INTERVIEW
2021.12.02
――そうした出会いも多い寺島さんですが、今回の3rdミニアルバム『Soul to』をどういうものにするか、ということについても色々と考えられたのではないでしょうか。
寺島 1枚目と2枚目は同じ年に発売をして、僕がそれまでずっと聴いていたロックで、12曲を通してワンマンライブができる、というふうにコンセプトが一貫していたんです。ライブをやったときにすごくバランスの良い曲構成になるように作っていったので、メインも僕の好きなロックっぽいテイストが多めだったのですが、あれはあれで2枚で1つ、という作品が作れましたね。それから2年くらい時間が開いたこともありつつ、僕は相変わらずロックっぽいものが好きなのですが、僕の音楽を聴いてくださる方たちから「ロックもいいけどしっとりした曲やポップなものも聴いてみたい」という声が出ていたんです。それもあって、今回は自分がこういう曲を歌いたいというよりは、僕を普段応援してくださっている方々の声にあるような、ポップな作品にしたいなと思いました。僕とポップの橋渡しとなるのが、今回のリード曲「キミハレーション」であり、作ってくれたドラマストアの長谷川 海さんですね。
――ドラマストアはどんなバンドなのでしょうか。
寺島 バンドなんだけど、作る曲はすごくポップで爽やかなんです。今回のアルバムで僕が目指すところにすごくはまるんじゃないかと思ってお願いしました。
――そうなると、長谷川さんにお願いする話は寺島さんから出た、ということですか?
寺島 そうです。僕が元々ドラマストアが好きで、ラジオで楽曲をご紹介したんです。そうしたらドラマストアが所属するテイチクレコードさんにそのことが伝わって、お礼のメールがラジオに届いたんですね。「ご縁がありましたらいつかご一緒したいです」と言ってくださって。一緒にできる楽しいことがあれば声をかけてください!みたいなことが書いてあったので、満を持して。とはいえ、ダメ元でお願いしたらOKいただけて制作することができました。
――「キミハレーション」が届いてからアルバムの方向性が固まった?
寺島 同時でした。「キミハレーション」が届きつつ、じょんさんにもお願いしつつ。僕が作詞作曲をした「tie」という曲も「キミハレーション」が届く前には出来上がっていましたね。「tie」もポップなものにしよう、ということで制作をしていたので、全体的にポップが強めだと思いますし、長谷川さんもポップで爽やかな曲を作ってくださったこともあって、コンセプトが固まっていきました。
――そんな『Soul to』に収録された楽曲をそれぞれ解説していただきたいと思います。まずは「キミハレーション」。
寺島 長谷川さんと直接お会いして打ち合わせをしたのですが、僕自身が曲を作るとなると甘酸っぱい曲が作れないんです。恥ずかしさもあってそういう歌詞が書けないので、僕からは出てこない、僕の音楽に足りない甘酸っぱい歌詞と曲調のものを作っていただきたいとお願いしました。ドラマストアの曲を聴いてきて、長谷川さんがポップで甘酸っぱい曲が得意だと知っていましたし、ドラマストアさんの曲を何曲かピックアップして「この曲とこの曲のようなテイストがいいです」とお願いして、完成しました。歌詞の世界観については、甘酸っぱいとはいえ恋愛にしすぎず、ぱっと聴くと恋愛の歌に聴こえるけどもっと広い意味で「ずっと会えなかった人と会えることになった日の前日のワクワク感」を描いてもらいました。僕でいうとコロナ禍で2年間、親と会えていないんです。今までは年1回は実家に帰っていたのですが、今は一切会えていなくて……。実は人生で、こんなに長い時間会えないのは初めてのことなんです。そろそろ会えそうかな、というのこともあり、ようやく会えることにワクワクしているんですね。
――やはりコロナ禍の影響は大きかったですか?
寺島 そうですね。でも、それはきっとみんなそうで、普段なら会える人と会えなくなってしまった。僕の中で、その一番大きい部分にはお客さんと会えないこともあるんですよ。以前、ミニアルバムを出した2019年はめちゃくちゃイベントがあったんです。年間男性声優のイベントランキングの上位に入るくらいで、毎週末ファンの方やお客さんと会っていたのが、ガラリと景色を変えてしまって距離ができたことに歯がゆさがあったので、そういう歯がゆさを感じるすべの人に届く歌にしたい、と長谷川さんとお話をしました。この「キミ」は恋愛の相手のようでもありますが、聴いてくれた人にとっての「会えていなかった大切な誰か」を指しているんです。
――レコーディングはいかがでしたか?
