【インタビュー】angela、「Shangri-La」新ver制作秘話と『蒼穹のファフナー』との17年間の深い絆を振り返る

angelaの代表曲でありアニソン界の中でも最重要曲の1曲である「Shangri-La」が、『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の挿入歌として新たな姿を見せた。ボーカルを録り下ろしたこのニューバージョンが作られた経緯からオリジナルの「Shangri-La」制作秘話、そして17年間で数多くの楽曲を作ってきた『蒼穹のファフナー』との思い出をangelaとともに振り返る。2021年年末には『ファフナー』曲づくしの特別なライブも控えている2人にとっての『蒼穹のファフナー』への思いを余すところなく語ってもらった。

「『Shangri-La』を新たに作ることに対して抵抗があった」(atsuko)

――『蒼穹のファフナー』の主題歌「Shangri-La」はangelaにとっての代表作です。この度ボーカルを録り下ろし、新たにミックスを行なった「Shangri-La ~THE BEYOND~」は、どのような経緯で制作をされたのかを教えてください。

atsuko この曲は『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の第十二話の挿入歌として流れるのですが、制作段階ではオリジナルの「Shangri-La」を当てていたところ、監督の能戸(隆)さんが、映像が新しくなっているところに、歌や音源が17年前のものであることに違和感を覚えたそうで。そこで、私たちのほうに「歌い直すとか作り直すことは可能でしょうか」と、ご相談がありました。でもどちらかと言えば、最初は私もKATSUさんもこうして新たに作ることに対して抵抗があったんですよ。2人とも、「やっぱり前のほうが良かったね」という経験を何度かしているので。

KATSU 『ファフナー』は歴史が長いので、最初のシリーズからご覧になっている方は当時の主題歌のままのほうが良いのではないかと、僕も最初は思いました。

atsuko ただ、制作チームの熱意もあり、一度レコーディングスタジオに入って、今の私が『ファフナー』との思いや経験を積み重ねて歌ってみてから考えようという形にまとまりました。

――この歌自体はライブなどで今でももちろん頻繁に歌われていますが、テストレコーディングとはいえスタジオで歌ってみての感触はいかがでしたか?

atsuko 経験を重ねたぶん、「ちゃんと歌えているな」と感じました。というのも、17年前にレコーティングしたときは、難しすぎて変な歌い方をしていたんです。ブレス1つとってもその後の音程が取れなくなるので、なるべく息継ぎをせずに歌い続けていて、今の自分が聴くと違和感がありました。ただ、だからといって当時のものと完全に違う形にするのもまた違うなと思ったので、オリジナルの「Shangri-La」をヘッドホンで聴きながらユニゾンして歌ったんです。そんな経験はまずしませんから不思議な感覚でしたね(笑)。でも、良い経験をさせてもらったという気持ちのほうが強いです。今の私が新しく歌っていると聴かせつつ、皆さんの耳に刷り込まれている昔の音源の良さも大切にすることを意識していました。

atsuko

――本番のレコーティングではどんな様子でしたか?

atsuko ライブ感を意識しました。ちゃんと歌えるようになっている今、その通り綺麗に歌おうとすると枠の中にはまった面白くないものが生まれてしまうなと思って。むしろ、そこから少しはみ出したもののほうがフックになるのではないかと思いました。これまでの積み重ねによって声の太さも変わっていることも念頭に置きました。あとはクセをどこまで再現するか。自分で言うのもなんですが、クセの強い歌い方なんですよね(笑)。これは人によっては敬遠されるかもしれませんが、でもそこもangelaを形成する要素の1つなので、そこは耳障りにならないように、かつクセを出すようなバランスを取る形でした。そういったコントロールも、今の私はできるようになったんだなと思いましたね。

KATSU レコーティングの、たしか2テイク目にatsukoが「もう私の好きに歌っていい?」と言い出したんです。そのとき、僕はこのまま進めたほうがいいなと思って。そういうときのatsukoって、完成形が見えているんですよね。これは昔の「Shangri-La」を全否定して作り直すわけではまったくなく、「今のangelaで作るとこういう形になるよ」という意味合いなんです。当時の「Shangri-La」はそれとして、この先も越えられない壁として在り続けていきます。その壁を登っている途中という形が今回の「Shangri-La ~THE BEYOND~」の位置付けですね。

KATSU

――サウンド面についてはどのようなプランでしたか?

