INTERVIEW
2022.03.25
――そんな2話の「スマホへし折りたくなるじゃない」ですが、シチュエーションはファミレスで「誰が1番レア度の高い苗字の店員さんを召喚できるかチャレンジ」という、また斬新なゲームが始まるという。
水島 あれを読んでコント作家ってすごいなと思った。女子高生がやりそうなことでもあるし、名前の珍しさっていうそのちょっとしたトピックも持ち込んでいて、その着眼点がアニメのシナリオライターとは違うなと。あの短い尺の中で、高垣くんが面白いと思って書いたものをより面白くするのが俺の仕事だ!と思って、全力で頑張りました。
――しかもそのゲームもただ単調にではなく、終盤にかけてドラマチックに展開するという。
水島 そう、「シフトが……変わった」とかね。あそこのBGMの使い方も、静かに静かに繰り返していたものがだんだん盛り上がっていき、ここをピークにそのオチに向かっていくぞ、みたいな音楽演出で。さっき言った楽曲を使い倒すつもりで曲の発注をしていて、要素をバラして使っていくようにしていてね。
――あと彼女たち3人も、騒がしいところで店員さんが来たらちょっとキョドるというのもリアルだなって。
水島 そうそう、栞がそうだよね。あのあたりの塩梅は役者のアドリブもあるの。彼女は元々暴走タイプなんだけど、鈴代さんって「面白い!」って喜んでいると、乗っかってどんどんやってくれるタイプなんですよ。それは1話の収録のときにわかったから、そこから先はもうとにかく焚きつける(笑)。
――焚きつける(笑)。
水島 そういう意味では彼女たちの声の芝居を聞いて「こういうバランスにしたら面白くなる」って思うところがある一方で、とはいえノリが大事だから、いわゆる掛け合いの部分は大事に録っておいてあとで間を詰めたりとか、ここでこうウケたんだったらここの間はもう少しこうしたほうが面白く伝わるな、というのを見ながら変えているんですよ。だから、芝居として出した間と違う間でセリフが入っていて、しかも効果音のきっかけで後ろの会話が繋がっていくので、完成したものを聴くと役者も「おぉ?」ってなるみたい。
――あと細かいところで言うと、(太田)希(CV:大野柚布子)がチーズインハンバーグとライスのセットやかき揚げうどんとミニねぎとろ丼という、なぜかガッツリしたものばかり頼むのも面白いですよね。
水島 「食べられるの?」って(飯森)みちる(CV:中島由貴)が心配する辺りとかね。良いよね。「ノーペイン・ノーゲイン」って(笑)。
――1話の部室から2話ではファミレスというシチュエーションも変わって、そうした舞台装置が変わるというのも、1本のコントライブを観ているようでもありますね。
水島 そうですね。でもよく考えたらこれをやれたのって、以前「アイキャラ」というTV番組で、「ひらがな男子」という映画をバカリズムさんの脚本で僕が監督していて。
――ありましたね。番組発信でひらがなを擬人化したコンテンツを作るという。
水島 あのときも基本的にバカリズムさんから出た本をそのまま作るっていうスタンスだったんですよ。あれもやっぱりコント的だった。いわゆる僕らがやっているような整合性よりも、バカリズムさんが書いた面白いノリをどう映像にするかみたいなところで向き合っていたから、そういうものに対して免疫があったっていうのはまず1つあるな、きっと。
――なるほど、監督には以前からコント的な経験があったんですね。
水島 それと、いわゆるオーディオドラマの流れでいうと、東山奈央さんの10周年アルバム(『キャラクターソングベストアルバム Special Thanks!』)で、オーディオドラマを麻草 郁(シナリオ担当)さんと組んでやっていて、それも今回と同じようにグシミヤギ(ヒデユキ)に音楽を作ってもらったことがありますね。
――そうしたルーツがあって、オーディオドラマとコントというものが水島さんの中で円熟していった結果が今回の「VOISCAPE」であるわけですね。
水島 そうですね。このあとCDが出るんだけど、CDにだけ入っているドラマもすごいですから。空調の音とか冷蔵庫の音までこだわってます。
――配信されている6話を経て、さらに音響が極まっていると(笑)。
水島 冷蔵庫を開けるとちょっとブーンっていうじゃないですか。で、その音が上手く出せなくて、結局空調の音を大きくしてもらって、開けた音をごまかしてください、みたいな。持っている効果音で引き算したり足し算したりして、その世界を表すためにエンジニアと現場でやり取りしたりとか。
――SEのバリエーションも試行錯誤しながら作っているわけですね。
水島 やっぱりSEは効果的に使わないと、こういう作品はなかなか上手くいかないから。最初のうちはエンジニアが貼ってくれる効果で済ましていたんだけど、それだけではイメージが合わず、音が足りなくなってくる。効果音のCDとかも買ってみたんだけど、それでも全然足りない。最終的には「Artlist」っていう大量の効果音や音楽のサブスク型のサービスがあるんだけど、そこに入って。
――最終的にプロユースの効果音を利用するようになったと。
水島 それで、幾つもの音を重ねて効果音を作って「ここの音はこうです」って渡したり。それぐらいこだわってる。ただ、Artlistって英語のサイトなんでまず音を探すのが大変。日本語で“足音”って検索しても出てこないし(笑)。
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