【インタビュー】“パスタ”越しに伝わる、伊藤美来の理想と願望――作詞作曲を自ら手がけ、特別な挑戦が詰まったアーティストデビュー5周年記念シングル「パスタ」への想いを聞く

25歳のバースデーにあたる今年の10月12日にアーティストデビュー5周年を迎えた伊藤美来。それを記念したニューシングル「パスタ」は、彼女の好きな食べ物であるパスタをテーマに、作詞のみならず作曲にも挑戦して作り上げられた、みっくらしさ満載のスペシャルなプレゼントだ。この5年間で音楽に対する向き合い方も変化し、ますます楽しみながらアーティスト活動を行っている彼女が、「パスタ」への想いをたっぷりと語る!

アーティストデビュー5周年の特別な挑戦が詰まった「パスタ」

――今回のシングル「パスタ」は、アーティストデビュー5周年を記念した作品になります。改めて5周年を迎えた今の心境をお聞かせください。

伊藤美来 本当にあっという間でした。色々なことをやらせていただけて、人生の中でもとても濃い5年間だったと思うんですけど、感覚的には「えっ、もう5年も経ったんだ!」という感じで。まさか5年もアーティスト活動を続けられるとは思っていなかったので、嬉しいしすごく光栄です。

――これまでの活動で特に印象に残っていること、転機になったことを挙げるとすれば?

伊藤 やっぱりアルバム制作が印象に残っています。最初の頃は「私のソロ活動の楽曲の方向性って、どうしたらいいんだろう?」と思っていたんですけど、アルバムを作るたびに、自分でもわかっていなかった自分の理想ややってみたかったことに気づくことができて。アルバムごとに精神的な成長ができたと思います。

――デビュー当時と今の自分を比べて、どんなところが成長・変化したと思いますか?

伊藤 デビューした頃は音楽のことをあまり知らなくて、音楽はテレビからおのずと聴こえてくるもの、身近にフワッと溶け込んでいるものとして摂取していたんです。でも、自分がソロで歌う側になって、楽曲を作る過程を経験したことで、「音楽は自分から聴くもの」という意識に変わりましたし、音楽に対する興味も増していきました。アーティスト活動でも、最初は制作に関しては詳しい方にお任せして、私はそれをしっかりと歌う側・伝える側として頑張っていたんですけど、だんだん自分も作る側に回ったり、「こういうことをやってみたいです」という意見を出すようになって。音楽に対する愛着が強くなったのが、一番成長したことだと思います。

――伊藤さんは今回の新曲「パスタ」で作詞だけでなく作曲にも挑戦していて、その意味では、今までの成長の結果が如実に表れた作品と言えそうですね。

伊藤 そうですね。色々含めて、こんなことになるとは思っていなくて……。

――こんなこと、ですか(笑)。

伊藤 もちろん良い意味でですよ(笑)。まさか自分が作詞作曲する日がくるなんて思っていなかったですし、自分が好きな食べ物の曲を書けるとも思っていなくて。それこそ自分がゼロから作り上げたものが、具現化されて音楽になったことが不思議な感覚だし、新たな境地という感じがします。

――そもそもご自身で作曲することになったのは、どのような経緯で?

伊藤 今回は5周年を記念したシングルですし、ノンタイアップということで、自分寄りなものを作ろうということになったんですけど、ディレクターさんが今までとは違うことも記念として見せていきたいということで、自分で作曲することを提案してくださったんです。私は最初、「作曲?できるかなあ……」みたいな感じで渋っていたんですけど……。

――渋っていたんですか?(笑)。

伊藤 はい(笑)。私は音楽経験が少なく、楽器が弾けるわけでもないので、曲を作る過程をまったく想像できなくて。今までやったことに挑戦したとして、良いものができるかどうか、自分が信じられなかったんです。しかもアルバムの中の1曲とかではなく、シングルの表題曲だったので、ハードルが高く感じて……実際すごく高いと思うんですけど(笑)。

――しかも5周年の記念シングルですし。

伊藤 なので「私には荷が重いです」って言っていたんですけど、「5周年だし、みんな絶対に伊藤さんが作った曲を聴きたいですよ」「私たちも手伝いますしアドバイスもしますので」というふうに背中を押してくれたので、「わかりました、じゃあやってみます」って言っちゃって。

――言っちゃったんですね(笑)。

伊藤 背中を押されちゃいました(笑)。やることになってからもずっと不安で。「どうやって作ればいいんだろう?」というところから始まり、「伊藤美来、曲降りてくるかな?会議」みたいなものも何回か開かれました(笑)。ディレクターさんからは最初、「メロディを思いついたら、ボイスメモとかキーボードで弾いて残しておいてください」と言われていたんですけど、一向に降りてこなくて。