KATSU 最初はアレンジまで変えるかという話も少し浮上したのですが、それはさすがに当時のものを残しておきたくて。ただ、ミックスとトラックダウンは直そうとは最初から決めていました。デビュー曲の「明日へのbrilliant road」もそうですが、やっぱり今のangelaのサウンドとは違う感覚があります。それに今回のアニメ『蒼穹のファフナー THE BEYOND』は、劇場の環境に合わせて音を作っているので、その仕様のミックスを作る必要もありました。配信用には新しい2chのミックスで作っています。

――劇場でしか聴けないバージョンもあるわけですね。配信用のサウンドは具体的にはどのような特徴がありますか?

KATSU 2000年代初期と現在では音のトレンドが違っています。当時は音の迫力があればあるほど良いとされていて、そのぶんダイナミックレンジ(音全体の強弱の比率)が狭くなっていました。現在では広いほうが良しとされていて、僕もそのほうが好きですね。だから、「Shangri-La ~THE BEYOND~」と昔の音源を同じボリュームで聴き比べると、今のほうが音としては小さく聞こえますが、そのぶんバランスは良くなっています。エンジニアさんに渡すラフミックスを作るときもその感覚を大事にしました。

『Shangri-La』完成の手応えと、歌の育て方

――angelaの歴史を振り返ると、最初の『蒼穹のファフナー』の放送(2004年7月~12月)に先駆け、4thシングルとして「fly me to the sky」を同作のイメージソングとして5月にリリースされています。

KATSU 当時はイメージソングという文化があったんです。『蒼穹のファフナー』は、大勢の登場人物が命を落とすシリアスなストーリーだけれども、放送前にそれを全面に押し出したくないので、「王道ロボットアニメ」の主題歌のような明るい曲を作ってくださいというオーダーがあり、そういった曲を作ったんです。

――では「Shangri-La」とはある意味で兄弟のような、まさにイメージを作るための曲だったんですね。「Shangri-La」が完成したときの手ごたえはいかがでしたか?

KATSU 「ウォォ、これが僕たちの代表曲だ!」……みたいな実感はまったくありませんでした(笑)。当時の僕らは「明日へのbrilliant road」でキングレコードからデビューして間もない頃で、主題歌となった『宇宙のステルヴィア』と同じXEBEC制作の新作アニメの主題歌を担当させてもらえることになったんです。しかもそれが『機動戦士ガンダムSEED』の平井久司さんがキャラクターデザインをして、冲方 丁さんがお話を作るというビッグなプロジェクトだというプレッシャーのほうが大きかったですね。レコーディングの日のことは鮮明に覚えています。夜中の24時を回ってもまだコーラスを録っていたりとか、朝方にパソコンのトラブルがあって1時間くらいストップしたこととか、明けて昼までに終わらせないと清掃業者が入るから何とかしなきゃとか、そういった細かいことまで(笑)。

atsuko ギターを弾いてくれたのがKATSUさんのギターの師匠の山本さんという方なのですが、「この曲、すごいよ!」とおっしゃって帰って行かれたことを覚えています。当時は何がすごいのか、自分たちでは全然わかっていなかったのですが(笑)。

――当時の反応はいかがでしたか?

KATSU とても良かったです。発売日はイベントの都合でニューヨークにいて、帰りの空港でキングレコードから「ものすごいバックオーダーがきている」という連絡を受けて、驚いたまま帰国したことを覚えています。

atsuko その年に出したアルバム(『I/O』)も反応が良かったですし、ライブにもお客さんが大勢来てくれて嬉しかったですね。

KATSU 『ファフナー』が始まるときはやっぱり王道ロボットアニメとして打ち出していたこともあり、男性ファンが多かったんです。これは製作陣にとっても意外だったかもしれないけれど、作品が進むにつれてキャラクターの友情物語や群像劇としての面に気づいてくれた女性ファンが増えていきました。それは僕らのライブのお客さんにも影響として現れて、angelaのライブも最初は男性が多めだったのですが、『ファフナー』が終わったときには綺麗に50:50に分かれて、その割合が今も続いています。

――よくアーティストの方はファンと一緒に「曲を育てる」という言い方をされます。angelaにとって「Shangri-La」はまさにそんな曲だと思うのですが、リリースしてからずっと定番曲のようにセットリストに置かれていたのでしょうか?

