【インタビュー】ルーグとディアの関係性、切なさ、温かさ――。結城アイラへ、TVアニメ『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』ED主題歌「A Promise」に込めた想いを聞く

結城アイラが手がけたTVアニメ『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』のED主題歌は、主人公・ルーグとディアの関係性を掬い上げたセンチメンタルな1曲。だがそれにとどまらず、c/w曲や、昨年3月にリリースしたミニアルバム『Leading role』と重ねることで、結城アイラの音楽性やその系譜を感じることもできる。彼女が生み出す、素直で心地良く、思わず耽りたくなるメロディライン。アーティストとしての開花を感じることができる1枚に対して、結城はどのような想いを込めたのか。

ルーグとディアの関係性を曲に込め、前向きな切なさを

――「A Promise」は、『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』(以下、『暗殺貴族』)のどういった面を表現した楽曲なのでしょうか?

結城アイラ アニメではあまり描かれていないんですけど、原作には主人公のルーグくんとヒロインのディアちゃんの二人が夜に定期的に会っているシーンがあって、エンディングではその辺りを表現したい、とアニメサイドから伝えられました。なので、ディアちゃんが月を見上げながらルーグ君のことを思っているようなところから始まり、サビで2人が密かに会って……、という流れからイメージを膨らませていきました。第三者から見たら、ディアちゃん、それって恋だよ!!と思う場面も、彼女にとってはまだ幼く自分の恋愛感情に気づいていないので、ラブソングだけど「恋」とか「愛」というワードは入れないようにしよう、という部分とともに、結城アイラが歌うからには大人のラブソングにも聴こえるように、と考えていて。年齢問わず、誰が歌っても成り立つような世界観にしよう、という始まりではありました。

――あまりアニメでは表現されないけれども、原作が持つ要素をエンディングが担っているんですね。

結城 そうですね!アニメタイトルにもある”世界最高の暗殺者”というのはスリリングな印象を受けますが原作を読むと、主人公のルーグくんが暗殺貴族の一家の1人として転生した先で転生前の人生では味わえなかった温かさや愛を学んでいく、という主題も感じていたので。その辺りで、いただいたエンディングのイメージとリンクできる感覚はありました。

――そういった優しい楽曲は、結城さんが得意とするフィールド、というイメージがあります。

結城 そうかもしれないですね。参考楽曲としていただいたものもバラードとメロウの中間くらいの感じだったので、自分のイメージで書けるという想いで作り始めることができました。なので、弾き語りをしながらAメロから歌詞をつけて、という感じで作っていきましたね。楽しく、思いのままに。楽曲全体的には、日常に隣にあるような楽曲にしたいなぁ、という想いで作っていきました。

――ディアが抱く恋愛感情、というのは具体的にはどのようなイメージでしたか?

結城 ディアちゃんが夜に月を見上げるというところから、月明かりの下で好きな人に会いたい、でも会えない、切ない、という情景をイメージしました。なので、「切ない」ではあるけど、ただ、そこにある「温かさ」はすごく大事にしたいと思っていました。秋の夜長にゆっくりとゆったりと聴けるような1曲、ですね。A・Bメロでは、楽曲に登場する女の子が持つ不安な気持ちを表し、サビでは会いたい切なさを表現しているんですけど、でもその切なさには「きっとあなたには会える」という前向きさがあるので、そこを表現しようとサビでは転調させています。あとは、蓮尾理之さんにアレンジをお願いしたんですけど、それは私が割とオーソドックスなコードを付けがちなので、蓮尾さんが持つエッセンスをアレンジで入れてもらえたら、という考えでした。ジャケットもそうですけど、ちょっと現代っぽくて夜に合うようなイメージですね。

――『暗殺貴族』はファンタジー世界が舞台ですが、現代風なイメージを持たせようと考えたのはなぜでしょうか?

