【インタビュー】近藤玲奈が描く、誰も体験したことのない世界を描き出す異色作『11次元のLena』――。“僕”と“玲奈”と“Lena”、その邂逅が紡ぎ出す衝撃の音世界に迫る

今年4月にシングル「桜舞い散る夜に」でアーティストデビューを果たした声優の近藤玲奈が、それに続くコンセプトアルバム『11次元のLena』を完成させた。作品の軸を貫くのは、“僕”と“玲奈”、お互いに孤独を抱えたクラスメイト同士の邂逅の物語。そこに“11次元”という概念、そして“Lena”という存在が加わり、近藤玲奈自身が抱えるテーマとも共鳴しながら、誰も体験したことのない世界を描き出す異色作だ。ここまで稀有な作品を生み出した近藤玲奈とは、一体何者なのか?その真意に迫る。

コンセプトアルバム制作のきっかけは“闇”と“暴力的”!?

――新作『11次元のLena』、取材のためにいち早く聴かせていただきましたが、正直、驚きました。思いきり振り切ってきましたね。

近藤玲奈 それが伝わっていて良かったです(笑)。

――前作のデビューシングル「桜舞い散る夜に」は、タイアップ作品に寄り添ったピュアなポップソングでしたが、今回は作品全体がダークなトーンで統一されたコンセプトアルバム。この変化には、どのような経緯があったのでしょうか?

近藤 デビュー前にスタッフの皆さんとミーティングをしたときに、私は闇属性の人間なので、ちょっと暴力的で暗い世界観のロックも歌ってみたいとお話ししたのですが、その“暴力的”という言葉を井上(哲也/日本コロムビアの音楽ディレクター)さんが覚えてくださっていて、今回、アルバムでそれを実現させていただけることになりました。コンセプトアルバムにしたのは、私がお芝居や歌のときは役にのめり込む憑依型タイプで、1stライブのときに気持ちをグッと入れて歌っているのを観てくださったスタッフさんが、登場人物を設定することで私の良さを引き出せるのではないか、ということで考えてくださいました。

――なるほど。“暴力的”というのは具体的にどんなイメージで発言したのですか?

近藤 ただ尖った言葉を並べたロックというよりも、根源にある苦しみや切なさ、どうあがいても解消できない辛さ、悲痛な叫びみたいなものを殴り書きしていくような作品を作ってみたいなと思いまして。自分自身も中学生の多感な時期に、周りの人との差を感じて辛かったことがあったんですけど、そんなときにVOCALOIDの曲を聴いて、自分の悲痛な気持ちを代わりに歌ってくれているように感じたんです。だから今回のアルバムの登場人物も中学生に設定して、今辛い思いをしている方たちの気持ちを一緒に昇華するような作品になれば、という気持ちもありました。

――音楽に救われたご自身の体験が、今作のコンセプトに反映されているわけですね。

近藤 普通は明るい曲を聴いて元気になれたという人が多いと思うんですけど、私は逆に「自分はこんなに明るくできない……」となってしまうタイプだったので。そんな人たちにとって救いのある曲を作りたかったんです。

――そこで生まれたのが、“僕”と“玲奈(Reina)”、そして“11次元のLena”という存在が交差する本作の物語。この“11次元”というアイデアはどこから?

井上哲也 これは私から説明させていただきます。今作の全体の枠組みをどうするか考えていたときに、たまたま読んでいた宇宙論の本に“11次元”という言葉が出てきたんです。それで今回のコンセプトアルバムの楽曲を作ってくださったhisakuniさんと打ち合わせをしたときに、hisakuniさんも“11次元”が出てくる小説を読んでいるという話になって、じゃあそれでいきましょうとなりました。

近藤 私も「闇を表現したい」とはお伝えしていましたけど、そこから“11次元”という今まで想像したこともない言葉が出てきたので「えーっ!」ってなりました(笑)。“11次元”のことを理解するのにも時間がかかったんですけど、ストーリーの骨組みをいただいたときになるほどと思って。“玲奈”のもう1人の自分として“Lena”が11次元にいるんですけど、その“Lena”が“玲奈”に及ぼす影響だとか、内面的な部分での結びつきがあったりして、5曲すべてに背景とストーリーがあるんです。私は音楽を聴きながら考察したくなるタイプなんですけど、その意味でも聴き応えのあるアルバムになったと思います。

――hisakuniさんとは、制作を進めるにあたりディスカッションなどされましたか?

近藤 私からストーリーに関して何か提案することはなかったんですけど、その物語や歌詞がどういう意図で書かれているのか細かい部分を知りたくて、一度かなり長文の質問状を井上さん経由でお渡ししたんです。ふわっとした気持ちで歌いたくはなかったので、ちょっとでもモヤっとしたところは聞いておこうと思って。それに対してhisakuniさんが2回に分けて細かく答えてくださったんです。それでようやく、今作で描かれている“11次元”という存在がどういうものなのか理解できましたし、このコンセプトを自信をもって発信することができました。

――hisakauniさんには自分も取材したことがありますけど、気さくで穏やかな方だったので、ここまでダークな雰囲気の楽曲を作られたのは意外でした。

近藤 普段は明るい方なのに、こんなにも闇深い曲を5曲も手がけてくださって……本当に闇に陥らないかちょっと心配でした(笑)。1stライブのときにhisakuniさんが手がけられた楽曲を何曲かカバーさせていただいて、それが個人的にもお気に入りの曲ばかりだったので、今回ご一緒できてすごく嬉しかったです。