atsuko 最初に「Shangri-La」を披露したのはリリース以前ですね。九段会館での『ファフナー』の放送開始前のイベントで、そのときすでに今のライブで行なっているような振付でタオルを使ったパフォーマンスをしていたんです。あのとき一体感を生み出したかったのかな……?でもアニメが始まってからのライブでは、ストーリーと主題歌の内容はシリアスなのにも関わらず、ライブのときにタオルを振り回している画が作品ファンの方にはちょっと嫌だったみたいで、「あの演出は止めたほうがいい」というお手紙もいただいたことがありました。

――今やライブでの定番とされる演出にも、そういった時代があったんですね。

atsuko はい。ただ、それは受け止めつつも、私たちは止めなかったんです。いまだにそれを貫き通しておりまして、それによって「angelaのやることだから仕方ないか」と受け入れられた印象はありますね。ライブでは途中にコール&レスポンスを入れて毎回違う言葉を入れたり、最近だと客席からは声を出せないので手拍子に変えたりとか、そういう演出も変えていくことが、この曲にとっての「育てる」という行為なのではないかという気がします。

松浦珠樹マネージャー そうした本人たちによる育て方ばかりでなく、「Shangri-La」は勝手に育っていったという印象も強いですね。2009年のワールド・ベースボール・クラシックがTV中継されたときがものすごい視聴率で、そのCMで「CR蒼穹のファフナー」が流れて、アニメを知らない人でも非常に多くの方が買って聴いてくれました。育てるどころか、勝手に成長して実家に仕送りまでしてくれたんです(笑)。

――angelaがTVの歌番組に呼ばれるときはプロデューサーが1曲は「Shangri-La」でと指定してくるそうですね。

KATSU よくあります。イベントやフェスに出るときもそうですし、なんなら“KING SUPER LIVE”でも指定されました。ほかの人から見るとangelaの「Shangri-La」みたいに言われるのですが、自分たちの感覚としては、この曲は早くから独り歩きをしていて、むしろ僕たちが「歌わせてもらっている」という感覚なんです。だから、今回「Shangri-La ~THE BEYOND~」として作り直すときも、どこか『ファフナー』さんの「Shangri-La」を預かっているような感覚がありました。

――それ以降も『ファフナー』の新作のたびに新曲を作られてきました。そうしたときに『ファフナー』の主題歌としてシリーズを通して意識していることはなんでしょう?

KATSU 『ファフナー』に関してはほかのアニメの主題歌と違って、『ファフナー』のファンにだけ伝わればいいという意識でいます。だから僕らは自分たちのほかのアニソンとは別にこれらを“ファフソン”と呼んでいるんです。自分の実力を常に試されてるというか、『ファフナー』と合ってさえいればいい。極端に言えば売れなくてもいい。それって、もう仕事じゃないんですよね(笑)。でも、制作のときは『ファフナー』と共存していくための楽曲作りに専念しているのは間違いないです。

atsuko 歌う側からすると、ただ自然にバラードを歌えば『ファフナー』になるし、激しい痛々しい曲を普通に歌えば『ファフナー』になる。だから、『ファフナー』の曲ではないときのほうがむしろ意識しますね。明るく楽しい曲を歌う際に、そこに『ファフナー』感を出すわけにはいかないですし(笑)。

KATSU テンポ80以下になると注意ですね。全部『ファフナー』の歌に聴こえちゃう(笑)。

atsuko なぜそうなったかというと、それはこの17年間、『ファフナー』の最初のイメージソングから最新作まで、すべての主題歌や挿入歌をangelaが担当させてもらっているからなんです。これだけ長い期間愛され作品が作り続けられることも珍しいですし、それを1組のアーティストが担当することはまずありませんから。なので、私がこういう歌手になったのは『ファフナー』の存在と、ご依頼があったからこそなんです。

――それは制作陣とファンからの厚い信頼があるからこそですね。

atsuko ファンの方もすごく優しい方が多くて、むしろ私より歌詞を深読みしてくれるファンの方もいるくらいです。「この歌詞はここを表現していたんですね」みたいなお手紙をいただくこともあります。

KATSU ちょうど年末の『ファフナー』ライブのために本編映像を編集しているのですが、歌詞と合致するシーンがあるんです。まるでatsukoさんが先に本編の映像を見て歌詞を書いたかのように。もちろん、作っていた当時はそんなことないんですけど、改めて歌詞と映像がまるでパズルのようにぴったりハマるタイミングが結構あるんです。

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