寺島 難しかったです。普段からドラマストアの歌を聴いているので、長谷川さんの歌い方を真似しようとしちゃうんですね。デモも長谷川さんが入れてくれたんですが、めちゃめちゃ上手いんです。ハイトーンで。どうしても無意識にそれを再現しようとしてしまうので、最初は僕が前2枚のミニアルバムでやったような歌にならなくなってしまって……「これは違う」と迷ってしまいました。それに曲自体もメロディも難しかったので大変でしたが、「寺島惇太がこの曲を歌うならどんなふうになっていくのか」を歌いながら探っていき、最終的に今の歌に落ち着きました。
――2曲目は「Realize」です。
寺島 ポップがコンセプトにありつつも激しい曲がほしい、ということで作っていただきました。今までもロックは歌ってきていますが、攻撃的で激しいロックはなかったので、聴いた人が一発で「ギターがすごい!」となるような歌がうたいたくてリクエストをしました。楽曲のコンセプト的にはダークなアニメのオープニングというテイストで作っていただいたんですが、発注したときにも「ダークなアニメの……」というところをお伝えしていたので、歌詞が厨二感溢れる感じで出来上がって。ただ、出来上がったものが堕天使とかが出てきそうな系の感じ楽曲だったので、僕らしい感じにするために「ダークだけどギャンブルアニメっぽい方向性で」と歌詞を書き直していただいたんです。そうしたらゴリゴリにギャンブラーっぽいものになったので、僕らしいものになりましたね。
――そしてじょんさんが作られた「Youth」です。
寺島 こちら側からは、こういう曲がいいとか、こんな歌詞の世界観で、とか本当になにも伝えていなかったんです。なに1つ注文せずに、とりあえずじょんさんに「1曲書いていただけないですか」とお願いをしたら「作って送るね」ということだったのですが、お願いしたのが夏だったこともあり、届いたのが“夏の終わり”な楽曲だったんです。せっかく作っていただいたけれど、発売が12月なんです……とお話したら「あ!そうだった!作り直すね」って連絡があって。その1、2時間後に届いたのがこの曲でした。
――すごい!
寺島 何も言っていないのに、こちらが求めるものを出してくださるじょんさんってすごいなぁって思いました。レコーディングでもそのすごさは感じていたのですが、僕はずっとGrowthの藤村 衛(「ツキプロ」)としてじょんさんの曲を歌ってきましたから、逆にそこが難しかったですね。衛にならないようにしないと、というのがあって。僕的には衛で歌っているときよりも、細かいところのニュアンスで変えていく意識でしたね。でもじょんさんの曲ってイントロから「これは絶対に良い曲だな」とわかるのがすごいな、とも感じながら歌っていました。あと今回、この曲は新しい試みをしていて、「W」っていう僕の声が二線ある歌の録り方をしたんです。今まで自分の曲ではやったことがなかったのですが、この「Youth」は歌詞の世界観的に僕が2人いた方がいいんじゃないかと思って。それぞれが別の世界線に行くようなイメージがあったんですよね。「僕」と「君」は同一人物で、やりたい夢ことがいくつかある。今の世界線の僕は声優になったけど、“プロ麻雀師になりたい僕”というイメージだったんですね。声優になってからも音楽をやりたいと思っていて、声優アーティストとなった僕自身のことをじょんさんは書いてくれたんじゃないかと勝手に自分で解釈したので、AメロとBメロは2線で歌って、別々の道へ行った僕が2人で歌っているんです。でもサビではWが消えて、今の自分が違う世界線の僕を想って歌っている、という意識で歌いました。
――幻想的な響きはそういったコンセプトから生まれたんですね。じょんさんと寺島さんのコラボレーションならではの1曲となりました。そしてご自身の楽曲「tie」です。
寺島 自分のバースデーイベント用に作った曲で、フルサイズにしてアルバムに収録しようと思って作りました。今までの僕は作詞のテーマが定まらないままなんとなく曲を作っていって、歌詞を書いているうちに言いたいことや世界観が決まっていくような、行き当たりばったりな書き方だったんです。でも、「tie」は「こういうコンセプトで書いてみよう」と最初から決めて作詞をしていったので、これまでになくスムーズに作詞が出来ました。テーマが決まっていたらこんなにスラスラと言葉が出てくるのか、と知りましたね。
――そのテーマとは?