結城 転生モノではありますけれど、主題は温かさや愛だと思っていたので。なので「ファンタジーに大きく振るよりは……」と思っていました。自分がこれから歌っていくというところも含めて、そのほうがリンクすると思ったんですね。だから蓮尾さんにも、異世界転生モノというところを意識するようにはお願いしていないんです。

――たしかに、曲調をファンタジーに寄せると、少年少女の淡い恋心、というイメージが打ち消されてしまいそうです。伝えたい主題を強調できるようなアレンジ、ということですね。

結城 そうなんですよ。あと、ルーグくんも転生前はダンディなおじさまとして登場してるので、都会的な現代感や大人っぽさは残したいなと思っていました。

――蓮尾さんにお願いしたいと思った決め手はあったのでしょうか?

結城 まだ発表前の別作品なんですけど、そちらでご一緒したときに楽曲にすごく感銘を受けたんですよ。エモーショナルに盛り上がる曲ではないけれども心の中に残る、というか。例えば、水の音といったちょっとした効果音などで醸し出されるお洒落感がすごくて、お願いしたくなっちゃいました。「A Promise」でもページをめくるような音が入っているんですけど、そういう組み合わせが秀逸なんです。あとは、サビで転調したぶん、サビが終わってから戻らなければいけないんですけど、私はそこで「どうしよう」ってなっちゃったんです。でも、蓮尾さんが素敵にまとめてくだったのでありがたかったです。私のシンプルな曲に、編曲でフックの部分をつけていただきたい、という意識でしたね。

――では、編曲の発注でもお洒落感をお願いする形で?

結城 “おしゃ感”がほしいです!みたいな(笑)。あとは、昨年に出させていただいたミニアルバム『Leading role』がジャジーなコンセプトだったんですけど、その流れを大事にしたいところもありました。楽曲を作るとき、セブンスコードをたくさん入れたいというのもあって、お洒落サウンドを求めてしまう部分はあるかもしれないですね。

――歌で意識した点も教えてもらえますか?

結城 メロウな雰囲気を出すということで、大人として淡々と歌うのがいいとは思っていました。なので、普段、自分が歌っているキーよりも半音から一音下げ、落ち着いた感じを意識しました。あと、一番盛り上がる“切ないくらい月が綺麗ね”は、愛してるという気持ちが伝わるように。でも、自分で作っておいてなんですけど、メロディが動かず、まるで隣の音程を歌うような感じなので、難しかったです。特にBメロとか。前作の「Blessing」でもそうだったんですけど、「また難しくしてしまった〜」と思いました。

――わかっていたけれども楽曲のクオリティを優先した、などではなく?

結城 単純に忘れちゃっていましたね(笑)。まったく歌う人のことを考えていなくて。だから今回、ディア役の上田麗奈さんに「A Promise」を歌っていただけたんですけど、本当に申し訳なかったです……。上田さんが最初から歌うって決まっていたらキー設定ももっと高くするし、メロディももう少し歌いやすい感じにしようとか考えたと思います。

――上田さんが歌うということは制作時点では決まっていなかったんですか?

結城 そうですね、実はそういった話はまったくなかったんですよ!ただ、先ほどお話ししたように、ディアちゃんの気持ちに沿った歌詞にしたいという、ある意味キャラクターソングのような気持ちでいたら、ディアちゃんに歌唱いただけるというお話をいただいたんです。実現したのは本当に嬉しいサプライズでした。でも、そういう流れだったのでキー設定は低いままで。上田さんはかわいらしい声を出すのが大変だったと思いますが、やはりプロだなぁと思いました。上田さんのレコーディングを見ていたら、一音一音に表情があり、声優さんならではの魅力がすごく詰まっていたので、私自身が良い刺激をいただけましたね。あと、蓮尾さんは上田さんのアルバム(『Nebula』)でも(「anemone」を)書いていて、上田さんからは「すごく好きです」「楽しく歌えました」と言ってもらえたので良かったです。

――大人な結城アイラと愛らしい上田麗奈が演じるディア。その2種類を楽しんでいただけますね。

結城 声のコントラストを感じていただけますし、歌う人が違うだけで曲の雰囲気も変わるので、きっとダブルで楽しんでいけますね。

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