【インタビュー】素顔を見せた三月のパンタシア・みあが語るニューアルバム『邂逅少女』に込めたたくさんの“出会い”――。

ボーカリスト・作詞家・小説家の顔をもつみあによる“終わりと始まりの物語を空想する”ユニット、三月のパンタシアが、前作『ブルーポップは鳴りやまない』からは1年半ぶりとなるニューアルバム『邂逅少女』をリリースした。昨年11月に開催されたワンマンライブ“物語はまだまだ続いていく”で、「再会の喜びと幸福をみんなで分け合いましょう」と呼びかけ、観客の前で初めて素顔を明かしたみあは、三パシの歴史の中でも大きな転換期となる通算4枚目のアルバムで、どんな物語を紡ぎ、どんな感情を届けたいと思ったのか。6年目にして初めて素顔を明かすに至った思いを皮切りに、みあが書き下ろした小説「再会」から生まれた新曲5曲について詳しく聞いた。

みあがファンの前の素顔を見せた理由

―――改めて、昨年11月のワンマンライブでこれまで明かしてこなかった素顔を公開しようと思った経緯から聞かせてください。

みあ まず、お客さんを入れた有観客ライブが1年10ヶ月ぶりだったんですね。私は、ライブハウスでファンのみんなと再会ができることが一番嬉しいことなので、この幸せな気持ちや湧き上がるエモーションをみんなで分け合えるような多幸感に満ちたライブにしたいというのが大きなテーマとしてあったんです。そういう思いで演出やセットリストを考えていくなかで、自分の“これまで”と“これから”の音楽活動とも深く向き合うことになって。

――インディーズ時代も含めると、三パシとしての活動は6は年近くになりますね。

みあ そうですね。初期の頃は右も左もわからない状態で、大好きな歌をうたうことでいっぱいいっぱいで、歌の中で自己表現するっていうことが自分の中の精一杯だったんです。でも、音楽活動を続けていくなかで、創作に対する意欲がどんどん自分の中で湧き上がってきて。その中で少しずつ――例えば、今の三パシの音楽表現の軸になっている小説を自分で書き下ろして、それを原案にするようになったり、作詞も自分でするようになっていって。初期の頃は誰かが紡いだ物語を私が代弁者として語り継ぐという見え方でしたが、ここ数年の中で少しずつ、みあが紡いだ物語をリスナーに伝えるという形に徐々に変化していって。最初は代弁者だったからこそ、私自身のパーソナルな情報や三パシの中身的な部分は匿名性を持たせて、リスナーの空想に委ねる方がプロジェクト的には合っているのかなという考えもありましたが、三パシも変化してい行くなかで、私自身の物語をありのままの姿でリスナーに届けてみたいなって思うようになったんですね。リスナーにとっても大きな変化だと思うので、伝えることには勇気が必要だったんですけど、大変な状況の中でも三月のパンタシアやみあを信じて、ワンマンライブに来てくれたファンのみんなにまずは一番最初にこの気持ちを伝えたいなと思って、ライブで気持ちを語らせてもらいました。

――素顔を明かしたことで何か変化はありましたか?

みあ 環境の部分ではそんなに大きく変わることはないですね。それに、素顔を公開したからといって、みあの私生活を切り売りした音楽表現をやっていくというわけではなくて。これまで三パシが大事にしてきたイラストの世界観や小説と連動した空想的な物語世界、私自身の中身が見えすぎない部分も含めて、三パシの作品性だとも思っていて。だから、発信することに関してもそんなに大きくは変わっていないですね。でもこれまでやってこなかったぶん、スチール撮影とかはなんだか照れくさいというか、緊張します(笑)。

――その素顔を明かしたライブと今回のニューアルバムはリンクしてますよね。

みあ そうですね。繋げたかったという意図もありました。11月に久々にワンマンライブができて。それは正真正銘の“再会”の場所になった。そこでお互いが感じたエモーショナルな感情を3月のアルバムまで持っていきたいという思いがあって。なので、同じテーマです。ライブ後に制作した楽曲もあるので、ワンマンライブでファンと再会して感じた思いを歌詞にしている曲もあります。同じテーマだからこそ、お互いに共有できるものが多いんじゃないかと思って。あと、一応は「再会」という小説が軸になってはいますが、そういった色んな再会の物語を織り交ぜられるアルバムになるんじゃないかなと思い、まずはテーマを“再会”に設定して制作していきました。

――前作は9篇の短編小説集が基になっていましたが、今回は長編小説になっていますね。

みあ 前々から1本の物語に対して、その主人公の気持ちを色んな作家さんに色んな角度から曲にしてもらったらどんな曲が集まってくるのかな?というのをやってみたかったんですね。テーマは同じでも、人によっては切り取る部分がまったく異なると思いますし、そういう少し実験的なことをやってみたいという思いがあって。だから、まずは1本の小説を基にして、メインテーマが2曲でエンディングを1曲制作していきました。でも、それだけでは新曲が全然足りないと思って……少し話が逸れるですが、私は去年初めて長編小説を書いて、小説を刊行することができたんです。

