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INTERVIEW

2022.01.13

【インタビュー】大原ゆい子、『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の世界を支えた全OP・ED主題歌を集めた『Theme Song Collection』リリース――「聴いている人が考える余地を残す」楽曲制作の裏側とは――?

【インタビュー】大原ゆい子、『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の世界を支えた全OP・ED主題歌を集めた『Theme Song Collection』リリース――「聴いている人が考える余地を残す」楽曲制作の裏側とは――?

『無職転生』の世界の住人が歌っているように

――エンディングに関してはオープニングよりも迷わなかったということですが、何か苦労した点はありますか?

大原 いや、エンディングは早かったですね。オープニングで迷いすぎたからか、むしろ印象はあまり残っていないような(笑)。でも、「風と行く道」は自分でもすごく気に入っています。編曲をお願いした吉田 穣さんの醍醐味というか、吉田さんに頼んで良かったと思える曲になりました。アニメ制作サイドからは、心をキュッとしてくれるバンドサウンドみたいなオーダーがあったと思うのですが、オープニングに比べてかなり自由に任せてもらえました。楽曲制作チームでも、少しゆっくりめなED感があってもいいのでは?という話になったので、かなり素直に作りました。ただ、オープニングもエンディングもゆっくりめになったので、アニソンファンの方から見たらどう思うんだろう、という不安はありましたね。

――楽曲提供が決まったあとで自身が歌唱も担当すると決まる、という流れでしたが、歌について意識した点はありましたか?

大原 今までのタイアップでは、「自分の曲だ」というイメージもあったので、作り込むよりも「素で歌う」というイメージが強かったんです。でも今回は、憑依ではないですけど、割と自分の心を何かに取り憑かせるような形で歌うことをレコーディングでは意識していました。「祈りの唄」は特にそうで、教会で歌っている一市民のように素朴に歌おうと思って挑んでいました。(歌の)頭のところはどう歌うべきか、ディレクターさんにたくさん聞きましたね。オペラの独唱っぽくしたほうがいいのかとも少し思ったので。

――アニメのオープニングでもありますし。

大原 でも、合唱する一市民というイメージで、というところは共有できたので、それならあまり強くならないように、というディレクションになりました。

――「祈りの唄」は大原さんの曲としてはキーも高いですね。

大原 高いですね。そこは私がよく聴く賛美歌があれくらいの高さだったので。でも、キー設定はいつもあまり気にしていないですね(笑)。「子守の唄」もキー設定を上のほうにしていますね。あと、やはり自分ではない別の誰かが歌っているような気持ちで歌っていました。ちょっと霊的というか。

――「継承の唄」も一市民が歌うような感覚を受けました。旅人が歌うような、とにかく世界に溶け込んでいる印象でした。「聴いて」「歌うよ」という強さは消していますよね。

大原 歌詞を聴かせたいという気持ちは本当になかったですね。やはり「誰か」が歌っている感覚ですね。

――ディレクションではいつも、歌声が暗いという指摘を受けていると以前にお聞きしました。その意味では、今回はそこがフィットしたのではないでしょうか?

大原 それでも「暗い」と言われました(笑)。そこは、最後(第二十二・二十三話OP主題歌)の「旅人の唄~帰郷~」を際立たせる必要があったので。「旅人の唄~帰郷~」も頭のほうは結構録り直しました。

――「旅人の唄」の別バージョンを最後に流すというのは最初から決まっていたんですか?

大原 そうですね。2クールかけて自分の村に戻るけどそこは……という主人公たちの絶望感を描きたい、ということだったので。なので、最後にまたOP曲をちょっと変えて流したい、という話をいただいていました。

――歌の面以外に作曲の面でも、別バージョンがあることは意識しましたか?

大原 私は何もなかったです。そこもMANYOさんですね。Bメロだけクリシェというか、半音ずつ下がる部分があるんですけど、そこがちょっと暗いのでもっと寄り添う感じにしよう、ということで調整してくださいました。

――先ほど最初の部分は結構録り直したと仰いましたが、「旅人の唄~帰郷~」はどのようなイメージで歌いましたか?

大原 「絶望」や「物悲しさ」を、と言われていたので、「どういうことだろう?」ってすごく悩みました。元々すごく難しい歌だったんですけど、さらに難しかったです。だから、割と細かくディレクションしてもらって、「こうですか?」「こうですか?」と逐一聞いていましたね。

――シンガーソングライターでありながら、曲によって歌い方を大きく変えていくというのは大原さんの特徴だと思います。アニメソングではより曲や作品に寄せるという意識なのでしょうか?

大原 というか逆に、「自分の曲なのでいいかな?」みたいな。インディーズのときから割とそうで、「こういう歌い方をしたいからこういう曲を書きたい」ということもありました。自分が飽きっぽいというのもあって、多分そのほうがいいのかなと思っています。歌だけじゃなくて服もそうなんですよね、着たい服に統一性がなくて。こうなりたい、という自分がわからない(笑)。

――(笑)。常に自分探しですね。

大原 そうなんです。永遠に自分探しをしてます。

――アニメの楽曲を作る、歌う、というところで飽きはきていないですか?

大原 全然。楽しいです。終わったら、ですけど(笑)。

――今回は2クールアニメということもあり、長丁場になりましたね。

大原 他作品の楽曲制作と重なった時は大変でしたね。自分だけの曲だったらもっと自由だったと思いますけど、みんなで一生懸命作っているアニメの曲なので…なんかもう「ハァ……ハア……」って言葉で表せないくらいに辛かったです。辞めたいとは思わなかったですけど、「いつになったら終わるんだろう……」みたいな気持ちになったり、「終わったら旅行行きたいな」って妄想したり。

――作品の異なる側面を次々と切り取っていき、ある意味、劇伴作家のような作業になったかと思います。

大原 そうなんですよね。色々と悩みは尽きなかったですけど、でも出来上がってみたら楽しかったですね。編曲という一番重要なポイントを補ってもらって、すごく素敵にしていただいたのも、創作としてはとても楽しかった部分だと思います。やらせていただいたことで、自分にとってチャレンジとなったことが良い経験になりましたし、やはり色々な曲調をリスナーに聴いてもらえたというのが本当にものすごく嬉しかったです。アニメ側の皆さんにも、MANYOさんにも、吉田さんにも、感謝したいですね。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)


●リリース情報
大原ゆい子
「TVアニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』Theme Song Collection」


発売中

品番:THCA-60269
価格:¥2,750(税込)

<収録曲>
M1. 旅人の唄
作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO
M2. 目覚めの唄
作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO
M3. 継承の唄
作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO
M4. 祈りの唄
作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO
M5. 遠くの子守の唄
作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO
M6. 旅人の唄~帰郷~
作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO
M7. オンリー
作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:吉田穣
M8. 風と行く道 作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:吉田穣

関連リンク

大原ゆい子 オフィシャルサイト
http://yuiko-ohara.com/

大原ゆい子 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/ohara_yuiko

『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』公式サイト
http://mushokutensei.jp

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