――まあなかなかスッとは降りてこないと思います。

伊藤 私はメロディって待っていたり瞑想していたらパッと降りてくるものだと思っていたんです。「関ジャム 完全燃SHOW」(テレビ朝日系列で放送されている音楽バラエティ番組)でそういう話を聞いたことがあったので(笑)。でも、私には知識がないから、全然降りてこなくて。そこから「まずはキーボードで好きな音を探してみてください」とか、色々とアドバイスをいただきながら頑張って作ったんですけど、あまりにも生まれなさすぎて苦しかったです(苦笑)。先に歌詞を書いて、それに合わせてメロディを付けたんですけど、逆に作詞はあっという間で、自分の好きなパスタに想いを馳せながら、1日か2日くらいでバーッと書き終えました。

――そもそもパスタを歌詞の題材に選んだのは?

伊藤 最初は5周年記念のシングルらしく、ファンの方への感謝の気持ちだったり、伊藤美来視点のメッセージを伝えるような歌詞にするつもりだったんですけど、でも、よくよく考えてみたら、今まで自分で作詞してきた4曲は全部そういう内容だったので、さすがにもうよくない?と思ったんです(笑)。なので視点をガラッと変えて、伊藤美来とは別の何かを擬人化してストーリーを書いていく方向にしました。ディレクターさんに「何かになってください」と言われて。

――それでパスタを選ぶのが伊藤さんらしいですね。

伊藤 最初は「蝶や鳥だと自分の気持ちを入れやすくていいのでは?」という話だったんですけど、私にはあまり羽ばたくマインドがないのかピンとこなくて(笑)。それで悩んでいたときに、「じゃあ今伊藤さんが一番なりたいものはなんですか?」と聞かれたんです。そのときちょうどパスタを食べたかったので、軽く流してもらえると思って冗談で「パスタ」って答えたら、「いいですね、それでいきましょう!」ってなって。私は「あれ、こんなはずでは……」という感じだったんですけど(笑)、よく考えたらパスタは大好きなので嬉しいことだなと思って、書いてみました。

パスタ越しに伝わってくる、伊藤美来が日々の中で感じる理想と願望

――パスタの気持ちを想像して歌詞を書くのは結構難しそうですけど、実際にやってみていかがでしたか?

伊藤 書き始めてから「私、何してるんだろう?」と思って、1人で家で爆笑してました(笑)。今回はパスタの曲なんですけど、歌詞にパスタ感を出したくはなかったんですよ。ミートソースとかジェノベーゼみたいな言葉をそのまま入れると子どもっぽくなるので、沸騰を“泡”に例えてみたり、乾麺のことを“カラカラに乾いた”って書いてみたりしていて。そうやって連想ゲームみたいに色々考えている時間はすごく楽しかったんですけど、そのパスタを匂わせようとして書いている自分が面白くなってきたんです。

――たしかにこの曲、パスタの擬人化として書かれていますけど、フワッと聴くとパスタ視点だとは気づかないような、絶妙な距離感の歌詞ですよね。

伊藤 パスタの曲ではあるけど、パスタだけになっちゃうよりも、ちょっとでも自分に例えられたり、誰かが聴いて共感してくれるような塩梅、パスタが他人事にならないようになれば、と思いながら書きました。

――それに加えて、この曲の主観はパスタでもありつつ、やっぱり伊藤さん自身でもあるなと感じまして。

伊藤 そうですね。書きながら自分の気持ちや伝えたいことが出てきてしまって、それが要所要所に入っている気がしますし、個人的な願望もパスタ越しに書いちゃってる気がします。例えば“簡単って幸せ”とか“ポテンシャルの見せ所”“感動になってみせる”とか。

――“簡単って幸せ”というフレーズも、伊藤さんの願望に繋がるんですか?