――初の長編小説「さよならの空はあの青い花の輝きとよく似ていた」(幻冬舎)を刊行しましたね。

みあ 一人称で主人公の思いを書いている長編小説ではあるんですが、その周りに4人の高校生の少年少女たちがいて。小説を書いていくなかで主人公だけじゃなくて、この脇にいる子たちの気持ちも音楽にしてみたいな、そしたら小説も音楽もどっちもより濃密に楽しめるんじゃないかっていう考えが去年、浮かんで。そう思ったことがきっかけで、じゃあアルバムで試してみよう!と思って。メインテーマの2曲とエンディングの1曲は主人公の気持ちを音楽にしていますが、あと2曲は、親友の気持ちだったり、ライバルと思ってたマドンナ的な女の子が実はこういうことを考えてたんだよっていうことが書いたり。アルバムの楽曲が揃うことで群像劇として完成されるよう作品になったんじゃないかなと思います。

まるで映像のような、みあが紡ぐ“再会”

――先に、小説のほうから聞いていいですか?少しだけ感想を述べると、情景描写が優れていて、とても映像的だなって感じました。例えば、ある男女が本屋さんに入っていく後ろ姿もはっきりと脳裏に浮かぶんですよね。みあさんとしては、どんな思いで書きましたか。

みあ ありがとうございます。“再会”というテーマの中で、出会いと別れを繰り返し続けて、だんだんとすれ違っていくような男女の話が描けたらいいなと思っていて。そういう思いと――これは、三パシのテーマにも通じてくるのですが、あのときああしてれば変われてたかもしれないけど、結局できなかったっていうことに対する後悔とか。でも、チャンスはもう一度だけ巡ってきて、その後悔を自分の中でどう変えるのか、変わらないまま見つめるだけなのか、みたいな。自分で選択することの難しさと、その瞬間に湧き出る勇気みたいなものが書けたらいいなと思いましたし、その切なさや、勇気が出る瞬間のものすごいパワーや煌めきを楽曲にできたらいいなという気持ちで制作していきました。

――ここからは小説とリンクしているアルバムの新曲について聞かせてください。1曲目が小説「再会」のメインテーマ1ですよね。

みあ まず、メインテーマを2曲作りたいというのが一番最初にありました。1曲は感動的で明るくて、多幸感に満ち溢れた曲。再会の幸せな気持ちを表現した楽曲にしたいと思っていましたね。もう1曲は、再会に至るまでの勇気が出なかったときの切なさだったり、その後悔を踏みしめて、あのときうまくできなかった自分を乗り越えて、前に進んでいくという疾走感とエッジさの効いたロックなサウンドにしたいというイメージが最初にあって。その、ポップでロックな楽曲にしたいと思って作ったのが、1曲目の「花冷列車」ですね。

――神聖かまってちゃんの、の子さんとの初タッグとなってます。

みあ 元々私はかまってちゃんの大ファンでリスナーだったんですね。神聖かまってちゃんの中での子さんが描く世界観って、少年少女が大人になっていく過程、青春時代の描写がものすごく切実で、あの時代特有の少し暗い部分の描き方が鮮烈で聴き入っちゃうところがあって。でも、暗部だけじゃなくて、刹那的な青春時代の煌めきみたいな部分も同時に描ける、すごい方だなと思っていて。なので、三月のパンタシアと融合したら何か面白い化学反応が起きるんじゃないかって……ファン心もありますけど(笑)。そういうクリエイティブの期待も込めて、の子さんにお声がけさせていただきました。

――曲を受け取ってどう感じましたか?とても独特のメロディラインですよね。

みあ 私、「フロントメモリー(feat.川本真琴)」がすごく好きなんですけど、ああいう堂々巡りする感じというか。そういう心情的な部分がこの「花冷列車」のメロディにもあって。ずっと同じフレーズを繰り返すことで、前に進めない感じが表現されているのかなと思っていて。イントロのフレーズもの子さん節が炸裂していて。これまでの三月のパンタシアになかった楽曲が完成して、すごく新鮮な気持ちになったし、アルバムを引っ張っていってくれる力があると思って1曲目に置かせてもらいました。

――歌詞は主人公の麻莉が片想いをしている幼なじみの春翔の別れと再会ですよね。卒業式後に上京してしまう春翔を追いかけるけど、追いかけられなかった時の心境があって……。

みあ 小説の一番、自分の中で肝というか。あのとき乗れなかった電車に数年経ってようやく勇気を出して乗り込むというエモーショナルさを楽曲にしたいなと思って。そのことはの子さんにもお伝えしていて。デモをいただいてから、歌詞は私が書かせてもらったのですが、かなり物語的な、あのとき乗れなかった悔しさと、やっぱり会いに行きたいという切実な想いみたいなものを歌詞にしました。小説の中で駅のホームまで走っていくシーンが2回出てくるんですけど、その2回ともで頭の中で流してほしい曲です。

――アルバム収録順でいくと、「シリアス」は麻莉の高校時代のクラスのマドンナ的存在で、春翔と同じ大学に通う美紀の恋心ですよね。

みあ “片思い”というテーマではありますが、片思いの切なさに打ちひしがれるような、しっとりした楽曲っていうよりも、もうどこか開き直っている底抜けた明るさや、女子高生の全能感みたいなものが溢れ出る楽曲にしたいなと思っていて。作家のにっけいさんも小説を丁寧に読んでいてくださって。「美紀は、おとなしくて真面目そうに見えて、意外と大胆で突拍子のないことをする女の子ですよね」と言ってくださって。それを楽曲にも落とし込んでみていいですか?とご提案くださったんですね。なので、途中でリズムが複雑に変わるところがあったりします。そういう部分で美紀っていう女の子を歌詞とサウンド面で表現できた曲かなと思いますね。

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