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INTERVIEW

2021.11.12

【インタビュー】“青”から“黄色”へと季節は流れ、温かく描かれた芽吹きと成長。内田 彩「Canary Yellow」リリースインタビュー

【インタビュー】“青”から“黄色”へと季節は流れ、温かく描かれた芽吹きと成長。内田 彩「Canary Yellow」リリースインタビュー

声優・内田 彩の6thシングル「Canary Yellow」が、11月10日にリリース。TVアニメ『やくならマグカップも 二番窯(以下、『やくも』)』のEDテーマに起用された表題曲は、hisakuniとのゴールデンタッグによるエレクトロポップだ。本稿では『やくも』1期のEDテーマだった前作「Pale Blue」からの発展や狙いなど、収録曲についてはもちろん、この夏開催したオーケストラコンサートや来年開催予定のワンマンライブなども含め、幅広い話題について語ってもらった。

表題曲は、メインキャラ以外の想いとも重ね合わせられるEDテーマに

――前作「Pale Blue」のリリース後に、シンフォニックコンサート“Ani Love KYOTO presents 内田彩Symphonic Concert~en and ett~”を開催されました。初めての試み、いかがでしたか?

内田 彩 とっても楽しかったです!コロナ禍の開催でもあったので、参加するお客さん側の気持ちやオーケストラの皆さんと合わせることなど、未知なことへの心配や不安もあったんです。でも、始まってしまったら「なーんて楽しいんだ!」と思って!

――シンプルに楽しかったんですね。

内田 はい。素直に「歌って楽しいなぁ」とか「音楽って素敵だなぁ」という気持ちを味わうことができました。あと、これはもしかしたらファンの皆さんにとってはちょっと寂しいことかもしれないんですけど、お客さんとのやりとりがないぶんオーケストラの方々とのやりとりに集中できたといいますか。客席の反応を観て歌以外の部分で遊ぶ、みたいなことができなくなっちゃったんですけど、逆に集中できる方向は定まっていたように思っています。

――アレンジがオーケストラ仕様になっていたのも、また普段と違う楽しさがあったのでは?

内田 開催前には、アレンジをすべて担当してくれたコンサートマスターの大嵜慶子さんと色々なことを直接細かく話し合わせていただけたんですよ。逆にオーケストラの皆さんとは一度だけしかリハーサルができなかったぶん、ちょっとライブ感というか、演奏中に聴いた音を受けて「ここでこう盛り上げていこう」みたいに歌うような感覚があったんです。なのでお芝居じゃないですけど、そういうリアルタイムのやりとりみたいなものも、すごく楽しかったですね。

――オーケストラと一緒に、ジャズセッションのようなことをされたというか。

内田 本当にそんな感じでした!それを大嵜さんが、上手くコントロールしてくださったんです。

――それを観たファンの方も、音と歌をすごく楽しんで味わわれたと思います。

内田 開催前には、「やっぱりはしゃぎたい人もいるだろうしなぁ」という心配もあったんです。それがライブの中でのメインじゃないとはいえ。でも、そういうことができないコンサート形式の公演を、あれはあれで1つの形としてすごく楽しんでもらえていた雰囲気が伝わってきたんです。みんなが平等に“初めて”だったから、同じ目線で見られたのも良かったのかな?とも思っているんですけど。

――たしかに、あの形式は全員が初めてでしたからね。

内田 たまに「声優さんのライブに初めて行くんですけど、どういう雰囲気なんでしょう?」みたいなメールやお手紙をいただくこともありますが、今回はみんなが同じスタートラインに立っていた気がして。誰も置いてけぼりにならなかったことで、観に来るみんなのハードルもちょっと下がったような感じがしたことも、すごく良いことだったなと思っています。

――そんなコンサートを経て、この度ニューシングルがリリースされました。表題曲「Canary Yellow」は、1期に引き続き『やくも』のEDテーマとなっています。2期続けての主題歌担当というのは初めてですよね?

内田 そうですね。それに自分が声優として出演している作品でも「2期は2年先」みたいなこともあるので、短いスパンで関わり続けられることで意識が途切れずに取り組めたことは嬉しいですし、恵まれているなと思います。

――2期では本編にも、真土泥右衛門役や松瀬理央役で出演されています。

内田 泥右衛門については、元々2期では本編に出てくると監督から聞いていました。なので、1期のときには土から泥右衛門が出来上がるまでの原作エピソードを読んで、現場で皆さんと一緒にキャラ作りをしていたんです。でもまさか、松瀬さんが泥右衛門よりも先に本編に登場するとは思っていなかったので、それには驚きましたね(笑)。

――泥右衛門が先だと思っていたのに(笑)。

内田 そうなんです。原作とアニメでは話の流れが違う部分もあるのでそうなったんですけど。でも松瀬さんを演じて本編に加わって掛け合いをできたことが、すごく楽しかったですね。泥右衛門は1期では1人で予告を担当していましたし、2期になってもキャラクターの性質上、誰とも関われなかったので(笑)。

――では続いて、「Canary Yellow」についての最初の印象も聞かせていただけますか?

