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INTERVIEW

2021.11.10

【インタビュー】手術前の声を残した“最後”の歌――。TVアニメ『シキザクラ』オープニング主題歌「BELIEVE MYSELF」の制作秘話を亜咲花が語る。

【インタビュー】手術前の声を残した“最後”の歌――。TVアニメ『シキザクラ』オープニング主題歌「BELIEVE MYSELF」の制作秘話を亜咲花が語る。

亜咲花10枚目のシングル「BELIEVE MYSELF」はTVアニメ『シキザクラ』オープニング主題歌。疾走感あふれる楽曲で、自分を信じることをテーマに不安や成長を歌詞に込めた入魂の1曲だ。ポリープ手術と戦いながら歌ったこの表題曲と、それを乗り越えてステージに立つ姿を映し出したカップリング2曲。1枚のシングルとして記念碑的なつくりになった本作への思いを余すところなく聞いた。

この歌が「自分を信じること」の支えになってほしい

――新作「BELIEVE MYSELF」は亜咲花さんにとって10枚目のシングルになりますが、まずこの数字をどのように捉えていますか?

亜咲花 10枚という数字で見ると、改めてたくさんの作品に携わらせていただきながら歩んでくることができたなと、強く実感が湧きました。今年の10月26日でデビュー5周年を迎え、その間もコンスタントにリリースさせていただき、ライブもたくさんすることができました。一方で喉にポリープ見つかり、手術を終えてからのリハビリ期間は気持ちとして落ち込んで、果たして自分の声は戻ってくるんだろうかという不安も経験しました。1年以上かけて回復に取り組んでいった結果、現在は何の不自由もなく歌えるようになり、壁を乗り越えたことは自分にとって良い影響を与えてくれ、これからもっともっと言葉にして歌にしていかなきゃなという強い意志に変わりました。ちょうど今回リリースする『BELIEVE MYSELF』の表題曲はそんな手術前にレコーディングした最後の曲なんです。

――TVアニメ『シキザクラ』オープニング主題歌ですね。この作品は名古屋を中心とした東海エリアを舞台にしたオリジナルアニメ企画で、制作陣にもこの地域の人々が中心となっています。名古屋出身の亜咲花さんはこの作品の主題歌オファーをどのように受け止めましたか?

亜咲花 名古屋という土地に思い入れが強いので東海エリアを舞台にしたアニメに関わらせていただけるのがすごく嬉しかったです。この作品をきっかけに、この地域がどんどん盛り上がっていけるきっかけの一つになったらいいなと思いました。

――エンディング主題歌は、同郷で亜咲花さんがリスペクトされているMay’nさんが歌われています。初めて同じ作品に携わることへの感慨は?

亜咲花 May’nさんとはこれまでイベントでご一緒したりプライベートでも仲良くしていただいていますが、同じアニメで主題歌担当としてタッグを組むことには、また違ったエモさがありますね! クレジットが並んだ画面はスクショを撮って家族で共有しました(笑)。父も私と同じくMay’nさんの大ファンなので「今まで頑張ってきて本当によかったね」と、とても喜んでいました。

――親孝行ができましたね。「BELIEVE MYSELF」を作るにあたって、制作側からのオーダーはどのようなものがありましたか?

亜咲花 「疾走感があってアクションに合う曲で、亜咲花さんが受け取ったものを言葉にしてほしい」と伺いました。そして大変貴重なことに、制作現場を見学させていただきました。CGのスタッフさんやイラストレーターの方、プロデューサーの皆さんから直接作品の内容を伺ったり熱い思いを聞かせていただき、とても勉強になったと同時に、アニメは本当にたくさんの方の手によって作られているのだなと実感しました。その熱い気持ちを私が受け取って歌詞に載せるのはプレッシャーでもありましたが、それが背中を押す形になってより良い歌詞を書くことができたと思います。

――冒頭からセリフ言葉の歌詞で始まるのが印象的でした。

亜咲花 これは『シキザクラ』の主人公の三輪翔くんのセリフを引用し、よりアニメとのリンクを高めようと試みました。主題歌として掲げている以上、やはり作品を大事にしようと頭を捻って歌詞を書いていきました。彼は物語の中で、最初は「もう どうでもいいや」という状態です。でもお話が進むにつれて、「自分もヒーローとして向き合っていかなきゃ!」と強い子に変わっていきます。歌の方でも、最初は投げ出すぐらい嫌な日々だったけれども、向き合っていくうちに光が見えて戦わなければと成長していけるようなストーリー仕立てにしていきました。

――楽曲についてはどのようなオーダーをされましたか?

亜咲花 先ほどの“疾走感”に加え、キャラクターたちの葛藤や切なさにもフォーカスを当て、単に明るいだけの曲ではないような形でとお願いをいたしました。ストリングスを重ねることより壮大かつ爽やかで、疾走感はありつつも、苦しくて投げ出したくなるような要素が入っています。戦うときはどうしても綺麗ごとばかりではなく、ときには何かの犠牲を伴う現実を受け入れる必要があり、それでも守りたいというジレンマを歌の中に込めています。戦いの象徴である“拳”からインスピレーションを受け、「抱く」「抗う」「描く」など、この歌は全体的に「手」をキーワードとしています。

――歌い方や声の質感もこれまでにはない印象を受けました。

亜咲花 歌詞や曲に合わせて、ただのアップテンポではなくちょっとネガティブなところも声で出していきたいなと思ったんです。特にAメロは「自分はこれからどうしたらいいんだろう」という不安を声に載せられるように囁くような感じで歌ってみました。

――楽曲にもストーリー展開があって、サビに入っていくところでガラッと変わっていきますね。この辺りはどのように表現していったんでしょうか?

亜咲花 このラインはとても難しかったです。暗い展開から始まってサビで希望が差してくる構成になっているので、その差を声でいかに見せていくかはレコーディングのときも一番苦労しました。裏声から地声に、地声から裏声にと展開させることによって、はかなさと切なさを声で演出しています。ここはたとえ地声で歌えたとしても絶対に裏声で歌おうと決めていました。

――そして最後に「BELIEVE MYSELF」とタイトルが歌われます。この言葉は亜咲花さんにとってどんな意味を持っていますか?

亜咲花 自分を信じるって、なかなか難しいですよね。自分だからこそ厳しくなったりもするので、だからこそ自分を信じてあげることは大事だと思います。皆さんも自分を見失ってしまったり、大きな壁にぶつかったときに、まず自分を信じてほしいなと思います。私はポリープの手術をしたとき、自分の声が戻ってくるかこれまでで一番不安でした。その時も、リハビリを続けて乗り越えれば絶対に戻ってくると、自分を信じて過ごしてきました。自分を信じるのはなかなか難しいかもしれませんが、この歌が支えになっていってくれればいいなと思います。

――この作品に付属するリリックビデオを作られたそうですが、どういった内容でしょうか?

亜咲花 「BELIEVE MYSELF」の歌詞は『シキザクラ』にあわせて男の子を主人公として書いていましたが、リリックビデオでは対比として女の子を主人公にしてみました。女の子だからか自分の等身大に近いような気がします。リリックビデオになるとより歌詞の意味が入ってきやすくなるので、作詞をした立場としてもこのインタビューを踏まえてより歌詞にフォーカスしてご覧になっていただければと思います。

次ページ:「今、ライブで一番歌いたい曲」5周年イヤーへの熱い思い

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