに長い間奏中の時間の使い方についてよく相談しているので、それを見たプロデューサーが言ってくれたのかな……とも思っています(笑)。

――しかも今の状況だと、ライブでも間奏や後奏でファンの皆さんが声を出せないですし。

大橋 あー、そっか!その影響も、もしかしたらあるかもしれないですね。

――歌う際にはエモーショナルにとおっしゃっていましたが、この曲では特にア段の声に刺々しさなど、感情の波がかなり強く出ていたように感じたのですが。

大橋 音が低いのと、発音しやすいからかなぁ。やっぱり「ア」や「オ」は口の開け方的にすごく歌いやすいんですよね。たしかにア段はニュアンスも込めやすいし高音も上手く伸ばせたりもするから……全部ア段の曲とか、1回やっても面白いかも?発声練習の曲みたいになっちゃいそうですけど(笑)。

――アコースティックミニアルバムについても聞かせてください。まずは昨年末リリースの第1弾、『Acoustic Mini Album “Lumière”』の反響について伺いたいのですが。

大橋 ラジオへのメールから色んな感想ツイートまで、どれもポジティブな意見ばかりで。特に、深くファンでいてくださる方ほど、表現について聴き込んで喜んでくださった印象があります。最初は「バラード苦手だしアコースティック得意じゃないし、大丈夫かな?」ってアコースティックミニアルバムを出すことへの抵抗も少しあったんですけど、出して良かったです。

――そして第2弾として、『Acoustic Mini Album “Étoile”』をリリースされます。既存曲についてはどんな基準で選ばれていったのでしょう?

大橋 自分が歌って好きな曲とチームで挙がった曲を合わせて、バランス良く選んで……という感じでした。ただ、そうやって選んでいったら、最初はカップリングの曲しかなくて(笑)。なので「『ハイライト』がギリギリかっこいいかな?」ということで滑り込みで入ってきたんですけど、ほかは全部5thシングル以降のカップリング曲になりました。

――アレンジの方向性は、前作と同じように決めていかれたんですか?

大橋 はい。そもそも『Lumière』と『Étoile』は同時に打ち合わせしていたので、そのときにざっくりしたアレンジの方向性まで話し合っていました。

――『Lumière』と対になる作品ではありますが、例えば「Winding Road」のようにしっかり前を向いている曲があったりと、1枚の中にも感情のグラデーションが存在していますね。

大橋 そうですね。そこは最初あまり意識してなかったんですけど、いざ組み立ててみたらちゃんとグラデーションになっていて、自分でもちょっと安心しました。ただ、曲ごとに音数にもテンションにもかなり差があるので、1枚通してしっかり聴くとエネルギーを使いそうだなと思います(笑)。『Lumière』は最後まで聴いたあとに割とスッキリとした感覚があったんですけど、『Étoile』はすごく余韻に浸れるといいますか……映画館で映画を観終わってから、明かりがついたときのような感覚になりそうだなという印象です。

次ページ:ミニアルバムの新曲「Étoile」は、お話のように大橋の本質を描いたものに

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