“僕”と“玲奈”と“Lena”、その邂逅から生まれた衝撃の音世界

――ここからは収録曲について1曲ずつ詳しく伺わせてください。1曲目「僕だけが消える世界」は、ノイズ混じりのアグレッシブなサウンドが強烈なロックチューン。

近藤 今作の制作で最初に聴かせてもらったのが、この曲のデモ音源だったんですけど、イントロは静かな感じだなと思っていたら、急にバッてなるので思わず音量を少し下げたくらいで(笑)。最初は色んな情報が一気に自分の中に入ってきてとにかく衝撃だったんですけど、もう1回、最初から通して聴くと、まさに自分が表現したかったものがストレートに入っていて、最高だなって思いました。これは“僕”目線の曲なんですけど、“僕”は発散しているように見えて、まだちょっと気持ちを噛み殺しているところがあるんですよね。これから闇の世界が始まることを無理やりにでも心構えさせる、アルバムの序章となる曲になります。

――近藤さんの歌唱も、冒頭の儚げな雰囲気に始まり、サビの吠えるような歌声など、多彩なアプローチを試みていますね。

近藤 ディレクションしてくださった方もこだわってくださって、イントロの部分は「天使が消え入りそうに歌っている感じで」だとか、サビの“その場限り 優しさが 鼻につく”という強い言葉が並んでいる部分は「バンって出すのではなく噛み殺している感じで」みたいに、細かく指示してくださったんです。「静かに歌うからこその狂気も表現していきたいです」とおっしゃっていただいて、自分の引き出しが増えていく感覚もありました。私も一番最後のサビで、“その場限り”は抑えて、“優しさが”は強くする、感情を交互に出していく歌い方を提案して。言葉の1つ1つのニュアンスにもこだわったので、ぜひ注目して聴いてほしいです。

――歌詞も攻撃的で、“正論”や“綺麗事”に対する反発心のようなものが感じられます。

近藤 そうですね。自分は落ち込んでいるときに「大丈夫だよ」って言われても「大丈夫じゃないからこうなってるんだよ……」って思ってしまうタイプなので、落ち込んでいる人に対してなんて声をかければいいのかがわからないという葛藤があって……。でも、人に対して自分の正論みたいなものを押し付けるのはあまり良くないことだとも思っているので、そういう皮肉っぽい表現が良い方向で味になっている曲だと思います。

――そしてさらに激しく迫るのが、今作のリード曲でもある「Erase Me」。ナイン・インチ・ネイルズばりの不穏かつ性急感溢れるインダストリアルロックで、これには衝撃を受けました。

近藤 これは“玲奈”が歌っている曲になります……ややこしいんですけど、この“玲奈”はフィクション上の人物であって、近藤玲奈ではないことはお伝えしておきます(笑)。この曲は“11次元のLena”と“玲奈”が葛藤しているところを描いていて。“玲奈”は学校では普通の生活を送っているんですけど、心の奥底では周りとの差に苦しんでいて、自分を偽って生きているんです。でも“Lena”は「そんな我慢しなくていいじゃん」っていう立場で、“Lena”にそう言われた“玲奈”は「じゃあ私が今まで普通の子として生きてきた意味は何なんだ」ってなってしまう。そんな葛藤を描いた曲になっています。

――歌詞の“誰も知らないワタシが 私を殺す”で“ワタシ”と“私”の2通りの表記があるのは、“玲奈”と“Lena”のことを指しているわけですね。

近藤 そうなんです。しかも最後は“誰も知らないワタシを 私が殺す”になっているんですよね。ほかにも“銃声が響いた”のところで実際に銃声が響いて、そのあとどうなったのかも想像し甲斐がありますし、最後のちょっと不気味なサウンドにもちゃんと意味があるんですよ。全部言ってしまうと面白くないので、それもどういう意味なのか考えながら楽しんでもらえると嬉しいです。

――心音っぽい電子音が入る箇所ですね。この曲は全体的に緊迫感が漂っていますけど、歌の面で心がけたポイントは?

近藤 1Aとか1Bは気が動転して動悸が早くなっている感じを表現しているんですけど、ここのリズムがすごく難しくて、歌いこなすのに時間がかかりました。特に“憂鬱のトリガー”のところが、普通に聴くと簡単そうなんですけど、なかなか消化して歌うことができなくて、本当に憂鬱になりましたね(笑)。でも、サビは遠慮せずに全部吐き出して歌うことができました。

――ちなみに1曲目は“僕”視点、この曲は“玲奈”と“Lena”視点ですが、主観が変わることで歌い方や感情の込め方も変わるのですか?

近藤 歌い方をきっちり分けたかと言えばそうでもないんですけど、“僕”は男の子、“玲奈”は女の子で、頭の中ではそのイメージで歌っていたので、聴いてみると違いが感じられるようになればいいな、というのは念頭に置いてレコーディングしました。

――なるほど。しかしこの曲、ファンにどのように受け止められるのか、発表されたときの反応が非常に楽しみです。

近藤 私も全然想像がつかないです。でも、みんな少なからず闇を抱えていると思いますし、自分だからこそできるものをやれればと思っていて。「れいれい、やりやがったな!」って思ってくれると嬉しいですね(笑)。

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