寺島 これもコロナ禍があったからこそ生まれました。みんなストレスが大きくて、世の中がギスギスしている感覚があるんですよね。これまでなら気づかなかったような些細なことに憤っている感じで。仕事が忙しかったりして見逃していたようなことも、相手の細かいところが目についたりもして、普段言えないような強気な言葉を文字にしちゃっているようなところがあるなと思ったんです。そういった文字面での行き違いでギスギスしてしまうことも多くなっているとよく耳にするんです。でもギスギスする前に、相手のことを思い出してほしくて。文字だけでやりとりだからイラっとするだけかもしれない。SNSでのやりとりで、酷い言葉が踊るのも見ていてしんどいんです。一旦落ち着こうよって思って……。嫌なところも良いところもあるのが人間だから、ケンカをしていたとしても実際に会うと印象が変わるかもしれないよ?とも思うんです。そういった想いを歌詞にしよう、と思って書きました。
――そして「Thank you for…」です。
寺島 アコギで弾き語りできるような曲が欲しいと話をして出来た1曲です。ライブのときにもちょっと一息つけるような優しい曲が欲しい、ということで赤堀さんが発注をしてくださって届いたのですが、そのオケを聴いただけで「良いですね!」と思った1曲です。歌詞を書いてくださった山中真一さんは何度も僕の作品で作詞をしてくださっていることもあり僕のことをよく理解してくださっているので、僕っぽい歌詞をつけてくれました。かっこつけすぎずに等身大な僕のテイストを入れてくれたのが嬉しかったですね。
――弾き語りしている姿をイメージしながら歌われたのでしょうか。
寺島 弾き語り想定で歌いました。だからキーも無理せずに歌えるものにしてもらいましたし。僕、弾き語りをしたいんですよね。弾き語りって1人でパフォーマンスが完結するので、すごく素敵だなって思っているんです。今の僕はオケを出してくれる人や楽器を弾いてくれる人がいないと、自分1人ではライブができない状態なのですが、弾き語りができればもっとフットワーク軽くパフォーマンスができるので、いつかやれるように練習していきたいです。
――そして最後は、赤堀さんの作られた「Lightning」です。
寺島 アルバムの最後をどう締め括ろうかという話をしたときに、「この曲で終わるとまた最初から聴きたくなるよね」って聴いてくれた人が思ってくれるような曲にしたいですね、と結論が出たんですね。そうしたら赤堀さんご自身が作ってくださったんです。僕からも「こういう曲のイメージです」というものを送らせてもらっての制作となったのですが、歌詞もすごく前向きなものになり、想像していたような存在の曲になりましたし、レコーディングもスムーズでしたね。一番、今までの僕っぽい曲だなと思いますし、結局最後は実家に帰ってきた、というようなものになりました。
――そしてジャケットについて伺います。これまでと違って大人っぽさのあるジャケットですね。
寺島 お洒落な感じで。この衣装で「キミハレーション」のMVも撮影したのですが、寺島惇太のイメージにまた1つ、新たにきれいめなものができたのではないかと思います。ちょっとまた大人になった感があります。
――そんなご自身の想い詰まる本作に『Soul to』と名付けたのはどうしてでしょうか。
寺島 調味料縛りで。一作目が『29+1 -MISo-』、二作目が『JOY source』。味噌、醤油ときたので今度は塩だな、と。ソルトを上手くもじれないかなと思っていて『Soul to』に行き着いたんです。意味を調べたら「魂に」とか「魂へ」と出てきたので、意味としても成立するのでつけました。
――2021年を締め括る本作ですが、2022年はどんな年にしたいですか?
寺島 仕事では「もっとこうなりたい自分」という欲がどんどん出てきたのが2021年でした。でもまだそこに自分の実力やスキルが辿り着いていなくて。どうしたら理想に近づけるのかを悩みもがいた年だったので、イメージ的には次のジャンプのために体を縮めているような時間だったように思います。ということもあり、2022年は思いっきりジャンプするような年にしたいです。何年か振りにアコギを弾き始めましたし、新しい試みのあるコンテンツにも入れてもらえていますし、業界全体が2020年、2021年と充電期間だっただけに2022年はそれを放つ期間になっていることもあり、僕も存分に放ちながら「こうなりたい自分」に近づけるように頑張っていきたいです。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
●リリース情報
寺島惇太 3rd ミニアルバム
『Soul to』
2021年12月1日(水)発売
【初回限定盤】
品番:MUCD-8154/5
価格:¥3,000(税込)
<CD>
M1.キミハレーション
作詞・作曲:長谷川 海(ドラマストア)
M2.Realize
作詞:Yuichiro Yoshino 作曲:井ノ上竜也
M3.Youth
作詞・作曲:滝沢 章
M4.tie
作詞・作曲:寺島惇太
M5.Thank you for…
作詞:山中真一 作曲:ヒルマ弘
M6.Lightning
作詞:Moe Sasaki 作曲:赤堀眞之
<DVD>
「キミハレーション」MusicVideo / Making
Sound Produce&All Arrangement:赤堀眞之
【通常盤】
品番:MUCD-1474
価格:¥2,200(税込)
<CD>
M1.キミハレーション
作詞・作曲:長谷川 海(ドラマストア)
M2.Realize
作詞:Yuichiro Yoshino 作曲:井ノ上竜也
M3.Youth
作詞・作曲:滝沢 章
M4.tie
作詞・作曲:寺島惇太
M5.Thank you for…
作詞:山中真一 作曲:ヒルマ弘
M6.Lightning
作詞:Moe Sasaki 作曲:赤堀眞之
Sound Produce&All Arrangement:赤堀眞之
寺島惇太 オフィシャルサイト
http://juntaterashima.com/
寺島惇太 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/juntaterashima3
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