内田 今回は、楽曲の方向性を決める段階から携わらせていただきまして。私からは「シティポップみたいな感じにしたい」というお話をさせていただいたので、曲自体は完成形よりもちょっとお洒落寄りだったんです。でもそこに歌詞がついて仮歌入りで上がってきたときには、明るさみたいなものが加わって、よりふんわりかわいらしい曲になっていて。それが、泥右衛門と2等身の主人公たちの登場するED映像にもすごくピッタリなんです。しかもそれでいて「Pale Blue」とは温かい雰囲気みたいなものが共通しているところも、素敵だなと思いました。

――“爽やかさ”という部分も、2曲通ずるものがあるように思います。

内田 ありますね。しかも青春感や始まり感みたいなものをテーマにした前作から、今回は青かったものが芽吹いていくようなイメージのところもあって……そういう部分が主人公たちの成長や、お互い心が開いて距離感が近づいていくところとも結びつくように思ったんですよね。ただ、アフレコが進むにつれて、その印象が少しずつ変わっていきまして……。

――どう変わっていったんですか?

内田 最初は今お話ししたように、メインになる4人の子たちが日常の中で感じたことや成長が落とし込まれた曲という印象だったんですけど、『やくも』は2期になってからメインの4人以外のお話も結構描かれているので、「あれ?こっちの人の歌でもあるのかも……?」と思うようになったんです。

――たしかに。例えば序盤では、主人公・豊川姫乃の両親の過去話もありました。

内田 そうなんです。姫乃ちゃんがほかの人から聞く自分の知らなかったお母さんの話を通じて、お母さんへの焦がれる気持ちを歌ったようにも取れる話数があったりもしましたし。ほかにも2期は1期以上に、それぞれのキャラクターの悩みみたいなもう少し深いところを描くエピソードが出てくるんですよ。観ている側も、「自分自身とは何か?」と問いかけられるような部分もあって……。

――俯瞰して見ている感じというか。

内田 はい。しかも2番は「Pale Blue」に続いて恋愛要素濃いめの歌詞になっているので、もしかしたら松瀬さんからの熱い(青木)十子ちゃんへの片想いのように聴こえる方もいるかもしれないし(笑)。でもそういうふうに、登場する色んな人の想いと重ね合わせて様々な感じ方をしてもらえるところも、すごく素敵だなぁと思いますし。登場人物が増えてどんどん賑やかになっていく感じも、「Blue」から「Yellow」に変わって花開いていくようで、いいですよね。

――内田さんの歌声がサウンドと合わさることで、キュンとくるポイントもたくさんありました。逆に内田さんからそう感じさせるために、歌ううえで工夫したことはありましたか?

内田 私自身はこういうかわいらしいテイストの曲がすごく好きなんですけど、私が出しやすい音域が少し高めなので、良くも悪くもかわいらしくなっちゃうんですよ。でもそういうところを、雰囲気を変えることで逆に切なく聴こえたらいいなぁ……ということは常に意識しているところではありますね。こういう話を私がしているから、hisakuniさんが私に宛てて歌詞や曲を作ってくれているのかもしれないんですけど。

――例えば、地声だけで歌うとかわいくなりすぎてしまいそうなところも、ファルセットなどを織り交ぜて切なさをより強く感じさせたり。

内田 ただ今回は、「Pale Blue」とも少し視点が違っていまして。1期はメイン4人の女子高生が「これから新しいことを始めるぞ!」というところだったので、自分の青春時代をちょっと懐かしみながらお姉さんのような気持ちも少しだけ持ちながら歌ったんです。でも「Canary Yellow」はそれよりもちょっとだけかわいらしい雰囲気にしつつ、質感みたいなものを少し変えて歌えたらと思っていました。

――どのように変えられたら、と思われていたのでしょうか?

内田 特に「Canary Yellow」はある2人が、その瞬間はすれ違ったとしてもまたどこかで交わるときがきたり……というものが描かれているように感じて。それが例えば姫乃ちゃんのお母さんとお父さんみたいに、話数ごとに色んな人に当てはまるんですよ。だから「わー!hisakuniさんズルいー!」と思ったりもして(笑)。なのでその交差する2つの線が、それぞれ違う感じで表すことができたらいいなと意識しながら歌っていましたね。

――なるほど、そういう部分へのこだわりが。

内田 hisakuniさんは毎回「実はこう」みたいな裏テーマのようなところまで考えて歌詞を書いてくださっているので、いつも「どこまで考えてるんだろう?」って思うんですよね。

次ページ:あえて“っぽくない”曲や歌い方を目指した、カップリング曲「KANRANSHA」

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