伊藤 「パスタ」の歌詞を考えるにあたって、まずパスタの良いところを見つけていこうと思って、私の中で一番最初に出てきたのが、簡単に作れるけど美味しくて、お腹いっぱいになれるところだったんです。世の中的には、努力はすればするほどいい、みたいな風潮にあるけど、そういうことは一旦置いておいて、近道して満足できるのであれば、それが一番幸せなんじゃないかなと思っていて。「最終的に簡単に出来て美味しければそれが一番良くない?」みたいな。それは日頃生きていくうえでのことにも当てはまるし、繋がると思うんですよね。

――それがいわば伊藤さんの理想のライフスタイルでもあると。

伊藤 色んなことをシンプルに考えられたほうがいいのかなと思っていて。深く考えずに、思ったことをそのままパッと、明るく受け止めたほうが、良いものができたりするし、この曲は聴いていて軽い気持ちになれる楽曲にしたかったので。私の気持ちを感じ取ってもらえたらそれはそれで嬉しいですけど、逆にメッセージ性を強調して入れ込んでいない歌詞になっているので、そこはサラッと聞き流しながら楽しんでもらえたらと思います。

――個人的には“誰か救える気がしてる”や“ただかっこよくなりたいだけなんだ”といったフレーズも印象的でした。伊藤さんの特撮やヒーロー好きな部分だったり、ご自身の活動に対する想いみたいなものが投影されているのではないかなと。

伊藤 たしかに自分が作詞するのであれば、「すごく勇気が湧いた!」とかじゃなくてもいいので、聴いてくれた人に少しでも良い感情を残せたらというのが軸としてあって。前に出すぎず、引きすぎず、でも少しだけでもハッピーになってほしいっていう。「救いたい」というのも、私が考えると大げさに思われるかもしれないですけど、「救うぞ!」とかではなくて、「救えたりするような気もしなくもない」みたいな気持ちなんですよね(笑)。まだ断言はできないけど、願望みたいなものはあるので。昔からヒーローが好きなところが、そのマインドに繋がっている気はします。

――その奥ゆかしさと言いますか、押しつけがましくないところも伊藤さんらしさなのかなと思っていて。この曲自体も、パスタ目線で書かれていることもあって、すごく受け身じゃないですか。

伊藤 「お料理をどうぞ!」みたいな感じですもんね。私も受け身というか、「これをやることになりました」っていうことはスンと受け入れて、そのなかで自分ができることを頑張るタイプではありますね。基本的に今までもいただいたお話は断らないようにしていて。もちろん自分の意見もありますけど、求められているものが私の意見と違っていたら、できるだけ、求められているもののほうに近づけたい気持ちがあるんです。今回の作曲のこともそうですけど、まずは一旦受け入れて、そのなかでどうしていくかを考えていくタイプなのかなって思います。

――ちなみに“泡の中にあった全て”という歌詞は、デビュー曲の「泡とベルベーヌ」に合わせたのかなとも思ったのですが。

伊藤 意識はしていなかったんですけど気づいたら繋がってました(笑)。(「パスタ」の)MVでも結果的にバスタブに入りましたし、言われてみれば繋がっている部分がありますね。

――伊藤さんはMVでバスタブに入ることが多くて、先日のLINE LIVEでもご自身のことを「バスタブ声優」とおっしゃっていましたね。

伊藤 「泡とベルベーヌ」のMVを発表した当時の某媒体のニュースの見出しに「伊藤美来、ソロデビュー曲をバスタブで歌う」というのがあったんですけど、それを私やスタッフさんが面白がったから頭の中に残ってしまったのか、今まで4曲(「泡とベルベーヌ」「孤高の光 Lonely dark」「vivace」「パスタ」)のMVでバスタブに入ってるんですよね。きっとこんなにバスタブに入っている人はほかにいないだろうから、じゃあもう「バスタブ声優」の称号は私がもらっちゃおうと思いまして(笑)。

――「パスタ」の話に戻しまして、今回は「守りたいもののために」「PEARL」「いつかきっと」などでご一緒してきた水口浩次さんが編曲を担当しています。軽やかなサウンドに仕上がっていますが、伊藤さんからアレンジのイメージはお伝えしたのですか?

伊藤 日常に溶け込むような、それこそ休日にパスタを作ったり家事をしながら聴ける感じ、という理想をお話しして、歌詞にメロディを付けたものをお渡ししました。そこから何パターンかデモを作っていただいて、その中から「これとこれの間みたいな感じはできますか?」というやり取りをさせていただいて出来上がったんですけど、編曲ってすごい!って思いましたね。自分の作った曲が編曲されることでちゃんとした音楽になって、びっくりしました。

――レコーディングで特にこだわった部分は?

伊藤 パスタの擬人化ってもはやファンタジーなので、その不思議な感じを残したくて、ファンタジーと現実の合間みたいな雰囲気を歌声でも表現するようにしました。リズムは取っているけどフワッとした歌い方で始まって、サビのところはしっかり伝えるイメージにしたり、かなり細かく調整しました。

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